佐藤の主張・佐藤の技術・・・その3 『マネージャーはファーストクラスで』

 08年3月

最近マネージャークラスの資質が落ちてきている気がする。今お読みのあなたに該当することがなければ、他人のことと思い聞き流して頂いて結構、少しでも該当することがあれば、そう、すぐにも改造に取り掛かられたら良い。でもお断りしておきますが、もっとマネージャーを優遇せよとの本文ではありますが、マネージャーたちに奢り昂っていただく話ではない。もっと出力を上げよとの話であります。

では、本文に。

私がいすゞ自動車に入った昭和30年代の後半、いすゞの部長は黒塗りで送り迎えを受けていた。世間知らずの新入社員は世間とはこんなもんだと思い込んでいた。その後いすゞは経営的に失政が多く、収益は悪化し財産は減少、いつの間にか自分が部長になった28年後には専務以上しか車はついてなかった。もちろん世間の風潮もしかりであった。

当時考え方が2通りあって、一人のマネージャーに車や運転手をつける…こんなに金を使わなければマネージャーは仕事ができないのか、通常のサラリーマンは満員電車にもまれて会社ではこき使われて、それでも成果を出せと言われているのに、経営者はどれほどの成果を出しているか・・・この考えと、

経営者は昨日までのサラリーマンではない、あなたはステータタスを得ている。これを自覚させて良い、責任ある仕事をしてもらおう・・こんな考えもある。今日の話は後者。それも経営者だけでなく、幹部社員に伝えたいマネージャーのステータス。

中間管理職という定義は曖昧だが、今回の対象は上場企業の部長級から上、すなわち上級管理職を前提に話をしてみる。

これらの人達は、この人の指導力で人の育成も業績も大きく変わってくる。前任者と同じことをしているようでは前任者と同じ成長しか望めないわけで、何もあなたを後任のマネージャーにする必要はなかった。あえて後任にあなたを選んだのは、あなたに前任者以上の業績を残してほしいからだ。これが経営トップの任命の背景であることは間違いない。

さてあなたは今までの部長になる前と、就任してからとでは何が意識で変わっているだろうか。ただ偉くなったと浮き浮きしていてもらっては困る。目標の立て方や管理の厳しさ、社員への教育の仕方やポイントも従来とは異なっていて当然。部長を拝命したから全知全能を認められたなどとは間違っても思ってはいけない。未知の世界や知識は山ほどあることを認識して恥ずかしくない知識を得なければ(学ばなければ)ならない。人(前任者)ができなかったこと、やらなかったことに挑戦して、新しい道を作る、若しくは従来の道を広くしていくことが任務である。

さて、その勇気や挑戦欲をもたらすためには、従来と生活環境を変えていくことが必要である。私のエッセイに「意識改革は行動改革」という表題のものがある。(エッセイのコーナー:第12話)その意識改革のために、部長以上の待遇をガラッと変えてみたら面白いとの発想。その昔のように、黒塗りで送り迎えをしろと言うほどは要求はしないが、せめて役員はそうありたい。部長にも月に何枚かタクシー券などを付与して、適宜使える待遇をしたら部長の意識は変わるであろう。新幹線は毎日出張するわけではないのでグリーン車に乗れる基準、飛行機の国内線なら当然スーパーシート。国際線はビジネスクラスは最低限…会社の経営状態にもよるが願わくばファーストクラス。となると、自分が何をしなければならないか、その「何を」で部下や組織の出力が変わるのだ。

あるコンサルティングファームにかつての私の部下が転職をした。月に何度も海外出張をするが常にファーストクラス。そこの社長曰く、「世界一の仕事をするためには世界一のクラスの待遇がいる」と思いきった割り切り。毎日海外出張しているわけではないが出費も確かに上がるがたいしたことはなかろう。出力向上の方が大きいのではないか。むしろ、そんなステータスに自分も早く上がりたいと切磋琢磨する、出力を上げる社員が増えることの方が大きな効果だ。

会社の費用で、と期待できなければ自分を変えるために、少なくも新幹線のグリーンや国内線のスーパーシートくらい自分で乗ってごらんなさい。それだけでも良い仕事ができるようになる。行動改革だ。その業績が認められれば収入も増えてくる。この話は贅沢にしろと言っているのではない。こうして自分の自覚を高めることが重要なのだ。会社ができなければ自分でと書いた。お金は使えば入ってくる事例かもしれません。まずはおやりになってみてはいかがでしょう。

                   (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE