【こんな時どうする!】

このページでは、日常よく起こす怪我やスポーツ外傷について取り上げていきたいと思います。

 

第一回 応急処置について

第二回 温める、冷やすについて

第三回 テニス肘について(作成中)

 

第一回 応急処置について
T. I,C,E,R,の原則
スポーツ外傷や怪我が発生すると痛み、腫れ、炎症などが起こり不快感を生じる事になります。このような不快感や症状の悪化を防ぐの事がファーストエイド、すなわち応急処置と呼ばれるものです。応急処置はI,C,E,R,の原則と呼ばれ、冷却(Ice)圧迫(Compression)高挙(Elevation)安静(Rest)を同時に行います。これらの応急処置をしなかったり、仕方を間違えると後の予後に大きく影響してきます。

1,冷却(Ice)
冷やす事は、応急処置で最も効果のあるもので,冷やす事によって痛みや痙攣が軽減し酸素の活性が少なくなるので組織の損傷を減らし受傷後4〜6時間以内に生じる腫れを抑えることができます。受傷後の冷却は組織の代謝を下げ組織に必要な酸素量を少なくし低酸素症を防ぎます。この効果は患部周囲の正常な組織を助ける事になります。ただし、長く冷やしすぎると組織もダメージを受けてしまします。最良の冷却方法は氷を使ったアイスバックを皮膚に直接当てることです。凍らせたゲルパックはアイスパックよりも冷却温度が低くなるので直接皮膚に当てないようにします。アイスパックは長くても20分間にとどめ感覚がなくなればその時に取り去ります。そして、寝るまで1時間か1時間半毎に冷却を繰り返します。障害の程度によって24時間から72時間これを続けます。例えば、軽い肉離れであれば20分間の冷却を1〜2回行うだけで十分ですが膝や足首のひどい捻挫であれば3日間は冷却を繰り返す必要があります。

2、圧迫(Compression)
ほとんどの急性の障害ですぐに圧迫を加える事は冷却と高挙と共に重要な手段であると考えられています。患部を圧迫する事は、内出血と肉腫の形成を軽減します。圧迫する事で組織間に進出液が混入する事を防ぎ逆にその吸収を促進します。圧迫には、弾力包帯やパッドなどを使用します。

3、高挙(Elevation)
冷却と圧迫と共に高挙は、内出血を軽減します。患部を心臓より高く持ち上げる事で出血が軽減され、静脈の返還が助長されるので腫れも軽減します。

4、安静(Rest)
テーピング、スプリント、ギプス、松葉杖などを用いて、患部を動かせないように安静にします。受傷後2〜3日患部を固定しておけば併発症もなく、治癒を助けます。 早く動かしすぎると内出血を増すだけでなく機能障害の程度も悪化させる事になり回復を長引かせます。

U.I.C.E.R.の手順
I.C.E.R.の手順をまとめると、次のようになります。
@障害の程度を把握する。
A患部にアイスパックを当てる。
B弾力包帯でアイスパックをしっかり固定する。
C患部を心臓より高く持ち上げる。
D20分経てばアイスパックを取り去る。
Eパットと弾力包帯で固定する。
F障害の程度によって1時間か1時間半毎にアイスパックを適用する。これは患部が安定するまで続ける。
G寝るときは弾力包帯を取り去る。
H患部を心臓より高く持ち上げる。
I翌朝再度、I.C.E.R.の処置を始め、1日中同様に行う。
J障害の程度がひどければ、同じ手順を2〜3日繰り返す。

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第2回 温める、冷やすについて

『第1回 応急処置について』でアイシングについて述べました。 今回はもう少しアイシングについての説明とその反対の温めるという事について考えてみたいと思います。

治療においてアイシングをすると患者さんから『整形外科では温めなさいと言われました』とか『他の治療所ではホットパックで温めてました』等と今でも訝しいそうに云われることがあります。
今から20年ぐらい前はアイシングなどという観念も言葉も一般的で無く、指導しても患者さんからは余り受け入れられ無かったように思います。 確かプロ野球のロッテか近鉄のピッチャーがベンチで肩や肘を冷やした頃から一般にも アイシングが浸透してきたように記憶しています。
アイシングは怪我をした直後の急性期に冷やすのは勿論ですが、慢性期の変形性関節炎、腰痛、頚部痛などにも用います。

