2006年 VE全国大会ニュース
VE全国大会が開かれました。
「第39回VE全国大会特集」
第39回全国大会は11月7日(火)・8日(水)の2日間、東京市谷の「アルカディア市谷」で約1000人の参加者の下に開催された。海外からも米国、独、中国、台湾などからの出席があり、例年のごとく国際色も豊かに開かれた。
講演:5件、論文・事例発表:国内15例、海外5例、
トークセッション1件、VE何でも相談1件,他、懇親パーティ
今回は特集として主な発表やイベント、そして参加された方々からのご意見などを特集しておきたい。
1・開会挨拶・基調講演
本年6月に就任された小野茂夫会長が開会の挨拶、ならびに基調講演をされた。
ニコンの社長、会長を経験された経営者らしく、企業成長の秘訣と幹部の姿勢を経験的にお話された。拝聴したM社のUさんから、上に立つ者の禁句(小野会長は実践されている模様)として紹介された、・考えておこう、・理屈はそうだが、実行はどうかね、・それでは変化が大きすぎる、・やったことがない、・他にやることは沢山ある、・我々の仕事ではない、・時期尚早、・そんなことはしなくても済む・・etc.耳の痛いお話を伺ったとご意見が合った。
佐藤はこの6月のSAVE大会でご一緒させていただき、数多くの示唆に富んだアドバイスをいただいた。初日午前は止む無き通院で拝聴できなかったが、訪米時の経験からUさんのレポートで何かじかにお聞きしたような錯覚に陥った。
2.マイルズ賞報告:国土交通省関東地方整備局
はっきり言ってマイルズ賞も民間と官公庁とで基準を分けてきたようだ。役所の慣行からすれば大胆に取り組んだということであろうが民間はこの100倍も苦労している。レベルが違った(甘かった)感がある。
3.VE活動優秀賞報告:小森コーポレーション
印刷機の世界的シェアを持つ同社のVE活動。組織的展開と利益に連動しているVE改善効果額。VELなどの有資格者育成の状況が報告された。きっちり行っている印象。
4.特別講演−1:「町工場こそ日本の宝〜中国に勝つ!秘訣は現場にあり」
政策研究大学 橋本久義教授のお話。楽しかった。
中国は巨大なブラックホール。今はそこへドンドン吸い込まれて一人勝ちのように思えるが、必ずしも・・。欧米の社長にとっての会社は
→金を生み出す鶏=産まなければ潰すか売る。
日本の社長にとっての会社は
→手塩に掛けたわが子=立ち直るまで徹底的に金も手間も掛けてあきらめない。
このあきらめの悪さが日本の中小企業を救った。欧米で対応できない、そして中国でもできないものがある。今そこの『中国で賄えない需要』を日本はしっかりいただこうではないか。(現にいただき始めている)
日本の生産は減ってはいない、世界中の「複雑」「高級」「精密」の面倒な需要が日本に殺到している。
安い中国製が日本を救った:面白い論法だった。手動の機械を使っていた高額のNC機械など変えない日本の中小企業、漸く安い中国製を手に入れ喜んで使ったがすぐ壊れた。もう手動に戻れない、そこで高いが耐久性のある日本のNC機械を買い、競争力を身につけた、と話された、面白い。
結びは「日本のモノ作りは生き延びられる」
1. モノづくりは人間がやるのだ!
モノづくりは持久戦なのだ!
品質はローテク技術で決まる。
生き残りの戦いは永遠に続く。と締めくくられた。生き延びられる言葉に安心してはならない。その背景に成すべきことを肝に銘じたい。
4.特別講演−2:「会社はムダの塊だった」
神鋼電機社長の佐伯弘文さんのご講演。このタイトルで単行本が出版されているが、佐藤も既に精読し、ある会社の幹部に差し上げた。大変興味深く呼んだ。講演では生の声でそれ以上の迫力を感じた。お話の中に出てきたキーワードを書き出しておく。読者には是非同氏の著書をお読みいただきたい。(幻冬社)
・ 不振企業、不況事業の原因は全て内部にある(決して外部ではない)
・ やるべきことをやらずして、やってはならないことを山ほどやっている。
・ 能力主義を明確に示すのは人事。昇進、昇格に学歴、年齢、性別は無縁。何事も信賞必罰。
・ 改革とは前任者否定なり、それを恐れてはならない。
・ 成功した経営者は、往々にして冷や飯を食った人がなる。(逆にぬくぬく育った経営者に厳しさがない)
・ ムダの定義と、ムダ作業の徹底的洗い出し。
・ 上司の指示で「やらされている」感覚から「自らが自らのためにやる」意識改革
・ 原点は「お前さん、自分の金ならそんな使い方をしますか?」
・ ムダ撲滅は永遠のテーマ。未来永遠に続ける。
5.H社Tさんからの報告(2日目午前の発表から)
海外発表1 モジュール設計のバリュー・マネジメント 中国 N.ワン氏
論文発表 油圧ショベルの価格分析に基づく顧客価値評価方法の検討 日立建機 高橋氏
事例発表 樹脂製ドア・モジュールの開発 ジーピーダイキョー 宮地氏
