佐藤の主張・佐藤の技術・・・その6 『滅びゆくのかアメリカ・・日本は』


            08年7月


  先月はこのブログはお休みさせていただき、今月こそ原価企画をとご期待いただいた方も少なからずおありかと思いますが、アメリカに2週間ほど行き、ショックを禁じ得なかった問題点について、目新しいうちに皆様にお伝えしたく、またまた原価企画は先送りさせていただくことにする。

 今年に始まった現象ではないが、どうも軌道修正はなされず、先々アメリカはどこへ行くのか不安を感じた現象からタイトルを検証していってみたい。


1.モノづくり


 今回の訪米の目的のひとつに、ある会社の技術(Tear Down)指導があった。その会社は従業員35000人を要する大きな会社でたくさんのDivision を持っている。私が勤めていた自動車会社が冷凍バンに使用するエンジンをある会社に販売していたが、この会社はその事業を丸まる買収してしまったり、逆に最近はコンプレッサー(世界でも有数のシェアーを持つ)事業を簡単に韓国の新興財閥に売り飛ばしてしまった。

 今回訪問して指導した事業部はコロラドにあって、ドアーロックなどのハンドルや、キーロックシステムを作っている。もともとこのコロラドで作っていたが、大半をメキシコへ移した。労務費がメキシコは安いからだ。

 ここに問題がひとつ。労務費が高い=労務費は賃率と時間の積…賃率が高ければ時間を詰めれば良い。現場に行ったが、みんな座り作業で物流は人手(フォークリフト)動作も緩慢、製品のModule化や共通化が遅れているので、ほとんど手作業だ。この努力を怠り、安い労務費のメキシコへと移った。だだ広い工場は全館冷房、大半は移転に伴う空き地。でもしっかり照明や冷暖房は完備され、警備員がいて監視をしている。何も工夫がないままジリ貧の工場でいつまで持つのか・・。

 この手の例は最近のアメリカ企業では当たり前のケース。「KAIZEN」などの看板はそこかしこ、「JIT」も目に付く、しかし行動は興っていない。製造業は付加価値が勝負なのに、投げ出して、最終的には売り上げやマージン(もう商社に近い)で事業の評価をしていく。ものつくりからの脱却が始まっている。

 メキシコで作っていたものの多くが最近中国へ移ったそうだ。中国製。こうして中国にキーロックシステムのノウハウを全部上げてしまい、今は商社機能、知的財産権でビジネスしていても、時間の問題だ。中国からの値上げや供給不安定が出てくると、きっと世界中の安い国を探してそこに移転するか、ビジネスとして売れる状態のうちに丸投げ(売り飛ばす)してしまうのだろう。瞬間的には事業の売却益は出るがその時点で終わり。継続性はない。時の経営者は利益を出して株主に顔向けができて沢山の退職金を貰って辞める。経営者はよいが従業員は、国の産業はどうなっていくのか。

 実は日本も「海外調達」と称して海外からの買い物が増えていっているが、近年、特に中国産の値上げがひどく、また納期もめちゃくちゃで頼りにならなくなってしまっている.国内回帰を目論むと、

*従来の取引先からは浮気の代償、三行半を貰う。(作ってもらえない)

*もしくは仕事がきられた時点で設備を放棄してもう同じものができない。

*もしくは(もうひとつある)作れる人がいなくなっている(技術の伝承が途切れる)

こうして、モノ作り日本が途切れるのだ。まだ気づかない経営者が多いのに驚く。将来を見据えずに目先の利益を追う経営者の姿だ。

この問題の原点は「内製」だ。モノ作りは社内でできなければ作る資格がないと言っておこう。社内でできるから外注に出せる。社内で設計できるから市場で勝負できる。「内製」なのです。


2.資源保護と効率

昨年まで何年か、SAVE大会の会場で公開セミナーとしてTear Downの指導をした。教材はオーブントースター。セミナーが終わって、教材を片付ける…紙も金属もプラスチックも一緒くたに大きなごみ入れに入れて捨てられていく。

今回も多く目に付いたことが、

@ 社員食堂の食器

食器はすべてプラスチックと紙の皿。カップも断熱のプラか紙コップ。それに紙ナプキン。フォークやスプーンもすべて使い捨て。紙ナプキンも束にしてとりバカスカ使う.そしてポイ。

Aパーティの会場で

アメリカのパーティは飲み物はキャッシュバーといって、自分でお金を払って好きなものを買う。そこでごみの中に瓶のキャップからワインのコルク、はたまたワインのビンや空いたウィスキーのビン、アルミ缶まで何でも一緒に捨てる。同行したアメリカ在住の方は「分別する人がいるから大丈夫なの」とは言っていたが、食い物のカスや氷まで一緒で、分別しているとは思えない。どこかで多少はやっているのかもしれない。

しかし子供たちも同じ感覚で捨てる。どんどん流入するマイノリティたちも捨てる。これがアメリカの文化になってしまっている。異常と思わない。CO2も石油資源もまったく無関心なのだ。いつまで続くのだろう。

B街の掃除

ビルの周囲を掃除夫が掃除をしている。と思いきやなんと、高圧ホースで道路上のごみを下水に流し込んでいるのだ。




捨てられたタバコや紙くず、アルミ缶、路上に散乱するものは何でも側溝に流してしまう。道路はきれいになるが、その側溝、雨の少ないコロラドなどではいつ流れるのだろうか、適当なタイミングで流しているのだろうか。流れ着いたごみはどのようになるのか…考えただけで頭がおかしくなる。部分最適の考え(システム)がこのような現象を生んでしまう。会社の経営もそういえば瞬間最適なのだ。これでアメリカは続くのだろうか。


3.こんなことも

Colorado SpringsからDenverを経由してRenoに向かおうとしてまずColoradoの空港へついた。9.11以来セキュリティは厳しくなったのは覚悟の上だが、手荷物検査でついに乗り遅れる羽目に陥った。同行したJim Rainsが「Crazy」ともらしたが、航空会社とは別期間のセキュリティ、誰も文句をいえない。われわれはそれでも3時間の遅れでRenoに着いたが、目的地に着けなくなった人のフラストレーションはものすごく大きいと思う。関係者は肩をすくめて「俺は知らない」と言うのだろう。そして私の預けた荷物は洗剤のチェックでもしたのだろう、カバン中洗剤がまかれるように散らばり、その始末に長い時間を費やした。お土産も梱包を解かれぐちゃぐちゃ。このような不満が蓄積して色々なところに八つ当たり的に吹き出て犯罪につながらないとは限らない。

大丈夫かなアメリカ…日本は?やはり縦割りの行政、いやいや企業内でも手続きの複雑さや意見交換のできないセクション間のフラストレーション。憤慨するだけでなく、仕事の効率やモチベーションにまで影響する。全体最適を見据えたマネージメントが必要ではないか。




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                   (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE