過去のノート
2002・12
 おかしいな、と思ったのは火曜日の夜。放鳥の時に体を膨らませていたのだった。それでも羽のつやも良く、クチバシの色も赤く、食欲も落ちていなかった。その前日までは、まったく普段と変わらず新聞紙と格闘などをしていたものだから、深刻には考えなかった。しかし水曜日の夜には一段と弱弱しくなり、エサを食べる以外は手の上でジッとするようになってしまった。あの子煩悩なヘイスケが、抱卵にカゴに帰ろうともしない。クチバシは、健康そうな色のままだが、これはただ事では有り得ない。非常に心細い思いで木曜日の朝をむかえ、カゴをのぞき、巣箱に指を入れてみると、ヘイスケはまるで力なく指をかじるのだった。
 それが最後のあいさつとなった。夜帰宅すると、ヘイスケは巣箱の中で冷たくなっていた。巣箱の奥から少し身を乗り出して、首を横にするようにして眠っていた。満7歳だった。
 結局、飼主としては、何もできなかった。曜日の関係もあって、あたふたすることすらできなかった。原因もわからない。実に急激に、静かに逝ってしまった。これは…、私の個人的な思想でいえば、まことに見事な最期というべきであった。

 あとから思えば、最近不思議なことはおこっていた。ブレイがヘイスケをメスとみなして、交尾をせまったり、巣箱に夜這いをかけたりしていたのだ。ブレイの奴が色ボケしたものと思っていたが、ヘイスケの変化が前提としてあったのかもしれない。人間の目には元気そのものだったが、『老い』が確実にせまって、好色ブレイの目にはメスと映るくらいに大人しくなっていたのかもしれない。

 ヘイスケという文鳥は、私個人にとって格別な存在だった。彼は、私なりに文鳥を責任を持って飼うことにした時に、はじめに購入したヒナであり、今いる一族の始祖鳥であったが、それよりも、私にとってはさえずりの『弟子』であり、私のことを信用し、心配してくれる弟であった。彼だけが、一度も「飼主」から羽を切られることがなかった。何かあれば、「どうかしたの?」と言いたげに肩の上にやって来る彼の羽は切る必要がなかった。彼は家の外に出ても、私のそばから飛んでいくことはなかったかもしれない。そんなふうに思っていた。
 ヘイスケのことを語ればきりがない。彼から教えられたことは非常に多い。きっとこれからも、2、3年楽しく生きて、晩年はヨレヨレで白内障などになり、さんざん世話をやかせながら、いろいろ教えてくれるものと飼主としては期待もしていたのだが…。彼自身には、そんな世話を焼かせる気もなかったようだ。

 我がヘイスケは逝ってしまい、新しい生命誕生作戦の方も停滞している。今シーズン二度目の産卵をしたセーユ。それは立派な卵、最初のそれの二まわりはあろうかという物を、いとも簡単に8個も産んでくれた。夫グリとの共同作業も完璧なものとなり、交替で抱卵をする。理想的なつがい。さらに念には念を入れて、卵の半分を、育ヒナの天才であるサムにまかせてもみた(万一8個ヒナとなったらセーユたちは大変なので)。卵が有精卵であれば、まず間違いなく孵化する体制、ところが、すべて無精卵なのだから世の中おもしろい。
 これはもしかしたら、セーユに欠陥があるのかもしれない。夫のグリは先妻との間で有精卵をもうけていたから、とりあえず、不本意ながらそのような推定が出きてしまう。そして、もしそれが本当なら、グリとセーユのヒナを後継ぎにしようという、飼主のもくろみは根本的に完膚なきまで破綻することになる。
 「なかなか…」首をふりながら横目で、本来もっとも期待されるカップル、ゴンとノロの様子を見る。ケンカはしていない。ゴンは誰かとの卵(おそらく相手はガブ)を産んで適当に温めている一方で、ノロはその邪魔をすることなく巣箱の外でたたずんでいる。「うーむ…」この際、寡婦となったナツとノロを同居させ、ゴンには別にたくましい夫を見つけてこようかと少し考えはじめる。しかし、それなりにうまく同居しているのに余計なことをすべきではないとも思う。リスクを冒すより、ノロの自覚を待った方が良いかもしれない。その方が無理がない。よほど気に入ったオスが目の前に現れれば別だが、ジタバタして、深みにはまることはない。

 それでも、気晴らしにペットショップ巡りをしてみた。この時期、ヒナは各所で売られている。しかし、桜文鳥の成鳥はお目にかかれない。やっとみかけたJR東戸塚のペットショップでは、手のりヒナの売れ残りが2500円、一羽でさびしげにさえずっていた。色素が濃い個体で、ほっぺたに黒い斑点があり見栄えが悪い。この黒い斑点は成長とともに取れるはずだが、若すぎるのでおよびでない。
 東急田園都市線梶谷駅のペットショップでは、数羽の桜文鳥が売られていた。珍しい。2500円で10%引きだそうだ。ここも価格破壊しているようだ。ただし、オスともメスとも書いていない。その点、探しているのがオスなので、さえずるのを待てば良いのだが、さほど心惹かれないのでやめておく。
 それにしても、この手のペットショップは、個人的にどうしても好きになれない。ナツには、しばらく飼主のさえずり(口笛)に「ピッ?!ピッ!!」と鳴いていてもらおう。

 それにしても、ただでさえ三年ほどヒナの餌付けをしていないので、その禁断症状が出ている時にヘイスケがいなくなり、意地でもヒナの顔が見たくなってきている。この際、クルかソウが有精卵を産んだら、孵化させようかと思う。

2002・11
 グリとセーユの卵はすべて無精卵だった。なかなか思い通りにはならない。10月に入って暑さが復活した気象の影響もあるのかもしれない。ソウなどは卵を産み始めたものの、2個で止めてしまっている。例によって、すべて偽卵とすりかえてしまう。
 産卵といえば、今年6歳になるチビもまだ産卵している。例年真っ先に産卵するのに、今年はのんびりくつろいでいるので、さすがに、もう産卵はしないのだろうと安心していたのだが、そうでもないらしい。年齢制限はないのだろうか。

 中旬になる頃、ようやく南関東も涼しさが戻ってきた。気が早いので、真冬の支度を始めておく。鳥カゴの置かれた『メタルラック』を12月くらいになったら温室化するための準備だ。といっても、ビニールカバーを買いに行くだけの事だが・・・。
 アイリスオーヤマという会社の『メタル室内温室』は専用のビニールカバーのついた優れもので、もともと観葉植物用の商品だが、『1500』『1700』(高さが150cm、1700cm)は普通の鳥カゴを複数置くのに、適当な大きさだ。昨年『1500』を一台買って、ずいぶん重宝したのだが、以前から使っている普通のメタルラックを温室化するのは面倒だった。自分でビニールシートを買ってきて、大きさを切りそろえたり、周囲を囲むのに一苦労させられる。いっそもう一台買ってしまおうかと思ったが、もったいないので、そのメタルラックとあまりサイズの変わらない『1700』用のビニールカバーだけを購入して、間に合わせてしまうことにする。
 以前からそういった目論見だったので、そのカバーが3000円で別売りされていることを、すでにインターネットで調べていた。しかし送料をいれると、高く感じるので、購入を控えていたのだった。まずホームセンターなどで探してみた方が良い。事のついでに寄れる大きなホームセンターに、『東宝日曜大工センター』というのがあるのを知っていたので、まずそこに行ってみることにする。
 用事をすまして、成城という全国区に有名な東京都世田谷区の住宅地のはずれを、ぶらぶらと歩いていく。と、そこは映画の大道具さん御用達のような、ありとあらゆる材料が扱われている、個人的には非常に楽しい世界であった。しかし、大工道具その他モロモロはとりあえず必要ではないので、入り口に無造作に売られていたお目当てのものだけを買う。当然のように売られているところがえらい。値段は2180円。まったくもって、実に素晴らしい。

 月末になると、まったく極端に、急激に、いまいましく寒くなったが、温室化はまだ早いと考え、それより別の問題を解決することにする。最近底に敷く新聞がびしょぬれになる問題。これは、文鳥たちの水浴び器(『アウターバードバス』)の使い方が悪いせいだ。開口部側に頭を向けて水浴びする限り、さほど外に水が飛び散ることはないのだが、お尻を向けると、水を外にかい出すようになってしまう。「行儀の悪い奴らめ!」と舌打ちして注意しても、まったく改めてくれそうもないので、新聞紙の下に犬用のペットシーツを敷くことにした。
 犬用ペットシーツは100枚で698円だった。こういったものの値段は良く知らないが、ずいぶん安いような気がする。「アイリスオーヤマ」と書いてある。この会社に親戚も知り合いもいないのだが、そういえば、昔買った折りたたみイスもこの会社のものだったし、この間買った合板三段ラックもこの会社のものだったし、『メタル室内温室』には重宝しているし、最近やたらと身の回りに増殖している。
 このシーツは33cm×44cmでそのままだと、鳥カゴの底には大きい。水分を吸い取ってもらいたいだけなので、半分に切って敷くことにする。「五日に一回かえるとして、カゴは8つだから一ヶ月で24枚、四ヶ月ももってしまうではないか!」…と、私の経済頭脳はそろばんをはじいた。もう一方で、この水分の多いゴミ処理問題を考えるべきだと良心が警鐘を良心が警鐘を鳴らしている。とりあえず、聞き置く。

 月末には偽卵を回収し、アワ玉と『カルシウムバード』を与えて、次の産卵に備える。文鳥たちは元気に跳ね回り、実に豪快にトウミョウを食べ散らかす。ゴンはカゴから出るとオス(ガブ)に尻尾をふり、カゴの中では他のカゴのオス(サム)のさえずりに合わせ、歌っている(さえずっていると表現すべきだが…メスなので…)。頭が痛くなるので無視をする。グリとセーユは相変わらず仲良くしている。セーユは色々なものをせっかちに食べ歩いて、ずっこけたりしている。
 しかし、数日すると産卵体制に入り、いつまでも夜遊びすることはなくなる。メスはカゴの外に出ればカトルボーン(イカの甲)を砕いたものに殺到し、その他ひとしきり食べるとカゴにもどっていく。自主的に帰宅してくれるので、飼主も楽だが、少し物足りない。

2002・10
 今シーズンは久しぶりにヒナの餌づけをするつもりでいる。新たにカップルとなったグリとセーユ、ゴンとノロ、グリとハンのうち、当然五代目のゴンのヒナが望ましいのだが、ゴンは同居中のノロなどには目もくれず、ガブやサムといった好みのオスに尻尾をふり、メスのハンにも色目を使っている。去年のセーユのように、自分の卵を温める手伝いをしてくれそうな鳥を探しているのだ。まったく、考えることが、文鳥離れしている。
 「ノロが夫としての自覚をもてば良いのだ」と思うのだが、彼は、なぜか眠い目で換羽を続けている。恐ろしく栄養状態の悪い環境にあったらしい彼は、昨年買ってきた時から、羽がボロボロで薄かったから、生えそろった状態には中々ならないのかもしれない。ガサガサだったハバキ(脚の角質)は、だいぶ滑らかになってきたが、何やら人間の肩の上でボーとしているし、本来のあるべき姿になるには、あと一年はかかるように思われる。つまり、ゴンに対して亭主関白になれる日は、あっても、はるかな先のことで、ゴンにとっては好都合な『主夫』になるほどの『自覚』も、巣草で遊んでいる彼には難しそうだ。
 もう一羽の五代目、オマケは、あこがれのハンと同居するようになった。あこがれていたのだから、文句があろうはずもない。あれやこれやと気を引いて、ハンを巣箱に誘い込み、底の新聞紙を引きちぎろうと奮闘し、あまりに騒々しいので、巣草を入れると、実に勤勉にせっせと運びこむ。年下のオスにつくされるハンは、はじめこそ迷惑そうだったが、ブランコに一緒に乗るなど、まんざらでもない。これなら良い夫婦になるだろう。しかし、このカップルの卵は孵すことは出来ない。ヘイスケの娘のハンと、ヘイスケの玄孫で孫でもあるオマケでは、あまりに血が濃くなりすぎるのだ。なかなかうまくかないものではある。

 四代目のガブの娘も息子も、期待薄なので、別系統に注目するしかない状態。ガブの兄はグリだ。彼と前妻フネとの間に子孫を残さなかったのは、ガブたちの系統が先に生まれたので、飼主が偽卵とすりかえてしまったためで、彼自身に健康上の問題はない。オスだかメスだかわからなかったり、ゴマ塩頭でなければ嫌だとか、ガブの奇怪な子孫はこのさい、脇に置いておくのが賢明というものだろう。
 
