過去のノート
2003・12
 『文鳥屋』を簡易な形にかえ、別館として位置づけることにしました。

  セーヤとクラの2羽のヒナは、実の親と仮の親(マセ・ガツ)のもとで、すくすくと育っていった。マセ・ガツに預けられた方は、全くエサをせがむ声が聞こえず心配したが、オールドミス たちは、問題なく育ててくれた。セーヤとクラの若夫婦のほうは、連日盛大な鳴き声をもらしつつ、順調に成長していった。
 11月12日、それぞれの親元から同時に引き取る。
準備は整っていた。エサは昨年のセーヤと同じ。普段成鳥が食べているアワ玉から 玉子の殻を取り除き、『ブンちゃんベビー』と称する粉末と混ぜた主食に、ボレー粉とカトルボーンと煮干しを粉末にし そこに少々スピルリナ(らん藻類)粉末を混ぜたものを副食として用意した。あとは毎日青菜をすれば良し。入れ物の小ぶりのフゴはアルミ缶に押し込まれ、ビニール巻きした鳥カゴに据える。その下には、30℃程度に発熱するシート型の保温器を設置。毎日ぬらしたキッチンペーパーを端に置けば湿度も保てる。とりあえず万全と言える。

 当然のように7代目のヒナたちは 、ぬくぬくと育っていった。マセとガツに育てられたクチバシが黒く、脚にも色素沈着の見られるヒナは、餌付けの時も鳴き声がしないくらい閑静なのでカン、セーヤとクラに育てられたクチバシにピンク色が混ざり、頬も少し白いヒナは、やたら大声で元気がよいのでゲンと呼ぶことにした。
 順調に成長していったが、3週齢を過ぎたころになって異常に気づいた。カンの脚が曲がっているのだ。ペローシスという先天的な病気があるらしいので、それではないかと考える。病院で矯正してもらうと良いかもしれないが、曲がり方がガニ股程度で(歩く前には気づかない)飼育本に紹介されるほど極端ではない 。少し様子を見ていると、成長するに従い改善してきた。止まり木などにも止まれ、日常生活に支障はないレベルのようなので、そのままにすることにした。
 そのカンにしてもガニ股以外は健康で、弟のゲンには体格で劣るが、11月25日の初飛行以降は、むしろゲンより積極的になった。 ガニ股は飛ぶときにはハンデにならない。

 ヒナたちの成長を、不安混じりに楽しんでいた27日、予期せぬことが起きてしまった。カンの育ての親でもあるマセが、箱巣の中で冷たくなっていたのだ。前日の夜は普段と変わらず、元気に遊び回っていた。この日箱巣をのぞいたのも、たまたま卵の確認のためだった ので、そこにマセの姿を見て驚かされる。卵詰まりではなさそうだが、総排泄孔が赤くふくれ加減になっていた。やはり、何らかの産卵傷害かもしれない。
 同居の姉マセがいなくなったので、ガツはさぞ悲しむかと思えば、翌朝もさほど反応しなかった。家出した程度(マセにはカゴから抜け出した前科があった)に考えているのかもしれない。気がつく前に、隣カゴのオマケをガツのカゴに放り込む ことにする。オマケは待ってましたとばかりにはりきり・・・、はりきり過ぎてガツと箱巣をめぐってケンカを始めた・・・。ガツ勝利。オマケはブランコに撤退する。
 これは、ガツにオマケの存在意義を認めさせるしかない。オマケに巣草を与える。マセとガツは夫婦のような姉妹だったが、巣作りは あまり上手に出来なかった。一方、ハンに先立たれ一羽暮らしのオマケは、巣作りしたくてうずうずしていたのだった。オマケは大喜びで巣草をくわえ、箱巣の中 で威嚇するガツも相手とせずに、せっせと運び込みはじめた。一心不乱。ガツは呆然としていたようだが、やがてマセのやってくれなかった巣作りをするオマケを見直したようだ。半日後には、仲良しになっていた。
 マセの亡骸は、最近の定式通りつぼ巣に入れて埋葬した。

 12月に入ると、いよいよヒナのカン・ゲンが行動範囲を広げていく。4日にはほぼひとり餌になり、カゴの中で粟穂やカナリアシードを頬ばっている。このニューフェイスたちの活躍はこれからが本番だろう。

2003・11
 BBSのコーナーを移転させ、少々変更しました。 また、文鳥その他の動物たちの楽しい生活を紹介するHP『ときめき動物らんど!』とリンクさせて頂きました。

 初旬、ブレイの背中に腫物を確認する。首筋辺りにあるようだ。暗澹たる気持ちになるが、いろいろ考えて病院には行かない事に決めた。
 病院に行けば、当然、切除するか投薬することになる。小鳥の首筋の切除など無理だろうし、出来たとしても、彼の年齢からして拒否すべきだろう。1997年6月に我が家にやってきた彼は、その時の様子から推測すると 、1995年秋生まれの可能性が最も高いので、現在8歳ということになる。十分高齢なのだ。治療として可能性が高いのが投薬だろう。しかしそれも気が進まない。下腹部の腫瘍と闘病したハンのように、毎日何回も人間に握られてクチバシから水滴を含まされるなど、爪を切る時でさえ指に食いついてくる無礼者には耐え難い苦痛 に相違ない。まして、それで直る保証はどこにもない。
 切除も投薬も拒否するなら、病院に行っても仕方がないではないか。悪性でなく大きくもならなければ良し、運が悪ければ、最後の時までメスのお尻を追いかけて、さえずりながら事切れたほうが彼自身も納得できると考えたのだった。
 11月になっても、背中に腫瘍を抱えつつ、毎日手のひらで水浴びをし、メスのお尻を追いかけ、元気そうにしている。

 一方で、まだ一歳にならない六代目のセーヤは産卵を始めた。5個産んだ時点では、真剣に抱卵しないように見えたので、一個をマセとガツの姉妹に預けてみる事にした。とくにガツが一所懸命擬卵を温めている 姿を見て、子育て経験もさせてみたくなったのだ。
 ところが、6個目の卵を産んでから、セーヤは巣ごもりを始めた。驚いた事に、あのお転婆姫が放鳥時間もまったく外に出てこない。箱巣を開けて のぞき込んでも退かず、卵を抱きかかえている。立派なものだ。子育て上手の遺伝子のなせる技に違いない。
 中旬、抱卵一週間近くたって検卵する。すべて有精卵だった。気は進まないが、将来を考えれば、増加の抑制は避けて通れない。セーヤの温める卵は1個だけ残し擬卵にすり替える。ガツが頑張っている卵はそのまま。一羽だけの孵化では、複数よりも育雛拒否の可能性は高まってしまう だろうが、それは仕方がない。
 しかし、セーヤ自身がひとりっ子で、子育て経験のない両親(ハン・オマケ)に育てられているし、父親のオマケも、取り忘れの卵から一羽で孵化し、子育て経験のない両親(ソウ・ガブ)に育てられている(前の子であるゴンたちは仮母に育てられた)。案外あっさり育ててくれるかも知れない。

 10月28日、マセ・ガツが仮母となってから16日目、孵化予定日だ。朝カゴをみると、孵化を予想して前日から設置しておいたアワ玉入れに、×印のついた卵の殻が置いてあった。他の卵と混じらないように、セーヤの産んだ卵に墨で印を付けておいたのだ。孵化したようだ。夕方にはシイシイと声も聞こえた。七代目誕生。
 翌29日、セーヤの箱巣からシイシイと声がする。こちらも16日目、実に正確だ。前夜、放鳥時に珍しくセーヤが外に遊びに出ていたので、留守に箱巣をのぞこうとしたら、なぜか隣カゴのキタが抱卵していた。セーヤは夫のクラと勘違いし、家を間違えたキタと交代したようだ。どちらもマヌケだ。キタが逃げ出した後の卵は孵化していなかった。 ・・・そんな騒ぎはお構いなしに、夜中に孵化したようだ。神経は太いかも知れない。

 2週間後の餌づけ開始にむけて準備をしながらも、育雛経験のない仮親・親鳥たちが、しっかり育てるられるかは半信半疑だった。案の定、2、3日してガツ・マセ組のヒナの声が聞こえなくなる。育雛放棄 なら、セーヤたちに戻そうとのぞき見ると、イモ虫状にうごめくヒナは健在で、そのうにはエサも確認できた。給餌に慣れ、ヒナが鳴く前に口をふさいでいるのだろう。ヒナも一羽だと鳴く暇もないの かもしれない。 思い出せば、セーヤの時も同じだった。
 一方セーヤたちの箱巣からは、大きな声が時折漏れてくる。こちらの大きな鳴き声は(ややかすれ気味の)、祖父のオマケを思い出させる 。抱卵はセーヤまかせで、放鳥時間は出ずっぱりで遊んでしまうクラも、給餌はがんばっているようだ。むしろ、彼が箱巣の時に限って大きな声が聞こえる。・・・もしかしたら「もっと早くエサ寄こせ」と言われているだけかも知れないが。 彼らのがんばりに期待したい。

