FAを語り合う(横田・座談会) パートナーシップと品質保証


            

2011年08月

このコラムは、『日米ファンクショナル・アプローチ座談会』と称し、アメリカでのSAVE Conference時にSAVE会長Craig Squires氏、パッシフィックコンサルティング斉藤浩治氏、ファンクショナルアプローチ研究所の主宰者横田尚哉氏、そして佐藤が対談し、横田氏が纏め、日経ビジネスOnline7月14日に掲載された記事の、原稿レベルを掲載した。本番(掲載)内容は以下のURLを参照願いたい。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110713/221464/

敢えて掲載したのは、今後のVEの動向として、もっともっと機能に重点指向しないと真のVE成果は求められない。佐藤の指摘する、VEはセミナーか?VEは値下げ活動か?、原価低減活動か?・・・に一石を投ずるものである。(文中、筆者は横田氏)


1.         日米ファンクショナル・アプローチ座談会

筆者は、20116月にアメリカのオレゴン州で開催されたバリュー・エンジニアリング(VE)国際大会に参加してきた。大会には9年連続の参加だ。今回は東日本大震災から3ヶ月後であったこともあり、大会に参加していた各国の専門家たちは、今の状況と日本再生に対して、いろいろと気にかけてくれていた。

そこで、日本再生をテーマに日米座談会を思い立ち、急遽それぞれの分野のトップリーダーに声を掛け、専門家の視点からの貴重な意見を伺うことができたので、その内容をお伝えしたい。

ファンクショナル・アプローチ(FA)を発明し、VEを生み出したアメリカからは、クレイグ・スクワイア国際VE協会(SAVEインターナショナル)会長、同大会に参加していた日本からは、ものづくり分野の専門家として佐藤嘉彦氏、土木建築の分野の専門家として斉藤浩治氏に参加いただき、筆者は経営改善の分野の専門家として加わると共に、ファシリテーターも務めた。

■ ファンクショナル・アプローチのトップリーダー

横田「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。まず、メンバーの紹介をしたいのですが、スクワイアさんはどのような活動をされているのですか」

スクワイア「クレイグ・スクワイアです。私は、ヒューストン市の郊外にあるウッドランドという美しい街に住みながら、アジア太平洋地域に重点を置いたグローバルな事業展開と国際関係分野を専門としています。専門は
ITVEです。IT企業のCEOとしての活動と、国際VE協会の会長としての活動をしています」

                                                 

クレイグ・スクワイア氏:米国テキサス州ヒューストン市郊外在住。ソフトウェア設計開発会社(NWIS.NETCEO2011年から国際VE協会の会長に就任。

横田「もともと
VEは、ものづくりや土木建築の分野を中心に広まったものですが、ITや他の分野にも適用が広がっているのですね。その辺りは、またあとで伺います。では、ものづくりの分野の専門家の立場から、佐藤さん、お願いします」

佐藤「佐藤嘉彦です。私は、元々自動車を創っていました。そこでVEを学び、派生技術を開発したり、海外から国内に持ち込んで普及したりしてきました。現在は、機能開発や原価低減、原価企画を各企業にたいして指導しています」

横田「派生技術とは、具体的にはどんなモノなのですか」


佐藤「テアダウン、モジュール設計、DFMAといったものです」

横田「ものづくりの分野では、有名なものばかりですね。最後になりましたが、斉藤さんは、土木建築の分野の専門家ですね」

斉藤「斉藤浩治です。私は土木建築の内、特に公共事業を対象に、
VE適用による改善活動を行っています。建設コンサルタント歴は40年になります。VEと出会ってからは10年経ちました」

横田「公共事業の改善活動は、結構大変なのではないですか」

斉藤「弊社は、
2006年に業界初のVE専任組織を創り、独自のメソッドで国や地方自治体の職員の方々とチームを組んで改善活動を行っています。毎回、色んな価値観の人との出会いがあり、一緒に楽しく仕事をしていますよ」

横田「日本再生には、公共事業は重要な役割を担っていますね。私は、アメリカやものづくりや土木建築からVEを学び、その革新的な技法を民間企業における経営改善に適用できないかと考えました。VEの原理であるFAを経営コンサルタントとして伝えています」


■ まだまだ広がるファンクショナル・アプローチ

横田「それぞれに分野のトップリーダーが一堂に会するのも、国際大会ならではのことですね。本題に入る前に、FAの活用状況を分野ごとにお伺いしたいと思います。今度は佐藤さんからお願いします」

佐藤「私自身は、
FAの活用を強く指向しているのですが、最近の日本の製造業の大半は、従来のファンクションに満足してしまい、ただそれを、如何に安く入手するかということに四苦八苦しています。そういうやり方ではなく、もっとFAを活かして、新しい機能を開発していき、もっと競争力を付けていくべきだと、指摘しています」

                                                                    



                    佐藤嘉彦氏:元いすゞ自動車部長。日本のテアダウンの礎を築く。
             現在はコンサルタント(
VPM技術研究所)。
                        『日経ものづくり』「勝つ設計」を連載など著書多数。

横田「なるほど、日本の製造業ですら、いまやコストに気を取られ、FAの本質を見失い始めているのですね。折角のツールなのに勿体無いですね。世界的に見ても、このような傾向があるのでしょうか」

スクワイア「私は、世界中の製造業や建設業の技術面、プロセス面、そして戦略面でFAが適用され、革新的な改善をもたらしてきたのを見てきました。まだまだ素晴らしい結果をもたらすFAの力強さと柔軟さに、毎回感銘を受けていますよ」

横田「
IT分野では、FAは取り入れられているのでしょうか」

スクワイア「まだ一般化はされていませんが、少なくとも弊社では、先進技術のツールやプロセスを開発するために、FAを徹底的に理解するというのを重点戦略にしています。より多くのプロジェクトや企業がFAを導入し、さらなる関連技術を開発していくことを願っています。ITや他の技術の分析や設計にFAを積極的に活用すれば、リスクを削減したり、投資効率を高めたり、まだまだ効果がでますね」

横田「これからが楽しみなところですね。日本の民間企業でも、経営改善として導入し始めたところは、まだ一部です。いち早く導入している企業では、既に効果を出し始めています。こういう時だから、もっと広まってほしいところです。公共事業は、結構効果が出ているようですね」


斉藤「そうですね。公共の建設事業をデザインする過程である計画段階から設計段階において、事業の価値を向上する目的でFAの活用が進んでいます。この分野では、1997年に旧建設省が試行的に実施し、2004年から国土交通省が本格的な活用を開始しました。その後は地方自治体(県、市)への導入が進み、県レベルでは約30の自治体において継続的にFAの活用が実践されており、高い改善効果を挙げています」

横田「工事の段階ではなく、設計の段階での活用がポイントのようですね。今回の復興にも、積極的に活用されることを願っています」

■ ファンクショナル・アプローチは思考の原点が違う

横田「問題解決や改善のための方法論は、世の中に沢山ありますが、FAが他の方法論と決定的に違うのはどこだと思われますか。やはり、国際VE協会の会長であるスクワイアさんからお聞きします」

スクワイア「ほんとに多くの方法論があり、それぞれに独自のアプローチとメリットがあります。一般的には、他の方法論は、開発、計画、戦略、プロセス、品質、生産などのどこかの場面に特化して、製品、事業、プロセスを改善しようとするものです。しかしFAは、どの場面に対しても適用することができます。それが決定的に違うと思います」

横田「なるほど、適用の広さは決定的に違いますね。もう少しお聞きしますが、どうしてそんなに汎用性が高いのでしょうか」

スクワイア「
FAは、製品、事業、プロセスのファンクションを抽出します。そのことで、創造性と革新的な思考を刺激し、価値を向上させるからなのです。そして、情報、分析、創造、洗練、評価、提案という体系的に決められたフェーズがあるというのも、FAの品質が落ちない理由です」



クレイグ・スクワイア氏


横田「確かに、ファンクションを抽出するような方法論は、聞かないですね。佐藤さんは、どういうところがFAの最大の特徴だと思われますか」

佐藤「進化への思考の原点だと思います。根幹的なところを原点にするから、革新的な進化ができるのです。ユーザーの潜在的不満を新たな機能開発の対象にすると、様々な思考が必要になります。その結果、構造や材料やシステムやインフラまで変わってきます」

横田「何か事例はありますか」

佐藤「例えば、レアメタルやレアアースです。潜在的不満を原点に、難産の末、新製品が誕生しました。ただ今日では、資源の無い日本にとって、それが新たな苦しみになってしまいましたね。もっとも、その苦しみさえも、ファンクショナル・アプローチで考えていく必要性と重要性があると思いますよ。きっと、レアメタルなどが持っている機能は、他にも方法が考えられるでしょうから」

