佐藤の主張・佐藤の技術・・・その5 『ビジネスプランと原価企画』

                                                                     08年5月

1.まえがき

 今回からは、製造業が必ず行わなければならない商品販売の最も上流のアクションと管理について述べてみることにする。長文になりそうなので何回に分かれるか不詳だが、多くの企業の指導の過程から、怠られている点に重点を置いて述べてみる。

工業大国がいつの間にか追う立場に置かれ、それも置いて行かれつつある日本の製造業。その要因は、マネージメントと技術の二面に起因しているのではなかろうか。それも先月のこのホームページのエッセイでお話し申し上げた「昼寝のコオロギ」のように、危機に直面しても何とかなるさで、甘く見ているうちに後進国に追いつかれ、追い越されてしまっている点にある。

 大きな二面のうち、技術の面では創造性の欠落と技術の伝承を怠っている点であろうと思っているが、この点についてはいずれ触れることにして、今回はマネージメントについて考えてみよう。

 今、世界のどこかに有っても、日本にはない技術…得意か否かは別にして、物まねかどうかも別にして、ない技術はないのではないか。最先端ではなくても技術要素は分かっていて…そう、飛行機だって作れるしロケットだって飛ばせられるのである。

 欠けているのは「戦略」と言うマネージメントではないか。この戦略、難しく考えると深みにはまるが、それほど深く考えずに、「そのビジネスを成功させるためのプラン」と考えてみてはいかがか。すなわち『ビジネスプラン』である。


2.ビジネスプランの必要性

 まず企業は儲からなければいけない。そして成長しなければならない。この二点は必須である。この二点を支えるために、どのような項目を網羅したら「ビジネスプラン」になるのだろうか。

@ 「何」を商いするのか

A その「何」が商いをする市場の現状どうか、Competitorは、将来はどのような状況が予測されるのか=「市場分析」

B その商いの「期間はいつまで」で、その間に「いくら売り上げ」、「いくらの利益をもたらす」のか。

C そのために「いくらの原価」と「いくらの投資で」で「販売量」はどれだけで売るのか。

D その「何」を商いの材料にするためにどんな「技術」を開発するのか、重点にするのか。

E その技術を使ってどんな「商品」にするのか=「商品構想」と、どのように作るのか「製造技術」が必要。

F それをどこでどのように作るのか、「生産構想」が必要。

Gそれを誰がどこでどれだけ売るのですか=「販売構想」

 これらの構想ができ、具体的な行動を管理するのが『原価企画』である。当たり前のことを書いているが実は多くの企業でこれらがキッチリ実行されていないことが多いのです。(あなたの企業にしっかりしたものは存在していますか)

高度成長、バブルの時代にあった、「思いつき開発」「誰かが売れる(欲しい)と言った」開発や商品企画、「利益補完型ビジネス」で個別の赤字を他の黒字で補填するマネージメントは遠の昔に終っていることに気づいていない企業が多いのです。今や一つの新商品が企業の存亡を決め兼ねない重要性を増した時代になった、したがって一商品の投入の都度このようなきちっとしたビジネスプランが必要で、新商品を市場に出した後、このプランと照合して成功部分と、企画から外れた部分の要因分析をして、同じ轍を踏まないアクションが、企業体質を強化していくものである。


2.書き方の要領

  この手の企画書の大事なことは関係者が共有しやすいことである。したがって極力ビジュアルに、具体的に、そして目標管理に移行できるような表現にする事=すなわち定量化することがポイント。とかく日本人は“玉虫色”に纏め上げたがるが、より具体的に表現する事が重要であり、その数値はコミットされるものである。

 先々のことは不詳であろうが、それでも、時に夢を語っても良いから企画する。ないよりあることの方が大事。見えてきた時点で修正して行けば良い。

 このようにして内容が充実できれば、いよいよ具体的な行動に移ることになる。


3.(こうしてできた)ビジネスプランの性格

 @ ビジネスプランは商品別経営計画である

  そうですよね、その商品で商いをどのようにするのか決める

     わけですから・・・。

 A ビジネスプランは商品別中期・長期企画書である

  そうですよね、戦う商品と期限が見えるわけですから・・・

    期限の後はどうなるのか概ね(次のビジネスプラン立案までは)

    触れておくことで、その商品のMCC(Model Cycle Chart)

     になるのです。

 B ビジネスプランは管理目標値である

  そうですよね、この計画書にはコミットされる数値が満載です。当然管理しなければならない数字になります。

 C ビジネスプランは技術戦略計画書である

  そうですよね、商品構想や生産構想の中には、

    当然新しい構造や材料、そして新しい作り方が盛り込まれてきます。逆に、

    これらが盛り込まれない構想は、従来の商品のモデファイに過ぎない。

    新しい構想の中に時代の先取りが織り込まれるのです。

    このようにしてその商品が如何に企業に寄与するか、それはどのようにしたら出来るかを明らかにしてゆくのです。

    いかがですか、皆さんの商品はこのようにして企画されているか。いなければ今からでもすぐに取りかかってください。

  次回は、ビジネスプランに基づく「原価企画」に入ろう。

   ご意見、お問い合わせは、vpm_y-sato@cam.hi-ho.ne.jp へ


                   (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE