問題のその後


取り上げてしまった問題について、メールのご指摘などを通じてその後考えた事を載せようと思います。

「ラウディブッシュ」と一緒にしないで! シードは「ハンバーガー」か?
『キクスイ』ペレットの感想




※ もしかしたら、下記の内容が伝わったのかもしれませんが、その後、詳しい成分表を掲載されるようになっているのに気づきました
(2001年10月14日)。ご紹介の上、訂正いたします。
 以前掲載されていた成分は中大型インコ用のもので、フィンチ(文鳥など)用のものとは原料も成分も異なるようです。大きさは違えど、中身は同じというペレットが多い中で、『キクスイ』さんの姿勢は実に立派です。

 カロリー:338Kcal・糖質 38g・繊維 25g・タンパク質 12.2g・脂質 6g
          水分 2g・灰分 1.5g・オリゴ糖 1g・カルシウム 0.9g
その他:ビタミンA・B1・B2・C・D3・E・K、DHA、シスチン、カリウム、亜鉛、鉄、等

アワ・ヒエ・キビ・カナリーシード・オーツ麦・小麦・白エゴマ・その他

 成分も下記のインコ用よりバランスが良い印象をもちますが (ただし「糖質」「繊維」が炭水化物を示すものとすると、この数値は疑問)文鳥に与えるのに原料が実に自然なのが特筆すべきでしょう。配合餌とあまり変わらないので、味覚的に切り替えも容易なものと想像されます。
 つまり、配合餌では選び食いが激しく偏食となってしまうような文鳥の対策として、有効な選択肢の一つとなりうるものと思います。

3、『キクスイ』ペレットの感想

 飼料を通販されている『キクスイ』さんがペレットを開発されたので、その使用報告をします。

大きさと形 外観は右のようなものです。緑の枠内はカナリアシードですが、ほぼ同じような大きさの微細粒で、小鳥にも食べやすいサイズになっています。

値段 値段は2001年9月現在400gで780円、一般的に市販されているラウディブッシュ社のペレット『メンテナンスタイプ』が750g1400円程度なのと比べると、若干安いと言えるでしょう。

原料・成分 原料はまったく開示されていませんが(文末の補足参照)、無着色無添加とされており、
 「カロリー:305Kcal , タンパク質:15g , 脂質:4g , 繊維:11g , 糖質:30g , 灰分2.5g , 水分2g , カルシューム 1.7g、その他:ナトリウム、鉄、カリウム、リン、ビタミンA・B1・B2・D・E・K」
 と内容成分の割合はホームページ上で紹介されています。


 参考までに、ラウディブッシュの成分表と比較すると、次のようになります。

  エネルギー タンパク質 脂肪分 繊維質 水分 カルシウム ビタミンD ビタミンA
『キクスイ』 305kcal 15 4 11 2 1.7 D3かも不明 不明
『ラウディ』 343kcal 11.0 7.0 3.5 12.0 0.37 80ICU 787.5IU

 栄養的には、脂肪分が4.0%、繊維質も多く含んでおり、文鳥の脂肪太り対策のダイエット食として位置付ければ、効果がありそうです。カルシウム値は過剰な気がしますが、健康的にはさして問題とならないと思われます。しかし、ビタミンの含有量があいまいなのは、まったく日本的でいただけない点だと思います。生命に必須の栄養価をしっかりと明示しない加工食品は、使用しづらいと一般の消費者が判断してしまっても仕方がないかもしれません。

使用感 個人的に使用した実感としては、嗜好性が比較的に高い点が指摘できます。配合餌とは別にカゴに設置したところ、好んで食べているものもいました。一般にペレット食への移行は困難を伴うものとされており、我が家の文鳥は、ラウディブッシュのものを以前同じように設置したところ、かじりもしなかったくらいですから、かなり違いがあるようです。これなら配合餌からの移行も楽かもしれません。

総括 原料はまったく不明、栄養素はおおまか、という限られた情報しかないので、どのように位置付けたらよいものか、理屈の上では何とも評価しにくいものがあります。製造側では配合飼料の「代用食」と位置付け、青菜その他の副食との併用を薦められているので、基本的にそれのみを食べれば良いといったものではないようです。その点では、犬のドックフードのようなそれのみで栄養面はカバーできるとするラウディブッシュなどのペレットとは異なったものと言えそうです。
 この一見あいまいな点は、種子食では脂肪過多に陥りがちの中型以上のインコで、このペレットを主食として使用する場合には(同成分でさまざまな大きさの製品が用意されている)、かえって有効かもしれません。ヒマワリの種や麻の実といった高脂肪の好物をオヤツ程度に与える分にはむしろバランスが取れ、「他のものは与えるな」的な完全食のペレットよりも、融通を利かせることが出来ると思うのです。つまり、ペレットがインコにとっての「ごはん」となり、その他のオカズによって鳥も豊かな食生活が送れるはずなのです。ただ、アメリカ合理主義的な利便性、「ドックフードだけ」、といったわけにはいかなくなりますが、そのあたりは飼育者の思想と飼育環境の兼ね合いで
選択すれば良いことでしょう。


※ 中型以上のインコでは、主食とすべき適当なものがないので、高脂肪の種子を用いていたわけですが、これは人間でいえば、毎食ビーフステーキだけでご飯もパンもない状態と見なせ、健康上問題となります。そのためペレットが考え出され、重宝するわけですが、本来主食になるべきものでさえあれば良く、ビタミン類や何とかを添加する絶対的な必要性はなかったとも言えるでしょう。


 一方もともと低脂肪の配合餌を「ごはん」として食べる文鳥では、栄養面で切り替える利点はほとんどなく、副食も必要なのですから、利便性においても有効ではないということになってしまうかもしれません(具体的な数値がないので)。つまり、主食として積極的に用いるべき
理由はないわけです。
 ただ、我が家の文鳥で見る限り嗜好性が高いので、主食というより補助食、副食、安全なオヤツ、オカズの一品、といった位置付けで利用する価値は十分に考えられるでしょう。

―補足―
 パンの原料を聞かれて「小麦粉」と答えない店など存在しないと私は思います。大福もちの皮は小麦粉、あんこは大豆が原料だと知らずに食べている人が、どれだけいるでしょうか。原料など同じなのです。ところがその味には雲泥の開きがあるのは、誰もが知っているはずです。同じ小麦粉でも、その品質の優劣と、製法(職人の技量)によって、まったく違ったものが出来上がるのです。
 原料の輸入ルートや製法は企業秘密で公開する必要はありません。しかし、原料そのものについては秘密にする意味などないのです。また、原料表示のない加工食品など本来ありえるべきものですらないでしょう。得体の知れないものを、分別のある人の誰が平気で食べるでしょう。
 小鳥用のペレットの場合、すでに一般化している欧米製のものが、国際標準で原料表記も成分表記も詳細に公開しています。その現実を目の前にして、後発の国産製品が情報を公開しないというのは、まったく理解しがたいとすら言えるのではないでしょうか。嫌でも、情報化してしまった社会となってしまっている以上、必要以上の秘密主義は疑いをもたれるだけなのです。先発のものより優れた点を積極的にアピールした方が賢いのは明らかではないでしょうか。


2、シードは「ハンバーガー」か?

 種子を脂肪分が高いと断定され、配合エサをハンバーガーに例えるメールを頂きました(1と同一の人物)。実際の使用者にこのような誤解がまん延しているとすれば困りものなので、シード、種子、の種類は多様だと言う常識を、ここでも繰り返しておきます。

 例えばラウディブッシュ社のパンフレット(2000年1月記)には(製品の利点と使用上の注意など書かれていてペットショップで「ご自由にお持ち下さい」となっています。実に立派な企業姿勢というべきでしょう)「脂肪分の多い種子類の選び食いによる脂肪過多の防止」のためにペレットが有効とされています。これは完全に事実です。ただしインコでの話なのです。
 大型のインコではヒマワリを主食にする事が多く見られ、中型以下の配合エサにも麻の実、サフラン、エゴマなどといったその比率が20%を超えるような高脂肪の種子が配合される事が多かったのです。それは自然界では基本的に果実等を主食としているであろうインコ類を飼育するに際し、適当なエサが見出し難かったためにやむを得なかったものと想像しますが、さすがに高脂肪過ぎたのです。そこで、脂肪分が低いペレットが登場する必然性が生まれるものと思います。
 ところが、自然界でもイネ科の種子、穀物などを拾い食いしている文鳥は、配合エサも低脂肪の雑穀類だけで構成されています。ヒエ、アワ、キビ、古来使用されるこれらの雑穀類は4〜5%しか脂肪分を含んでおらず、飼育される文鳥の食べるものとしては最も栄養価の高いとされるカナリアシードでさえも、せいぜい6%です。つまり
配合エサそのものはすでに十分低脂肪であり、最も脂肪価の高いものを「選び食い」してもペレット以下ということになります。

 従って、インコ類の種子食は「ハンバーガー」の面があっても、文鳥の種子食はどこをどのように見ても「ハンバーガー」とは見なせないのです。安易にインコを対象にした言葉を、文鳥に当てはめると、とんでもない誤解が生まれるわけです。十二分に注意するべきでしょう。


1、「ラウディブッシュ」と一緒にしないで!

