オーストラリア皆既日食ツアー
 「皆既日食、、、その瞬間!」


 12月1日(日)より12月6日(金)まで、日本旅行が企画した「オーストラリア皆既日食ツアー」に参加した。日食時間は、たった30秒ほどだった。しかし、これほどまでに、劇的な、そしてロマンティックな時間は、生まれてはじめてである。そのドラマを記述する。

1.セデューナに到着
 オーストラリアのアデレートから、バスで10時間揺られ、ようやくセデューナに到着した。
 ここで明日、32秒間の皆既日食が見られるという。
 強い風、舞うカモメ。港町だ。
 この日のために、日本から3日もかけてやってきた。

2.当日の朝
 朝から、風が強い。そして、雲が多い。(下写真)

 天気予報は、曇り時々晴れ。
 日食は、雲にさえぎられると見ることができない。天候次第である。実際、ツアー者の中には、今まで3回も天候に阻まれた人もいる。 いつ雲がくるかわからない、といっていた。
 このような天気では、見ることができない。
 不安がよぎる。

3.昼過ぎ

 雲が減り、太陽が照りだすようになった。不安はやや解消。
 セデューナの街を観光。街は、歩行者天国ができ、世界中の国からの観光客でにぎわっている。(下写真)

 街は日食ムードで盛り上がっていた。
 そんな中、市内観光。楽しい一時だ。

4.いよいよ日食へ
 日食開始1時間前より、カメラをセッティング。しかし、自分は遅いほう。早い人は、昼過ぎから浜辺で構えている。
 浜辺は、テレビ放送局、メディア、専門家、天文マニア、観光客など、カメラや望遠鏡で並んだ。(下写真)

 しかし、まだ天候が思わしくない。
 雲が、セデューナの空を8割ぐらい覆っている。
 そんな中、第一接触(太陽の欠け始め)の時間が近づいてきた。
 ツアーのメンバーの顔も思わしくない。
 幸い、明るい人が多かった。
 「いけにえに誰かを出そう。」
 「私は、究極の晴れ女だから、大丈夫。」
 そんな冗談で、明るい雰囲気を醸しだしていた。
 しかし、雲が多い。たまに太陽が顔を出す程度である。

5.欠け始め
 添乗員の声が聞こえた。
「第一接触(欠け始め)、10秒前。」
 しかし、周りに緊張感はない。
 雲に隠れて、太陽が見えないのだ。シャッターを構える人もほとんどいない。
「第一接触、開始。」
 まだ見えない。あきらめムードも漂った。
 しかし、徐々に、雲が減ってきたのだ。
 そして、太陽が現れた。
 フィルターで太陽を見る。
 確かに、欠けている。(下写真)

 歓声が上がる。
 いよいよ、日食が始まったのだ。

6.皆既日食へ
 雲が再び覆う。
 また太陽が現れる。
 そのたび毎に、太陽が欠けていた。(下写真)

 太陽が出るごとに上がる歓声。
 しかし、雲が合間を置いて現れる。
 晴れと、曇りが、交互に同じ間隔でくるような感じだった。
 このまま、日食のときに雲がきていたらどうしよう。
 そのときには、このツアーは台無しとなる。
 まだまだ不安だった。
 
7.皆既日食寸前
 太陽は、三日月のようになった。(下写真。)

 皆既日食まで、5分前。
 あたりに緊張が走る。
 やってくる雲を凝視する。
 その後の、雲の間隔が広い!
 なんとかなるか!
 期待がふくらむ。
 
 1分前。
 太陽は、ほとんど見えなくなった。(下写真)

 歓声がさらに大きくなる。
 次の雲は、まだかからない!
 やった! 皆既日食までもつ!
 「勝った!」
 叫ぶ人もいた。
 あたりは、どんどん暗くなる。そして…。

8.皆既日食
 太陽は、わずかな光から、黒い太陽に姿を変えた。
 夢にまで見た、月の影とコロナ。
 美しい…。
 ここまできれいなものなのか…。
 自分は、本当に皆既日食を見ている。
 幻想的な光景だった。
 10数秒間、我を忘れて見た。
 写真をとらなければ…!
 必死で、シャッターを切った。
 デジカメで撮れた画像を見る。
 撮れていない!
 シャッタースピードが速すぎた!
 急いで、シャッター速度を変える。
 「10秒前!」
 添乗員の声が響く。
 設定を終えた!夢中でシャッターを切る!(下写真)

そして、皆既日食終了直後。
ダイヤモンドリングだ!
美しい…。(下写真)

それと同時に、海の向こうから光がやってくるのを感じた。
皆既日食は、終わった。
拍手喝采! 万歳三唱!
ツアーのメンバーと抱擁、握手。
涙を流す人もいる。
感動的なシーンに、誰もが酔いしれた。
その後、すぐ雲が覆う。
本当に、神がかり的だった。
日食のために、神様が雲をどかせてくれたかのようだった。

9.解説
 今回の日食は、32秒と短いため、太陽の炎であるプロミネンスがよく見えた。そのため、月の影の周りが、赤く輝いていた。
 あとで、シャッター速度の速かった写真を見ると、確かに、プロミネンスが現れていた。(下写真の赤い部分)

 また、緯度が低かった(日没前)ため、海の地平線に近いあたりから、日食が見られた。
 実に見やすく、きれいだった。
 さらに、雲がちょうどなくなったときに、日食がおこった。地元の新聞でも、「雲がなくなった。そのとき、日食が起こった。」と一面の字で飾り、神がかり的な日食だったことを強調していた。

 今回の日食ツアーで、自然現象のすばらしさ、自然の偉大さを堪能した。
 普段は、変わらずまぶしい太陽。
 それが突然、黒い太陽に変わる。
 日本の歴史の中にも、記載されている。
 いつの時代でも、驚きの現象であったことは間違いない。
 一度日食を見ると、多くの人が複数回見ようとする。中には10数回も日食を見に行った人もいる。
 いわゆる「日食病」にかかってしまうのである。
 自分も、その病にかかってしまった。
 次の日食は、2009年7月22日、屋久島、吐喝喇(とから)列島、奄美大島で見られる。
 なんとしても、見てみたい。
 もう一度、あの黒い太陽に逢いたい。
 そう強く思った。

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