神奈川県知事 岡崎 洋殿へ                
 
芦名地区産廃処分場建設に
ついて質問しました
                            
いつも、運動へのご協力に深く感謝いたします。
産業廃棄物最終処分場を考える会事務局・細谷方・秋谷2−3−32電話57−6051)は、7月26日、神奈川県について質問書を提出しましたその大要をお伝えします。今後勉強会等を開きますので、よろしくお願いいたします。
 
 
 
 平成12年6月、神奈川県は、横須賀市芦名地区産業廃棄物最終処分場事業に関する環境影響予測評価書を明らかにしました。しかし、その内容は公聴会での住民の意見、横須賀市長の評価書案への意見、県の審議会が具体的に示せと指摘した問題等に対し、きわめて不十分な内容と言わざるをえません。つきましては、下記の質問項目に沿って、2000年8月20日までに文書で回答をお願いいたします。
 
1. 県の産業廃棄物の減量化計画について
 
最終処分量は、減少している
 
 大量生産、大量消費、大量廃棄による環境負荷の増大、最終処分場の逼迫、不法投棄等の不適正処理など、産業廃棄物をめぐる問題が深刻化し、これまでの焼却、埋め立て処分中心のやり方では対応できず、廃棄物の発生抑制、資源循環型社会の構築に向かって廃棄物行政の根本的転換が求められている。
 国においても、ようやく不十分ながらも平成11年9月28日の「ダイオキシン対策関係閣僚会議」の決定で、「廃棄物の減量化の目標量」を示し、平成22年を目標に半減化計画を進めている。また、多くの自治体や企業で廃棄物の減量化や再資源化の取り組みが進められ、大きな成果も上げている。しかしながら、県は、芦名産業廃棄物最終処分場を建設する目的として、「神奈川県内から発生する産業廃棄物の量および処分量は、長期的に見た場合には増加傾向にあると予測され」とのべ、公共関与による最終処分場を建設し、安全性のモデルとして民間施設の設置促進をはかるとしている。
 しかし、県が5年ぶりに実施した調査(讀賣7月6日付)では、平成10年度の県内産廃排出量が、1920万トンで、前回平成5年度調査に比べて260万5千トン減少している。最終処分量は、300万4千トンで、評価書で述べている5年前の419万トンの最終処分量と比べると減少している。総排出量にしめる再資源化の比率は、34.9%で1.3%のアップにすぎないが、今後、再資源化が法律で義務づけられれば更に減少して行くと予測される。前回調査を基にした評価書は、処分量が増加していくことを前提にして住民に説明してきたが、その必要性と緊急性の根拠は失われてきている。
 
 ようやくリサイクル法等の再資源化の法律が整備され、減量化や再資源化の取り組みは、これから本格化していくと思われるが、それでも廃棄物の処分量は増加傾向にあると見ているのか。現時点でもこの認識に変わりがないのか。計画を凍結して見直す考えはないのか。県はどのような減量化計画をもっているのか、あわせて明確に示してもらいたい。
 
2. 産廃最終処分場の公共性について
 
「公の施設」とはいえない
 
 産業廃棄物処理施設は、誰でも(不特定多数のものが)自由に使用できるものでないので、地方公共団体が設置する場合であっても、「公の施設」とはいえないというのが国の公式見解です。(産廃施設に関する質疑応答集)
 産業廃棄物最終処分場の建設がなかなか進まないので、公共関与により安全性のモデルとなる処分場をつくり、民間施設の設置促進を図るといっているが、だからといって産廃処分場の公共性が高くなったことにはならない。産業廃棄物の適正な処分は排出企業の責任であることには少しも変わりがない。ただ、これを企業任せにしていたのでは、適正な処分がなされず社会問題になり、ここに行政が果たすべき真の役割があるのであって、産廃最終処分場の公共性と混同されてはならない。
 
 「公の施設」とはいえない芦名地区産廃処分場に公共性、公益性があるとは思えないが、近郊緑地保全法で緑地を保全することの公共性、公益性より高い公共性、公益性があるというのであればその理由を明確に示してもらいたい。
 これからは民間施設でも、緑地保全などの立地規制をはずしてまで産廃処分場を認めて行くつもりかどうか。見解を示してもらいたい。
 