2003・10

 セーヤの婿候補を、ペットショップめぐり15軒目にして発見した。場所は鎌倉であった。申し分のない配色をした、目の大きな桜文鳥だ。 きわめて珍しく鶴岡八幡宮にお参りしたのも無駄ではなかったようだ。八幡大菩薩に最敬礼。
 ビジュアル重視のセーヤは一目で気に入り、見知らぬ場所でとまどう新入りを、秒殺で手なづけてしまった。恐ろしいくらい素晴らしい才能だ。数日様子を見てから同居させる。特に問題はない。鎌倉からやってきたので「クラ」と名付けられた婿候補は、日に日に我が家の暮らしに慣れ、肉付きも良くなり、目つきも怪しげになり、態度もでかくなってきている。 実に順調だ。前の同居鳥ケイは、エサを譲るなどセーヤに遠慮しすぎる面があったが、クラは簡単には譲らない。適当に対等に接している。じゃじゃ馬姫と付き合うには、それくらいでないと身が持たないだろう。

 娘のセーヤは異性の心をつかむ才能に長けているようだが、父のオマケは異性に逃げられる才能があるらしい。オマケがメス(ゴマ塩にこだわる彼が追いかけるのはマセとガツ、クルだけで、あとのメスには見向きもしない)にさえずり言い寄り始めると、近寄って来るのはオスばかりだ。目標のメスには逃げられ、気がつくと後ろからノロやブレイ・グリといったオスがのぞき込んでいる。同性に尊敬されるのも才能かも知れないが、オマケ自身にとっては迷惑でしかない。オスにもてても仕方がないのだ。さえずりだけでは駄目だと悟ったのか、トウミョウをクチバシにくわえてメスに言い寄ったりもしている。そのようなプレゼントでは気を引くことは出来ないのに・・・、涙ぐましいではないか。
 同情を覚えたので、マセとガツ姉妹と同居させてみる。大きめのカゴに箱巣とつぼ巣2個をいれ、三羽を放り込む。・・・失敗だった。オマケはすべての巣を独占しようとして姉妹を威嚇する。かしましオババの姉妹は必要以上に大騒ぎする。収拾がつかない。せっかく機会を与えたのに、バカな奴め、オマケには鈴つきブランコがお似合いだ。しばらく一羽で格闘させておこうと思う。

 9月中旬すぎ、ようやく涼しくなってきたので箱巣を設置することにする。すでにセーユは産卵を始めていたが、産卵数が4個と少なめで、抱卵一週間、確認したところ無精卵 だったので取り除き箱巣に替える。
 巣草を入れてやると、オスが中心になって巣作り開始。初め箱巣にとまどっていたノロも、年上女房のナツに促され(出入り口をふさがれ箱巣の中に監禁された)せっせと巣草を運び込んでいる。あのボケた文鳥のまともな姿に感動してしまう。なぜか新入りのクラも喜んで巣作りをしている。同居のセーヤの方は初めて見る箱巣にとまどって、中に入れずにいたの に対して、すぐに入り込み、巣草を見るとさっさと運び込んでいる。その様子には慣れを感じる。つぼ巣には2、3日入ることが出来なかったのに、反応がずいぶん違う。箱巣のある環境で育ったのか、巣引きの経験があるのか、とにかく頼もしい。
 頼りないのはキタで、なかなか箱巣に入らない。いつまでも進歩がないので、夜の放鳥の帰り、無理矢理箱巣の中に押し込んでみる。固まってしまった・・・。暗いと何だか分からないのかも知れない。昼間に押し込んでみる。・・・喜んだようだ。それから自主的に箱巣に入り込むようになった。もともと暗くて狭いところが大好きな文鳥なのだ。外で適当に浮気して、子育てだけ同居鳥に手伝わせる目論見を持つゴンと、しっかり夫婦になれるのか、しばらく注目だ。
 マセとガツの姉妹はつぼ巣のままにしていたが、隣の芝生は青いと見えて、放鳥の際グリ・セーユのカゴに入り、さらに箱巣に入り込み、巣草を引っ張り出したりしている。迷惑なので、箱巣に替える。メス同士だがそれなりに巣草を運び込んでいる。

 9月の末からベテラン組の産卵がはじまった。ソウ、セーユ、続いてクル、ナツ。2世の誕生が期待されるゴンとセーヤは長い目で見た方が良さそうだ。特に初めての産卵となるセーヤには注意が必要で、あわてることはない。成り行き任せにしよう。

2003・9
 いろいろな文鳥の姿が楽しめるHP『ピコピーと仲間たち』と 、日記・BBSとリアルタイムな動向に目を離せないHP『桜ようこと文鳥さんたち』とリンクさせていただきました。 また、リンク先の中で移転されたらしいHPを削除致しました。
 いろいろ起こってしまったので、「
文鳥の系譜」を書きました。 メールでは、なかなか文鳥飼育に対する立場の違いが伝わりにくいので、『文鳥問題』に 文鳥の飼育タイプの相違について、私見を掲載しました。

 一時はかなり調子の良さそうだったハンは、8月に入ると急速に悪化し、8月9日朝、手の中で息をひきとった。小さい身体でよくがんばったと感心するしかない。

 涼しい夏、暖かい冬、なんて有り難いことだろう。常春の国、夢のようだ。などと無責任に考えていると、涼しいおかげで8月の初旬には繁殖シーズンの到来が近づくのを感じるようになった。セーヤが生意気にもケイに向かって尻尾を振っている。ガブ・ソウ夫婦は巣作り物件を探しはじめている。オマケはブランコを揺らしてそれにモーションをかけている。グリはブランコをサーフィンのりしながら、ピョンピョンダンスをしている。そんな器用な旦那に感激したのだろう、セーユは止まり木の上で これもピョンピョン跳ねている。 実にほほえましい。その雰囲気を壊すようにガチャガチャと物音を立てているのは、フン切り網の下から新聞を引っ張り出そうとしているノロだ。とりあえず、早めにアワ玉を与え始める。
 繁殖で孵化をのぞむカップルは三組だが、それぞれ問題がある。4代目のグリとセーユ。この夫婦のキャラクターと容姿は捨てがたいのだが、昨シーズン、セーユは無精卵しか産まなかった。5代目のゴンとキタ。いまだに同居しているだけで、 本来の跡継ぎであるゴンはキタを空気くらいにしか考えていない。6代目セーヤとケイ。こちらの仲は大変よかったのだが・・・。

 セーヤと同居後 、急速に衰弱したケイ、別居で一時回復傾向を見せたものの、結局、何やら虚弱体質の文鳥になり、さらに8月中旬頃からは、少し運動すると動悸がはげしくなる様子 をみせはじめた。それも日に日にゆっくりと悪化しているように見受けられた。エサは食べている。フンは正常。特に痩せていない。お腹を見ると脂肪もなく、肝臓肥大の様子もない。とらえどころがないので、むしろ悩みは深くなるばかり。
 精神的なものかもしれないので、現在セーヤのカゴの隣に住むケイを、もっとも離れた下隅のカゴに移動してみた。ところが事態は好転せず、アワ玉ばかり食べるようになったと心配していると、 その翌日、8月28日朝、つぼ巣の中で眠ったままの姿勢で冷たくなっていた。
  脚をそろえて目をつぶっている。こんな様子で亡くなる文鳥は案外珍しいかもしれない。自分でも知らぬ間に心臓が止まってしまったのではなかろうか?前夜は肩の上であまり動かず、トウモロコシを2、3粒食べていた。念のためカゴに戻す時に、生理食塩水を一滴与えてみたが、意味がなかったようだ。
 何らかの内臓疾患を抱えていたのかも知れないが、ハイテンションなセーヤと行動をともにすることで、心臓に負担をかけてしまったような気がする。 我が家に来てまだ9ヶ月、かわいそうなことをしてしまった。

