2001.12.28 
神奈川県知事様

産業廃棄物最終処分場を考える会    
事務局 細谷 均 (電話 57-6051)


神奈川県知事に対する芦名産廃最終処分場計画についての
公開質問状


神奈川県は、さる10月18日、地元住民への説明も理解を得る努力も不十分のまま、横須賀市に芦名地区産業廃棄物最終処分場の設置許可申請を強行しました。
横須賀市は法の規定に従って審査をはじめておりますが、私たちが疑問、不安に思っている問題で、これまでの県の説明で問題の解明がなされていないことを中心に、以下の質問にまとめました。従来の県の立場や見解の繰り返しではなく、質問にかみ合った形でご回答下さるよう強く要請します。ご回答は2002年1月20までにいただけますようよろしくお願いします。

質問1 
県知事はこれまで住民の理解を得るように努力すると言明されてきましたが、いまの時点で、住民の理解が得られたとお考えですか。もし理解が得られたとするならどのような根拠をもってそのように考えておられるのか明確にお示し下さい。また、もし理解が得られていないと受け止めておられるなら、計画の撤回もしくは凍結、あるいは着工延期などをすべきと思いますが、ご見解をお示し下さい。

質問2
知事は住民の総意や理解をどのように確認され、どのように対応されてきたのでしょうか。これまでの大まかな経過を追ってお伺いします。
その一は、芦名を候補地に決定する時の、土地利用調整条例に基づく知事への周知等状況報告書に「個人的な反対意見も一部にはあるが、全体的には安全な施設建設と早期の道路整備を望んでいる。(全般)」という記載があり、反対者がほんの一部であるかのように報告されていますが、その根拠をお調べになったのでしょうか。お調べになったのなら、その結果をお示し下さい。
その二は、アセスでの意見書、公聴会での意見に示された住民の意見をどのように受け取られたのでしょうか。お示し下さい。
その三、大楠連合町内会の計画白紙撤回の要望をどのように受け止め、どのように対応されたのか。お示し下さい。
その四、十万人を越える住民からの反対署名をどのように受け止め、対応されたのか。お伺いします。
その五、芦名町民に対する許可申請を予告する知事の手紙が、世帯の六割を越えて返還されたことをどのように受け止められたのでしょうか。お伺いします。
その六、県知事は、さる11月4日の芦名町内会臨時総会での「反対決議」をお認めになりたくないようですが、総会全体の推移を把握した上でそのようにお考えなのでしょうか。お伺いします。

質問3
産業廃棄物の処理は排出企業責任が原則です。それを県が処理する理由として、申請書には「県が自ら処分場建設を設置及び維持管理することは、安全性のモデルとして民間施設の設置促進及び廃棄物の適正処理を図ることを目的にするものであり、廃棄物処理法第11条第3項に規定する事務に相当しているものである。」と記述されています。
確かに、国は民間産廃最終処分場の施設の欠陥や管理のずさんさから住民の不信が高まり、施設の建設がすすまないということで、住民の不信を払拭するため、公共関与の施設設置を促進しています。国のこの政策の是非は別として、公共関与の施設建設は住民不信を払拭するというところに主眼があるのであって、「安全性のモデル」づくりを理由に住民の声を無視して強行してもよいということにはならないはずです。
いま県が「安全性のモデル」を錦の御旗にすすめている強引なやり方では、住民不信は一層拡大し、住民不信の払拭という公共関与の目的に逆行するのではないでしょうか。県知事の見解をお示し下さい。
「安全性のモデル」だけなら、なにも県でなければできないということはないでしょう。県でなければできなかったことは、「近郊緑地保全法の保全区域」に手をかけることであって、これでは良好な自然を破壊すること、住民無視で強行することなど、「最悪のモデル」になろうとしています。
本来民間がやるべきところを住民不信の払拭を理由にして民間の代わりに県がすすめようとしている事業ですから、法的義務がないとはいえ、住民合意を得て事業執行に当たることが住民の不信を払拭するのに最も効果的と思いますが、県知事の見解をお示し下さい。
また、国の補助金や県民の税金を投入し、お金をかければ、その分はより安全な施設にすることが可能でしょう。しかし、そのすべてを処理料で回収できるのでしょうか。もしできなければ、公費が投入されない民間にとって、採算のとれない施設がどうしてモデルになると言えるのでしょうか。その理由をお示し下さい。

