文鳥問題.

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ペレット  穀物  野菜  ボレー粉  塩土  その他

 自分の愛する文鳥の健康を思えば、人間の薬を混ぜてみたり、ペットショップめぐりをしてみたり、はては野山をかき分けてしまう。「鳥ごときに何もそんなに・・・」飼っていない者には絶対に理解できまいが、本当のところ何を食べさせたら良いのであろうか、これは飼い主にとって、尽きぬ悩みだと思う。
 そこで参考までに、文鳥の食べ物について、ここで私見を提示してみようと思う。

 

ペレット・・・摂取すべき栄養素=すべて

 文鳥は元々野草も食べるにしても、原産地の東南アジアでは、人間の農耕文化に寄生して水稲をかすめとっていたように、主食は穀類であった。この点は、日本で人間の飼鳥化しても変わらず、アワやヒエといったイネ科の雑穀が主食とされ、その事自体は現在でも変わっていない。しかし、最近になってペレットというものが出現して注目されている。
 ペレットは、小鳥に必要な栄養素を十分に含んだ人工の飼料で、ちょうど犬にとってのドックフードのように、これさえ与えておけば文鳥の健康に支障は起きないものと考えられている。何しろ穀類のみでは、ビタミンやカルシウムが不足してしまうので、青菜やボレー粉
(カキ殻)を副食に与えねばならないが、ペレットの場合はそうした
副食は必要ないと言うのだから、非常に合理的な飼料と言えよう。

 しかし、私は一般飼鳥者には余り意味がないものと判断している。なぜなら、現在雑穀の粒エサを与えつつ、文鳥の食事に日々心を砕いている人々に、今更、青菜やボレー粉を与える程度の手間を惜しむ人は、ほとんど存在しないと思うのだ。
 第一、本来ドックフードと同列に論ずべき問題ではないように思う。
 肉食の犬の食性に合わせた食事を用意するのは難しく、本当なら人間の残飯、ご飯に味噌汁をかけたものなど論外なのだが、さりとて、毎日スジ肉や軟骨や内臓など用意できるものではない
(しかも出来れば新鮮な生)。必然的に人工飼料を代用としなければならず、そして、それは残飯よりも、よほど犬にとっても望ましい姿なのだ。
 一方小鳥、とりあえず文鳥はどうだろう。彼らは元々穀類を食する動物で、その事自体人間に飼われるようになっても変わらず、アワやヒエなどの雑穀を食している。つまり
、本来の食性のままであり続けているわけで、その本来の食性にあった飼料が容易に手にはいるにも関わらず、わざわざ人工のものを用いなければならない積極的な理由は見当たらないはずなのである。

 ペレット使用の利点が利便性のみであるならば、それは一般飼鳥者ではなく、ペットショップ等で用いられるべきものだろう。商品として展示されている彼らは、ボレー粉も、青菜も与えられず(与えているところもあるが、極めてまれ)粗悪な配合餌のみで、購入者を待っている。
 ただそれを一方的に非難する事も出来ない。大量の鳥を維持管理するのに、一々副食を用意するのは大変厳しい。そういった状態にあって始めてペレットは有効となるのではなかろうか。何しろ、エサ箱にこれさえ入れておけば、青菜を入れずともビタミン類を、ボレー粉なしにもカルシウムを摂取させる事ができるはずなのだ。
 しかし、ペットショップで文鳥にペレットを与えているところは、
今のところ皆無に近い。なぜこれほど便利なはずのものを使用しないのだろうか?答えは簡単、コスト、ペレットは値段が高すぎるのだ。ざっと、配合粒餌との価格差を調べたら次のようであった。

商 品 名 基本価格 市場価格
ラウディブッシュ社ペレット「メンテナンスタイプ」 750g 1500円 1400円
『カスタムラックス文鳥専用』 830g 600円 490円
フィンチ用配合エサ 1000g   320円

値段 2000年7月現在 基本価格・・・某百貨店 市場価格・・・某大型ペットショップ

 これをわかりやすくするために、市場価格で1000g単価にそろえると(小数点以下切捨て)、それぞれ1866円、590円、320円となる。一般的な配合エサを基準とすれば、単純には6倍もコストがかかってしまうのである(実際にはもっと粗末で安価な餌を与えているお店が多い)。これでは利益を出さねばならないペットショップは使用出来ないし、もし使用したら、文鳥の小売価格がどれだけ上がるか見当がつかない。
 なお、実際にペレットをご使用の方から、ラウディブッシュ社のものは本来オカメインコ用に開発されたものだとのご指摘を頂きました。良くわかりませんが、とりあえず現状では、普通に店頭で手に出来るのはこれだけ(形状に二種類あり、粒状のものがフィンチ用と表示されている)なので、残念ながら、ここで一般論としてペレットを取り上げるのに際してはこれを基準とせざるを得ません。(2000・7・25補足)