 あまりの不幸続きに、この際徹底的に開き直ることにする。

 愛しのケイがいなくなり、セーヤは落胆するだろうと、28日夜は鬱々とした気持ちで放鳥。セーヤはケイを探している。姿の似ている文鳥の跡をつけている。まずゴン。まとわりつくなと怒られる。ガブ、けんもほろろに追い払われる。続いてブレイ、・・・若い女の子の接近に喜ぶ。
 とりあえずブレイを追いかけることに決めたらしい・・・。このへんの性格は見習いたい気持ちになった。カゴに帰して、暗くした後も、 セーヤとブレイはしばらくお互いを呼んでいる。・・・ブレイは孫の孫にあっさり心奪われたらしい。
 ・・・我が家に来て5周年、6歳以上の最古参が相変わらず元気なのは結構だが、放鳥時間だけでも疲れ果てるのではないかと心配になる。 ところが翌日にはセーヤは心変わり。ブレイがはりきってセーヤをつけて、一緒につぼ巣に入ったりするが、「しつこいジジイは嫌い」とばかりに近づかなくなった。 その後は、仲良くするようで、一歩間をおくようで、セーヤの態度は微妙。
 面倒なことにならぬうちに、セーヤの相手を探した方が良さそうだ。この姫君のタイプは、とにかく外見は綺麗な桜文鳥でなくてはならず、性格はおっとりとしてしつこくない、 といったものと推測される。そんな婿を世話する自信がないのだが、やはり探さなければならないのだろう・・・。(9月4日ついに発見)

 さて、文鳥のカゴは三段にしてあるが、マセ・ガツのカゴを移動し、下段は空地とした。大好きなゴマ塩がとなりに引っ越してきたので、オマケは大喜びだ。ブランコへの求愛を止めて、カゴにしがみつきながらさえずっている。ここまでお膳立てしてやったのだから、あとは自分の力で呼び寄せるなり押しかけるなりしてもらいたい。

2003・8

 亭主がいなくなったことに気づいたクル(♀5歳)は、若い男に色目を使い始めた。もともと浮気性だったが、たいしたものだと感心してしまう。本命は隣のカゴに住むグリ(♂4歳)、流し目をしながら近づいていく。グリも悪い気はしないようだが、こちらは基本的に愛妻家。妻のセーユを追い払おうとするクルに腹を立てる結果となった。
 浮気なクルを野放しにしておくと、随所で家庭崩壊が生じそうなので、やはり妻を失い独り身のブレイ(♂推定6歳)と同居させることにした。ブレイのカゴにクルを放り込む。ブレイは大喜びだ。早速つぼ巣でさえずり 、誘っている。クルは本命ではなかったはずだが、さえずられるとうれしくなるようで、甲高い声で「ピッ!ピッ!」と合いの手をいれている。
 ブレイは喜んだが、悩みを抱えることになった。彼の亡妻チビは、まったく浮気をしなかった貞淑な鳥だったが、今度の同居鳥は本格的に浮気鳥なのだ。クルは夫のサムが文句を言わないのを良いことに、好き放題に不倫していた・・・。本来、オスはメス以上に嫉妬深い( なぜなら浮気されたら子孫が残せない)。放鳥時、相変わらずグリなどにすりよろうとするクルを、いちいち引き留めなければならなくなった。当分、気苦労は続いてしまうことだろう。
 なお、クルにとってブレイは実父、グリは実子なので、人間的に考えると気分が良くない。しかし、ヒナを孵さなければ問題ないので、その点は気にしないことにしている。

 セーヤ(♀1歳未満)は、お気に入りのケイ(♂推定1歳)と同居して、案外早くに7代目を産んでしまうのではないかと心配していたが、 そうはならなかった。ケイが急速に元気をなくしてしまったのだ。さえずることすら出来なくなる(音がかすれてしまう)。放鳥の時はいつも眠たげだ。どうもセーヤにつきまとわれて(頼みもしないのに毛繕いをする)「自分の時間がもてない」のが原因のようだ。何しろ、カゴの中でさえずろうとするとセーヤがくっついてきて邪魔する(セーヤに聞かせるためさえずっているわけではない、なぜかケイはセーヤにだけはさえずらない)。眠ろうとしても邪魔される。・・・エサはセーヤに 先を譲っているし・・・、なぜそこまで遠慮しなければならないのか(セーヤがいじめているわけではない)、この2羽の関係も不思議だ。
 しかし、不思議がってばかりはいられない。このままでは、ケイの身体がおかしくなりそうだ。とりあえず別居させ、ケイに元気を取り戻してもらうことに した。セーヤのカゴと並べての別居。余裕が出来たケイが、セーヤにさえずるようになれば大成功となる。
 それから数週間、効果は現れ、ケイは少し元気になりさえずりも取り戻してきた。放鳥の時は、メスたちにさえずっている。しかし、セーヤにはさえずらず、人間の腕の上でセーヤにしつこく毛繕いをされながら、寝ぼけた顔をしている。同居再開のタイミングは難しそうだ。

 ゴン(♀3歳)とキタ(♂推定1歳)も、秋からの繁殖では期待しているカップルだ。しかし、こちらは全く進展がない。ケンカもせずに同居しているが、仲良くすることなど全くない。ゴンがキタのことを完璧に無視しているのだ。
 キタはキタで、放鳥しても人には近づかず、部屋の上方隅でけたたましくさえずり、カーテンレールでメスたちに言い寄るのみ。テーブルの上にさえやってこない。非手乗りの王道をいく態度で、それはそれで良いのだが・・・。繁殖期にゴンと一緒に生活できるのか、かなり不安になってきた。ゴンに邪魔者扱いされなければ 良いのだが・・・。
 同居鳥の手応えのなさにいらだったわけでもないのだろうが、ゴンが風切り羽を折り曲げてしまう。一度曲がると気になって仕方がないようで、数枚ボロボロにかじってしまった。同じことを以前マセもやっていた。ゴンとマセは先月来抗争中だが、しつこい性格は似ているのだろう。困ったものだと思ってい たが、これはケガの功名にもなった。ゴンの飛行能力が低下し、マセと追いかけっこが出来なくなったのだ。自然に両者は休戦状態になった。つかの間の平和でないことを祈る。

 絶望していたわけではないが、長くはないと判断するしかなかったハン(♀5歳)は、危篤状態を脱し、回復とは全然言えないまでも、安定した状態となっている。7月3日に動物病院に行った時は、これが最後と考えていたが、下旬には薬がなくなり連れて 行くことになった。腫瘍はむしろ大きくなっているが、食欲は旺盛で血色は良くなってきている。放鳥時にはビスケットばかり食べていたが、近頃はそれほど食べず、カゴの中でアワ玉と豆苗を一所懸命食べている。何でも良いので、食べて いてもらいたい。
 効果の程はわからないが、危篤状態以来、リンゲル液にメシマコブとスピルリナと乳酸菌を混ぜて点滴し続けている。 とりあえず安定しているのでやめるべきではないだろう。ハンは薬の飲み方がうまくなり、こぼさなくなった。

 8月にはいってからキタが失踪事件を起こす。彼は鳥であるにもかかわらず、飛行がヘタだ。ヘタだが馬力があるので、羽を間引いてもかなり飛ぶ。周りを見ずにひたすら羽ばたくので、壁や家具に激突し墜落する。さらに暗所や狭いところでじっとするので、一度見失うと困ったことになる。今回は放鳥している隣の部屋に迷い込み、どうして良いかわからず バタバタしているうちに、どこかに墜落してしまったらしい。その部屋に入った音は聞こえたが、行ってみると姿はなかった。静かにして物音を探るが何も聞こえない。捜索にはいる。
 我が家に来た初日に、ベッドの下に迷い込んだことがあるので、懐中電灯でのぞいて見るがいない。しばらくいろいろ探すが見あたらず。6畳間でどうすれば姿が消えるのか、焦りの色は濃くなるばかり。一度見たところを入念に見直す。するとベッドのマットと壁とのわずかなすき間に灰色の背中があった。どうすれ ばその状態になるのか理解できないが、もがきようもない挟まり方だ。気づかずにマットを動かしたら圧死していたかも知れない。マットをずらすと飛び出し・・・、壁に当たってベッド脇に墜落、ベッドの下へ。何と面倒な、腹を立てつつ棒で追い立て、出てきたところをようやく捕獲。ホコリまみれなので、 遠慮なく洗う。
 環境に慣れれば慎重に飛べるようになるだろうと思っていたが、この調子で高スピードで激突すれば生命が危うい。落下骨折のほうがまだましだ 。飛べなくすることにする。風切り羽の全部切り。普通これで飛べなくなるはずだが、キタの場合、飛ぶことはひたすら羽ばたくのみであるらしく、翌日も案外飛ぶので驚かされる。せいぜい高位置の鳥カゴから2m程度のテーブル上に落下すると 予想し、注目していたが、その目先をかすめて飛び続けて行く。推進力はまだあるのだ。ところが残念なことに浮揚力はないので、定位置の部屋の上方隅までは行けず、プラスチック物入れに衝突して墜落する。低スピードなので、それほど危険ではないように思うが、 彼は何度でも繰り返すような気がする。その想定で、危険対策をしなければならない。

2003・7
 慣れない育雛に試行錯誤する姿に共感せずにはいられないHP『ジョバンニの飼育日誌』と 、白文鳥にビーズ、美的感覚にあふれるHP『Yukky Love』、さらに、オリジナル文鳥CGが素晴らしく、読み物の充実も期待されるHP『文鳥とらいあんぐる』とリンクさせていただきました。
 手乗り文鳥のひとり餌への移行のあり方についての私見を『文鳥問題』に掲載しました。

 6月上旬、我が家に慣れてきたキタをゴンの鳥カゴに移し、セーヤとケイを新しい鳥カゴ(『GB』3000円)で同居させる。特に問題なし。ゴンはキタを無視しているし、セーヤはケイにつきまとっている。予想どおりだ。
 予想外のことは中旬となってから起きた。16日の夜、放鳥時間。鳥カゴの掃除を終えて戻ってくると、マセ
(♀)が左肩にとまり、耳元でグチュグチュ何か言っている。子供が親に言いつけにきたみたいな感じで、よく見ると目つきがおかしい。というより、こわい。三角形につり上がっている。ひとしきり言い終わると、妹のガツと一緒に飛んでいった。そして追いかけっこ。ゴン(♀)を執拗に追いかけ、つつき、かじり、体当たりしている。ゴンと行動をともにしているガブ(♂)も巻き添えとなり、マセに頭の羽毛を引っ張られるなど、さんざんな目にあっている。
 なぜマセが「キレタ」のか、直接の原因は、天井近くの場所をゴンとガブが占領し、マセたちを追い払ったことにありそうだ。しかし、 その程度のことで、目を三角にはしないだろう。積もり積もったものがあったに相違ない。何しろ、ゴンはマセたちが手に乗ってくつろぐのを いつも邪魔する性悪女なのだ。さらに想像すると、ガブの妻ソウをないがしろにしてガブにまとわりついているゴン、その不倫な行動が許せなかったのかもしれない。何しろ、ソウとマセは気の合うお隣さん
(カゴが並んでいる)なのだ。生粋の『姉御』であるマセにしてみれば、ひとはだ脱ぎたく もなるだろう。・・・恐るべし。
 あまりに常軌を逸したマセの表情に、あれこれ想像力をめぐらしていたが、まあ、2、3日でおさまるものと考えていた。しかし、それは甘かった。17日、前日一方的な攻撃を許したゴンが反撃を開始、30gはある巨体と切られたことのない羽、そして執念深い女王様気質、 これらを総合すれば実力は段違い、無敵の攻撃力でマセたちを圧倒する。このへんで痛み分けとなるのが普通だが、翌日18日、一羽では勝てないのを悟ったマセは妹のガツとの連携を強化、一糸乱れぬ連続攻撃でゴンに対抗、一進一退の攻防を繰り広げる。
 
※このように書くと血まみれの抗争をしているようだが、現実は威嚇が中心で、どちらも突かれそうになるとかわし ている。噛む場合も頭の羽毛なので、全く無傷。
 19日となると、マセ・ガツ同盟軍は攻撃をガブに集中する作戦に出た。敵が複数の場合、弱い方からたたくのは軍事の基本だ。 昼間、作戦でも練っていたのだろうか?信じられない話だが、生まれた時からませていたマセならそれぐらいのことはするだろうと納得してしまう。
 その後、非常にゆっくりと沈静化に向かいながらも、対立状態は6月末日にいたっても続き、鳥カゴでも隣りのカゴのガブをゴマ塩の二羽が威嚇 している。それに対し、旦那にケチをつけられたソウが『逆ギレ』してガブと一緒に威嚇しかえす。放鳥時も、何かといえば衝突、追いかけっこを繰り広げる。・・・まあ、良い運動になっていると考えよう。

 それくらいに、元気があるのは文鳥らしくて楽しいのだが、腫瘍のハン(♀)の容態は徐々に悪化している。
 6月13日、傷口が少し化膿していたことから、抗生物質を飲むことになり、その5日目くらいから怪しくなってきた。抗生物質が終わり、依然と同じ薬となっても元の血色にはもどらない。20日にははっきりと不調をしめし、その後毎日交互に良し悪しを振幅しながら、総じて悪化してい き、25日夜にはクチバシも青みがかり、今にも消え入りそうな様子となってしまった。
 この期に及んで処方された薬を守ってもしかたがない。食欲不振になると嫌なので、飲み水に赤いビタミン剤を混ぜるのをやめる。やはり飲み水に入れるように処方されたメシマコブ粉末は、これも抗癌効果もあるというスピルリナ
(知人に送っていただいて存在を知り、純粋の粉末を通販で購入)と乳酸菌にビタミンが添加されているという粉末(いただき物)、およびブドウ糖と一緒に水でわり、クチバシに点滴して飲ませることにした。腫瘍の薬は一回に5滴飲ませるように言われていたが、少し濃くして3滴にした。小さいハンには5滴は多いのだ。
 それから危険な状態ながら、がんばっている。食欲はある。フンはしている。放鳥時間には一所懸命ビスケットを食べているが
(止める気になどならない)、いくら栄養をとっても、病巣に持って行かれてしまうのかもしれない。 やせていく一方だ。ほとんど飛べなくなった。ノロ(♂)におそわれても逃げられず落下して危ない。 ケガをしてはと思い鳥カゴに入れておくと、外に出たがり鳴く。7月にはいると、放鳥時間に手の中で眠る。相当くたびれているのだろう。我が家の手乗り文鳥がこういったことをするのは、ヒナの時だけだ。今にも心臓が止まってしまいそうで、 冷や冷やする。手首で夫のオマケが心配そうにしている。
 動物病院に連れて行ったところで、腫瘍悪化による衰弱に対して出来ることはないだろう。それでも、診療を受けている以上、悪化したのを診ていただくのが礼儀だ。しかし、土曜日の朝一番に行くと長蛇の列で、ヘタをすると2時間くらい待たされそうだ。日を改め7月1日、 やはり朝一番に病院に行く。ところが小鳥専門の獣医さん
(夫婦で開業されていて奥さんの方は犬猫専門)は、午前中お留守だった。この獣医さんは日本における小鳥治療のパイオニアのお弟子で、先生の没後、その田園調布の病院に出張されているという うわさは知っていた。その出張は木曜日の午前中だけと勘違いしていたが、火曜日もそうだったのだ。仕方がない。メシマコブだけ頂いて日を改める。2日は無理だったので3日、 木曜日だが午後3時30分に戻ることは以前聞いていた(木曜日だけ確認していた)ので、その時間に行く。やっかいな老犬の治療で少々待ち、診ていただく。結果は予想 していたとおりだった。ずいぶんやせ細ってしまって限界にきているということ。リンゲル液をいただく。体力を維持するためのものだ。
 奇跡を信じるほどおめでたくはないので、奇跡に期待しながら、日々をおくりたい。

 7月4日、ハンのことで悶々としているところへ、さらに衝撃的な事態が起きてしまう。午後7時頃、風呂に入っていると鳥カゴ方面が騒がしい のに気がつく、数分してもざわついているので、数年ぶりのヘビの来襲?・・・それにしてはパニックしているようでもなし・・・などと思いつつ見に行く。
 そこには、まったく予想外の光景。サム
(♂)が鳥カゴの底でひっくり返り、ピクピクと動いている。何が起きたか理解できなかったが、とにかくカゴから取り出す。身体の左半分がピクピクと痙攣している。目が半開きで大きい。右半分は動かない。・・・これは 、まるで人間が心臓発作で半身が麻痺したのと同じ状態ではないか。心臓の鼓動は手のひらに伝わってこない・・・。
 かなり動揺していると、間もなくグッタリしてしまった。目は閉じられ、クチバシの色は褪せ・・・。何とはかないものだろう。
 文鳥にはテンカン性発作があるらしいが、サムには今までその症状はなかった。また、テンカンなら鼓動はむしろ激しくなるだろうし、放っておけば回復するはず・・・。人間の突然死に似たものなのだろうか。まだ5歳
(推定)、最近は肉付きも良くなり、元気にトウモロコシを食べ、毛並みもクチバシのつやも申し分なかったのに・・・。 トウモロコシを別にすれば、我が家の文鳥では唯一、人間の食べ物にほとんど手を出さない文鳥だったのに・・・。ここまで突然だと、心の準備のヒマもない。しかし、とにかく安らかに。

2003・6

 腫瘍のため療養中とは言いながら、ハンは毎日遊びに出てくるし、手のひら水浴びを楽しみにしている。薬を混ぜている飲み水だけを飲ませるため、水浴び容器がカゴに入れられていないのだ。クチバシの血色は日増しに良くなり、動きも悪くないのだが、腫瘍が小さくなる気配はない。 療養生活は長くなりそうだ。

 ケイがどんな風に考えているのか、これが全くつかめない。5代目ゴンの婿としてやってきた彼は、紆余曲折を経ながら現在ゴンと同居している。夫婦といったような様子でもないが、仲が悪いわけでもなく、このままでいけば、秋には良いカップルになるものと思われた。そして、私好みの桜文鳥がめでたく誕生するはず ・・・、まさに計算通りに。ところが、いわば「オマケのオマケ」の6代目セーヤがケイのことをつけ回しはじめたのは計算外であった。しかも、つきまとわれて迷惑しているはずのケイが、むしろ喜んでいるというのは・・・。「つきまとう」というより、油断すると脚をつつかれ、小突かれたりしているのだが・・・。ケイはセーヤに何をされても怒らず、一緒につぼ巣でを破壊したり、回鏡をのぞいてみたりして遊んでいるのだ。
 セーヤは外見も行動も父親に似ている。そこで大きな疑惑が持ち上がってくる。父親のオマケは、飼主である私が嫁とするように「命じた」セーユを邪険にし、いわば「恋愛」でハンと夫婦になった文鳥で はなかったか? その父の似たセーヤにケイ以外に夫を「世話」しても、相手にするわけがないではないか!絶対的中しそうなこの推測の前に、来年にかけてゴンにケイの子供を育て、来年春から夏の間にセーヤに婿を迎え、秋に7代目の誕生!といった私のもくろみは、音を立てて崩れていく運命のように思われた。
 せっかく相思相愛らしいので(同居したらどうなるか知れたものではないが)、セーヤとケイを同居させようかと考えてみる。そうなるとゴンがまた一羽になってしまう・・・。
ゴンという文鳥も変わった文鳥だが、容姿は抜群、この子孫も見てみたい。そうなると、また婿を迎えなければならないことになる・・・、彼女を「彼」と思って嫁セーユ、メスとわかって婿ノロ、そして婿ケイと迎えてきたのに、またさらに・・・。他の手段も考えてみた。前夫のノロを再び婿に・・・、ナツが独身になったブレイと再婚・・・。・・・そこまで波及的な影響を与えるなら、婿を迎えた方が良さそうだ。もし、セーヤがその婿候補を気に入れば、一年前倒す事になるだけではないか・・・。

 それでも、文鳥の数は抑制したいので、婿を探して東奔西走する気が起きない。「セーヤには横恋慕させておけばよい。・・・いや、それでは抱卵などの邪魔となる。婿がゴンと仲良くなるかわからない。・・・しかしそれは毎度のことだ」などと 、他人には理解不能な葛藤をしながら、まあ、たまたま適当なのを見つけたら買ってしまうことにする。
 そしてある日、立ち寄った大型ペットショップ。この手の店は避けたいが、たまたまのぞいたら、オスの桜文鳥が売られていた。2羽いる中の一羽は、頭に少々白羽が見られる ものの、クチバシの短く太いところが私の好みの文鳥に見えた。色つやも体格も合格点。いかにも若そうな様子だ。もう一羽には無い胸のぼかしが、こちらにはある。見ていると、すぐにさえずりだした。これは買っておくべき ではないか。
 店員さんを呼ぶ。ついでに非常に小さな鳥カゴも買い、そこに入れてくれるように言う。運搬に使った後、小さな鳥カゴはハンの通院に使える。ところが女性の店員さんは、ボール紙の箱に入れることに固執する。「今日は寒いし」「室内と気温差があるし」「まだ若い鳥だし」・・・、5月の下旬、20度はある気温でどうかなってしまう文鳥などいたら面白いくらいだが、ペットヒーターが必要だとまで言っているので、好きにしてもらう。鳥の羽毛というのは保温のためにあることくらい、動物管理士か何かの資格で習わないのだろうか、アフリカ直輸入の鳥とみんな一緒だと思っているような気が してしまう。善意には違いないが、こういう人の知っている飼育というのは、所詮ペットショップでのものでしかないのだろうと考えながら、鳥カゴを組み立ててくれるのを見ていた。・・・これにしても、出来上がって展示されているのがすでにあるのだから(値札も何も付いていない)、それを使えば客を待たせることはないのだが ・・・。
 などとさらに皮肉な気分にみたされていたら、店員さんは手に消毒液をスプレーしてからその桜文鳥を取りだし、目がどうだ、鼻がどうだと、チェックをはじめた。 こちらに確認を求めるので、いかにも面倒だが、「はい」「はい」適当に相づちを打つ。ボール紙に文鳥をしまい、体重をはかり、27gと確認する。そして『健康状態チェックリスト』および『販売確認書』なる一枚のペラ紙をしめし、チェック項目を今一度確認し、生体の交換は出来ない旨を 告げてくる。いろいろな客がいるから、必要なプロセスなのだろう。さらに何か変調を起こした時のために、ある動物病院を紹介したペラ紙も渡された。「ああ、ここの病院と関係あるから、口数がやたらと多くなるんだな」と以前長々とエサなどについて、頼みもしない能書きを言っていた獣医さんを思い出した。もちろんそのようなことは口に出さず、会計。
 私は商売人は商売、医者は治療をするのが先で、能書きをタラタラするのは、よほど後に回したら良いものと考える。能書きは、それを聞きたい人にだけやれば十分だろう。ましてその能書きが、聞きたくもない人に聞かせるほど、たいそうなものでは無ければ、なおさらである。
 ※このお店の対応は飼育初心者にたいしてなら素晴らしいもので、店員さんもまじめで好印象な人間であった。ただ、個人やお店の志がどうであれ、彼らが持っているのは、ペットショップ内部 における商売用の「もの」管理のノウハウでしかないことくらいは、店側も客側も心の隅で認識しておいた方が良い気がする。
 会計4000円ちょっと。・・・何で?桜文鳥オス3480円(3780円だったかも)と書いてあったような・・・、鳥カゴは1900円とあったような・・・、従って6000円払おうと財布から出して待っていたのに・・・。不思議な様子で、「鳥カゴもあるのに?」とつぶやいてみる。そうですよ、と言いながら・・・店員さんは確認しに行った。そして・・・、それでよいと言う。文鳥のオス1980円というのは、いくら何でも安すぎる。ヒナの値段と間違っているのではないか?買った文鳥には一羽だけ脚輪があったので、何か安値に意味があるのか(手乗りヒナの売れ残りとか)?しかし、客が何度も支払いを高くしようと試みるのも妙な話なので、請求されただけ支払い帰宅する。

 新入りの文鳥は、買ったペットショップの最寄り駅にちなみ『キタ』と名付ける。目障りな脚輪を切り取り、放鳥に備えて羽を一枚おきに切る。飛び慣れない文鳥の羽をそのままにしておくと、とんでもないところに飛ん 行き危険なケースが多いのだ。一枚おきに切られる程度なら飛翔能力が半減するくらいで、普通の行動に支障は出ない ので、買ってきた文鳥に対しては、まず半減させておくことにしている。カゴの中で一生を送らず、室内で激突事故を起こさないようにするのが、我が家では第一に重要なのだ。
 カゴに入ったキタは、まず小松菜とボレー粉を食べている。あまりペットショップでは食べられなかったものなのだろう。その後、つぼ巣やブランコにもすぐに慣れ、つぼ巣の中で日がな一日さえずっている。そのさえずり は、文鳥と言うよりカナリアを連想させる澄んだ甲高い鳴き声、いままでに聞いたことがない美声と言えば美声、耳障りといえば耳障りなしろ物だ。
 放鳥時間にものこのこ出てくる。羽を半減されたにもかかわらず馬力があり、やたら羽ばたき飛んでいる。ところが、飛びながら目的地を見据えることが出来ないらしく、衝突をくりかえす。スピードが出ていないので大事にはいたらないが、 二、三日の間何度かすき間に墜落、手間を焼かせる。たまたまセーヤとケイの遊び場に降り立ち、セーヤに嫌われもした。当然かなりしつこい性格のセーヤは、徹底的に追いかけ回 したが、数日して環境に慣れたキタは反撃を開始、キタがセーヤを敵視しはじめる。・・・この二羽はカップルにするのは絶対無理なようだ・・・。もう少し様子を見てから、キタはゴンと同居させ、セーヤとケイを同居させるしかないだろう。