質問4
詳しい財政計画が示されておりません。申請書を見る限りでは、県費の持ち出しが天井なしになっています。また、処分料金をいくらに設定しているかもわかりません。公共関与で最終処分場を建設した他県では処分料金が高くて予定通りの廃棄物が集まらず、料金を引き下げた結果、採算がとれない状況といわれています。処分料で施設建設費や管理運営費が賄えなければ、公金で負担することになると思いますが、本来企業責任で処理すべき産業廃棄物の処理を県民の税金で負担して県が処理しなければならない理由を明らかにして下さい。また、廃棄物処理法第11条第3項の規定は処理費用の負担まで規定したものではないと思いますが、公金で産業廃棄物を処理できる法的根拠を明らかにして下さい。

質問5
計画地は首都圏近郊緑地保全法に基づく保全区域であり、県をはじめ近隣市町が国営公園を誘致している場所でもあります。近緑法は、「良好な自然の環境を有する緑地を保全することが、首都及びその周辺の地域における現在及び将来の住民の健全な生活環境を確保する」ことを目的にしていますが、最終処分場はこの法律の目的に反しているのではないでしょうか。最終処分場は現在及び将来の住民の健全な生活環境に重大な影響を及ぼすおそれのある施設と言わざるを得ないと思いますが、県知事の見解をお示し下さい。

質問6
処分場に埋められる廃棄物は、ダイオキシンをはじめ重金属など有害物質を含んでいます。これらの物質は、埋められるだけでは有機物のように分解したり無害化することなく、長期にわたり、あるいは永久的に毒性、有害性を保持するものです。しゃ水シートの耐久性は永久的ではない以上、いつかは寿命がきます。そのときに有害物を含んだ廃棄物が漏出することになります。こうした長期にわたる問題に対しての対策が示されていませんし、対策のとりようがないと思います。谷を埋める処分方式はやめるべきと主張する学者もいますが、県知事は長期にわたる安全性の問題についてどのように考えているのかお示し下さい。

質問7
漏水検知システムとして申請書には「電気的漏洩検知法を用いることを基本とするが、新たな方式も開発されているので、その効果を確認した上で採用を検討する」となっていますが、これは現在の方式の有効性や技術的問題に不安があるからではないでしょうか。電気的漏洩検知法の効果の確認が必要と思いますが、県知事の見解をお示し下さい。また、この検知システムで漏洩が発見された場合しゃ水シートの修復が技術的に可能でしょうか。実証例を含めお示し下さい。さらに、この検知システムを十年間(埋立期間)しか作動させないのはどうしてなのか、あわせてお示し下さい。

質問8
処理水の放流は、横須賀市公共下水道におこなうとしていますが、公共下水道は、生物処理のみで重金属類の除去はできません。処分場が廃止になった後(浸出水処理場が閉鎖された後)も浸出水は公共下水道に放流されるのでしょうか。シートの破損、または寿命によって浸出水に重金属類が溶出したとき、横須賀市の公共下水道の処分場では処理できないのにどうして接続するのでしょうか。その理由と見解をお示し下さい。

質問9
三浦半島の活断層群の活動によって地震が起こった場合、想定できる最大級の震度はどのように考えているのでしょうか。また、それでもシートが破れたり、埋め立てられた廃棄物が流出したりしないといえるのでしょうか。県知事の見解をお示し下さい。

質問10
「道路橋示方書」「道路土工指針」「建築基準法」に基づいた耐震設計をするとしていますが、この設計でどのような地震にでも耐えうるのでしょうか。活断層の集中しているところにわざわざ建設するのですから、想定し得る最大級の震度に対して対応していることを確認してして欲しいと思いますが、県知事の見解をお示し下さい。

質問11
埋立終了後や処分場廃止後の地震対策がありませんが、地震によるシートの破損などは全くないといえるのでしょうか。埋立終了後、あるいは処分場廃止後の地震対策をどのように考えているのでしょうか。県知事の見解をお示し下さい。