 ようするに、ペレット普及にはまず価格を大幅に下げて、ペットショップなどの「プロ」な人たちが使用しやすくしなければならず、一方、あまり楽をしようとしない(おそらくより自然食を求めたがる傾向にある)多くの一般飼鳥者には、今後もペレットはほとんど意味はないないものと判断する次第だ。

 なお、これは普通に粒餌を食して問題が無い場合、わざわざペレットにかえる必然性が無いという意味である。お飼いの文鳥の個性として食の偏向がどうしても起きてしまうなど特殊な事態の中では、ペレットを使用するのは当然なのは言及するまでもない。以上は現在特殊で普及しているとは言いがたいペレット飼育が、今後普及するかを予測したものであり、一般の人はペレットを使用すべきではないとの趣旨ではないので、念のため。(2000・7・25補足・本文表現の一部訂正)

その他ペレットの問題点については『その後』と別項目を参照。

 

穀類(粒エサ)・・・摂取すべき栄養素=たんぱく質、脂質、炭水化物など

 文鳥の主食は穀類、雑穀で、普通は配合飼料として、アワ・ヒエ・キビ・カナリアシード(カナリーシード)を混ぜたものが売られている。さらに文鳥専用には、これに青米が加えられ、エンバク等が配合されているものもある。
 いろいろなものを混ぜ合わせるのは、同じ穀類でも、それぞれ栄養の組成は微妙に異なるので、それぞれが足りない部分を
補い合えるようにとの配慮で、人間が一日30品目食すると良いなどといわれているのと同じ考えと思われる。

 さて、江戸時代から日本人に飼われている文鳥が、初めに食べたのも、おそらく米(くず米)と雑穀のはずで、これは今とあまり変わらなかったに違いない。アワ、ヒエ、キビは、粟、稗、黍と漢字を持っており、それぞれ雑穀として古来より日本で栽培されてきたイネ科の植物であり、水耕が不能な山間地で重用されてきた。現在はほとんど外国から輸入されているようだが、元々は『五穀』として国内でありふれた存在で、米よりずっと安価であったため、小鳥のエサとして利用は容易だったわけだ。
 唯一、カナリアシードは異色だ。おそらく配合飼料に混ぜられるようになったのは戦後
(1945年以降)の事で(未確認)、元々は大西洋のカナリヤ諸島や、アフリカ西部の原産の穀物で、カナリヤの飼料として欧米で用いられていたのが、文鳥の飼料にも加えられたものと思われる。
 このカナリアシードについては、最近まで
栄養価の高い穀類とされていた。私も「これを与えすぎると、太ってしまう」ものと信じ込んでいたが、栄養成分表を見るとそのような事実はなく、ほとんど他の穀類と変わらない

  たんぱく質 脂質 食物繊維
アワ からつき 9.9 3.7  
からむき 10.5 2.7 3.4
ヒエ からつき 9.3 4.8  
からむき 9.8 3.7 4.4
キビ からつき 12.7 3.8  
からむき 10.6 1.7 1.6
カナリヤシード 13.7 3.5 21.3

四訂食品成分表、カナリアシードについてはHP『飼鳥の医学』の数字を引用しました

※ ここでは成分表にある「玄穀」を「からつき」に「精白」を「からむき」と単純に考えたが、これは間違いかもしれない。なぜなら「玄穀」は殻の中身(可食部)だけを抽出した数値ではなく、「ふ付き」とありカラをも含んでいる。つまり米で言えば、玄米ではなく籾(モミ)の数値といえる。一方「精白」(「玄穀」の20〜40%を除去したもの「歩留まり70%」などと記載される)は精白米と同義とすれば、胚芽部分をも除去したものとなり、からむきエサがたんに殻を取り除いただけのものを使用していれば、この数値をもってからむきの栄養価とすることは出来なくなる(例えば玄米の脂質は3.0だが、半つき米で2.0、精白米で1.3と減少するので、胚芽部分が脂質を含むことは明らか)。
 またカナリアシードの食物繊維の数値は殻の部分を含むことによるものかもしれず、これも留保すべきかもしれない。
 いずれにせよ、食品成分表の数値は文鳥の栄養摂取量として厳密に考えるには、不正確な面がありそうだ。(00/10/29)