グリとセーユは7月の同居には失敗したが、その後一ヶ月隣り合わせの鳥カゴで生活させた結果、8月の末の同居ではうまくいき、巣箱を入れると、当然のように中に入り、当然のように巣作りをし、9月下旬には当然のように卵を産んだ。思えばセーユは、オマケにいじめられたり、ゴンを夫と信じたり、まともな幸せとは縁遠かったから、健全な夫を得たことは祝福すべきだろう。しかし、その『健全な生活』はセーユに意識改革をせまることにもなった。昨シーズンは、同性のゴンと一緒に、放鳥の時にガブなどの不特定多数のオスに尻尾をふって、抱卵はゴンと共同作業といった生活だったので、今シーズンもガブに尻尾をふってしまう。それを目にした夫のグリは(血相を変えて)飛んできて、交尾しようとする間に割ってはいり、不貞の妻をかじる。逃げると追いかけて、かみつく。文鳥のオスの焼きもちは見ものなのだ。それでいて、自分は妻以外のメスにも言い寄るのだから、勝手なものだが、このへんは性差というものだろう。しかられたセーユはビックリしていたが、理解したようで、なりふりかまわず尻尾をふらなくなった。その方が、風紀上、飼主も安心できる。

 面白いもので、メスの浮気についても、個性がある。ブレイの妻であるチビは、夫以外に尻尾をふることはない。ガブの妻のソウもふらない。サムの妻のクルは浮気者で、さらにヘイスケの後妻のナツにいたっては、さえずられると見境がない。
 ちなみに、妻の浮気を見つけた時のヘイスケの嫉妬はものすごい。徹底的にナツを追いかけて、容赦なくかみつく。殺してしまうのではないかと心配になるくらいの勢いだが、自分は平気で浮気する。

 9月末、グリとセーユは卵を産むまでは問題なかったが、抱卵をはじめない。夜な夜な連れ立って遊んでいる。どうも自分の鳥カゴの位置が、正確に把握できず、帰れないようだ。確認すると卵が4つあった。ヘイスケとナツ、クルとサム夫婦も、ともに4個で抱卵をはじめているので、卵をすり替えて温めてもらう事にする。つまり仮母、仮親というべきか。さらに、一週間ほどして有精卵と確認できたものを1個か2個残すことにしようと思う。何しろすでに16羽いて、気楽に増やすわけにはいかない。また、たくさん孵化させて、お店に売るのも気が重い。極端な産児制限も致し方あるまい。『一人っ子政策』だ。
 ヘイスケ・ナツ夫婦の方は、妻のナツが浮ついているから、クル・サム夫婦に有精卵を任せればよいだろう。何しろ、サム君は育雛の天才なのだ。・・・などと、胸算用をしているのだが、どうなることやら・・・。

2002・9
 人間の方は結構忙しかったが、文鳥たちの日常に変化はなかった。ただ、今年の夏は、まったく、どうにもこうにも暑かったので、熱帯原産の文鳥たちも、少しはバテていたような気がする。しかし、繁殖期ではないこの季節は、文鳥も飼主であるところの人間も、のんびり出来て、基本的に気楽だ。ただし、そんな季節は長続きしないのだった。
 8月下旬、残暑は十分殺人的だったが、文鳥たち、特にオスたちは、徐々に色気づきだした。さえずりが頻繁となり、メスを追いはじめる。暑さは相変わらずだから、繁殖期への移行は、日長の変化をもとにしているに違いない、などと考えつつ、準備を始める。

なぜかパッケージがこっている 今年は、すべてをカップルにして、8カップルそれぞれに箱巣を入れることにした。実は春に買い込んだ新アイテムを投入したくて、うずうずしていたのだ。その名は、『WARA・Gー』。箱巣の中に産座として敷く、ワラ製の四角形をしたものだが、昔からどこかで売られていないものかと思っていたものだ。何しろ、箱巣の産座として、カナリアで使う皿巣を加工していたのだが、いちいち切るのが面倒なのだ。ものの本によれば、文鳥生産地の弥富の繁殖農家は四角形のワラジの敷物をしているとあるのだが、近所(横浜市)で市販されている様子はない。いくらなんでもワラジを買いに名古屋に行く気にはならないので、ブツブツ文句を言いながら、皿巣を加工するのが、繁殖準備の定例行事となっていた。
 そのあこがれの四角ワラジが、『カワイ』(つぼ巣などをつくっている会社)から売られているではないか!『ワラジー』なんて商品名を考えた人物の頭をはたきにかけねばならぬ、と少し思ったが、それより何より、即座に買って、「カワイ偉い、カワイすごい、形のいびつなつぼ巣があっても、今後は文句を言うまい。カワイ様様。」と唱えていた。当然、素直ではないので、ウサギやフェレット用のワラ製の敷物を生産する、あくまでついでに、売り出したに違いない、と斜めからも見ているのだが、ついででも何でも良いのだ。
 八つの箱巣を天日干しにして、『ワラジー』を敷く。『ワラジー』は2枚セットで売られているが、間抜けたなことに、1セット、ひとまわり大きなセキセイ用の品物を買ってきていた。大きさを切りそろえて使うことにする。下敷きなど無関係となるくらいに、巣材を敷き詰めるヘイスケやブレイなら、ほつれたりもしないだろう。
 完璧に準備をしたが、なるべく産卵時期は遅らせたいので、うず高くつまれた箱巣をかかえて、しばらく文鳥たちの様子をうかがうことにする。

文鳥たちは気に入るだろうか さて、7月来、ゴンとノロ、グリとセーユをカップルにしようとしているが、8月の中旬までは何ら進展はなかった。ゴンとノロは相変わらず、ちびでやせっぽちのノロが虚勢を張り、ゴンはそれを適当に無視、仲良くなる雰囲気ではない。別居して、隣り合わせになっているグリとセーユは、換羽中のセーユに、グリが特別関心を示す様子もなかった。
 「男女の仲というものは、なかなかうまくいきませんな。ハッ・ハッ・ハッ!」
 この際、笑って済ましてしまうつもりだったが、八月末となると、変化してきていた。

 決定的なシーンも目撃した。メスのゴンのさえずり。つぼ巣の中のノロに対して、姿勢をかがめて「チュチュッ・チュチュッ・チュチュッ」とさえずっている。ノロも「チュピー・チュピー・・・」とさえずり返している。前々から、ゴンはたまにさえずろうと努力をしていたので、オスだと勘違いしてオカマ文鳥なのだと決め付けていたが、ここにきて、一段と上達したらしい。
 去年、2歳で卵を産んでメスと判明し、メスに「ゴン」も何なので、「ゴンナ」などと呼んでもいたが、結局メスのセーユからは夫と思わていたし、また目の前でさえずってくれたし、・・・これは、完全なオナベ文鳥だ。いや男装の麗鳥というべきか。
 おそらく、彼、いや、彼女、ゴンナ、いや、ゴンか・・・、とにかく、ゴンは、オスのノロに言い寄ったのだろう。おそらくこんな感じで・・・。「あんた、家事洗濯はうまい?主夫になりなさいよ!」
 やせたちびのノロは、それでもさえずるし、最近は色気づいて、放鳥時、メスに交尾しようとしているオス文鳥だから、ゴンの望む主夫になってくれるか、予断を許さない。

 セーユはゴンのことを慕っていたのだが、ゴンがセーユを嫌いだし、最近では対立関係に入りつつあるのも興味深い。
 換羽の終わったセーユに再び接近するようになったグリは、放鳥の時にセーユにくっついてまわり、またしても夫気取りをしている。同居した時から仲良くすればよかったのに、と思うが、文鳥もそう簡単ではないのだろう。そしてこの夫気取りの存在が、元「夫」ゴンにとってはしゃくに障ったものと想像する。やたらベタベタついてまわっていた同居者が、どこかに行ってしまい、気がついたら、他の者と仲良くしていれば、腹も立つではないか。
 もちろん、ゴンとセーユの別居は自発的なものではなく、グリがまとわりつくのもセーユが色目を使ったわけではない。理不尽なゴンの態度に、セーユも百年の恋が冷めて当然だ。家事洗濯いろいろ尽くしたのに、冷たくされれば腹も立つではないか。
 かくして同性の両思いの関係は、かなしくも破綻し、仲人飼主が無理にもすすめる相手と仲むつまじくしてくれるように、願う(そうはうまくいかないのだろうなあ)。

2002・8
 赤えんどう豆の栽培経過を『その後』に補足しました。また文鳥の羽毛色遺伝についての、推定表を改良しました。結局、文鳥の色彩変化は人間の髪の色と同じでメラニン色素の濃淡(真・亜メラニンの比率)だけだと思うのですが、それでも、その遺伝の話となると面倒です。お気づきのことがありましたら、ご教示ください。

 七夕はカップリングには吉日かもしれない、と突然思いたち、ゴンとノロ、グリとセーユの同居を開始させた。天の川の二人は、また別れるのではなかったかなあ、などと不吉な気持ちに変わりつつ様子を見ていたが、特別争いは起きなかった。これは存外手間いらずだ。と喜び始めたら、雲行きが怪しくなってきた。ノロが生意気にもゴンを威嚇している。これはゴンの方が実力が上なので、放っておいても問題はないが(ゴンはエサだとか、自分の方の都合がない限り争わない)、グリがセーユを追い払い出しはじめたのは計算外だった。
 前夜の放鳥時は、セーユの主人面していたグリは、自分のカゴに入ってきたセーユに対しても歓迎ムードだった。ところが、肝心のセーユの方は落ち着きなくソワソワしているものだから、自分の気持ちが伝わらないのにイラつきだし、さらに段々わけがわからなくなり、いまだかつて、そんな事をしたこともないのに、隣のカゴのクルにモーションをかけはじめ、邪魔なセーユを追い払いだした・・・ように、その経過は見て取れたのだった。
 「アホめが」舌打ちしながらグリとセーユの鳥カゴの場所を移す。今度はブレイとチビの鳥カゴの隣りだ。クルの姿が見えなくなり、グリは落ち着きを取り戻した。ところが安心する間もなく、今度はブレイが落ち着きを失った。隣にあらわれた若いメス(セーユ)に色目を使い、チビを邪魔扱いし始めたのだ。『若い子が好きなのさ』と言うことのようだ。「馬鹿ブレイめが」腹を立てつつ、鳥カゴの間をダンボールで目隠しする。ブレイの奴は古女房の機嫌をとり始めた・・・。

 同居1週間、特に仲良くもなければ、ケンカするわけでもない。どちらのカップルもそういった感じだ。ケンカしないなら、そのうち何とかなるだろうとポジティブに考えることにして、鳥カゴを置いているスチール棚の改良という前々からの構想を実施することにした。
 現在普通のスチール棚と室内温室になるスチール棚(といっても専用のビニールシートがあるだけ)を並べ、鳥カゴを置いているのだが、一番下の段は空けている。鳥カゴはできるだけ高めに置くのが自然とされているため、このようにしているのだが、この配置では、最上段が棚の屋上となってしまい、真冬の温室化に不都合が生じてしまう。
 鳥カゴを地べたに置かずに、ビニールシートの内部に三段を確保するには、スチール棚の下に手ごろな家具を置け良い。これが、ささやかな構想の中身なのだった。

 スチール棚は幅78cmと90cm、奥行きはともに35cm程度あるので、まず、それにみあった家具が必要となる。「求めよ、さらば与えられん」はウソだと思うが、この場合はネットで手ごろなものが見つかった(幅86cm・奥行き40cm・高さ43.5cm)。大きさはほぼ理想的、値段は1つ5000円、高いとはいえない。こういった買い物は、来て見てがっかりすることも多いものだが、届いた商品は期待を裏切らなかった。適当に安っぽいが、組み立て家具としては、それなりにしっかりしていた。
 組み立て作業は好きなので、手早く、手荒くつくってしまう(丁寧ではない)。苦になるのは、組み立てよりも設置作業だった。当然文鳥たちのいるカゴをすべて移動させねばならないが、何しろ騒々しいのだ。
 隣の部屋に移され、苦情の騒ぎを起こしている文鳥たちに急き立てられ、真夏級の熱波に見舞われながら、家具の上にのせるスチール棚が転倒しないように金具などを取り付ける作業や、派生する様々な困難を乗り越え、まずまず思い描いたような姿に仕上げることが出来た。文鳥たちは感謝などしてくれはしないが、しばらく満足感に浸ったのだった。

 先月からはじめたトウミョウの自家栽培、国産赤えんどう豆も青々と育った。通販のえんどう豆に比べて、成長が遅いかわりに、茎が太く葉が濃い。あまりヒョロヒョロと高く伸びないかわりに、非常に丈夫だ。文鳥たちにも好評であった。

 トウミョウ栽培の研究をするつもりはないが、真夏の暑さでくさらないように工夫する必要がでてきた。何がくさるのか。根というより豆本体がくさってしまうのが問題なのだ。市販のトウミョウも、刈り取った後再成長させようとしてたっぷりの水に浸したりすると、すぐにくさる(昨年までは。赤土の中に植えていた)。
 つまり、豆が水に浸らないようにすれば良いのだろう。トレーに入れる水を少なくすれば問題はあっけなく解決するではないか。しかし、トウミョウの栽培に使っている容器は底が浅いので、豆本体より低い水位では、夏の日中に水が干上がってしまう恐れが出てくる。水を多く入れても、豆が水に浸らないようにしなければいけない。・・・割り箸でつっかえ棒を作れば良いのだ。簡単である。
コチラ
 さらに、100円ショップで売っていた深底の容器に、やはり100円ショップで売られていた金属ザルをのせて栽培してみる。根が出てきたら、徐々に水位を下げて根っこを下に下にと誘導すれば、根がからみ合って容器にくっつくこともなくなり、メンテナンスが楽になる効果も期待できる。名づけて、「ヒヤシンス式水耕栽培」・・・。うまくいくのか半信半疑だったが、別に問題なく成長している。誘導しなくとも根はあまり絡まずに下に伸びている。サイズ違いの水切りボール(ボールの方が小さい)などを使っても良いかもしれないと思った。