2003・5

 6代目のセーヤは父似だ。顔つきも似ているが、落ち着きがなく乱暴なところがそっくりだ。人間をかじるのも同じ、しかしこちらは女の子なので、悩みが深い。この我が家の姫君は、相変わらずケイ(♂)がお気に入りで、くっついてまわり、つついたりかじったりしながら仲良くしている。放鳥の時、部屋の上方隅に設置してあるつぼ巣(おとなの文鳥たちは近づかない)を二羽で仲良く破壊して もいる。
 100円回転鏡をクルクル回すのがセーヤの特技だが、ケイはその様子を近くで見ていて自分もやりたくて仕方がない。その様子を見てとると、セーヤはこれ見よがしにクルクルと回し、どうだすごいだろうとばかりに「ギャルル」言いながらケイを小突 く。ずいぶん乱暴な小娘には違いないのだが、ケイにしてみれば、一緒に遊んでくれるので嬉しいようで、怒ることはない。
 相思相愛ならちょうど良いので、同居させてしまおうかと少し考えはじめる。・・・ゴンとケイも仲が悪いわけではなく、来シーズンは姿の良い2羽のヒナを見ることが出来ると思っていたが、波乱は避けられないのかもしれない。

 骨折したクルの回復は順調で、ほとんど違和感がないまでになっている。この間マセが爪を折って出血し、線香で止血する騒ぎがあったが大事には至らずに済んだ。問題は、下腹部に卵管炎を疑わせる腫物のあるハンだ。
 先月来、冷や冷やしながら様子を見ていたが、問題なく元気であった。腫れも目立ったり目立たなかったり。夫のオマケが換羽をはじめたので、産卵の危険はなくなっていたので、秋までに自然治癒してくれないかと、淡い期待を持っていたのだった。
 ところが4月末になって、ハンの元気がなくなってきてしまった。クチバシが薄くなり、動きも重たげだ。 すぐに動物病院に行く時間がなかったので、数日そわそわしながら見守っていると、非常にゆっくりだが悪化していくように見受けられたので、5月に入って動物病院に連れて行った。
 クルが骨折でお世話になった動物病院。獣医さんは手慣れた手つきで、ハンの腫物を触診し、触診し、・・・考えている。腫瘍か卵管炎かの判断がつきづらいという。結局、正確な判断をするために切開して確認して頂くことになり(卵管に異物があるようなら摘出)、無事手術を終え、結論は腫瘍ということであった。悪性か良性かは不明だが、内臓を圧迫することで体調不良がおきるものと考えられるということであった。とりあえずクチバシに点滴して飲ませる抗生剤を頂いて帰宅する。治療費4500円(手術したのに・・・)。
 特に注意は受けなかったが、薬を飲ませる時にオマケがいると邪魔なので別居させることにする。離すと大騒ぎしそうなのでカゴは隣りにしてごまかすことにした。そのためにグリ・セーユの鳥カゴを右に移し、セーヤのカゴを上段左に移動。オマケにはしばらく辛抱してもらうしかない。

 このカゴ移動により、セーヤは愛しいケイの隣りになってしまった。もはや、ゴンの妻の座は風前の灯火といえるだろう。

2003・4
 文鳥君の活躍を、一人称でつづった「きゃるきゃる通信」が楽しいHP『螺旋の環』とリンクさせて頂きました。 ついでに、閉鎖したと思われるサイトを整理しました。いろいろ大変ですが、またいつか復活してもらいたいと思います。

 3月10日に、我が家の2代目のチビ(♀6歳)が急逝したのは、 衝撃であった。それでも、まったく予想していなかったわけではない。不思議なもので、何となくそんなことになるような気がしていた。したがって、前日の夜まで年相応の元気さで遊んでいたチビが、カゴの隅で冷たくなっているのを、夕方帰宅後に気づいた時も、 心のどこか納得するものがあった。
 非科学的な「胸騒ぎ」とは別に、最近体力の衰えは認められたので、今年の換羽、真夏、産卵期、それぞれ注意しなければならないと結論していた のだが、どうしてこの日になってしまったのか、客観的に前触れのない死に納得しがたく、主観的には納得してしまう、奇妙な気分の中で埋葬した。

 初代、2代と続いた不幸は、次には3代目にめぐってきた。3代目のクル(♀)が這って歩いてバランスが取れないのに気づいたのは、14日の夜だった。脚をつったのか、骨折か、病気か・・・、一夜明けてもまったく同じ状態なので、動物病院に連れて行くことにした。
 病院と名のつくところには、人間である自分自身も必要に迫られない限り近づかないが、文鳥の必要な時にお世話になる動物病院は、飼主としての責任上あらかじめ探してあった。
 自分の生活圏内にありながら、それまで存在に気づかなかった小さな動物病院の寡黙なお医者さんに、骨折と診断された。ギブスをして頂き、薬3種を頂戴した。3500円。ずい分安いのだなと思っていたが、お医者さんの方は高くて申し訳なさそうな気配であった。小鳥の治療費に多くを出したがらない人もいるのかもしれないと、漠然と考えた。 生き物は新しく買い換えられるものではないけれど、ペットに購入値段分の価値しか認めない人はいるものなのだろう。8日後に診て頂くと、骨折はついており、ギブスを取りのぞいただけなので無料ということであった。こちらの方が申し訳ない気分になる。

 3代目の不幸は名医の治療もあって回復にむかい、一安心つきたいところだったが、クルのおさな友達で、初代ヘイスケの娘、そしてオマケの妻であり、6代目セーヤの母であるハンに異常がおきた。下腹部、総排泄孔の上あたりがふくらんでいるのだ。
 苦労してつかまえ、腫れ物を確認する。腹水なら透明に見え、内臓が腫れているなら黒っぽく見え、脂肪瘤なら白く見えるだろうと、素人考えをしたのだ。腫れ物は透明でも、黒くも白くもなかった。症例が詳しく書かれている飼育書『アニファ文鳥』を参考にすると、卵管炎という病名がうかんできた。
 夫で同居中のオマケの存在もあるので
(治療のため恋女房と別居となった場合、奴は気が狂うかもしれない)、どうしたものか悩みつつ翌日は注意して見ていたが、糞は普通に出来ており、前日より腫れが目立たなくなっている。自然に炎症が治まることを期待して、少し様子を見ることにした。悪化の傾向があれば、動物病院 に行かなければならない。
 巣箱の中に入られると観察が出来ないので、つぼ巣に替える。この状態での産卵は非常に危険と思われるので、やめてもらいたいのだが、それ以上のことはしないことに覚悟を決めた。

 産卵に原因を持つ病気がつきまとうメスに対して、オスは気楽なものだ。と思って見ていたら、妻を失ったブレイ(♂)にケイ(♂)がまとわりつき、他のメスに相手にされないブレイがまんざらでもない気分になり、ついにはキスシーンまで演じるではないか!
 オスもメスも見境がないケイは、危険文鳥といえるかもしれない。手乗りではなかったはずなのに、手乗りの「はず」の連中よりも、ベタベタ人間にもまとわりついているから、性別どころか、種族を超えた博愛主義なのかもしれない。なぜかサム
(♂)だけを敵視するのは、きっとサムが変わり者で宇宙語を話すからだろう。
 ところがそのケイに付きまとい続けるストーカー文鳥がいる。6代目のセーヤだ。何が気に入ったのかわからないが、ひたすら付けまわし、ケイが油断すると軽くつつく。さらに背中の上に乗る。ケイはずい分迷惑しているはずだが、博愛主義 が原因かは定かでないが、セーヤを追い払うことはない。ヒナ換羽中でグゼらないセーヤはまずメスと見なせるから、人間で言えば、小学校低学年の女の子が、大学生くらいの男の子
(ケイ推定1歳)のファンになっているような構図と見なせる。大学生には30代のおそろしい同居鳥(ゴン♀3歳)がいるが、将来的に押しのけようとするかもしれない。今後の展開はなかなか楽しいことになりそうだ。

2003・3
 掲示板の自由度を高めようと、無料サーバに移転するなどの処置をしました。
 こだわりの少数飼いを展開するHP『
シナモンと二人暮らし』と、いろいろな動物の姿が堪能できるHP『Tenang Dunia』とリンクさせて頂きました。

 6代目のセーヤはまったく健康に、何の心配もかけずに成長を続けている。2月末には換羽も始まった。まださえずるそぶりも見えないので、メスかもしれない。
 セーヤは我が家で3羽目の100円鏡をまわす文鳥になった。初代は夭折したゴマ、二代目がゴン、彼女は大きくなると、回さなくなってしまったが、セーヤは何時まで続けてくれるだろう。 成鳥の姿でいつまでも続けてもらいたい。
 暇な時にはセーヤだけをカゴから出して遊んでいたが、一羽ではつまらないだろうから、部屋の隅にブランコを設置してみた。さらに、そのブランコにのりやすいように台をつくり、そこに、鈴つきキーホルダーをちょうど目の高さになるように吊るした。セーヤはそれらのものにケンカを売ってストレスを発散している。ついでに鏡の中の自分にもとび蹴りをしている。 蹴倒すこともある。なかなか活発でよろしい 、が、こんな乱暴をするのは、オスではないか、結論はしばらく保留しておいた方が良さそうだ。
 他のおとなの文鳥にも臆す ることはない。特にケイに興味があるらしく、つけまわしている。それのみか、ケイがメスにさえずっていると近づき、背中の上に乗ろうとする。やはりメスではないのだろうか?

