元気日記(613号:りょうまが流した別れの涙)3/30(土)23:30更新

 

 今日、りょうまの大きな目から、ポロポロと涙がこぼれました。

その涙は、いつもの不快な時に出る涙や、辛い時に出る涙とは明らかに違いました

その涙は、明らかに悲しい時や寂しい時に出る涙だと、りょうまの表情で悟りました。

 

私(父)はこの数ヶ月、ずっとりょうまに言い続けたことがあります。

「3月の終りになったら、りょうまとお父さんとじいちゃんとばあちゃんの、4人でまた暮らそうな。

お父さん、迎えに来るよ。もう少しだから、待っていてな。」

りょうまはその言葉がけをすると、ジーっと父を見つめニコッとしていました。

 

そして、ついにその言葉の日が来ました。

今日は、9年間お世話になった入所施設を退所するその日。その日になったのです。

施設に迎えに行った父は、りょうまに再び、話します。

「りょうま、本当に頑張ったね。今日から家で暮らすんだよ。

今日で施設Bさんはおしまいです。皆さんと“さようなら”です。」

 

すると、りょうまの目から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。

その涙は、父が今まで見てきたりょうまが流す涙と、明らかに違いました。

そうです。りょうまは、分かっていたのです。

別れに対する、悲しみや寂しさの感情

りょうまは、その感情をしっかりと持っていたのです。

そんなりょうまの涙を見ていたら、別れの会で父の方も我慢できなくなっちゃったよ。

りょうまが生まれてくるまでは、あまり感情が動く人ではなかったのに、

父さんもちょとだけ歳を取ったのかもね。

小学部4年生の9歳から、高等部3年生の18歳までの9年間。

本当に、本当に、よく頑張ったね。

お父さんは、キミが息子であるからだけではなく、

親子であるということを超えて、一人の人間として、

9年間という長い季節を、多感な時期に、親元から離れて頑張ったキミのことを、

褒めても、褒めても、褒め足りる事はありません。

 

こんなに頑張ったりょうま。

週末ごとに、一緒に過ごす時間をいくら重ねても、

平日は、父親が恋しい時もあったことでしょう。

時として、母親が恋しい時もあったことでしょう。

本当はキミのこと、ぎゅーっと思い切り抱きしめてあげたいです。

でも、18歳になったキミは、きっと拒否するよね。

本当は、嫌でなかったら、抱きしめさせて欲しい。

 

青年になったキミと、昔に戻って同じ時間をやり直すことはできないけれど、

これから新しいスタートを、一緒に切ろうね。

 

そして、父親である僕は、今まで9年という月日をお世話になった、

施設Bの職員さんをはじめ、医務、事務、給食、用務、ほか、

今までお世話になった皆様に、心から感謝の気持ちでいっぱいになのです。

9年前、行き場のなくなった四面楚歌の我々家族を救ってくれた施設Bさん。

本当に感謝しています。

世の中には、施設に対する偏見を持たれている方もいるのはわかっていますが、

もしあの時、どうすることもできず、在宅での生活しか選択肢がなかったら、

我々家族はどうなっていたことでしょう。

 

その場合、恐らく私は9年前に仕事を辞め、

無職の状態でりょうまとともに家族と暮らしていたかもしれません。

それはそれで、そういう人生もあったことでしょう。

でも、それが我々親子にとって真の幸せだったのか考えると、やはり疑問符が残るのです。

ノーマライゼーションの精神は素晴らしいことですし、

私自身も目指すべき社会だと思っています。

ただ、世の中には、諸事情で自宅にさえ暮らすことができない家族もいることを、

そうでない大多数の人たちにも、少しだけでいいのでわかっていただきたいと、

その渦中にいた我々親子は実感しています。

 

りょうまは一人っ子ですが、施設にはたくさんの兄弟がいました。

いつも週末ごと、りょうまを迎えにゆくたびに、りょうまの父親の僕を笑顔で迎えてくれる子どもたち。

そのりょうまの兄弟たちが、りょうまと同じくらい可愛くてしょうがなかったです。

りょうまに代わって、今までありがとう。

ほんとうにありがとう。

 

お別れの会の最後に、玄関まで出て来て頂いたお一人お一人と、握手をしてお別れしたりょうま。

りょうまの口から「さようなら、さようなら」の言葉。

やや早口ながらも、確実に発せられているのを聞き逃しませんでした。

その姿に、りょうまの9年間の成長と感謝の気持ちが込められていたような気がしました。

たくさんの温かい心に支えられながら、過ごしてきた9年という年月。

りょうまは、そして父親である私も、決して忘れることはないでしょう。

そして退所を迎えた今、このことを胸に、新たな幸せに向けて歩んでゆきます。

 

9年間の施設生活でりょうまに直接的・間接的に関わっていただいた皆さん、

本当に、本当に、ありがとうございました!

 

そして、我が家に戻ってきたりょうまに、あらためて言いたいです。

 

「りょうま、おかえり!」

よく頑張ったね。

これからは、一緒だよ。。。

 

 

 

 

                                       

   明日の3月31日夜。再び元気日記を更新します。

そこで皆様に、重要なことをお知らせいたします。