佐藤の主張・佐藤の技術・・・その1 『年頭の辞とリーダーシップ』





本題の前に、


新しく「佐藤の技術・主張」のコーナーを設けました。エッセイも佐藤の主張でありますが、このコーナーは佐藤の持つ技術や、企業を取り巻く環境から社会情勢まで、Value Engineerとしてまたコンサルタントとしての主張を述べてゆきます。エッセイは少しお休みをいただいたが再開した。エッセイもこのコーナーも毎月更新するお約束をせず、思いつくまま、そして少し大胆に書き綴って行きたいと思います。特にこのコーナーではマネージメントや技術に力点を置いて主張してゆきたいと思います。そして、読者の方々のご意見をいただき、匿名でご照会しながら、私の意見をそこに加えていくこんなコラムにしてゆきたいと思います。

今回はマネージメントの考えを述べてみます。

では、本題に           08年1月




 新年を迎えました。皆様の会社も恒例の年頭の辞が社員に向けられて述べられたかと思う。時に社長が直々に、時にITを駆使して全社一斉に、そして時に事業部長やカンパニー社長が社長の訓示を代読し併せてご自分の所信を述べたり、社内報で伝えたりいろいろな形で社員に伝えられたと思う。


 毎年のこのセレモニー、社員も大半が聞き流してしまうことが多いようだが、これは社員も悪いが話す方がもっと悪い。形骸化して聞いてもしょうがない話が多いからだ。


 昨年のある会社の年頭の辞を書面で見て驚いたのは、前年の年頭の辞で述べた方針がいずれも昨年は未達であったと話された。今年は新たに・・と別の目標を掲げられたのである。これは何を意味するかというと、「年頭の辞に掲げた目標は未達でも良い。単なる方向付けだ。毎年気分一新して出来るだけ頑張ろうや」と言っているに過ぎない。


 私はサラリーマン時代、実はあまり厳しく叱られた記憶が無いのだが(度々叱られてはいたが)、こっぴどく叱られた思い出がある。やはり正月だった。当時の社長と飲みに行き「3年同じ話をされたがネタが無いのか」と訊ねた。そしたら烈火のごとく怒られた。そして彼曰く、「俺は最も大事なことを年頭の辞で話をしている。それをお前達が全うしないから同じ話を去年も今年もした。どうでも良い話ではないのだ」いっぺんにアルコールが飛んでいった思い出がある。リーダーと云うのはこのくらいの重みを持った発言とフォローがいるのだ。リーダーの掲げた目標や指示は、年頭の辞だけでなく、常に一貫して管理され、その中から正常・異常が管理されなければならないし、異常が見えたら必ず対処しないと、スローガンや目標は狼少年になる。


 ある(大変な赤字の)会社でその事業の責任ではNo.2の方が、「私はこのビジネスはチャラなら御の字だ」と発言した。私はびっくりした。社長は各ビジネス6%を最低の営業利益目標と掲げているのに、その準責任者はチャラという。私はコンサルタントとして当然6%以上を目指そうとしていたが、当事者がこれでは社員のモチベーションは6%に向くはずが無い。当然コンサルの私の方を向くはずも無い。どんなに綺麗なことを言っても、水が上から下に流れるように人間は甘い方に、甘い方に流されていく。此処の会社では社長や幹部が言い放しで、管理していない事がありありと見えてきた。


 コンサルタントを(独立して)10年やってきた。サラリーマン時代にも実質20年ほどこのような仕事をしてきたが、成長する会社、しない会社には共通性がある。成功する会社は目標が明確で、どこの誰でも金太郎飴のように同じことを言う。そして愚直に挑み続ける。極めるまでやる。年が変わろうが人が変わろうが継続する。ダメな会社は人が変わると中身(方針)が変わり、同じリーダーでも前述のように未達に目を瞑る。


2005年、VE全国大会が名古屋で開催された。東京を離れるのは初めてのことで、トヨタ自動車のお膝元での開催であった。2日間の大会中、記念講演や受賞報告、技術講演でトヨタやその系列企業の幹部4人がお話をされた。4人とも同じ話をする。豊田佐吉に始まり豊田自動織機に源を持つトヨタ生産方式について述べる。ここまではなんと4人が同じ話、映像まで同じ、いささか飽きて何とかしてくれと言いたいほど金太郎飴だった。


ある会社の社内報に、社長、本部長、工場長とそれぞれが顔写真入りで年頭の挨拶が載っている。中身が全く一貫していない。事務方がそれぞれ寄稿依頼をし、原稿の依頼も締め切りも同時。思想や方針が徹底していないからそれぞれ勝手な初夢を描く。結果バラバラ。これは明らかに事務方が悪い。一貫していなければ指摘をすればよいが、恐れ多くて言えないのだ。(言えない雰囲気にしているのは幹部の悪さ)社内報を読んだ社員はどっちを見たらよいのか・・・。人偏に夢と書くと儚(はかない)と読む。


世界一を誇るトヨタの今の姿がよく理解できる事象であった。


 もう一つリーダーシップについて述べておこう。目標を掲げた。

此処までは結構だが、問題はフォローだ。未達で容認するなどは論外の話。社内報の例(前述)もフォローが無いから幹部は自分達がバラバラであることに気付かない(そもそも社内報は自分の写真が良く映っているかどうかしか見ず、他の人の本文など見ていない)。コンセンサスも取り直さない。拡大解釈をして「まあ良かろう」と相成っているのだろう。


 目標管理のフォローアップ。成功している会社とそうでない会社の違いを、顕著に感じる事がある。後者は報告を自分の机、もしくは報告会で聞く。大体発表者が都合の言い事を言っているのを見抜けない。報告を聞いた限り責任が自分に移ったと認識していないから、その後結果が悪化した場合は部下(報告者)のせいにする。


成功する会社は現場で聞く、現物で確認する。実際に行っている人から聞く。それを定期的もしくはマイルストンのピリオドで。問題点や事実を掴めるし、対策やアイデアも出る。コミュニケーションも良くなる。そして遂行するメンバーのモチベーションも上がる。私の指導している企業でも、リーダーが指導会に出て、実務者と議論したり、現場で議論している企業は成功している。


特別目新しい管理手法ではない。三現主義が唱えられて何十年経つだろう。これを怠る製造業がものすごく増えた。管理者の階層も増えて、正副がいたり、下っ端の管理者までが偉くなりすぎてパソコンしか見ない。そうこうしている内に日本はGDPで世界で18位の国に落ちた。私のいた時のいすゞの社長は、大型(総重量25t)の新型車の紹介で、お客様を乗せて150Km/hのスピードであのバンクを走って見せていた。


さあ、リーダーは現場に立とうではないか、率先して自分の掲げた目標を管理し、達成すべく行動を興そうではないか。


これを私の年頭の辞にしよう。



                 (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE