未来市民法律事務所 弁護士
梶山正三先生の講演会が開かれました。
1999年5月14日 横須賀市 西公民館
これから講演の要旨を順次掲載していきます。 環境影響予測評価書案から、意見書提出後、 重大な設計の変更を行っているが、それでも、浸出水処理能力は低く処理しきれない。他地域の処分場でプール状態になっている写真による説明、心配していたことが現実に起こっている。 計画地は、谷をダムで遮断して埋めたてるが、多量の水がたまると周辺の地盤の間に入りこみ地滑りや 地震が発生するのは世界的にみとめられている現象である。50年に一度の雨量に耐えうるといっているが、50年間の月間雨量が一番多い 月の日平均雨量であって関東地方で10ミリに達しない。今日頻繁に起こる集中豪雨には、全く対処できな いことがはっきりした。 しゃ水シートは、東京都日ノ出町の場合、1年から5年で汚水漏れが始まってい る。2重にしてどれほど永くもつか福島県小野町の処分場は、3年で汚水漏れが始まっている。 第三セクターは、完成まで県が主体であるため許可の必要なし、住民監査請求が及ばなくなる、財政的資金の流れを不透明にする、法の規制を逃れて簡単に物事を進めていくための隠れ蓑になる。等々重大な問題点が明らかになった。 記録 Nozaki MEMO ◎・・・・芦名の処分場に関わる重大な問題点 テーマ ◆最終処分場とはどういうものか。(一般論) ◆芦名に予定されている処分場は、一般論から見ても、大変危険な処分場である。 1.産業廃棄物の実態 ・産業廃棄物の種類と排出量 一般廃棄物−約5000万トン/年(家庭系50%・事業系50%) 産業廃棄物−約4億トン/年(=厚生省の公式数字。が、実際は約その2倍) −19品目(含・安定5品目=素堀りの穴に埋めて良い物)に分類 (問題点) *実際に出るゴミの分類は不可能 *汚泥と残土の区別の問題点 *特別管理廃棄物(一般廃棄物処分場から出たばいじんは特管廃棄物、産業廃棄 物から出たばいじんは特管廃棄物ではない。 *汚泥の種類−上下水道汚泥、・建設汚泥・メッキ汚泥・パルプ汚泥等等々性状危 険性に大きなはばがある。 (芦名の問題点) ◎もえがら−熱しゃく減量10%以下(芦名):3%位(厚生省の指導) ◎汚泥−無機性汚泥にはメッキ汚泥(有害性)等も含まれる。 ◎ばいじん−産廃焼却炉から出たばいじんの危険性に注意 ◎鉱さい−クロム鉱さい(江東区で裁判中)・銅や砒素を含んだ 鉱さいは 危険 性が高い。 (ガラス・陶磁器くず−安定品目なので問題は少ない) (産廃の現状写真−千葉県君津市・和歌山県橋本市) ・日本の産業廃棄物の実態−法律がまったく機能していない。”無法状態” ・破棄物の処理責任−1)排出事業者の責任 2)委託による責任転化−*日本の廃棄物処理制度のガン ”責任の切断”が不法投棄の温床 安かろう悪かろうという処理業者に荷が集中する(経済原則) 適性な処理をするための費用も渡さない。・・・・悪徳業者が生 き残る。 *日本の廃棄物法制度=製造・排出事業者の責任をできるだけ軽減する。 末端の業者に責任をすべて押しつける。 製造事業者に責任はない。・・・・・・世界の流れ。(製造事業者 にすべての処理責任がある)に逆行している。 地域住民のと処理業者との争い。 2.最終処分場(管理型)の構造・機能・危険性 −−−法律でなく、総理府・厚生省の共同命令で(省令)で決められた構造−−− *しゃ水工・・・・ゴミの上に降った雨を集める。 *浸出水集排水施設・・・・しゃ水シートの下 *ガス抜き施設・・・・ゴミから発生したガスを抜く *浸出水集水ビット→浸出水処理施設・・・・汚れた浸出水を処理浄化する。→公共 用水域・下水道 に流す。 *外周水路・・・・処分場の周辺に降った雨が処分場に流れ込まないための堀 ◎芦名−外周水路の設計図面(構図・横断図面)のテェックが必要。情報不足 1.浸出水集配水管→汚水処理施設 ◎竪形集配水管−有穴管による集配水 ゴミを分解・安定化させるための空気を送る。 芦名は5本?(少なすぎる) 2.地下水集配水管→防災調整池 3.外周水路→防災調整池 ◎谷間全部を埋めてしまう芦名処分場計画−今までの例にない処分場計画 通常=谷間を切断する部分はなるべく少なくするのが原則(日の出町も) 理由=流域面積を大きくして水の始末に大変困ることになる。 