2001.11.27  
横須賀市長様

産業廃棄物最終処分場を考える会         
事務局 細谷 均      

横須賀市に対する芦名産廃最終処分場計画についての公開質問状


神奈川県は、さる10月18日、地元住民への説明も理解を得る努力も不十分のまま、横須賀市に芦名地区産業廃棄物最終処分場の設置許可申請を強行しました。
これに対し、横須賀市は「本市が重要と考えている地元の理解を得るという点については、設置許可の法的要件とはなっていないものの、具体的に示されないまま許可申請手続きとなったことは、極めて残念と言わざるを得ません」と述べておられます。
芦名町内会は、11月4日に、臨時総会を開いて処分場計画に反対することを決議しました。
このように神奈川県の申請は、住民の合意、理解という前提となるべき条件が欠落した全く不当なものです。市が申請を受理し、許認可の手続がすすめられていることは大変残念であります。私たちは、住民の合意も、理解もなく、納得が得られないものは許可すべきでないと主張するものであります。
市は法の規定に従って審査するとのことでありますが、地域の生活環境を守ることや市民の願いに応えて市政を運営することは、第一義的に重要な役割でありますので、このことに十分に配慮することを求めるものであります。
いま、市の審査がおこなわれているところですが、私たちが疑問、不安に思っている問題について、以下の質問にまとめました。市の立場、見解を12月20までに、回答されるようお願いします。

質問1 
申請書には、「県が自ら処分場建設を設置及び維持管理することは、安全性のモデルとして民間施設の設置促進及び廃棄物の適正処理を図ることを目的にするものであり、廃棄物処理法第11条第3項に規定する事務に相当しているものである。」と記述されています。しかし廃棄物処理法第11条第3項の規定は「県が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理」ということであって、県がいう「安全性のモデル」と「適正処理」の二つは「県が処理することが必要」というものではないと思いますが、市の見解を示して下さい。
「安全性のモデル」は、県でなければできないということはありませんし、県が採用しようとしている技術の中には安全性や有効性が確認されていないものもあり、「安全性の実験」をしているように思います。
県でなければできないことは、「近郊緑地保全法の保全区域」に手をかけることであって、良好な自然を破壊すること、住民無視で強行することなど、「最悪のモデル」になろうとしています。絶対にこのままでは許可すべきでないとおもいますが、市はどのように考えているのかお示し下さい。
また、「適正処理」はすべての事業者に求められるものであり、県だけが求められるものでないことは明白です。

質問2
詳しい財政計画が示されておりません。申請書を見る限りでは、県費の持ち出しが天井なしになっています。また、処分料金をいくらに設定しているかもわかりません。公共関与で最終処分場を建設した他県では処分料金が高くて予定通りのごみが集まらず、料金を引き下げ採算がとれない状況です。施設建設や管理運営の詳しい財政計画を明らかにして、県民の理解を求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。
また、膨大な県費を投入して「安全のモデル」となる施設ができたとしても、採算が度外視されているのでは、民間の施設設置促進に役立たないと思われますが、市の見解をお示し下さい。

質問3
計画地は首都圏近郊緑地保全法に基づく保全区域であり、県をはじめ近隣市町が国営公園を誘致している場所でもあります。近緑法は、「良好な自然の環境を有する緑地を保全することが、首都及びその周辺の地域における現在及び将来の住民の健全な生活環境を確保する」ことを目的にしていますが、最終処分場はこの法律の目的に反しているのではないでしょうか。最終処分場は現在及び将来の住民の健全な生活環境を破壊する施設と言わざるを得ないと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問4
処分場に埋められる廃棄物は、ダイオキシンをはじめ重金属など有害物質を含んでいます。これらの物質は、埋められるだけでは有機物のように分解したり無害化することなく、長期にわたり、あるいは永久的に毒性、有害性を保持するものです。しゃ水シートの耐久性は永久的ではない以上、いつかは寿命がきます。そのときに有害物を含んだ廃棄物が漏出することになります。こうした長期にわたる問題に対しての対策が示されていませんし、対策のとりようがないと思います。谷を埋める処分方式はやめるべきと主張する学者もいますが、市は長期にわたる安全性の問題についてどのように考えているのかお示し下さい。

質問5
漏水検知システムとして申請書には「電気的漏洩検知法を用いることを基本とするが、新たな方式も開発されているので、その効果を確認した上で採用を検討する」となっていますが、これは現在の方式の有効性や技術的問題に不安があるからではないでしょうか。電気的漏洩検知法の効果の確認が必要と思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問6
処理水の放流は、横須賀市公共下水道におこなうとしていますが、公共下水道は、生物処理のみで重金属類の除去はできません。公共下水道に接続する理由を市はどのように考えて受け入れたのか、科学的に説明して下さい。また、処分場が廃止になった後(浸出水処理場が閉鎖された後)も浸出水は公共下水道に放流されるのでしょうか。シートの破損、または寿命によって浸出水に重金属類が溶出し、海の汚染などの被害がおこったとき、市の責任が問われることになるのではないでしょうか。市の見解をお示し下さい。

質問7
三浦半島の活断層群の活動によって地震が起こった場合、想定できる最大級の震度はどのように考えているのでしょうか。また、それでもシートが破れたり、埋め立てられた廃棄物が流出したりしないといえるのでしょうか。市の見解をお示し下さい。

質問8
「道路橋示方書」「道路土工指針」「建築基準法」に基づいた耐震設計をするとしていますが、この設計でどのような地震にでも耐えうるのでしょうか。活断層の集中しているところにわざわざ建設するのですから、想定し得る最大級の震度に対して対応していることを確認してして欲しいと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問9
埋立終了後、さらに処分場廃止後の地震対策がありませんが、地震によるシートの破損などは全くないといえるのでしょうか。埋立終了後、あるいは処分場廃止後の地震対策を県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問10
三浦半島は活断層の巣と言われるほど活断層が集中しています。そして、その活動の再来期が迫っているとの報告がなされたばかりです。何もそんな危険な場所に最終処分場を計画しなくとも、県内には候補地があるのではないでしょうか。現に県は芦名をモデルにして民間施設の設置促進をはかると言っているのですから、設置可能な候補地はあることが前提になっています。もっと安全な候補地と比較検討して、その上で活断層があっても、どうしても芦名でなければならいという理由や資料を住民に示すよう県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問11
運搬中の飛散防止対策の具体策が示されておりません。ばいじんなどは密閉型の運搬車両にするよう県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問12
埋立不適物の扱いが極めてあまいです。「埋立不適物が発見された場合は、排出事業者に返却または別途処分委託をおこない、適正に処理する。」としていますが、廃棄物排出業者は県と契約している業者ですから、その業者が埋立不適物を持ち込むということは、契約違反となるわけで、その場合は排出企業の公表とか、契約破棄を含む厳しい対応を県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。さらに、埋立不適物が適正処分されるまでの監視等も求める必要があると思います。

質問13
処分場の廃止問題を許可審査の段階で明確にすべきであると思います。「埋立が終了して処分場を廃止するまでの間、浸出水処理施設は自動運転を基本として稼働させ、定期的な巡回管理をおこなう。(中略)ただし、埋立終了後に、最終覆土上面に雨水浸透防止施設を敷設する計画としていることから、浸出水量の減少が見込まれるので、浸出水処理施設の維持管理の方法については、その時点で見直しすることとする。」としていますが、これは廃止の問題にかかわるだけに、先送りにすべきではありません。責任の所在が不明確になって後世に禍根を残すことになると懸念されますが、廃止問題についての市の見解をお示し下さい。

質問14
防災調整池の容量はほんとうに十分なのでしょうか。温暖化などの影響によって異常な集中豪雨が記録されていますが、それを考慮して予測降雨量を設定するよう県に求めてもらいたいと思います。また、土砂堆積によって調整池の容量が減少したりしますので、処分場廃止後の防災調整池の管理についても誰が、どのようにするのか、明確にすべきだと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問15
いま県が設置しようとしている最終処分場の施設は、構造は管理型ですが、上部をシートで覆い、雨水浸透を防いでいるため、埋立終了後の維持管理は遮断型に近いものになると思われます。しゃ水シートなどは永久的なものではないので、破断や寿命によってその機能を失うと、雨水や地下水の浸透がおこり、このときになって廃棄物に含まれる有害物質が溶出する可能性が否定できません。こうなったときの対策がとれないと思われますが、市はどのように考えているのかご見解をお示し下さい。

質問16
ばいじんや燃えがらのセメント固化などの処理を求めた市長意見に対し、県は燃えがらをキレート処理でおこなうとしていますが、キレート処理の長期にわたる安全性、有効性がどのように実証されているのか、市の見解をお示し下さい。また、キレート剤に取り込まれた重金属がキレート剤とともに溶出することはないのかなどの安全性の確認を県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。

質問17
どうして自然豊かな芦名地区に計画したのか。首都圏近郊緑地法で保全区域に指定されているのですから、他の候補地もさがし、比較検討するぐらいの慎重さは当然であると思います。そのうえで、芦名というのであれば、他の候補地と比較検討した資料を住民の判断材料として提供し、理解を求めるのがごく自然の市民感覚ではないでしょうか。横須賀市の一般廃棄物次期最終処分場の用地選定のすすめ方と同じように、他の候補地との比較検討できるような資料を提供するよう県に求めるべきと思いますが、市の見解をお示し下さい。