 まずはじめにお断りしておきますが、私はラウデブッシュ社のメンテナンスタイプの説明書きから、それを文鳥に使用する際の問題点を、しつこく挙げ連ねていますが、これは文鳥に使用した場合に限った話です。本来この製品が対象としているインコに使用するのなら、優れた商品だと思っています。私が中型以上のインコを飼っていれば、おそらくこのペレットを主食にして、ヒマワリの種のようなものを副食的に位置付けるものと思います。
 ただ、ペレット使用が文鳥にも広がったために、とりあえずその需要にこたえるために、形状を若干変えたものが「フィンチ用」=文鳥用に市販され、無意識の内に使用されているらしい現実を問題視しています。本来別種のもののために開発されたものですから、容易に文鳥に転用すれば問題が起こるのは当然であり、その点に注意を喚起したいのです。これは製造元の問題でも商品そのものの問題でもなく、
転用する消費者の方が考えるべき問題だと思います。

 ところがそれに対して、「ペレット食にしている人ほとんどがハリソン社の」ものを使用するので、ペレットを批判するのであれば、そちらを対象にすべきではないかとのメールを頂きました。

 「ハリソン社のペレット」は最近になって、愛用者を増やしているらしいのは知っているのですが、現在は、基本的に動物病院を通さないと手に入らない製品であり、また同社の何種類もある中で何を使用しているのかすらの説明もないので、本来なら何ともコメントできないと思います。検討するには素材が必要です。「〜の方が良い」だけでは困ってしまいます。
 まして、私はペレット使用者ではないので、基本的に店頭に並ぶものしか検討の対象にする気はありません。それがその商品を代表するものかどうかは、手元に消費動向調査もないので知る由もありません。ただ2000年末の段階で、店頭に並ぶのを見かけるのは、ラウディブッシュ社のものだけだということだけを知っています。

 とはいえ、文鳥でペレットをご使用の方のホームページで、印象論以上に比較検討しているものを、今のところ見た事がなく、それどころか成分すら明らかにしてくれず、ましてR社、T社、K社、Z社などとメーカー名を伏せてしまっていたりします。根拠があって比較検討するのに、NHKのマネをする必要がどこにあるのでしょうか(芸能人の馬鹿な噂話のような無根拠な非難中傷は別ですが)。根拠を示して、個人の責任で、堂々と批評すれば良いはずです。
 そして、メーカー側はしっかりと批判に耐えるように商品を作っているのです。当然ハリソン社もHPで自己の正当性を堂々と主張しています
≪コチラ≫。ただ英語なので、使用している人は自分の文鳥のために、学生時代以来お蔵入りしている辞書を取り出す必要があるかもしれません。しかし仲間内で印象論で終始していたり、「病院の先生が薦める」だけでは進歩はないと思います。それでは盲信です。自分の頭でより深く理解しようと努力してもバチはあたらないのではないでしょうか。さらにその成果を公開すれば、どれだけ仲間内ではなく、一般の人がペレット使用を検討するのに役立つでしょう。

 と、能書きを言っても始まらないので、とりあえず一体どの種類を食べさせているのかすら知らない私が、ハリソン社のHPから少し参考資料を取り出して、配合エサ使用者からの感想を試みておきます(英語は苦手であり、当事者意識がないので一所懸命読もうと努力しておりません。誤解がありましたらご指摘下さい)

 多分「Adult Lifetime Fine」とある製品でしょう。「成鳥の日常食ー細粒タイプー」とでも訳せば良いのでしょうか。成分をいくつか拾ってみましょう。タンパク質14%、脂質6%、カルシウム0.6%、ビタミンA850IU、ビタミンD107.5IU(ビタミンは100g中)
 とりあえず、ラウディブッシュ社の数値(11%、7%、0.37%、80IU、787.5IU)と比較すれば、脂肪を除き総じて栄養価が高いことが指摘できるものと思います。配合エサの雑穀に比較すれば、
カナリアシードに似ています(『飼鳥大鑑』を信じればタンパク質14%、脂質6%、まったく同じです)。文鳥で配合エサ使用者の感覚としては、カナリアシードだけで、各種ビタミン剤などを添加した状態を想像すると、栄養的には近似形となりそうです。カナリアシードは肥満につながると、文鳥飼育者の一部で言われているくらいですから、この製品は文鳥にとって、少し栄養が豊富なものと評価されるかもしれません。