 7月下旬になって、セーユがようやく、華々しく換羽をはじめた。それも影響したのか、グリがまたセーユを追いはじめた。それほど悪質ではないが、セーユの換羽が終わるまで別居させることにした。グリのカゴはセーユの隣り置く。このカップルも、まだまだ紆余曲折ありそうだ。

2002・7
 ずいぶん前から、書こうと思っていた鳥カゴについての私見を、ようやく『文鳥問題』に載せました。また、新しい文鳥の飼育本についての感想を『文鳥学講座』に付け加えました。さらに、トウミョウの栽培について『その後』に載せました。

 換羽が華々しく展開している。羽毛が舞っている。先月悲惨な状態になったガブはすっかりはえそろったが、グリ・オマケ・ノロはゆっくりと継続し、ブレイ・チビ・ナツ・ソウ・ゴンが換羽最盛期をむかえ、あの外見抜群のゴンが、かなり貧相な状態になっている。ヘイスケ・マセ・ガツ・サム・クル・ハンも換羽に突入。残るはセーユのみだが、やたらと毛並みが良い。いまだにオスのさえずりに尻尾を振ったりしているが、換羽するのだろうか。
 換羽が終わったら、セーユはグリと同居させようと考えているのだが、換羽をしないようならどうしたものだろう。悩む飼主の思惑に気づいたのか、妻に先立たれたグリがセーユと仲良くしようと接近し始めた。セーユに他のオスが近づくと、恐ろしいけんまくで追い払う。もう同居させてもよいかもしれない。

 セーユがグリと暮らすようになると、ゴンと同居しなければならないノロだが、運動神経に難がある。いまだにまともに飛べない。一度何かに驚いてテレビの後ろに墜落した時はこまった。絶対に自力で飛び上がれないので、助け出さなければならないのだが、他の文鳥たちを帰宅させないと、大変な状況になってしまう。少し様子を見ていたが、何の音もしないので、他の連中を何食わぬ顔で鳥カゴに戻してから、テレビ台となっている食器棚の後ろをのぞいてみたが、ノロの姿は見えない。ガタガタ動かしても反応がない。まさか打ち所が悪かったのではないかと心配になって、その家具をどかしたら、ホコリまみれの文鳥がのっそりと顔を出した。暗いところで、怖くて震えていたと言うより、ボーとしていたのだろう。これでは、目を離した時にどこかに落ちたら、完全に行方不明になるに違いない。ボケキャラには注意が必要だ。

 トウミョウの自家栽培は、あっけないくらいに簡単だった。文鳥たちにも好評だ。ソバもやしも頼りなげに成長したが、こちらはなぜかガブだけが興味を持ち食べている程度であった。ソバはスズメにでもやってしまおう。
 大きな水切り容器と、小さな水きり容器を用意し、窓辺にずらっと並べて、もはやトウミョウの自給自足体制は完成した、と喜んでいたら、赤エンドウ豆(みつ豆で使われる種類)が、近所の乾物屋で売っているのを発見してしまった。北海道産100g120〜130円(一合190円)国産のためか、かなり高い。しかし、市販のトウミョウを買うよりは安い(100gあれば市販の200円分以上は出来ると思われる)。国産だろうと何だろうと、そんなことには無頓着なのだが(国産も怪しいと言えば怪しい)、しかし、近所で買えた方が便利なので、今度からこれでも栽培しようと思う。
 竹炭入り塩土は、かなり期待してみているのだがあまり反応はない。ナツが一羽だけ食べている。塩土自体、食べるというより「つまむ」もので、爆発的にむさぼり食べるとは思わなかったが、他の塩土を食べて、素通りするものが多い。以前から、塩土といっても、市販されているインコ用のものを砕いたもの、通販の飼料会社のもので赤玉土のような状態のもの、2種類を並べて置いてあるが、その中間に竹炭入りを置いて売り込んでいるのだが、エサとして認識しないようだ。以前からの2種類の塩土にしても、どちらが好きなのか観察して、好まれる方を採用しようと考えていたら、どちらか一方が好評と言うわけでもなく、それでいて、よく見ていると、文鳥によってどちらか一方をより食べているようなので、一方を放棄することができなくなったのだった。竹炭入りもそういった感じになって、「三種類の豊富なメニューから、お好きな塩土をお召し上がりいただく」つもりだったが・・・、もう少し、様子を見よう。

2002・6
 HP『文鳥幼稚園』とリンクさせて頂きました。文鳥の大きさはまだ幼稚園クラスですが、研究心豊かな内容に感心させられるホームページです。

 そろそろ産卵も終わる頃なので、巣箱からつぼ巣に切り替えた。いい加減暑苦しいので、温室まがいに鳥カゴを囲っていたビニールも片付ける。もう夏のような陽気だ。換羽がはげしくなっている。
 ノロの換羽は、実際、ノロノロと進行している。一方、オマケの換羽はなかなか劇的に進行し、首の周りなどはゴソッと抜け、トゲ状の新羽毛が姿を見せている。かなり以前から、クチバシの根元がはげていたが、そこにも毛が生えてきた。少しはりりしくなるだろうか。
 劇的な換羽といえば、ガブだろう。今年の彼のそれは、頭から来た。頭頂部が一夜にしてすっかり抜け、サッカーフランス代表の中心選手を連想させるられる。例年、ガブの後に妻のソウが換羽となり、はげた妻を外見重視のガブが見放したりするのだが、今年はどうなるだろうか。

 ゴンも換羽。外見は飛びぬけて美しく立派な彼女だが、ついに頭がはげた。いらつくらしく、夜遊び後、ブランコについている鈴を「ガチャン・チリリン」と鳴らしている。
 そういえば思い出した。彼女は子供の頃、自分のブランコに鈴がついていないのが不満で、他の鳥カゴに入り込み、あてつけがましく、鈴を散々に鳴らしていたものだった。「アタイのうちには、こんなものないわよ!」仕方がなく、鈴付きのブランコを探しに行ったものだ。意思表示の手段に使っているのかもしれない。油断のならない文鳥ではある。
 この怪しい文鳥と同居しているセーユは、これまた変な鳥で、そそっかしく動き回り、手乗りではなかったはずなのに指と遊び、同性のゴンを愛している・・・。それでも不満はあるらしい。いくら愛しても、背の君はさえずってくれないのだ。仕方がないので、他のオスがさえずると、近くによって聞き入っていたりする。しかし悲しいかな、態度が怪しすぎるし、メスにしては体型が立派過ぎるしで、オスの文鳥はかえって逃げ出してしまう。
 このカップルは、それなりに幸せなのだろうが、換羽が終わったら、別居させようと思う。

