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『女子大生会計士の事件簿』 萌さんとカッキーの読書室
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  ◆◆ 目次 1.ベストセラー読書室
  ◆◆     2.最新ビジネス書の読書室
  ◆◆     3.『読書室』掲載情報
  ◆◆     4.編集後記

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◆◆◆ベストセラー読書室◆◆◆

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 第7回   『私がベアリングズ銀行をつぶした』
         ニック・リーソン(著)
         (新潮社) 1997年1月
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カッキー
「どうして今さらこんなに古い本を紹介するのかというと、 萌さんが随分と昔に友達から借りていた本を 最近掃除をしていて偶然見つけたからです」

萌さん
「しーっ。それは内緒なんだってば!」

「だって事実じゃないですか」

「もう、つまんないこと言ってないで、とっとと本の紹介に入ってよ!」

「はいはい。えーっと、この話は1995年に倒産したイギリスの名門、ベアリングズ銀行の銀行員による手記です」

「この銀行員、ニック・リーソンひとりせいでベアリングズ銀行は倒産したと当時はだいぶ騒がれたわねー」

「株のトレーダーであるニック・リーソンは、デリバティブ取引に失敗して1300億円という多額の損失を出してしまい、 そのせいで銀行が倒産してしまったんですよね」

「でもニック・リーソンは『デリバティブ取引に失敗した俺だけが悪いんじゃない。 悪い連中は他にもいっぱいいるんだ!』 と思っているのよねー。その思いを世間に訴えるために獄中から出版したというのが、 この本の誕生の経緯って感じかしら」

「この本を読んでいると、たしかに悪いのはニック・リーソンだけじゃないですよね。 ヘマばかりする部下、ボーナスしか頭に無い同僚、 サッカーの賭けにしか興味の無い上司、テニスで遊んでばかりの監査人‥‥」

「そもそも最初の不正は、 忙しさの余りに失敗してしまった部下の損失を隠すため、 仲間をかばうために起きた、と主張しているわね」

「ミスをしたときに使う勘定“エラー・アカウント88888”に損失を押し込んだんですよね」

「“エラー・アカウント”は、本来ならば会計上 利益から差し引かなければならなかったんでしょう」

「帳簿上あれこれ工夫して、ずっと損失を表面化させない、 つまり“不良資産”にしてしまったんですよね」

「みんなが、資産が載っているバランス・シート(貸借対照表)よりも、 損益計算書の方に興味を持っていたのが、 バレなかった要因の一つみたいね」

「この銀行みたいに、利益の結果で自分の給与やボーナスが 大きく左右される会社の場合、どうしても利益が載る損益計算書に興味が行ってしまいますもんね」

「あと、監査で
『株式の運用と事務を同一人物がすべきでない』 と指摘しているにも関わらず、 『でも現状は人が少ないから仕方がない』
という能天気な結論を出しているあたりも致命的よねー」

「『営業と事務は絶対別人でないといけない』 というのは不正防止の代表格みたいなものですからね」

「ただ、これがきちんと守られずにいい加減になってしまっている会社が いまだにけっこう存在していることも事実なのよねぇ」

「それでは、萌さん。採点の方をお願いします」

「うーん。星3つかな。十年近く前の出来事だけど、 今でもじゅうぶんあり得る話なのよねぇ。 『人が足りないので任せきりです』 『非常に難しい仕事なので、彼しかできません』 とかいって、牽制機能がない業務がけっこうあったりするのよ。 だいたい不正が起きるのは、そういう現場だもんね」

「チェックする人がいないから、誘惑に負けてしまって‥‥という人も多いですからねぇ」

「例えば“提出しなくていい宿題”とかね。 “本読み10回”とかいう国語の宿題なんて一度もまともにしたことなんかなかったわ」

「そんなこと堂々と言わないでください」

「それで、カッキー。あんたの採点は?」

「星4つです。やっぱり監査って大事だなと思いました。 明日からも仕事を頑張ります」

「単に監査をやっていても、いい加減な仕事じゃダメなのよ。 それにもっと大事なのは、不正が起きないような体制を作っておくこと。従業員に不正をさせない環境を作ることも、会社の大事な役目だからね」

『私がベアリングズ銀行をつぶした』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105346016/

〔採点〕
カッキー ★★★★
萌さん  ★★★
   計 ★7つ


◆◆◆最新ビジネス書の読書室◆◆◆

『あなたの会社にお金が残る 裏帳簿のススメ』
岡本吏郎(著) アスコム
2004年7月

カッキー
「以前メルマガでも紹介した『会社にお金が残らない本当の理由』 の著者による最新作です。 それにしても、さっきから萌さんはお怒り気味ですがどうしたんですか?」

萌さん
「あのねぇ〜。前回は褒めたけど、今回のアノ広告は何なの!“税理士、会計士の常識は大間違い!”って。本の内容は“中小企業も税務署に申告するための決算書だけでなく、大企業が作っているような正確な決算書(=裏帳簿)も用意しましょう”ってことじゃない。だったら、会計士にとっては著者が“裏帳簿”と呼んでいるモノの方が常識なのよ。 それを“会計士の常識は大間違い!”だなんて。プンプン!」

「まあまあ、落ち着いてください。同じく以前メルマガで紹介した 『稲盛和夫の実学 経営と会計』でも出てきましたが、 国に決められた画一的な税務会計ではなく、実情に合わせた会計で決算書を作ろうとしている大企業は多いですからね」

「まあ、タイトルは大げさだけど書かれてある内容は間違ってはいないから、 中小企業の正しい会計に興味がある人は読んでみたらいいんじゃない」

「タイトルが大げさなのは、『世界一やさしい〜』とか 『世界一感動する〜』とかを出版する僕らも似たようなものだと思うんですけど‥‥」

『あなたの会社にお金が残る 裏帳簿のススメ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776201720/


◆◆◆『読書室』掲載情報◆◆◆

カッキー
「この『萌さんとカッキーの読書室』、 雑誌での掲載が8月よりスタートしました!」

萌さん
「現在発売中の『会計人コース9月号』より連載が開始されているわよ」

「こちらのメルマガとはちょっと違ってより会計的な書籍を取り上げています」

「こことはまた違った雰囲気だから、よかったら見てみてねー!」

『会計人コース』を発行している中央経済社のホームページ
http://www.chuokeizai.co.jp/


■■■編集後記■■■

自分がこの秋に出版する本の準備の方も だんだんと佳境に入ってきまして、最終チェックやカバーの選定、 営業活動の準備、といったことをしております。
また、最後の最後で内容の差し替えとかもやってしまうので(悪い癖ですが)、 私の周りの人たちも大変です。
さて、次回(9月5日)に紹介するベストセラー読書室はまだ未定です。ごめんなさい! 面白い本を紹介しようとは思っています。 では、また来月!


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