海外発表、事例発表はモジュール設計に関しての内容で、興味深かった。昨年の関西支部大会でもマツダがモジュール設計について講演したが、改めて各社がモジュール設計の手法で開発のしくみを改善していることが判った。我々もモジュラーデザインを指導して頂いているが、もっとこの有効性について開発陣が認識する必要があると感じた。
日立建機殿の発表は顧客価値評価方法のアプローチを理論的に導く内容であった。質問にもあったが、売価の低下やモデルサイクルの考え方が実際には実施されているようであるが、発表には振れておらず、もう少し聞きたいところであった。しかし、顧客価値の評価方法については非常に興味深いものであった。
6.講演のオンリーワン企業の感動技術「日本発、精密技術が日本を変える」
(同じくTさんの報告)入曽精密の講演は大変面白かった。職人の技とITを融合させ15人の会社でも、特徴をもった、他社に真似の出来ない技術を確立していることには、驚かされる。削りだしのバラや世界最小0.3ミリのサイコロは実物展示を見るとさらに驚かされた。団塊の世代の退職、現場の固有技術の伝承、ITの活用などなど当社も抱える問題を上手く解決し、しかも一般的な加工機で実現させている。
まさに匠の技と工夫の賜であろう。
7.【VEなんでも相談でのグループ討議】(M社Iさん=女性)の報告
特に下記 2点が関心事でありました。
1) VEは、やはりゼネコン関係の会社で多く普及しており,技術系スタッフをターゲットにまず、導入していくというのが普通でK建設でも、技術者中心に支援・教育・普及させてきた。
しかし、ある時、営業が客先説明に行き逆に客先から、「これについて、VEで検討し
た後、改良案を持って来てくれ」と言われた。営業が、社に帰って来て「VEとは、何
のことですかねぇ?」と聞いたと言う例があり、それから、技術系に限らず、営業・事
務系 職種全てを推進対象にした。VEの世の中への、浸透・普及率に驚いた。
2) 客先説明・打ち合わせの過程で、コスト・仕様等で、客先と意見の相違が出た時客先
に説得・納得させる為に、VEの基本理念・原則による「機能」中心で話をする。
「お客様の必要な「機能」は、こうですよね。だったら、この仕様でいきましょう。」
普通に会社の仕様や、コスト見積を推すと、客先も自分の意見をたやすく曲げないが、
切り口を変え、機能本位の説明にすると、客先も妥協でなく、納得して、受容したとい
う意識になり、受け入れやすくなる。 営業にもVEツールが非常に役立つ。
8.記念講演「なぜ会社は変われないのか〜危機突破の企業風土改革〜」
(株)スコラの柴田昌治先生の講演:柴田先生の発信したキーワードから・・。
* 人間は考える動物。考えないと進化が止まる。
* 儲ける仕組みが安定していた時代⇒儲ける仕組みを模索する時代
* システムを導入するだけでは、失敗する。(郵便局にトヨタ方式を入れたが見事に失敗!)
⇒組織風土がそれを受け入れられる体質か?
* 大企業病の兆候・症状
・ 「どうせ言ってもムダ」と諦めている人が組織の大勢を占めている。
・ 社長がこうしたい、と思うがなかなか浸透していかない。実行されない
・ 経営陣の間に議論が少なく、気持ちも一つになっていない。
・ 上司の言葉は全て「指示」と受け止めて、作業レベルのことが形式的に実行されるだけのことが多い。
・ 指示された課題について、「何故」「何のために」「どんな意味があるのか」などを問い直すことはしない。
・ 入社したとき元気だった新入社員が、しばらくすると組織の中の生き方を身に付け、小利口になっていく。総じて元気が無くなる。
* 進化しやすい組織
・ 協力し合うことをとにかく優先する。
・ 言うべきことは言おう、誰かが必ず拾ってくれる。
・ 方向が見えたらまずやってみる。
・ 上に頼るのではなく自分で考え判断してみよう。
* 問題は「ある」ことが問題なのではなく、「解決されていないこと」が問題
* 人は易きに流れる。:言われたことをタダやる方が楽。楽なほうに流れていくのが人間。楽をしていると考えない。
考えないと育たない。
* どういうときに人間は育ち、働きがいを感じるか
・ 「人」というのは、《困難にぶつかったとき》
・ 《何かに強く関心を持ったとき》
・ また《可能性を感じることができるとき》に育ちうるし、働きがいも感じうる。
* 考え方や価値観を共有するために「対話」の機会を増やす・・・オフサイトミーティングは「まじめな雑談」の場。まじめな話を気楽にする。
* プロフェッショナルなチームワークを作れ。そのための3つの条件は
・ 目指すものを明確に持つ
・ 厳しく向き合う(仲の良い喧嘩)
・ 当事者になる。
* 「変革の当事者になる」と言うこと。⇒上の人間が「変われ」と言っている間は変化は起きない。下のものも「上が問題」と言っている間は何も変わらない。
いすゞ時代に先生の薫陶を受けてから15年、相変わらずの柴田節に感動しました。残念だったのは時間が短かった。いすゞ時代に受けたいくつもの教えは今も佐藤の血になっているし、主張としても現れている。改めて確認できた。