質問12
三浦半島は活断層の巣と言われるほど活断層が集中しています。そして、その活動の再来期が迫っているとの報告がなされたばかりです。何もそんな危険な場所に最終処分場を計画しなくとも、県内には候補地があるのではないでしょうか。現に県は芦名をモデルにして民間施設の設置促進をはかると言っているのですから、設置可能な候補地はあることが前提になっています。もっと安全な候補地と比較検討して、その上で活断層があっても、どうしても芦名でなければならいという理由や資料があるなら、住民に示すべきと思いますが、県知事の見解をお示し下さい。

質問13
運搬中の飛散防止対策の具体策が示されておりません。ばいじんなどは密閉型の運搬車両にすべきと思いますが、そのようにできない理由をお示し下さい。

質問14
埋立不適物の扱いが極めてあまいです。「埋立不適物が発見された場合は、排出事業者に返却または別途処分委託をおこない、適正に処理する。」としていますが、廃棄物排出業者は県と契約している業者ですから、その業者が埋立不適物を持ち込むということは、契約違反となるわけで、その場合は排出企業の公表とか、契約破棄を含む厳しい対応をすべきと思いますが、県知事の見解をお示し下さい。さらに、埋立不適物を持ち帰らせるだけでなく、適正処分されるまでの監視等も必要があると思いますが、県知事の見解をお示し下さい。

質問15
処分場の廃止にあたって、どのように安全を確認しておこなうのか明確になっていないのではないでしょうか。申請書では「埋立が終了して処分場を廃止するまでの間、浸出水処理施設は自動運転を基本として稼働させ、定期的な巡回管理をおこなう。(中略)ただし、埋立終了後に、最終覆土上面に雨水浸透防止施設を敷設する計画としていることから、浸出水量の減少が見込まれるので、浸出水処理施設の維持管理の方法については、その時点で見直しすることとする。」としていますが、これでは孫子の代まで安全であることを確認して廃止することにはなりません。廃止基準にあるように有害物が溶出するおそれがないことをどのようにして確認するのか明記すべきですし、それが確認できるような管理運営をすべきです。その時点で見直しするというのは余りにも無責任です。廃止問題についての県知事はどのように考えておられるのか、お示し下さい。

質問16
いま県が設置しようとしている最終処分場の施設は、構造は管理型ですが、上部をシートで覆い、雨水浸透を防いでいるため、埋立終了後の維持管理は遮断型に近いものになると思われます。しゃ水シートなどは永久的なものではないので、破断や寿命によってその機能を失うと、雨水や地下水の浸透がおこり、このときになって廃棄物に含まれる有害物質が溶出する可能性が否定できません。こうなったときの対策がとれないと思われますが、県知事はどのように考えているのかご見解をお示し下さい。

質問17
防災調整池の容量はほんとうに十分なのでしょうか。温暖化などの影響によって異常な集中豪雨が記録されていますが、それを考慮して予測降雨量を設定しているでしょうか。予測外の降雨量を天災だと称して責任逃れすることがないのでしょうか。また、土砂堆積によって調整池の容量が減少したりしますので、処分場廃止後の防災調整池の管理についても具体的に明確にすべきだと思いますが、県知事の見解をお示し下さい。

質問18
ばいじんや燃えがらのセメント固化などの処理を求めた横須賀市長意見に対し、県はばいじんはセメント固化、燃えがらをキレート処理でおこなうとしていますが、セメント固化やキレート処理の長期にわたる安全性、有効性がどのように実証されているのか、お示し下さい。また、キレート剤に取り込まれた重金属がキレート剤とともに溶出することはないなどの安全性を示す資料をお示し下さい。

質問19
横須賀市以外の一般廃棄物中間処理場からでるばいじんや燃えがらを受け入れることがあるのでしょうか。もしあるとすれば、住民感情からして受け入れがたいと思いますが、知事の見解をお示し下さい。また、最近、県は産業廃棄物を市町村の一般廃棄物中間処理場で処理することをすすめると報道されましたが、その場合でも一般廃棄物処分場からのばいじんや燃えがらを受け入れることがないといえるのでしょうか。明確にお示し下さい。

質問20
どうして自然豊かな芦名地区に計画したのか。首都圏近郊緑地法で保全区域に指定されているのですから、他の候補地もさがし、比較検討するぐらいの慎重さは当然であると思います。横須賀市の一般廃棄物次期最終処分場の用地選定のすすめ方と同じように、他の候補地との比較検討できるような資料を提供すべきと思いますが、どうしてそうしなかったのか県知事の見解をお示し下さい。