横田「どんなときも原点を捉えられるということですね。斉藤さんは、どのように捉えられていますか」

斉藤「私は、機能本位で考えることが決定的に違うと思います。機能本位で考えると、我々の思考回路は、日常的な手段思考から創造的な目的思考へ切り替えることができます。体系化された実施手順は、その切り替えを支援するためのツールであると思います」

横田「
FAは人の思考、視点を変えるところが、決定的な違いなのかもしれませんね。その点、私も同じ考えです。ものづくりでも、土木建築でも、企業経営でも、人の思考や視点を変えることが出来るから、同じように革新的な改善ができるのでしょうね」

斉藤「人間をひとつのシステムとして考えると、技法やツールは人間の思考を支援する外部器官と言えますが、それさえあれば良い成果がでるものではありませんね。人間の内部器官である脳の思考回路が変化しなければ、価値の高い結果を生み出すことができないのと同じだと思います」

■ 「思考回路」を切り替えられるから60年以上も使われている

横田「斎藤さんのたとえは面白いですね。人間も一つのシステムなのですね。FAが生まれてから60年以上も経っていますが、まだまだ現役なのも思考回路の変化にあるのでしょう」

斉藤「そうです。この手法が持つ大きな可能性の要因は、「思考回路」の切り替えがシステマティックにできることにあります。この機能こそが、時代や分野を超えて活用される最大の理由ではないか、と思っています」

横田「その間、「外部器官」である技法やツールは、どうなってきたのでしょうか」


斉藤「その主要な機能を保持しながら、細かい検討ステップごとの技法やツールは、時代の変化に応じて更新されてきました。逆に、そうすることで長期間に亘る活用が可能となったのではないでしょうか。むしろ技法は日々更新しなければ、この方法の真価が発揮できないということが言えると思います」






斉藤浩治氏:パシフィックコンサルタント株式会社VEセンター主席研究員。
コンサルタントとして、様々な公共事業に携わり、改善提案のため今も全国を奔走。



横田「なるほど。1つの手段にこだわっていては、長生きできないのですね。スクワイアさん、世界各国でも長く使われ続けていますよね」

スクワイア「何よりもまず、FAが流行や気まぐれでないことは、60年以上にもわたってもう既に立証されています。FAがあらゆる製品や事業やプロセスに対して、創造と革新により価値を向上させる、一貫性のある信頼できる手段として確立しています。これ程までに、あらゆる業界に効果的かつ汎用性があり、企業のあらゆる側面を改善することができる方法論は、他にはないのではないでしょうか」

横田「ということは、まだまだ活用されていくということですね」

スクワイア「世界市場での競争優位性において、創造力と革新力と改善力が必要とされる限り、
FAはさらに便利になり、長期的に成長し続けていくものになるでしょう」

横田「創造、革新、改善に直接、大きな効果を上げられるから、いつまでも活用され続けるのでしょうね。日本のものづくりの分野でも、
VEで多くのヒット商品を産み出してきたのですよね」

佐藤「確かに産み出してきましたが、私からすれば、まだまだ真に活用されていないと思います。
VEを教育に用いることはあっても、実践に活かし切っているケースは希ですね。ヒット商品は、VEというより、真のユーザーのニーズをうまく探ることで新しい商品を生み出しています。これこそがFAですよね。だから、横田さんはVEと呼ばないのではないのですか」

横田「佐藤さんには参りましたね。おっしゃるとおりVEの真髄は、FAにあると思っています。FAをしっかり理解し、使いこなせれば、まだまだ未来は拓けると思っています」

■ 日本再生こそ、ファンクショナル・アプローチを活かすべきだ

横田「日本では、東日本大震災により、国も企業も大きな問題を抱えています。この問題を解決し、日本再生を果たすために、FAは役立つと思いますか」

スクワイア「はい、絶対に!復旧作業のような複雑で困難な状況では、FAの活用こそが、大きな効果をもたらすことができるのです。FAは、残されたリソースをより効率的に配分し、作業を効果的に進めることができる価値あるツールだからです。革新的な解決策の発見とその合意を得るために使える時間とリソースは、どんなに危機的な状況であっても、限られているものです」