 我が家の文鳥の夜食の1つである(夜に野菜をやるのは良くないと、最近発売ののアニファの文鳥飼育本に書いてあったようだが、気にしない)トウミョウは、自宅で栽培する人も多くなっている様子なので、マネしてみようと思う。夏場は根が腐ってしまうので、一度刈り取った市販の物を、赤土の中に植えたりしていたのだが、家で栽培できればその方が楽な気がしたのだ。100円ショップで水切り容器などを買ってきて、えんどう豆(ついでに「ソバもやし」もつくってみようとソバの実も注文する。文鳥が食べるかは知らない)を通販で頼む。成長してくれるかはお楽しみだ。
 いきおいで、『竹炭入り塩土』なるものも買って(この通販飼料店は色々つくって偉いとしみじみ思う)、粉砕して他の塩土と並べてみた。胃腸に良いらしいとは聞いていたが、健康的だから食べさせるようというわけではない。結構好きなのではないかと思ったのだ(台所の消し炭のようなものをかじろうとしたりするから)。しかし、数日見ているが、あまり食べていない。そのうちブレイクするのだろうか。こちらも楽しみだ。

2002・5
 内容の一部を他のサーバに移しました(URLが変わりました)。無料サーバもあるけれど、自分のホームページに広告がまとわりつくのは目障りなので、普通のプロバイダ会社にしました。せっかくなのでEメールアドレスを文鳥にちなんだものにして、そちらを表示することにしました。

 文鳥たちを『帰宅』させた後、まれにカゴの出入り口を閉め忘れてしまうことがある。そんな時は、朝、捕獲しなければならなくなる。この間は三姉妹のガツが逃げ回り(昔から一番やっかいな奴)、えらく手こずってしまった。
 頭にきたので、ついでに爪切りをしてやることにする。爪など何の関係もないようだが、こういったものは勢いでやってしまわねばならない。私の場合、爪を切る行為そのものよりも、爪を切るためにカゴから取り出すのが憂鬱で、なかなか切ることができず、かなり伸びているのを横目に、新たに買ってきた人間用爪切りを片手に、悶々としていたところだったのだ。何しろ、一羽捕まえようとすれば、同じカゴのみか、離れたカゴの者どもまで騒ぎ立て、収拾がつかないパニック状態に陥ってしまうから、なかなか手が出せない。
 ガツを追いかけたおかげで、他の文鳥たちも騒然としている。「毒食わば皿まで」、すでにパニック中なのだから、パニックになるのをさけることはない。懸案事項の片をつけるには絶好の機会ではないか。そこで大騒ぎの中を、三姉妹、クル、ブレイ、チビの6羽の爪を切っていった。絶対に観念しないブレイの奴は、何をどうしても手の中でもがき続け、指に噛み付いたりしたが、いつものことなので驚きはしない。ゴミ箱に捨ててやろうかと、少し考えはしたが…。

 今年もボチボチ換羽が始まり、産卵の季節も終ろうとしている。昨年の秋以来、すでに5歳のチビも、相変わらず毎月産卵を続けていた。昔の文鳥たちはこんな歳まで産卵しなかったと思うのだが、いったい何歳まで産むつもりなのだろう。さすがに、最近は中身のない卵などがあるから、そろそろ限界ということにして欲しい。
 そういえば、なぜ中身のない卵が出来るのかも、不思議といえば不思議だ。この間拝見した鶏卵のHP(『
たまご博物館』)によれば、ニワトリの場合、卵巣を出た卵(黄身)は輸卵管の中を数時間ほどかけて白身などを付加させつつ成長し(受精はこの間に起きるようだ。つまり交尾の有無とは無関係に産卵が起きる)、総排泄口の手前で10数時間をかけて卵殻を形成した上で産卵されるという話だった。ようするに黄身に白身がついて、さらに殻が周りをくるむといった経過をたどるわけだが、中身がないのに外殻が形成されるというのは、一体どういった手違いで起きるのだろうか。…まあ、文系人間にとってはどうでも良いので、考えないことにしよう。
 文系ならぬ文鳥系として重要なのは、卵殻形成が産卵の間際に起きる点で、これは、産卵前日に摂取したカルシウムがそのまま卵殻に変えられていることを意味する。卵殻形成に必要なカルシウムはおそろしく消化吸収が早いから(ニワトリの場合摂取後15分で卵殻形成に利用されていたという)、卵殻の形成がうまくいかず軟卵となることで起きる産卵障害の対策として、カルシウム補給は即効性が期待できるわけだ。となれば、我が家の文鳥たちの卵の殻は、前夜にかじったカトルボーンが変化したものに相違ない。海の生物が一夜にして空飛ぶ生物の卵になってしまうというのは、なかなか面白いように思えた。

2002・4
 飼育法のページを少し改良し、写真館の画像などは全面的に貼り替えました。ブロードバンド時代は画質を向上しなければ…と思ったら、サーバの容量(10M)を超えてしまいました。そのうちに、部分的に他のサーバにデータを移す必要がでてきそうです。

 えこひいきしているヘイスケが、何をしようと気にならないのだが、一つだけやめてもらいたいことがある。それは、ビスケットやら煮干のかけらなどをクチバシにくわえて、わざわざ飼主の頭の上に運び込み、ゆっくりと食べる習慣だ。他の文鳥に邪魔されずに、ゆっくり食べたいのはわかるが、おかげでこちらの頭はビスケットまみれになってしまう。髪をレインボーカラーにも出来ないので、あきらめるしかなさそうだ。

 さて、見ていて飽きないセーユだが、夜遊びの時間にまったく出てこない日があった。フネの事もあるので少し心配になり、巣箱の入り口から指を入れると、強烈にかみつかれてしまった。セーユの場合つつくのではなく、ガジッとかむ。文鳥のことだから痛くともたかが知れているのだが、そんな日が3、4日続いた。
 一所懸命に卵を温め外に出れないところに、指など入ってくれば、かじるくらいは当然だろう。しかし、我が家の文鳥たちの美点といえば、抱卵は夫婦などが交替して行うところではなかったろうか。一方が適当に遊ぶと自主的に帰り、入れ替わりに相方が遊びに出てくる…、飼主を感心させるこのシステムは、独身の三姉妹すら実行していたし、セーユの場合も、夫もどきのゴン(ナ)と交替でうまくやっていた。ところが、セーユの出てこない期間のゴンはといえば、「関係ない」といった様子で、まったくカゴの方を気にもしないで遊び続けていたではないか!
 ゴンの方が産卵が早かっと思うので、セーユが「まだ、あきらめない!」のに対して「もう、やめた!」になっているといった態度となっているとは思うのだが、そうであっても抱卵中の相方の事を、少しは気にすべきではないだろうか。例えば、妻ナツはあきらめが悪く抱卵を続ける夫ヘイスケに、「一緒に遊びましょう」と何度も誘いにいくし(罪悪感があるように見える)、三姉妹など産卵日はお互いに異なっているはずだが、自分以外の姉妹の卵であっても交替で温めている。
 セーユは同性のゴンを夫的立場にあると信じているようだが、ゴン(ナ)にとってセーユはどういった存在なのだろう?以前、別居していたセーユを自分(ゴン)の卵を温めさせるために、呼び込んでいた姿が思い出される。やはり、ゴンにとってはセーユは自分の卵を交替で温めてくれるお手伝いさんに過ぎないのではないだろうか。自分の卵はもう孵らないと思った瞬間に遊ぶ、お手伝いさんの子供(卵)を温めることなど思いもよらない。さすがに我が家の箱入りは、身勝手で面白いが、セーユには別の伴侶とまっとうな生活を送ってもらうべきだろう。

 からかって楽しいオマケも、夜遊びの時間に気づかずに出てこないことがある。こちらはオスで、しかも独身だから、大して心配しない。二羽用のカゴで一人暮らしのオマケは、巣箱で一人で熟睡しているに相違ないのだ。夜遊びは大好きだが、出入り口が開いたのに気づかないだけなのだろうから、「オマ、オマ!」と呼んでみる。よほど、寝込んでいるらしく反応がない。巣箱に指を入れると、卵を守る母性などないから、寝起きであわて騒いで飛び出してくる。
 オマケが人間だったら、修学旅行でオモチャになっただろうなあ、と少し思った。

2002・3
 フネが亡くなったので、追悼ページをつくりました。

 フネが死んでしまった。1999年の6月くらいにホームページを始めてから3年近く『団地』に死が訪れることがなかったのだが・・・。もっとも、その間、蛇にかじられたのはいたけれど・・・、真冬に蛇が出てきたら、幽霊よりも恐ろしい。巣箱で死後一日は経過して冷たくなっているフネを片付け、巣箱の掃除をしながら、原因を考えた。抱卵中なので卵詰まりではない。何かに脚が引っかかり餓死してしまったわけでもないようだ。病死としか考えようがない。
 思い出されるのは、1998年心臓発作のような症状で死んでしまったクロのことだ。産卵が苦手で、産卵のたびに体調を崩していたのはフネと同じだった。関係ないが顔も似ている。しかしクロの場合は、衰弱がわかったし、もう長くないのは数日前から感じられた。フネの場合は、数日前まで普通にしていた。前日の夜遊びの時間に出てこなかったが、抱卵中にはそうした事もあるので、気にもとめなかった。
 カルシウム不足に陥りやすい鳥だったので、その手の薬も用意していたが、結局使用する暇もなかった。警戒はしていたつもりなのに、残念なことをしてしまった。

 後悔する部分を多々思い悩みつつも、では、何が出来たかといえば、何も出来はしなかったと結論した。そして、かなり現実主義の飼主は、自然界の現実(死なない生き物などない)に嘆き悲しむよりも、次のことを考え始めていた。最愛の妻を失ったグリが存在している。これが現在と未来の課題なのだ。
 一番良いと思われるのは、セーユをグリに後妻にすることだろう。セーユにとって、わけもわからず威張っているオマケよりも、ずぅーーーと素敵な伴侶となるはずだ。オマケの奴はセーユを嫁にするのを拒否したのだから、ごま塩の一羽でもナンパして、自分の鳥カゴに誘うべきだろう。飼主の関知する所ではない(最近オマケは飼主の左親指に求愛している。ゴンの婿になるはずのノロは右親指に求愛している。こいつらはアホだと思う)。グリとセーユの子供なら、ずいぶん立派な文鳥になるだろう。
 産卵期が終わったら、ゴンとノロ、グリとセーユのペアをそれぞれ同居させ、秋に臨む、そんな青写真を描いた。

 家の中で放して遊んでいると、行方不明になることがある。この間も、ノロの姿が見えなくなり血の気の引く思いをしたが、彼はただ、高所の板の上でたたずんでいただけであった。経験上、こういった時は、静寂にして文鳥の発するわずかな物音を探知するのが良いのだが、物静かな文鳥が暗く狭いところにはまってジッとされてしまうと、お手上げ状態になる。しらみつぶしの探索が必須となってしまう。
 それで、以前、アメリカで多くの小鳥を飼育されているという方(日本人)から頂いたメールを思い出してしまった。「(欧米の家は広いので)小鳥は小さすぎてたくさんある部屋のどこへ逃げ込んだかわからなくなり、後にあわれな干しフィンチをベッドの下で発見する」との話だった。アメリカンジョークと承知しながらも、ギョッとした。家の大きさはこの際まったく関係ないのだが(暗い部屋に飛んでいきたがる文鳥はいない。部屋数が多くとも扉を開けられる文鳥はいない)、「ベッドの下」というのが、非常にリアルだったのだ。もっとも、家の中で行方不明となった文鳥を、見つけ出すまで探そうとしない日本人など、さて、存在してしまうものなのかなあ、と考えてしまう。

2002・2
 HP『伊万里の洞窟』とリンクさせて頂きました。波照間島旅行記などいろいろなエッセイが楽しめるホームページです。

 ゴン(ナ)の奴はシングルマザーを決め込むことにしたらしい。同居中のノロを無視して巣作りに励み、当然ノロとは無関係の卵をせっせと産んだ(やっぱりメスだったのだ、などとまだ考えている飼主)。さらに几帳面に卵を温め…、さて、ノロとしては何やらせわしなく働いていた同居鳥が巣箱の中に引きこもりだしたから、不思議に思うのも致し方がないだろう。ちょっとのぞいてみる。すると、ゴンナが火の玉のような勢いで飛び出してきて、手ひどく追い立てかみ付くではないか。
 これは高みの見物を決め込むわけにはいかない。放っておけば、あわれ『妻』より二回り小さな『婿』は(体重差6g超)、生命まではともかく、指の一本くらい失いかねない。第一、ノロが狂暴化したゴンナを恐れるようになったら、カップリングなど永久に絶望的なことになる。人間はどうだか知らないが、文鳥の場合は、ある程度オスがしっかりしないと話にならないと思うが、しっかりするどころではなくなってしまう。
 非手乗りであるはずが、飼主を慕ってくれているノロが女性恐怖症になる前に、さっさと別のカゴに避難させた。

 シングルマザーなどと言っても、一羽で卵を温めるのは大変だろうに、と皮肉な目でゴンナの様子に注意していたら、その点はすぐに本人も自覚したらしい。何しろ、交替して抱卵してくれる鳥がいないと、安心して外出(夜遊び)出来ない。この困った事態に、ゴンナは隣りの鳥カゴに住んでいる元の同居鳥(本来は妻)セーユを夜遊びの時間に自分の鳥カゴに誘導し始めた。

 『卵を温めるまで、セーユのことなど気にもとめなかったくせに…、ヘルパーでも雇うつもりか…。』

 自分の遊んでいる間、子守を頼もうとしているに相違ない。油断のならない文鳥だ。
 ずいぶんムシの良い話だが、セーユはそれほど嫌でもないらしい。数日すると、何となくゴンナの代わりに温めはじめた。きっと調子に乗りやすく、だまされ上手な性格なのだろう。それでも「我が身に変えても」といった決意はないから、少し物音がすれば巣箱から出てきてしまう。また夜遊び時間が終了すると、オマケとの同居カゴに帰るのを嫌がる様子もなかった。
 つまり、必要な時だけ子守をして、自宅に帰っていく・・・、まさに理想的なヘルパー、お手伝いさんといえよう。

 しかし、そのセーユも卵を産みたくなってくると事情が変わってくる。といっても、これまた『婿』であるはずのオマケの子供ではない。何しろ、同居中の威張り鳥オマケの奴は、相変わらず巣箱を占拠し、『妻』とすべきセーユを寄せ付けもしないのだ(本当にごま塩頭が好きらしい)。仕方がないのでセーユは鳥カゴの下段に設置したつぼ巣に、2個ほど卵を産んだ。しかし、同居のイバオマの存在に将来の不安を感じないわけがない。
 「あんな暴れ者と一緒じゃ、落ち着いて子育てなんて出来ないわ」
 きっとそんな風に思ったにのだろう。夜遊びの時間にゴンナの巣箱に入り込み、出てこなくなってしまった。ついには居ついて、安心して卵を産み…。
 何のことはない、同性のカップルがもとの関係に戻ったわけだ。

 飼主はこの予想しないでもなかった事の推移を目の当たりにしつつ、責任問題が自分に及ぶのを避けようと、責任のほとんどをオマケに押しつけることにした。
 「お前が生意気に、えり好みなどするのがイカンのだ!」
 彼は、2羽用のカゴで悠然とブランコに乗っている。一番得したようだ。
 さらに、婿であるべきノロの責任も問うべきだろう。
 「お前がしっかりしないのがイカンのだ!」
 彼は、なにやら勘違いした目でこちらを見つめ、人の指にプロポーズをしている。

 2羽の間抜けなオス鳥に文句を言っても何にもならぬ。この6代目繁殖計画の重大局面にかんがみ、飼主はいかなる行動をとるべきか。…そう、こういった時は何にもしないのが一番だ。さじを投げて、春まで放っておくのが唯一の平和への道だと確信してしまう。
 産卵シーズンが終わったら、それぞれまた同居させれば、たぶんゴンナとノロは仲良くなり得るだろうし、オマケの方は…、あまりひどければ制裁を加えてやればよいのだ(良いのか?)。来シーズンに期待しよう。

2002・1
 鳥カゴや備品について、勝手な意見を書き散らそうと思っていたのですが、パソコンを替えるドタバタの中で、下書きのデータが消えてしまいました。せっかくなので、鳥カゴについて何か意見があればお聞かせください。
 とりあえず、
『文鳥の系譜』でノロ購入の話を載せました。

 年の瀬はいろいろだった。

 メスであったゴン(「ゴン子」ではあんまりなので、「ゴンナ」と愛称することにした)には婿を迎えることにした。10羽を過ぎた頃から一羽も増やしたくないと思いつつ、これで17羽目となってしまう現実に臍(ホゾ)をかむ思いだが、もはや致し方ない。
 この際だから、川崎市の溝ノ口なるところで一万円で売られている実に端正なブルー文鳥(シルバーと原種の中間でやや青みがかった色合いのものをこのように称することになったらしい。一年程前に某大型店で『ブルー文鳥』として見かけたものより、かなり原種に近い。それにしてもあっという間に安くなるものでしょう。みなさん!)をゴンの『婿』にしてやろうかと考えたが、繁殖して桜文鳥でなくなっても困るのでやめた。
 そして、例によってウロウロした挙句、結局近場のお店でゴンの婿となるべき桜文鳥のオスを買ってきた。『ノロ』と名づける。
 運動神経に問題がありそうな様子なので、そんな風に呼んだのだが、彼は日増しに力強くなっていき、なぜか人間の肩に止まって美声を披露するようになった。人間を友達くらいに考えているらしい。手のひらで平気で水浴びをしてしまうブレイやセーユは、手乗り文鳥の売れ残り、つまり人間に餌付けされた経験がありそうだが、ノロは手を避けようとするから、それとはちょっと違うようだ。

 数日様子を見つつ、抱卵3週間ほどのゴンとセーユから偽卵を取り上げ、1日置いて、ゴンとノロ、オマケとセーユをペアにして同居させた。
 予想はしていたが、問題はオマケだった。彼はゴマ塩文鳥がタイプで、色の濃いメス文鳥には目もくれないのだ。あいにくセーユは飼い主の好みで見事な桜文鳥だから、ただでさえ、威張りん坊のオマケに「ガー、ガー」追い立てられることになった。
 「イバオマ(威張るオマケの略)の奴、生意気ではないか」
 夜遊びの時間になると、日中の疲れで、腕の上でぐったりしているセーユを見ながら、オマケに警告する。
 「文句があるなら、また、養子に出すぞ!」
 オマケが人間なら、人間のチビとまったく飼育者失格の大人とゴキブリの巣くう家に戻るくらいなら、すぐに行いを直したに相違ない。しかし遺憾なことに、彼には人間の言葉が理解できなかった。ますます図にのって帰宅拒否までする始末なので、2、3枚ずつ羽を切り若干飛翔力を落としてやった。これで少しおとなしくなったが、一週間たっても夫婦といった関係にはならず、箱巣を占領して、セーユをけん制している。その態度はヘイスケの若い頃そっくりで、ようするに虚勢のため実害は少ない。徐々にセーユは本気に取り合わなくなり、結局ヘイスケ同様に尻にしかれることになるのではないかと思う。
 一方、ゴンとノロの間ではほとんど争いがない。ゴンは誰と同居しようと関係ないらしく、餌を食べ、ブランコに乗り、箱巣を確認している。まったくのマイペース。隣りの鳥カゴのセーユがこの元「夫」を慕って呼びかけても、取り立てて反応もしない。

戻る