 なぜ不思議な迷信が生まれたのかは想像するしかないが、日本では栽培されておらず、当初は珍しく高価だったこの穀類を、小鳥が大変好んで食べるのを目撃した人たちが、これはきっと栄養が豊富だからに違いないと早合点したからではないかと思う。
 文鳥がこのカナリアシードが大好きなのは、栄養価よりも味覚の問題なのかも知れない
(突出している食物繊維が意味を持つものかは不明)。従って、昔の飼育書の中には全体の10%以上となると脂肪過多を引き起こすような事を書いているものがあるが、少々多めに配合しても構わないものと思う。ただ、いろいろ与える事で栄養バランスが保たれるという点を考慮すれば、こればかりでは問題となる心配もあるかもしれない。

 なおカナリアシードの栄養価については、食品成分表になく、調査によってばらつきがある印象があるので、まだ不確実な気がしているが、ここでは、上の数字を前提として考えておく。
 例えば『ペッズイシバシ』という会社のカナリアシードの裏書には、粗脂肪6.2%となっている。この数値ならアワなどに比べて脂肪が多いと言える。しかし、それでも「脂肪分が多い」と特記するほどの数字とは言えない 。

 文鳥はかなり好き嫌いの激しい小鳥で、エサも自分の好きなものを先に食べようとする。これでは多種類を食べさせる事は出来なくなってしまう。この点、私の作戦は有効かもしれないと最近自負している。もともとからつきエサだけでは鳥も大変なのではないかという理屈以前の感覚と、配合ムキエサは安いという現実的なケチ根性から、半々に混ぜたものを常食にし、毎朝一日分よりやや多めにエサ入れにいれるのだが、これだと、ムキえさのアワ、ヒエを残しながら、からつきの方はほぼ完食してくれる(エンバクのような大きな種子を敬遠するものはいるが)。残ったムキエサを捨てるのはもったいないが、仕方があるまい。

【将来的な話】
 先頃、スーパー穀物として話題の
『キヌア』はあまり食べなかったが、『アマランサス』は良く食べている、との情報をメールで頂いた(「unknown」で返信が戻ってきてしまうので、この場で感謝致します)。保守的な私はそうした穀物を文鳥が食べる事を全く知らなかったので、慌てて調べたところ、確かにけた違いの存在であった。 

食品名 たんぱく質 脂質 炭水化物 カルシウム リン ナトリウム カリウム アミノ酸スコア
アマランサス 14.9g 6.0 62.7 160mg 540 9.4 1 600 (70)
アワ 9.9g 3.7 70.5 21mg 240 5.0 4 500 (35)
・ともに玄穀100g中(四、五訂食品成分表より)
・ただしアワのアミノ酸は精白粒のもの、またアマランサスのものは不確かなので一つの目安と考えて欲しい

 特に無気塩類のカルシウムは比べ物にならず、鉄分の含有率も高い。また、たんぱく質中に必須アミノ酸(特に成長期に多く必要、文鳥ではアワ玉や煮干のような動物性たんぱくでまかなったりする)を多分に含んでいるようでもあり、今のところ文鳥にどの程度与えて良いものかわからないが(弊害がないとは断言できず、この数字だけみると脂質がやや高いので、与えすぎには少し注意が必要かもしれない)、配合エサの一部として取り上げる価値は十分にあるものと思われる。将来的には普通に配合エサの中に加わえられるかもしれない。

 保守的なので(ケチでもある)ので購入しなかったが、少し調べ、一見も出来たのでその報告(実際使用した報告は『その後』を参照)

 キヌアはアンデス地方の原産で、五件ほどまわって売っているペットショップを見つけた。その近代的な小洒落たペットショップのものはペルー産のからむきのもので、300g400円であった。白色系で、からつきキビをやや小ぶりにしたような外見をしている。市販の皮付き配合飼料と半々に混ぜて与えるようにと、店側は薦めていた。
 アマランサスもアンデス地方原産だが、日本でも水耕の代替作物として栽培されており、すでにいろいろな加工品が作られている。『仙人穀』とか『紐ゲイトウ』などとも呼ばれているようである。情報提供していただいた方の話ではこちらは良く食べているというので、キヌアより力を入れて探したが、百貨店の地下の輸入食材コーナーに『アマランス』として、からむきのものが売られているのを見つけただけだった(生産地不明)。250g550円。国産のものは加工品として消費されてしまうのだろうか。ともあれ、こちらは黄色でむきアワよりさらに小さいものであった。