横田「具体的にはどのように役立たせられると思われますか」


スクワイア「今回の災害復旧においてFAを大いに役立たせたいのであれば、とりわけ困難で複雑な事業を対象にし、FA専門家チームを編成し、解決に取り組むことです。ただし、それを行なうには、組織を超えた協力関係と多額の資金を伴うことがあるため、大規模で有力なサポートが必要です」



クレイグ・スクワイア氏


横田「そうですね。組織を変えた協力関係は重要です。今の日本にとっては、FA以前の課題かもしれませんね。復興もそうですが、復興後のことも考えると、FAの活用の場はたくさんありそうですね」

斉藤「現在の困難な状況を打開するためには、FAを積極的に活用すべきです。日本の人口が増大から減少へ転じた今は、これまでに構築したあらゆる社会システムについて、「誰のため」「何のため」という観点で見直す必要があります。そのためには、縦型社会の壁や技術分野の囲いを取り払った議論が必要です」

横田「復興しただけでは日本再生はできませんね。斉藤さんの言われるように、社会システムの見なおしが必要ですね。そこにも
FAが活用できるということですね」

斉藤「専門的なワークショップに誰でもが参加できるものではないために、ネット環境を活用した開かれた意見集約の場を作り、その意見を踏まえて
FA専門家チームが改善活動を行うような仕組みが必要ではないでしょうか」

横田「ネットを活かした
FAというのが必要になってきますね。スクワイアさん、ITの役割は大きいですね」

スクワイア「私も、FAの活用にITを連動させることで、最高に素晴らしい改善をもたらすと思っています」

横田「ものづくりの分野はどうでしょう。
FAが日本再生に役立つと思われますか」

佐藤「勿論、大いに役立ちます。日本製品は、国際競争力を失いました。ただ、失ったのは何かと言うと、コスト競争力低下による商品力なのです。品質や耐久性などはまだまだ十分あります。ユーザーの欲しくて、欲しくてたまらなかった機能を提供すれば、それは高くても求めていただけるのです」

横田「そういう事だったのですね。ユーザーの要求を如何に捉えるかということですね。それができれば、まだまだいけそうですね」

佐藤「簡単な事例は、LEDです。その昔は、蛍光灯が白熱灯を凌駕しました。日本から生まれて、世界を制している商品は、他に何があるでしょうか。今こそ、新たなニーズを満足させる
FAが、必要だと思います」

横田「ものづくり大国として、まだまだ再生できそうですね」


■ 時間を掛けてでもファンクショナル・アプローチを理解すべきだ

横田「私は、日本再生の鍵は企業経営にあると思います。企業が発展していくことこそが、経済循環を活性化させ、雇用と働きがいを生む必須条件だと思います。それが本当の日本再生です。企業は、経営にFAを取り入れ、優れた製品やサービスを効率よく、世界に提供していくべきだと思います。スクワイアさん、そのために何から始めるべきだと思いますか」




横田尚哉氏


スクワイア「指導者や経営者の最初にやることは、企業価値の最大化のため、
FA適用のテーマとタイミングを理解することです。他のメソッドやツールと同様に、重要なのは、それで何が出来るのか、いつ、どこで使うのか、何のために、どうやって使うのか、を理解することなのです」

横田「確かにそうですが、日本の一般企業の経営者は、まだ
FAそのものをご存じない方が多いのです。ようやく始めるという段階です」

スクワイア「始めた頃は、
FAの真の能力について、まだ結論に急がないでください!FAが真の能力を発揮するためには、時間と経験が必要なのです。FA専門家の支援を受けながら、教育、指導、推進、その他必要な活動を通して、自社の能力を高めていくことを勧めます」

横田「その通りですね。短時間で少ない経験では、うわべの判断になりそうですね。企業経営者にとって、何か切り口が必要なのでしょうね」

斉藤「そのためにまず、自社の経営を
FAで分析してみることです。その結果から経営トップがFAの有効性を認識し、企業経営の具体策の中にFAの活用を位置づけていくのではないでしょうか」

横田「経営トップが認識するかしないかが、分かれ目かもしれませんね。トップが認識した後、
FAを成果に繋げるためには、どのようなことをすればいいのでしょうか」

佐藤「そのためには、社員が製品やサービスに対する新しい目を持つことです。機能を満足するために、これまで採用してきた従来の方法から脱却して、その本来の機能に立ち戻ることです。顕在化していないニーズを如何に発掘するか、その訓練や習慣を身につけることではないでしょうか」