規模=約5f(正確には、4.92f)・・・・福島県小野町(一般廃棄物管理型処 分場)と同規模 全体の開発面積=約15f ◎芦名計画のネック=周りが急斜面で流域面積が広い(約50f) 50fの集水域に対する防災池 ◎外周水路が片側(左側のみ)にしかない(評価書案) 通常水が流れている川の始末=付替水路が2回90度に曲がる計画はきちが い沙汰 −大雨の時の始末はできない 評価書案(P.8) 「付替水路/ボックスカルバート・開水路(一部多目的型水路) 問題点=水路の断面図寸法がどこにも入っていない 相当に大きいものを造らないと大雨に対応できない 「外周水路/ボックスカルバート」 問題点=設計図がないので評価ができない 「地下水集排水施設」 問題点=どれだけの集排水量を見込んでいるかの基礎データがない 「防災調整池/多自然型調整池 約24000立方メートル」 問題点=集水域約50fに100ミリ/1日の降雨で出る水は約5万トン (50年に一度の豪雨に対応できる設計指針−県見解書) 通常はその65〜70%(雨水流出計数)を見込んだ防災調製池 35000トン(=立方メートル)が必要 「浸出水処理施設 日平均処理能力56立方メートル」=仰天する数値 問題点=5fの埋め立て地に1ミリの降雨=50トン×70%(流出計数)=35トン 2ミリの降雨=100トン×70%=70トンで漏れる この地域の年間雨量・・・・1600ミリ(評価書案) 平均4.4ミリ/1日→200立方メートル必要 平均の浸出水量をはるかに下回る汚水処理能力しかない。 (福島県の小野町の処分場=230立方メートルで設計している) 通常の計算方法(厚生省の技術指針)も理解していない・・・・上限基準を日最大 浸出水量(欺瞞性)におく 日最大浸出水量・・・・過去20〜30年間で一番降雨量の多い月÷30日 →関東地方でも10ミリに達しない・横浜は7.2ミリ ◎芦名=56立方メートルは技術指針も理解していない。処分場設計のイロハを知 らない計画 2月3日の説明会資料では130立方メートルに改正 +調整槽で3700立方メートル=70〜80ミリ/1日の雨量 常時、平均浸出水量を処分できない処理施設しかない芦名処分場では調整槽が 空になっているとは考えられない→処分場がプールになる。 (実例・・・・福島県小野町処分場=芦名と同規模で230トンの処理能力で起き ている) 処理しきれないとき→無処理(汚水処理施設を通さない)放流する。 ・・・・公共下水処理場の無処理放流は日常的 入り口で大雨でシャットアウト→バイパス経由で放流 (建設省関東地検報告書で認めている=年間汚濁負荷量の半分は無処理) ◎右岸側(上流から)地滑り後があると記載(評価書案) ダムを造ると地滑りと地震が多発する。・・・・世界的に認められている現象。 水が溜まることで、地盤の間に水が入り込んで滑りやすい斜面をつくる→地層と地 層の間に滑りが生じて地震が起きる→大惨事の例もある 水の始末に大変困る処分場→ダム湖と同じ働きをする可能性がある。 →連鎖反応的に地滑りを起こす可能性がある。 ・しゃ水工の現状 地下水が水圧でしゃ水シートを圧迫する→しゃ水工の破損につながるため地下水集配水 管で地下水を抜く 地下水集排水管=しゃ水シート破損時、汚水漏れのモニターの役割を兼ねる。 (厚生省技術指針=電気伝導計等を使ってモニタリングすることが望ましいとある。) ・処分場の本来の役割=有機物は土中で分解して無害化していき、無機物だけが残る ・・・・生ゴミ主体 の場合 現代の処分場=有機物は極力減らし、焼却炉で燃やした残さを入れることが主体 ・・・・燃やした残さ=ほとんど分解しない→安定化しないままずっと残る 有害物質はほとんど分解されないまま長期間閉じこめられ、流出するものは汚水処理施設で 除去できない分は下流に流れていく。 焼却によってできる有害物質は現代の汚水処理施設ではほとんど除去できない。 現在の汚水処理施設は、生物処理・微生物で分解できる物を主体とした汚水処理 微生物で分解しないゴミが多くなった現代→有害物質は下流に蓄積されていく ◎しゃ水シート 日の出町処分場の場合 −−地下水集排水管の水質モニタリング(電気伝導度)で調べた汚水漏れ つづく |
・・・・・・梶山先生プロフィール・・・・・・・・
*東京工業大学理工学研究科博士課程 (酸素化学専攻)終了後
東京都公害研究所(現在の環境科学研究所)に12年間勤務(水問題担当)
*その後弁護士となり、廃棄物問題・水質汚染問題などの環境関連訴訟
・・・・日ノ出町処分場・千葉焼却炉・新潟三和村産廃処理施設等々・・・・に取り組む
*ゴミ弁連(たたかう住民と共にゴミ問題の解決をめざす弁護士会連絡会)会長
*関東弁護士会連合会公害対策環境保全委員会委員長
*著書に「闘う住民のために、ごみ問題紛争事典」(リサイクル文化社)
「廃棄物紛争の上手な対処法・・・・紛争の原因から解決へのししまで」(民事法研究会)