それでは、アイシングの二次的効果について考えてみましょう。 冷やした結果どうなるかという事です。

患部(関節など)を冷やすとそこの部分の血管は収縮して血流が悪くなり、温度が下がってきます。(一次的効果) 人間は哺乳類で恒温動物ですから体温は、ほぼ一定を保っています。
下がった体温を元に戻そうと収縮した血管は広がり、血流は増大してきます。 この血流の増大が患部の疲労物質や疼痛物質を除去し損傷部位を修復してくれます。
やがて、広がった血管も元の状態に戻るのですがその戻るまでの時間が、温めた時より長い事が実験の結果わかっています。 この二次的効果を狙ったのがアイシングです。

こうしてみると昔、銭湯で上がる時に、足に水をかけて出たのも理に適っています。
お風呂で温まって全身の血液循環が良くなり体温が上がると、今度は体温を平熱まで戻そうと急激な体温低下が始まり、所謂『湯冷め』の状態になってしまいます。
温まった身体に足に冷水をかけることで、抹消部の血管が収縮し二次的に広がる事で長い間温かい状態を維持できます。 銭湯から帰る間に湯冷めをしないようにという生活の知恵ですね。

では、温めるということはどうでしょうか。 温めることで患部の血流は良くなり、硬くなった筋肉は柔軟性を取り戻すので筋疲労や、関節硬縮などには特に効果があります。
また、リラクゼーション効果も期待できます。

このような説明をすると『そしたら、私の腰は、膝はどうしたらいいの?温めるの?冷やすの?』と聞かれますが、これがひとくくりには言えないのです。
つまり、その人によって、痛みの原因によって、患部の状態によって、また、その日の治療内容によって等様々な要因で変わってきます。

順に追って説明します。
例えば、温めることを最良と考えている老人の方にアイシングをしても悪化するだけです。このような老人性の慢性痛に関しては温めて気持ち良くした方が効果が上がります。 (勿論、急性炎症々状があるときは別ですが)
痛みの原因が長い間寒い外で居たとか、クーラーで体が冷えた時のような『冷え痛み』によるものは温めてあげないといけません。 (この場合の温めるというのは、冷え切った身体を体温まで戻すという事です。)
患部に腫れや、熱感、発赤等の炎症々状がある時やよく使って腫れが出そうな時などは冷やす必要があります。
ただ単に筋疲労から突っ張ってるような場合は温めてストレッチをすると効果がありますが、筋挫傷(筋、筋膜損傷。簡単に言うとスジ痛め)が疑われる時はアイシングをする必要があります。

また、関節の可動域を改善する時など温めて筋肉を柔らかくし、ストレッチや関節運動などをするのですが、その後にはアイシングをして運動による炎症を防ぐ事が必要になる事もあります。 ますます、『どうすんねん!』とのお叱りの言葉を頂きそうですが、やり方を間違えると逆効果になることがありますから要注意です。
軽い寝違えをお風呂でこってり温めた後、揉んでおまけにカイロを当てたら次の日に首が動かなくなった…。等はその典型的な例です。

実際の治療においては、温冷組み合わせて治療したりするのですが自宅などでは、患部を触って反対側と比べて熱があるようならアイシング。
なんかよく分からない様ならとりあえずアイシングをして経過を見て改善しないようなら何もしないで早く受診する、或いは電話などで相談してみてください。

実際のアイシング方法について
アイシングには様々な方法がありますが、家庭でできる簡単な方法を紹介しておきます。

1.アイスパックによるアイシング

ゲル状のパックを冷凍庫で3時間以上冷やしてからタオルなどに巻いて使用します。
簡易にできますが、繰り返しする時には不便です。 これは、電子レンジで簡単に温パックにもなりますから家庭で2個ぐらい常備しておくと便利です。 (価格:550円)
1回、約20分ぐらいを1〜2回繰り返してください。 捻挫などで症状がひどい時は3日ぐらい続けて下さい。
直接皮膚に当てないようにタオルなどを使用してください。

2.アイスキャップによるアイシング
専用のアイスキャップに氷を入れて患部に当てます。 これは漏れないようにキャップも工夫されていますし表面温度が適温になるように内面の材質にゴムが使われていますからお勧めです。 ひとつあれば、旅行などの時にも便利です。 (価格:2600円)
ゲルパックと同じようにしてもらったら良いのですが、もう少し長い時間当てて頂いても大丈夫です。

3.スプレーによるアイシング

よくテレビなどスポーツシーンで登場するスプレーですが、私自身はそんなに効果が無いと思います。
アイシングで効果を出すには短すぎるし、集中して局所に噴射すると皮膚を傷める可能性もあります。
ちなみに、アメリカで使われているものはもっとピンポイント的に噴射できてトリガーポイント(筋硬結)の解除には有効とされていますが、残念ながら航空法かなんかの関係でそのガスを使ったスプレーが日本には輸入できないそうです。

 

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