 栄養素的にはそのくらいの印象で、他の特に優れた点は分かりませんが、原材料がより自然なものを使用していることがうたわれているようです。しかし自然そのものの穀物である配合エサ使用者には、この点はコップの中の話のような気がしないでもありません。添加物などの話では、ラウディブッシュ社のものも着色料や防虫剤、防カビ剤は添加されていませんから、せいぜいオーガニック、有機栽培のものを使用しているのが、この製品と他社製品とを分ける点でしょう。しかし原材料の品質面というのは、同じ食品内部での差別化には重要でも、その食品(ペレット)全体を考える時には、さして意味のあるものではないと思います。ディテール(細部)は使用者間での問題でしょう。
 使用対象として挙げられるのは「
Budgies,Canaries,Cockatiels, Conures, Doves, Grey-cheeks, Lories, Lovebirds, Pigeons,Parrotlets and Quakersですが、その中にアメリカでの飼養はほとんどない文鳥は当然含まれていません(輸入禁止という)。カナリアから鳩まで含むようですから、かなり広い範囲をカバーしている製品といえます。粒の大きなもの(coarese)とは成分上や原材料に微差があるようですが、むしろ大型用の方が脂肪分が低く(5.5%)、その相違が文鳥での使用において意味があるものとは思えません。この点内容は同じで形状だけを変えているラウディブッシュ社(メンテナンスタイプ)と確かな優劣があるようには思えません。なお、より文鳥に近いはずの「フィンチ」はすり餌(mash)の対象となっています(良くわかりませんが、メーカー側では粒エサからの移行にこの粉状のものを混ぜると言う利用法も提案しているようです)。

 メールを頂いた方はハリソン社のペレットの成分表をご存じですか?ラウディブッシュ社の製品と一緒にしてほしくないんです」と指摘されるのですが、成分表だけみれば、大差なく、むしろ私にはラウディブッシュ社のものの方が文鳥には良さそうな面もあるのではないかとすら思えます(脂肪分を除けば、青菜やボレー粉も稀には与えられる個人飼育の環境下では、控えめな数値の方が過剰の心配がないと思うのです。もっともDo not add other supplements, such as vitamins, cuttlebone, seeds, table food or other animal food.「ビタミン剤、カトルボーン(含むボレー粉)、種子、おやつの類や、他の動物用食品を補足して用いてはならない」と注意事項にあるので、ハリソン社のものを使用する場合は、青菜以外は一切他のものを与えないのが使用する際の前提となります)
 もっとも、使用した事がないので(獣医さんに頼んで購入する気などまったくないです)、形状などがラウディブッシュのものよりも文鳥向きかどうかはわかりませんし、また文鳥の嗜好性、つまり文鳥が喜んで食べるかどうかもわかないのですから(もっとも、非常に細かく移行の方法が書かれているので、お菓子みたいな訳にはいかないと想像されます)、やはり私には十分に比較はできないものと思います。
 それでもあえて結論を言えば、とりあえず表面的にはラウディブッシュ社の製品と特別違った所は見出せないということになりそうです。原材料が有機栽培か否か程度の相違では、少なくとも
「別物」とは考えられないと言わざるをえません。

 ともあれ、このてのペレット内部の細かな比較検討は、当事者であるペレット使用者が十分になさって、出来れば私の方にもご教示頂くのが適当だと思います。したがって、今後「〜社製が良い」という漠然とした話を持ちこまれてもお答えできないものとお心得下さい。今回は世紀末の特別サービスです。

※ なお、ハリソン社の製品は通販されており、その気になれば個人輸入も可能です。日本で獣医さんから買うと500gで2500円程度らしいですが、現地の定価は454gで1100円程度です。また、例えばhttps://www.nybird.com/default_ssl.aspでは6ドル(720円程度)にディスカウントしているみたいです。同じお店のラウディブッシュのスモールタイプは624gで4ドルですから、現地でもハリソン社の製品は約2倍もする高級品です。…ですが、それでも3倍以上の値段を強いられている日本の使用者にはため息ものの安価といえるでしょう。
  高いもの=良いものなどという発想は、21世紀の情報社会の人間にはないものと思いますが、日本で海外の製品が「高い」のは、なぜでしょう。それはたんに流通コストがかかっているに過ぎません。海を越えたら金箔がはられていたわけではないのです。舶来品の価値は国産にはない珍しさにありますが、珍しさなどそのものの本当の「価値」とは無関係です。その価値は現地の価格で推し量るべきであり、ペレットも現地では、「適正な」「常識的な」ようするに、穀物飼料と競争しえる値段で市場に存在していると言えるのです。
 つまり、「市販の粒エサの8倍もするエサを買い与える私は、立派な飼主だ」などと少しでも考えたとしたら、それは実に愚かな自己陶酔であると、私はこの際断定します。ペレットの良さは値段によって保証されるものではないはずです。自分が文鳥と楽しく生活するために、(その多くは健康面ではなく利便性で)必要があればペレットを導入すれば良いというだけです。 ≪補足 2002・4≫

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