山本芳幸(TOSS岡山サークルMAK)
岡山県教員採用試験(中学理科)に、4回目の受験で運よく合格できた。2年間は講師をしながら受験したが、今年度(H14年度)は、講師を断って勉強した。合格するために行ったことをまとめてみる。
1. 身銭を切る
某予備校に、日曜部の通学生として2年間在籍した。当然、入学料、授業料が必要である(日曜部で25万円ほど)。しかし、身銭を切ってこそ得られるものは大きい。そのメリットを示す。
○面接練習(討論、集団面接)がいい。
(試験当日までのかなりの自信になる。他の受験生と知り合うきっかけになる。)
○小テストがいい。
(受け続ければ、一般教養と教職教養はどうにかなる。)
〇ある程度自由が利く。
(いつも授業に出なくてはならない、ということはない。ためになる授業もあった。)
〇情報量が豊富である。
(各県の出題傾向、過去問、面接の質問内容などが入手できる。また時事情報も豊富。)
その他、某社の教員採用試験公開模試を2回、論作文マスター講座9回分、を申し込んだりした。
授業の腕を上げるために、身銭を切るのと同じく、合格するためにも、身銭を切ることが必要だと思う。
2. 面接には、現場での体験を生かす
2次の個人面接、集団面接、口頭試問では、講師の経験が生きる。なぜなら、現場にでたらどうするか、などの質問があるからだ。教えることで得られた知識は、そう忘れるものではない。筆記の専門試験で生かされる。
私は、新卒で1年間、中学校の講師を経験した。荒れた学校だった。授業も生徒指導も部活指導もうまくいかず、つらい日々だった。今回の2次の面接では、その経験を語り、「だからこそ、どこにでもいける自信があります。」とアピールした。
新卒であっても、教育実習の体験をエピソードを交えて、語れるようにするとよいと思う。また、現場の教師から質問内容に対する受け答えを伺う、という手もある。
3.勉強に集中する
今年度(H14年度)、講師を断ったことは、自分にとって勉強に集中するためのよい選択だったと思っている。よかった点は以下の3つである。
○ 時間が目一杯あった。(講師をしていたときの10倍は勉強できた。)
○ 他のことに気をとられなかった。(学校での仕事のことなど)
○ 気合が入った。(背水の陣だった。)
1次の筆記試験までの3ヶ月半は、受験勉強に集中した。しかし、つらい日々ではなく、むしろ楽しかった(性格上・・・)。
今思えば、講師をしている時でも、できるだけ時間を見つけて勉強時間を確保すべきだったと思う。
(例:朝の5時〜6時は、採用試験の勉強をする、など)
どんなに忙しくても、毎日の積み重ねが大切だと思う。
4. 問題集を最低3回どおりは解く
1次の筆記試験までの3ヶ月半は、ひたすら問題集を解いた。解いた問題集は、こちらへ。
最低3回どおり、通常4〜6回解いた。
しかし、各問題集の全ての問題を、毎回解くのではなく、「向山式チェックシステム」で解いた(向山式「勉強のコツ」がわかる本[PHP研究所]参照)。このようなものである。
1.問題をひととおり解く。正解した問題は、問題の番号を赤ペンで
/ と消す。間違えたら、
番号の右側に赤ペンでチェックを入れる。
2.チェックのついた問題だけをもう一度やる。解けたら、1回目と同様、番号に
/ を引く。間違えたら、
2つ目のチェックを入れる。
3.2つのチェックが入っている問題を、できるまでやる。全ての問題に / がつけば終了。
これを行うことで、確実に実力はついた。すばらしい自学システムである。
5.生活習慣を整える
今年度(H14年度)の1次試験までの生活パターンである。朝は6時起床、午前中は自宅で、午後からは、図書館で勉強した。そして、12時までには就寝した。特に、徹夜やガリ勉をしたという意識はなかった。
6 7 8 12 1 6 8 11 12
起床 勉強 |
洗面 朝食 |
自宅で勉強 | 昼食 移動 |
図書館で勉強 | 夕食 風呂 |
勉強 | TV 就寝 |
最も集中できたのは、早朝である。
「徹夜の2時間と、早朝の30分の勉強量は、同じくらいである。」
ある本(勉強法、こんなやり方はダメダメ!〔PHP研究所〕)でも書いてあった。そのとおりだと思った。
6. 情報を得る
試験を受けるためには、どんな問題、質問があったかを事前に知らなければ、対策は立てられない。1次試験と2次試験のために、このようなことをした。
○ 1次試験…某予備校で全国の中学理科の過去問を入手した。
○ 2次試験…たまたま前任校の同僚の友人に昨年度岡山県中学理科に合格した人がいた。
その人から面接の質問内容、模擬実験の内容などの資料をいただいた。また、
某予備校からも、岡山県の面接の質問内容を知った。
過去の問題や質問内容には、すべて答えておけるようにする必要があると思う。
7. 計画を立てる
やみくもに問題集を解いたわけではない。やはり計画を立てた。長期プランと1日のプランである。
○長期プラン…問題集1回目を1ヶ月で、2回目を2週間で、という具合にどの問題集も終わる
タイミングを合わせた。つまり、〆切の日を決めた。そうすることで、その日に
合わせて何ページずつやればいいかを計算でき、それに沿って勉強を進める
ことができる。
○1日のプラン…1日にこの問題集を数ページずつ、という具合に細分化した。1日に1つの問題集
に当たる時間は、30分〜1時間程度だった。「ひとつを長く」より、「たくさんを短く」
のほうが、集中しやすい。
8. 同じ目的の友人を持つ
大学時代の同級生で、岡山県を受ける同郷の友人が2人いた。それぞれ、物理、生物が専門であり、私と違うため、分からない問題は、いつもFAXやメールで聞いていた。そして、いつも励ましあった。今回、そのうち1人は合格した。同じ目的の友人を持つことはとても大切なことだと思う。
9.TOSSで学ぶ
忘れてはならないのが、TOSSでの学びである。セミナーで聞いた向山洋一氏の言葉や、向山氏の著書は、そのつど腹の中に入り、面接練習でそのまま発言したこともある。
「教師は、授業の腕をあげる努力をするべきだ。」 (授業の腕を上げる法則〔明治図書〕)
「理科は、ものがないと理科ではない。」 (向山洋一全集 骨太な実践を創る向山型理科授業〔明治図書〕)
「いじめは教師だけがなくせる。」 (いじめの構造を破壊せよ〔明治図書〕)
「ちょっとした差別を見逃さずに指導する。」 (いじめの構造を破壊せよ〔明治図書〕)
また、TOSS岡山サークルMAKのメンバーにいつも励まされた。4月から1次の筆記試験までは、サークルの例会を休んでいた。しかし、その間もメンバーからメールで励ましをいただいたりした。同志がいることのありがたさを実感した。
以上、今年度(H14年度)に入ってからの取り組みを中心に述べた。実際は、それまでの3年間の受験勉強の蓄積、2年間の講師経験が基礎にあったことは間違いない。今回、多くの時間をもらったことで自分の好きな勉強スタイルを続けることができた。自分を支えてくれた、励ましてくれた多くの方々に感謝したい。
しかし、本当の正念場はこれからである。まだまだ、未熟な若輩教師である。サークルのメンバーと共に学びつつ、理科が好きな生徒を育てるために、教材研究をし、授業の腕を上げてゆきたい。