横田「どうしても、目の前の製品やサービスに囚われてしまいますよね」

佐藤「囚われから逃れるためには、今使用されている機能は過去のモノ、今具現化されている方法はすでに過去のモノ、と思い込むことが必要です。それと、いつも問題意識、「電車のつり革・・これでいいのか」「飲料水の缶のプルトップ・・これでいいのか」などと問題を探り続けることです」

横田「一朝一夕に身につくものではないからこそ、ひと度身につけば大きな力になりますね。そういう社員が増えることが、企業の発展に繋がるということですね」


スクワイア「FAを積極的に活用する企業は、さらに革新的となります。その市場で効率よく競争に打ち勝つために、最適なリソースの活用が可能となります。だから今、経営改善の手法を模索している経営者やビジネスリーダーは、FAがどれほど多大な価値を提供できる方法であるかを、時間を掛けてでも理解に務めるべきなのです。そして、FAシステムの導入に充分なリソースを割り当てるべきだと思います」

横田「そういう企業が増えて欲しいですね。きっと日本再生の中心的存在になってくれることでしょう。そのためにも、
FAコンサルタントの社会的使命は大きいですね」

■ ファンクショナル・アプローチは人と人との橋渡し

田「日本再生、企業経営にFAは大いに活躍しそうですが、FAはこの先、どのように変わっていくと思いますか。ものづくりではどうでしょうか、佐藤さん」

佐藤「世界的に多くの商品が均質化しています。その中では
BRICs製の低コスト商品が有利です。しかし、使用者の満足度を最大化できる商品を創れば、そうではありません。これからは、ますますFAが注目されることでしょう。均質化した商品のコスト削減に喘いでいたら、その企業も商品も、競争力がなくなり廃れていくことでしょう」

横田「使用者の満足は価格だけだ、という迷妄が企業の力を失わせているのですね。土木建築の分野では、FAはどのように変化していくと思われますか」

斉藤「一言で言えば「部分最適」から「全体最適」へ向かうと思います。公共の建設事業分野においては、これまでの改善対象は「既に設計図面が作られた個別の建設事業」がほとんどでした。その背景としては、「建設すること」は変えることのない目的であり、如何に経済的効率化を進めるかが課題であったからです。しかしこれからは、「全体最適」の思想を明確に位置づけ、地域全体における公共事業のあり方を総合的に検討する必要があります」

横田「部分で考えれば必要なものでも、全体で考えれば必要ないかもしれないということですね。ますます、日本全体で考えて行かなければならないことですね」

斉藤「建設事業だけではなく、医療分野や教育分野なども含めた地域全体の投資配分を最適化するために、
FAを活用する方向に向かうと思います」

横田「そうでした。公共事業は土木建築だけではありませんでした。公的な活動が
FAで改善されれば、私たちの生活も、より良くなっていきますね。民も官も、公も私も、区別なくFAを活かして欲しいですね。もはや国を超え、世界人類がFAを理解すれば、いざこざやトラブルも減るように思います。大袈裟ですかね、スクワイアさん」

スクワイア「ファンクションを考えることは、簡単でありながら的を射ているため、最も困難で複雑なテーマやシステムでさえ、そのファンクションを簡潔に定義することができます。この見事なシンプルさが、人と人との概念的理解とコミュニケーションの橋渡しをしてくれます。そうでなくても、理解し合うための時間を提供してくれることでしょう」

横田「まさしく
FAは、人と人との橋渡しをするものですね。社員と社員も、企業と顧客も、人と人ですね。そこから生まれる製品やサービスは、いいものしか生まれませんね」

スクワイア「
FAによる概念的理解とコミュニケーションを既存の技術と組み合わせる時、進歩への大きな可能性が生み出されます。そして、多くの人やビジネスが、多くの感動をもたらすFAの技術と考え方を理解し、促進されることを期待します」

横田「今回は急遽、皆さんにお集まりいただき、日本再生をテーマに、それぞれの立場、経験からご意見を頂きました。
FAの魅力、可能性、必要性が、多くの人や企業に伝わり、住みよい社会になることを願います。どうもありがとうございました」




左から佐藤嘉彦氏、横田尚哉氏、斉藤浩治氏、クレイグ・スクワイア氏
(国際
VE大会、米国オレゴン州ポートランド、201168日)




                   (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE