2002.3.24現地集会資料
                         芦名産業廃棄物最終処分場を考える会
           ホームページ http://www.cam.hi-ho.ne.jp/s-kangaerukai
(1)用地選定の問題
 どうして自然豊かな芦名地区に計画したのか。ここは、首都圏近郊緑地法で保全区域に指定され、オオタタカが飛来する、神奈川県で三浦半島でしか見つかっていない絶滅の心配なトウキョウサンショウウオや市民に憩いの場を与えているすばらしいニリンソウの群生が見られる、貴重な自然を残す地域です。他の候補地もさがし、比較検討し住民に公開するのは当然です。それが全くなされなかったことが、芦名町内会の臨時総会(2001.11.4)で「県との対策協議会設置の否決」「処分場反対決議」に示されているように、住民合意ができていない大きな理由の一つです。横須賀市の一般廃棄物次期最終処分場の用地選定の進め方と同じように、他の候補地との比較検討できるような資料を住民に提供すべきです。
 
(2)2002.3月横須賀市議会の本会議でも指摘された、県環境予測評価書のデータのごまかし 
@平成12年6月、環境予測評価書(アセス)の最終報告が出て、県は法律に沿って実施したので、問題ないと説明してきました。
 数万を超える意見書に対して、全く答えられなかったのは周知のことですが、ここで、アセスのP99「実施を必要とする理由」のデータ(約419万トン)が、「緊急補完的に早急に処分場が必要である」という結論を引き出すために、昭和62年(最終処分量360万トン)から平成5年度の最終処分量(247万トン)へ大幅に減少していたという事実を隠し、世論操作のためにつくられたデータであったのではないかという疑いが出てきました。このデータがもし県の都合の良いように書き換えられていたのであれば、アセスそのものの信頼性が失われることになります。横須賀市は、この部分の事実関係、その他のアセスのデータも最近県が公開したデータをもとに、専門委員会で再調査すべきです。以下、アセスの部分と平成13年10月に明らかになった県発表の産廃最終処分量の5年ごとの数量を載せておきます。最終処分量で172万トンも違うのは、作為的としか考えられません。
●平成12年6月発行、県環境予測評価書より ページ99 『2.実施を必要とする理由 平成6年度に実施した神奈川県産業廃棄物総合実態調査によれば、県内の事業所等から平成5年度の1年間に発生した産業廃棄物は約2186万トンと推計され、うち約735万トン(33.6%)が再資源化され、脱水、消却など中間処理により約1,032万トン(47.2%)が減量化された結果、約419万トン(19.2%)が埋め立て及び海洋投入等の処分の対象になっている。
 処分対象量のうち、県内で処分等されているのは約162万トン(38.7%)であり、残る約257万トン(61.3%)が、県外処分と海洋投入により処分されているのが現状である。』
●平成12年10月発行、 神奈川県廃棄物処理計画(原案)より ページ6
(3)産業廃棄物の現状と課題{現状}(量:万トン)
  昭和62年度 平成5年度 平成10年度
    構成比 指数   構成比 指数   構成比 指数
排出量 2299 100% 100 2040 100% 89 1845 100% 80
再生利用量 854 37% 100  707 35% 83 670 36% 78
減量化量 1085 47% 100 1086 53% 100 958 52% 88
最終処分量 360 16% 100  247 12% 69 217 12% 60
(3)引き取り手のない危険な有害物質の捨て場
 
 横須賀市は、一般廃棄物の焼却灰は溶融して再資源化を考えているのに、なぜ、県は、事業者責任である県内の民間の焼却炉から出る有害物質を含む「ばいじん」「もえがら」のほとんどを、この芦名の谷にそのまま埋めるのか。アセスを請け負ったのは、コンサルタント会社「日本工営」、
200億という公共工事の利権がかかわっているのか。?
 
受入産業廃棄物の量(アセスP79)単位千立方m(合計560千立方m)           
@県は、平成14年度より焼却炉のダイオキシン規制により、民間の焼却炉が使えなくなるため自治体の焼却炉で産廃を燃やすことを考えていたり、将来は、一般廃棄物まで民間に任せ、再利用や再資源化していく計画をもっています。
 県は、一般廃棄物と産廃が一緒に焼却されるときの「もえがら」「ばいじん」を、ここには入れないと言っていますが?。現在の県の計画とも矛盾することの多い計画です。
 今の最終処分場に産業廃棄物だけそのまま埋め立てるというやり方は、数年先、社会の意識の変化とコストがかかりすぎために、企業にもあいてにされない状況になると予測されます。
 
(3)県が言い続けた「長期的に安全である」「安全性のモデル」となるような処分場は現在の技術では不可能です。
 
@有毒な物質を含む水を処理する侵出水処理施設の処理能力に問題があります。埋め立て完了面積3.34haに最近の集中豪雨一日100mm以上の雨が降ったらどうなるでしょうか。傾斜地である場内にどれくらいの侵出水を貯留できるのでしょうか。
 
 集中豪雨時に有毒な侵出水を処理できない状況になることが明らかである設計ミスの施設であることを指摘すると、水量が多いときに貯めておく補助のタンクを取り付けたり、2区画に分けて処分場をつくる計画を7区画に分けて雨水を浸透させないようにつくる方法に変更したり、計画に一貫性のないそのば限りの対策をこうじています。
 侵出水(雨水)で浄化されず、いつまでも有毒な廃棄物が、処分場内に残されることになり、処分場は廃止できないことになります。その廃止の認可を与えるのは横須賀市です。このことも横須賀市としての見解を聞いておく必要があります。
 
 再見解書では、処分場内の水処理ができないときは、処分場内に貯めるとまでいっています。しゃ水シートが、破れる原因の多くが水の重さや地下水の力であることすら理解していません。業者任せで、指摘を受けるごとにこのような大きな設計変更を行うようでは、県がつくるから安心とという言葉は信用できません。
 
 
Aしゃ水シートが破れても、「漏水検知システム」があるから安全?と言っていますが、住民をごまかしているのです。
 
 装置の耐用年数は、25年ほどです。埋め立て期間中の10年しか動かさないのです。さらに、漏水が確認され修復作業中であっても、修復作業に支障がなければ廃棄物の搬入作業は続けるとまでいっています。県は、漏水の重大性を何も感じていないのです。県の審議会でも、修復が本当に可能なのか具体的に示せという専門家からの指摘もあります。
 また、10年後は、漏水があっても場所を特定して修復ができるとはいっていません。漏水が始まったらどうするのでしょうか。処分場の跡地に道路が建設されると、漏水があった場合の対策が難しくなるでしょう。
 
B処分場の底に敷く厚さ1.5mmのしゃ水シートは、必ず時がたてば破れるのです。2重にしたから永久に安全だと処分場の専門家も考えていません。
 
 横浜市は、処分場のしゃ水シートの耐用年数は、業者の発表として概ね50年と答えています。県に尋ねてもベントナイト混合土をしいているからと全くこの質問に対して答えようとしません。50年先、厚さ1.5mmのしゃ水シートはボロボロになり地下水への汚染が広がり相模湾は大変な状況になっているだろうと予測されます。
 
C「万が一しゃ水シートが破れてもシートの下にしゃ水性のあるベントナイト混合土をしいてあるから安全?」ではありません。
 
 しゃ水シートの大きな部分を占める深い谷の斜面には敷きません。この混合土は。底が平坦な広い処分場で効果があり、傾斜のある谷では漏水が始まると下流に流れてしまい、効果が期待できるとは思えません。
 このベントナイトは、混ぜる土や混ぜる比率によっても耐水性が変わります。また、最近の研究で、処分場内の侵出水に多く含まれている塩類があると、ベントナイトが陽イオンにより凝集してそのしゃ水機能が失われるという研究結果もあります。4重構造の2重シートとコンクリート基盤とベントナイト混合土でも安全ではないのです。
 
C最大月間降雨量で30年確率降雨にたえるため、24000立方メートルの調整池を設けたから安全?」では、ありません。
 
 近年の豪雨にたえることができるか。これからの気候の変動は無視されているのです。深い谷に建設するために流域面積が広く、近年の気候の温暖化による豪雨は、今後数日で300mm近くになることも予想され、設計基準以上であるから安全とは言えない状況になってきています。松越川下流に居住する住民が一番危惧している問題です。流域面積と調整池、松越川がどれくらいの豪雨に耐えられるのか。安全性について再調査して具体的に示してほしいです。
 
D「横須賀市の公共下水に侵出水処理施設から出る処理水の配管をつなぐから安全?」ではありません。
 
 公共下水は、微生物による処理と消毒が主です。侵出水処理施設で、重金属やダイオキシンなど有毒な物質まで処理した水を、高度な処理ができない公共下水に流せば安全性が増すという理由は住民をごまかすものです。処理場の早期廃止後の放流を産廃処分場で考えているとしたら重大な問題を含んでいます。さらに、処分場の廃止後には、モリタリングもしませんから、住民が処理水を監視することが難しくなります。
 
E「処分場を横切る北武活断層は、市の条例により、重要な施設を活断層から25m離しているから安全?」ではありません。
 
 産業廃棄物処分場という広範囲に汚染が広がり環境に及ぼす影響の大きい重要な施設を、25m施設と離れているから安全かどうかという論議自体全く根拠のないものです。東に衣笠活断層、西に武山活断層が通る危険な地域を選んだことに安全性の軽視があります。地震が起きて活断層が地表に現れるのは、いつも同じところとは限りません。アセスでは、「断層ではなく不整合関係である」「北武断層は西に向かって終息している」と、県の活断層調査報告書にある「断層」「収束」という言葉を、「不整合関係」「終息」という県に都合のよいように書き換えたりしています。県の審議会でもその根拠を具体的に示せという指摘を受けても再調査することもなく、従来通りの答えしか出していません。住民の安全はまったく無視されているのです。
 
E「ダイオキシン等の有害物質の風による飛散はさせない?」と言っていましたが
 
 外に飛散する可能性が大きい風速5.5メートル以上では作業を中断します。風速5.5以上になる日は少ないと答えていました。しかし、再見解書では、いつのまにか。10分間の平均風速5.5メートルのとき作業停止に書き直されていました。瞬間風速は、5.5m以上になります。
 
(4)自然を破壊していることを隠して、「自然に配慮した処分場をつくる?」と言っていますが、その嘘を住民は知っています。
 
 湘南国際村は、自然との融和を町づくりの基本に考えましたが、半分以上、山が削られたまま放置されている現状を誰も見ようともしない県のやり方です。環境に配慮して動植物を移植したり、跡地に自然を再生しますという県の話は信用できません。
 谷を埋めて処分場をつくる10年前の時代遅れの施策を進め、わずかに残された貴重な自然をこわすことに 何ら痛みを感じない県政、環境庁出身の知事は、芦名の現場をおとずれたことがあるのでしょうか。長野県の田中知事を見習って住民が同意していない古い施策(公共事業)はやめるという英断がほしいです。
 
(5)県も認めざるを得ない山間部に処分場をつくる危険性
 
 3月27日に県主催の「ゴミ討論会」(産業廃棄物)で講演された北大大学院の古市徹教授は、「これからの処分場は山間部の谷を埋めるやりかたでなく、人の目に触れる平野部に密閉型でつくる方がよい」と発言されています。水の管理が難しいことを指摘しています。
 
 以下資料として処分場を造ることを研究している学者の意見「討論会の記録」(県のHP)を載せておきます。
 
  
 『それから、「処分場は完全でないという理念のもとに計画しないと、不安は消えない、そのためには危険に対して対処するプロセスを計画に入れなければならない。」というご意見
 
 これは当然である。完全ではない、技術は絶対にオールマイティーではない。
 専門的な用語ではフェールセイフという、失敗したときに、それに対してどうカバーするかと いう、二重にも三重にもカバーするような仕組というのをやはりつくるべきだ。
  二重シートというのが、一枚目のシートが破れたら二枚目があるから、その間に対応できる とか、例えばこれも一つのセイフである。二枚目も破れたとき、それを下で検知する。そうし たら広がる前に対策、修復ができるとか、シートが自己修復シートというのがあり、穴が空い たら、それを修復する、穴を塞ぐという、そういうシートを持ってくるとか。
  だから、いろんな失敗、支障が起こったときに、それをカバーするような仕組み、それは技 術的なものであるのか、人間のシステムとしての維持管理のシステムなのか比重のかけ方は分 かりませんが、そういうものはやはりきっちりしていかなければいけないと思う。
  それから、「最終処分場について、従来のような平面的な形の処分場を建設し続けていくこと になるのか」という質問であるが、むしろ現状多くあるタイプとしては都市部平地型の処分場、 掘り込み型だとか、盛り立て型よりも、むしろ山間部の谷あいにつくる方が多い。これはよく ないと思います。大体、こんなに水が集まってくる所で、管理は困難であり、見えない所、集  水地になっているような所、水道水源の場になっている所に、なぜつくる必要があるのか。
  それしかないという場合も確かにある。しかし、つくるという判断をするならば、環境への 負荷を下げるために相当なお金をかけて、基盤をしっかりしないといけないと思う、だから、 本来はもっと平地で、みんなが見えるところに、中間処理と同じような処分場をつくったらよ いのではないか。先ほど説明したクローズドがそのような例である。できるだけ最終処分の容 量を少なくするよう上流側で減量し、さらに、中間処理等で減量化することが基本である。こ れも難しいところはある。中間処理でコストがかかったり、有害物が出たりというようになる かも分からない。ではどうするかといったら、ごみを出さない、そこまで戻っていく必要があ ると思う。
  いずれにしても、山間部に、谷あい等につくるということは、やむを得ない場合を除いてこれからできるだけなくしていくべきだと思う。杉島さんにも質問がきており、「焼却主義をやめ、どうしても燃やさなければいけないものだけ燃やしていく考えがなくては、ただ処分場がクローズドかオープンなどという考えはいかがなものか」というご意見がある。』