 そのケイは再びゴンと同居させた。そこらじゅうに夜這いをかけるので、落ちつかせたかったのだ。
 二度目の同居ははじめ順調であった。家人によれば交尾までしていたという。万々歳だと思うのもつかの間、一週間もするとまたも巣箱をめぐって闘争を始めた。そして…、またしてもゴンが脚を負傷!まったく前回と同じ結果。しかし今度は同居を続行させる。 ゴンの脚が仮病ではないかと少し疑ったのだ
(そのようなことはないと思うけれど)。とりあえず、巣箱をめぐる争いなので、巣箱を取り上げ、つぼ巣にかえた。
 これは功を奏し、闘争は収まり、何となく冷戦状態となった。親しいようには見えないが、憎しみあっているわけでもない。あくまで「同居人」といった関係に落ちついた気配だ。 ケイがつぼ巣で虚勢を張り、ゴンがブランコをやたらに激しく揺らしてのっている。鈴をむやみに鳴らして。この二羽が夫婦になる日は来るのだろうか。

 最近我が家の文鳥で著しく変化してきたのはノロだ。いや、ノロではなくなっている。実に動作が文鳥らしくキビキビしてきた。生後推定2歳にして成長期を迎えたらしく、突如頬がふくれたりして、飼主を狼狽させた。病気かと思ったのだ。
 非常に食欲があり、体が一回り大きくなってきている。ペットショップでの不健康状態から体が目覚めるのに1年かかったということらしい。ただ相変わらず、人間の指に色情し交尾している。頭の方も、いま少し目覚めが必要なのかもしれない。

2003・2
 今後の文鳥皇子たちの活躍に期待が集まるHP『中雀王朝記』と、文鳥君たちの姿と月のイメージが美しいHP『月欠片〜ツキノカケラ〜』と文鳥君たちのダイナミックな日常生活が堪能できるHP『ピイチクチャンネル』とリンクさせて頂きました。
 最近かなり展開がはげしいので、久々に「
文鳥の系譜」を書きました。

 鳥カゴを2台くらい買おうと考えた。HOEIの朝日2号が古くなったので、この際、すべてをGB社のもので統一しようと思ったのだ。朝日2号は意味のない溝があり、奥行きも少しせまく嫌なのだ。本当はGB社のものでも飽き足らず、もう少し奥行きのあるものが欲しいのだが、個人的にちょうど良いと思うサイズの鳥カゴは世の中に存在しなかった(奥行きを求めると、30cmが一気に40cmになる)。いっそ、ステンレス加工でオリジナル鳥カゴを作ってもらおうかと考えたが、それには約3万円かかる。1台ならまだしも、10台近く注文する財力はどこにも存在しなかった(財力があったとしても、そんなに一度に注文されたら、相手が確実に迷惑する)
 結局チープなGB社製がベターな選択とせざるを得ない。ところが、この鳥カゴを扱う店が、近辺でなくなっていたから困ってしまった。かさ張るものなので、遠くではなるべく買いたくない。もっとも楽できるネット通販では、扱っている店は見つからない。結局、違うサイズのGB社鳥カゴと朝日2号を陳列していた近くのペットショップに、取り寄せてもらうことにした。お店の人は、なぜほとんどサイズの同じ朝日2号ではダメなのか、理解に苦しんだに違いない。
 そういえば、巣草や擬卵など、最近欲しいと思ったものが簡単に手に入らないことが多くなった。腹が立つので、いっそ必要と思われる備品の類は問屋からある程度仕入れてしまったらどうかと考え始めた。自分の分を確保しつつ
ネットショップでも開いて、必要な人に売ってしまえば良いかもしれない。ついでに、エサの配合もして、底網をステンレスでつくってしまい、いっそ暇そうな親類に文鳥グッズも作らせよう・・・。

 などと頭の中で思い描きつつ、目先の現実に対処しなければならない。我が家の6代目にして、その40%までが初代ヘイスケの遺伝子で占められるヒナを、親元から引き取り育て上げる重大任務が存在する。

 今回は、真冬、一羽。それも、気象庁の長期予報がいつもながらに大はずれした真冬日攻勢だったので、保温は厳重なものが求められた。まず、以前買って未使用の温熱パネルがあったので、これを利用した床暖方式を採用する。一羽なので、わざわざ小さなフゴを探して買う。このフゴ、小さいのは良いが安定が悪い形状なので、灰皿だったらしいアルミ製の缶の中に押し込む。それを、せんべいの入っていた缶の上に数ヶ所テープで貼ってある温熱ヒーターの上にのせる。さらにせんべい缶ごと(缶の中に温度計と、乾燥防止のため水に浸したティッシュが入った小皿が入っている)、マフラーで巻き込み、それをダウンジャケットで包み込んだダンボール箱の中に入れる。…かなり徹底しているではないか。
 どれほどの温度になるか計ると、20℃弱であった。ヒナが接する床面
(牧草を敷く)はさらに暖かいはずなので、ちょうど良いだろう。
 エサのアワ玉に混ぜる『文ちゃんベビーF』なる商品を、飼料会社キクスイさんに送ってもらっていた。具体的な内容はわからないが、すり餌のようなもののようで、ふな粉が入っている香りがする。これをあらかじめアワ玉に混ぜておく。さらに、ボレー粉とカトルボーンと煮干少々をすり鉢で粉末にしておく。あとは、毎日小松菜をペースト状にして混ぜれば良い。…受け入れ準備完了。

 良く出来た親鳥たち(ハンとオマケ)によって、滞りなく成長した6代目のヒナを、生後15日目の1月9日に引き取った。『聖夜』に誕生したようなのでセーヤと名づけられたこのヒナは、かなりの近親交配の仔でありながら、何の問題もなく大きくなってくれた。すこぶる健康で、割合おとなしい甘えん坊で、ヒナ毛の外見上は、頬と風切り羽の半分ほどが白く、クチバシの付け根がピンクをしている。どの程度になるかわからないが、それなりにゴマ塩化するものと思われる。印象としては、オスで、飼主側の願望もオスなのだが、これはどうなるかわからない。
 我が家の文鳥には珍しく、孵化40日近く経過してもひとりエサにならず、人間から給餌されるのを好んでいたが、それでも、口元の馬蹄 斑も消えてきて自分でエサをつまむようになってしまった。活発にイタズラ放題するわけではなく、大人しいというほどでもなく、適当に遊ぶと、餌をせがみ、手のひらで熟睡する。実に、良く出来たヒナといえよう!…今のところは…

 さて、6代目が誕生し育っていく中、ゴンとケイ、ナツとノロのカップリング作戦も展開していた。とりあえずそれぞれ同居させたが、ゴンとケイについては失敗であった。両者は巣箱をめぐって闘争し、ゴンが脚をつり劣勢にたったので、水入り、別居させた。隣り合わせのカゴで生活させて、しばらく様子を見ることにした。ケイのカゴからはゴンしか見えないので、隣のゴンを意識させようと思ったのだ。ところがケイは、ゴンは適当に無視し、放鳥のたびにクルとサムのカゴに夜這いをかけ、それのみか、夫のサムを排除しようと追い掛け回す始末。やりたい放題だ。調子にのって、ブレイとチビのカゴにも夜這いをかけたが、これは老雄ブレイに撃退された。ブレイは最年長になったが、パワーはまだ衰えていない。最近も、妻のチビにしつこく言い寄る(無理やり背中に乗ろうとする!)オマケを、徹底的に追いかけて、さんざんに叩きのめしていた。チビは誇らしそうに旦那を見つめていたが、ブレイはオマケの女房のハンに、自分の女房がされたことをしている。やはり『無礼』なのだ。
 一方、夫ヘイスケと死別したナツと同居し始めたノロも、ゴンと同居していた時同様、夫の自覚を見せず、つぼ巣の上で虚勢ばかり張っていた。頭の鈍い彼には、普通の夫婦関係の構築は難しいのかもしれない。と思っていたが、捨てたものではなかった。徐々に変化を見せ始め、一月末には、何と、巣作りをはじめて卵を産ませるまでになった。まだ、夫婦らしく仲良く毛づくろいするような姿は見られないが、一年もすれば、すっかりまともになるかもしれない。彼の「正常化」に期待したい。

2003・1
 HP『セレンでピイ』とリンクさせて頂きました。特に、幼少期から小鳥を飼っているような人には、身につまされる話も多いのではないかと思います。
 いわゆる掲示板での会話は苦手ですが、いろいろな文鳥の姿も見たいので、画像添付型の
掲示板をつくってみました。設置に際して、ガチャガチャいじる間に表紙のカウンターが振り出しにもどってしまいました(2度目)。考えてみれば「きり番」で何か景品を出すわけではないので、この際カウンターは省くことにしました。はじめが約5000番、今度が約72000番カウントされていたようです。合わせて77000くらい・・・、ずい分多くの方にご迷惑をかけてしまっているようですが、これからもつづいてしまうと思うので、適当にご利用くだされば幸いです。

 11月以来悩んでいた。
 ヘイスケ亡き後、後家となったナツは、飼主のヘイスケの鳴きまねに甘え声を出したりしているかと思えば、オス、特に隣のカゴのブレイに尻尾をふり、ついには押しかけ女房になろうと隣のカゴに押し入り、チビに撃退されている。・・・これは、何とかせねばなるまい。
 一方二世の期待のかかるグリとセーユは、腹立たしいくらいに仲が良く、ポンポン卵も産むのだが、無精卵のみ。・・・やはり、あきらめねばなるまい。
 本来期待すべきゴンとノロの2羽の仲は、まったく進展を見せない。仲が悪いわけではない。ケンカはまったくしない。ただノロはほとんどゴンにさえずらず、巣箱に入ろうとするでもなく一日中ボッーとしている。そのくせ、放鳥の時には生意気にもナツに言い寄っている。どうも、彼はゴンを手の届かない憧れの鳥とあがめてしまっているようなのだ。・・・これは、いかがしたものか。

 ノロとナツを同居させ、ゴンにまた婿を迎える選択肢をめぐって悩んでいた。それが問題解決につながる保証はない。しかしゴンの子供を目指すのなら、あまりゆっくりは出来ない。年齢とともに有精卵は生まれなくなる。彼女も3歳になった。

 今年あたりヒナが生まれないと、家系断絶の可能性が見えてくる。代重ねにこだわっているようだが、実はあまり血統の継続に意味はないと考えているので、万一断絶しても、また手乗りのヒナでも買ってくれば良いくらいの気持ちだ。しかし、出来るだけヘイスケの血を残したい気持ちがないわけではない。そして、高齢化の進む現在、有精卵を産むのはハンだけだった。
 ヘイスケの娘であるハンは、ヘイスケの孫で玄孫でもあるオマケと夫婦となっている。近親婚は問題が起きやすいので、個人的に嫌いなのだが、オマケがゴマ塩以外に興味を持たないので、仕方なく今年からカップルにしたいきさつがある。しかし、この夫婦の子供はヘイスケの孫で曽孫で玄々孫となるので、卵を産んでも孵化させる気はなかった。繁殖実験をしているわけではない。危険は出来るだけ回避したい。しかし、たまたま読んでいた本で古代の天皇家の入り組んだ婚姻関係を思い出し、少し気が変わった。せっかく有精卵があるのだから、一つ残してチャンスを与えてみても良いのではなかろうか。
 たくさん生まれても、両親は近親で、かつゴマ塩で小柄、他人様には譲れないので、最低限に抑えざるを得ない。4個確認された有精卵のうちの1個を取り出さずにおく。もし、孵化して育てば、我が家の次世代を担うことになる。


生まれた

ヒナ

  

オマケ(父)  ガブ  サム     
 クル ブレイ  
 チビ  ヘイスケ
 フク
 ソウ  ヘイスケ 曽祖父
 ナツ
ハン(母) ヘイスケ 祖父
 フク

 そのように考える一方、ゴンとノロにはアワ玉を与え、ノロを巣箱に押し込んだりしながら、事態の好転を願った。ところが、ゴンは卵を産むが温めず、放鳥の時にはガブに尻尾をふっている。ノロはそれを阻止できず(近くまでは行く)、ナツにさえずっている。ナツは相変わらず、ブレイに尻尾を振り・・・。ますます混迷してきた。
 事態の打開に動く。12月半ば過ぎ、京浜急行を南下、金沢八景の小鳥屋さんにむかった。歩道橋の横にある小さな小鳥屋さんは、前々から好感を持って知っているのだが、この際、そこの桜文鳥はパッパと買ってきてしまうことに決意したのだ。万一、その店が消えたか、桜文鳥を売っていないか、売っていても気にいらなすぎたら、さらに京急を南下し、久里浜のペットショップまで行く腹づもりであった。久里浜のペットショップは、以前行った時に休みで、いくぶん心残りだったのだ。
 有難いことに、金沢八景の小鳥屋さんでなかなか見栄えの良い桜文鳥が売られていた。何も聞かずに3500円をおじいさんに支払って帰宅した。おかげで、最果ての三浦半島、久里浜などと言う「どん詰まり」に行かずに済んでしまった(たわ言です。住民の方がいたらご容赦ください)。

 八景で買って来たから『ケイ』と名づけたそのオスは、なかなか大柄で、ハンサム、毛並みも光沢があって素晴らしかった。難点は片方の後指の爪が欠損していることだが、コンテストに出るわけではないので、指の1本や2本どうでも良い。関心は、我が家に慣れてくれるかだ。
 健康上何の問題もなさそうなので、夜の放鳥時間にカゴを開けておくと不器用に飛び出してきて、パサパサと床に着地した(飛行事故防止のため、ペットショップで買ってきた文鳥の風切羽は最初に間引いている)。拾い上げてテーブルの上にのせてやると、こちらの顔をジッーと見る。そして、他の鳥が飛ぶのに驚いた拍子に手の上に乗り、手首のあたりでくつろぎ始めた。まったく怖がらない。・・・「手乗りでなくていいんだね?」と小鳥屋さんのおじいさんはわざわざ訊いていたから、手乗りではないはずだが・・・。最近買ってきた3羽は、なぜか買ってきた当日に手に乗っている。どういったトレンドなのだろう。さらに、ケイは肩でうたた寝を始めた。安心しきっている。謎だ。
 人間の目から見れば、結構姿の良い桜文鳥のケイに、興味を示したのはゴンだった。彼女の趣味は飼主と同じなのだ。肩のケイににじりよってくる。ところがケイは、この外見だけならそれこそ完璧に近い桜文鳥を相手せず、ゴマ塩の文鳥を追いかけ始めた。風切羽を間引いても室内飛行には支障はないので、かなり執拗に付け回し、鳴き声は良いが、何の変化もないつまらないさえずりを繰り返す。
 『・・・またはじまった。ゴマ塩好きの文鳥!』
 彼の趣味は、オマケと同じだった。不思議なもので、文鳥にも性格ではなく外見で判断するものがいる。オマケはゴマ塩のメスは何でも好きだが、色の濃い桜文鳥には目もくれない。同居させたセーユをいじめ、ナツやソウやゴンといった桜文鳥にはさえずりもしない。逆に、ゴマ塩を恋愛対象とはしないノロのようなものもいる。
 ケイは、ゴマ塩化したオスのグリにも近寄っていくし、オマケにも言い寄っている・・・。徹底したゴマ塩好きのようだ。オマケのように桜を極端に嫌うと言うのでもなさそうだが、とにかく、白い羽が好きなのだ。嗚呼、ゴンは完璧な桜文鳥で、白い羽はほとんどないではないか!

 そうこうするうちに、ハンとオマケの卵の孵化予定日が近づいてきた。23日夜にのぞいてみる。卵。一日置いて、25日夜にのぞくと、小さくうごめくものがあった。鳴き声がしなかったが24日〜25日の間に誕生していたのだ。
 ところが、なかなか鳴き声が聞こえてこない。心配なので、27日にのぞく。元気。そのうにエサも確認された。子煩悩なヘイスケの血を受け継ぐ夫婦に心配は無用なのかもしれない。それでも、やはり鳴き声が聞こえてこないので、30日に再びのぞく。夫婦で温めていたが、オマケがどかない。こちらを威嚇し、指で横にどかそうとしても譲らない。オマケとヘイスケの違いはこの辺にあるが、威嚇はすれども噛み付かないオマケを押しのけると、お腹の下にヒナのおしりが動いていた。おしりしか見えないが、かなり大きくなっている。無用の心配であった。
 元気そうなのに、なぜ鳴かないのだろう。ハンとオマケの血縁の濃さに古代の天皇家の複雑な婚姻関係を連想していたので、実はその濃い血の古代天皇家の人々の中に、死ぬまで一度もしゃべれなかった皇子がいるのを思い出してしまった。
 しかしその心配も的外れだったようだ。オマケが巣箱にもどった時、一瞬だが鳴き声が聞こえたのだ。想像するに、一羽っ子のヒナは、子煩悩な両親からエサをせがむ必要もないほどに素早く口にエサが放り込まれているのだろう。オマケは子育ての天才かもしれない。「おまけ」にしては出来すぎではないか。

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