3. ダイオキシンや重金属等有害物質を含むばいじんや燃え殻
 
最終処分場に依存しない処理を 
 
管理型処分場であれば、汚泥や鉱さいがほとんどを占めるはずである。しかし、芦名の処分場では、その40%以上をダイオキシンや重金属等の有害物質が含まれる燃え殻とばいじんが占めている。もっとも危険なばいじんが全埋め立て量の11%も埋め立てられるのである。県内の民間焼却施設から排出されるほとんどを、この芦名の処分場は10年間引き受けるのである。それは、県内で排出される処分の難しい廃棄物の半分をこの芦名に埋める計画であることを、住民にわかるように説明していない。
 横須賀市長の意見(回答)でも、この重大な問題に触れ、「ダイオキシン類や重金属等の有害物質の飛散、流出や地下浸透を防止するため「ばいじん」と「燃え殻」については、セメント固化等の処理が必要である」と、最低限の安全対策を求めている。しかし、評価書では、ばいじんだけを処分場でセメント固化して埋め立てるという企業への思いやりだけである。
 また、各自治体では、一般廃棄物のこれからの処分方法として、燃え殻やばいじんは、溶融して、できるかぎり無害化していく方向で研究が進められている。また、最終処分場に依存しない処理システムの研究が千葉市と民間の共同研究で実証運転段階に入っている。それは、廃棄物を熱分解して発生するするガスを燃料にして、高温で溶融スラグを製造して、金属、ガス、スラグなど処理過程で出る副産物は、すべて工業原料や石材化して活用するという方法である。そのガス化溶融炉、川崎製鉄(株)は、日量300トンの処理能力×365日で1年間10万9千トンの処理能力をもつ。芦名の処分場の年間5.6万平方bの埋め立て能力を大幅に越えるものである。
 
 芦名の処分場が計画された頃と現在の状況は、ダイオキシン等に対する対策が大きく変わってきていることをどのように認識しているのか。
最終処分場に依存しない方法の対策こそ「安全性のモデル」として誇れる施策であり、シートの耐用年数もはっきりしない中で、「安全性のモデル」といえるかどうか。住民に納得のいくデータを示し具体的に説明してほしい。
 県は「安全性のモデル」となるものを建設するといっているが、建設された最終処分場が「安全性のモデル」たるものとして、確認するのは誰か。またそれはいつの時点か。
 
4. 埋め立て終了後の処分場の廃止問題について
 
簡単に「終わった」とはいえない後処理
 
 日本弁護士連合会が97年3月に発表した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正に対する緊急意見書でも指摘しているように、しゃ水工は「いかなるシート、いかなるシステムを用いても、侵出水の地下水への漏出の危険性を払拭することはできない。」「『周辺地下水の監視の強化』がしばしば議論されるが、これはあくまでも補完的な制度と考え
なくてはならない。なぜならば、監視は現在に対する不安を解消しても、未来への不安を解消するものではない」ものである。こうした観点から処分場の廃止(終了)問題について伺いたい。
 県は廃止基準を共同命令に基づいて次の4点にまとめている。
 @ 地下水等の水質が基準に適合しており、かつ基準に適合しなくなるおそれのないこ
   と。あるいは埋め立て開始前より水質の悪化が認められないこと。
 A 侵出水の水質検査の結果が2年以上にわたりすべて排水基準に適合していること。
 B ガスの発生がほとんど認められないこと。又は2年以上にわたりガスの発生量の増
   加が認められないこと。
 C 埋め立て地の内部が周辺の地中の温度に比べて異常な高温になっていないこと。
   となっている。
 この基準をどのように適用するのか明確に示してもらいたい。
 県の説明によれば「産業廃棄物埋め立て終了後においては、侵出水の徹底した発生の抑制を図るため、区画ごとの埋め立て終了後、最終覆土上面にしゃ水材(工場製品シート)による雨水浸透防止施設を設置します。このことにより、雨水の侵出水化の防止が図られ、設置以後の侵出水の新たな発生ははとんどなくなります」と述べ、侵出水そのものが流れ出ないようにしている。
 
 そうすると、評価書でも、しゃ水シートの耐用年数を明確に示すことができなかったことから、いずれ劣化して地下水や雨水が浸透して侵出水が流れ出たときには、有害物質が溶出し、水質が基準に適合しなくなるおそれが存在することになるので、廃止基準の@によれば長期にわたって廃止できないことになるがどうか。
 また、廃止が承認される前に道路建設の跡地利用はすべきでないと思うが、どう考えているか。
  
5. 埋め立て後の跡地利用のあり方について
 
ふさわしくない道路建設という跡地
 
 搬入時の溶出検査は規制物質の溶出量が基準以内であるかどうかを検査するのであって、ダイオキシンや重金属などの有害物質の搬入を防ぐものではない。したがって最終処分場には有害物質が多量に閉じこめられているのであり、将来漏出する可能性を否定できない。こうしたことから一般的には最終処分場の跡地利用になんらかの規制を考えるのが当然である。(侵出水処理施設などを閉鎖した後、有害物質が漏出した場合などを考え、それへの対処できるようにするには緑地に限定するなどかなり厳しい規制が必要であるといわれている。)現に国の生活環境審議会廃棄物処理部会産業廃棄物専門委員会でも「今後の産業廃棄物対策の基本的方向について」(平成8年9月)のなかでも次のように言及し、「最終処分場の閉鎖や跡地利用については、閉鎖の基準が明確でなく行政の関与がない等制度的枠組みが十分整備されていないため、いつまで維持管理をすればよいか分からず維持管理があいまいになったり、埋め立て終了後の土地管理や開発のあり方が原因で問題が生じている例もあることから、閉鎖や跡地利用について許可制の導入等の監督の強化が必要である」とし、98年6月の共同命令で廃止の基準が示されたものの、跡地利用については検討課題となっている。
 
県は道路建設が付加価値の高い跡地利用であるという理由で、芦名を選定しているが、用地選定は活断層のあるところを回避するなどの安全性や環境保全を第一に考えるべきであって、跡地利用を第一に考えているところに安全性への軽視があると指摘せざるを得ない。跡地利用のあり方についてどのように考えているか明確に示してもらいたい。
 道路建設という跡地利用は、不安定な地盤の問題と将来シートが破損したときどのように対応するのか。危険物を密閉してしまう道路建設は採用すべきでないと思うが、どうか。
 
6. 横須賀市長からの意見について
 
当該自治体首長の意見を無視
 
 環境影響予測評価書で、審査書で指摘された問題については、その是非はともかく、「審査書に基づく予測評価書案の、変更内容又は変更しない場合はその理由」を記述しているが、横須賀市長の意見に対しては何も言及されていない。
 
(1)ダイオキシン類や重金属等有害物質の飛散、流出や地下浸透を防止するため、「ばいじん」と「燃え殻」については、セメント固化等の処理が必要である。
(2)産業廃棄物の搬入車両は覆蓋等を有する車両を用い、輸送中の粉塵の防除を図る必要がある。
(3)上部を道路として使用する計画であることから、処分場の計画、配置、管理、廃止から上部利用に至るまでの間、一貫した汚水処理に関する長期的な管理計画が必要である。
(4)活断層については、異なる内容の調査結果や学説がある場合、最終処分場の機能維持に重要な施設をすべての活断層から離す必要がある。
等」について、なぜ、評価書では取り上げられなかったか。
 具体的な説明をお願いしたい。
 
7. 計画変更の住民周知について
 
変更理を明らかにして公を
 
 環境影響予測評価書案で示された最初の計画が、住民の意見や審査会の審査などで、検討や変更する旨回答し、それに基づいて計画変更されている。しかし、どこをどう変更したのか、全体像の住民への周知が不十分である。変更した部分を初めの計画と対比させ、変更理由も明らかにして公表してもらいたい。
 侵出水処理施設と処理能力の変更
風速5メートル以上のときの作業停止の説明が10分間の平均風速5.5メートル以上に変更
区画に分けた埋め立て方法の変更
 再見解書で述べていた集中豪雨時、処分場を調整池として使うこと
再見解書で述べていた「検討する」としていたすべての項目に対して評価書での見解
 動植物の保護について。ダイオキシン対策等の問題について         
  以上