 また、穀類としては、スズメノカタビラやエノコロ草といった道端に生えている野草を薦める人がいるが、栄養的にどんなものかはわからず、「自然」にあるものだからとむやみに有り難がる必要はないと私は思う。さらに自生している場所を選ばないと汚染の心配も残る。汚染の危険が少ない場所のもので、文鳥が喜ぶようなら、アワ穂のような副食的なものとして利用しても問題ないといった程度に考えておくのが適当ではなかろうか。

 

野菜・・・摂取すべき栄養素=ビタミンAと無機塩類(ミネラル)など

 野草(雑草ともいう)を推奨する人がいる。ハコベやナズナ、タンポポ、オオバコ、クローバー、文鳥が食べるものは結構たくさん道端にに存在している。さらに、それらは一般に栄養価も優秀と考えられており、その野生の生命力が魅力ともされている。
 しかし、野草を与える事には反論がある。何しろ、除草剤などを浴びてるかも知れず、排気ガス等の環境汚染の問題が付きまとい、
土壌汚染などは外見で判断するのは不可能だ。さらに野生の鳥のフンがつき、そこから寄生虫が感染する事もありえる。

 個人的には都市住民なので、反野草派の側に近い考えをもっている。いわゆる田舎でも、あぜ道の野草などは、農作物以上に農薬の影響を受けているはずであり、また、林道の脇などゴミの不法投棄で土壌がどんな事になっているか疑わしい気がするのだ。
 寄生虫云々は良く水洗いすれば済む問題で、確信を持って土壌汚染のないところのものなら、利用するのに問題はないと思うが、特に
無理して与える必要はないのではなかろうか。
 プランターでハコベやナズナなどを栽培する人もいるようだが、これはもはや
個人の趣味の問題で、飼い主側がそれが出来、文鳥も喜んで食べるなら、季節限定の副食とするのに異議はないし、その努力には敬服するが、誰もがまねをすべき話でもないだろう。

 しかし、いかに努力しても、野草は季節ものであり、さらにプランター等で小松菜栽培を試みても、冬場の収穫は難しい。経験上小松菜の自家栽培は、あまり大きくならず「つまみな」で終わる事が多い。
 やはり、市販野菜の購入は避けて通れないものと思う。そこで市販の主な野菜の栄養を比べてみる。

品目 ビタミンA効力 カルシウム リン ナトリウム カリウム マグネシウム
ニンジン 4100IU 39mg 36 0.8 26 400
ほうれん草 2900 55 60 3.7 21 740 70
豆苗 2600 18 55 1.0 210 18
小松菜 1800 290 55 3.0 32 420 16
大根の葉 1400 210 42 2.5 39 320 16
チンゲン 830 130 33 1.1 40 320 16
サラダ菜 780 50 44 2.2 370 13
キュウリ 85 24 37 0.4 210 13
レタス 70 21 24 0.5 220 10
キャベツ 10 43 27 0.4 210 14

100g中の含有量(四、五訂食品成分表より)

 動物が健康であるために比較的大量に必要とされるビタミンは、AとCであろう。ただ、普通の動物はビタミンCを自己形成するので、食物から摂取する必要は薄い。その点は文鳥も同じで、重要なのはビタミンAの摂取と考えて良い(形成できない人間という動物は奇形といえる)
 その点で、下段の三つのような野菜はほとんど期待できない。それらを文鳥が好むのなら、食べさせて問題はないにしても、必要な栄養を摂取する食物ではなく、一種の嗜好品
(おやつ)と考えた方が良いだろう。
 またビタミンA摂取で考えるとニンジンは素晴らしいが、文鳥の食べ物としては一般的ではないので、とりあえず例外として
(もちろん好きなら食べさせて問題ないと思う)、その他を一つずつ考えてみることにしよう。

 もっとも栄養的に優れているのはほうれん草、しかし、この野菜には問題が多い
 まず、根元が赤く葉がギザギザした日本のほうれん草はアクが強すぎて、文鳥はほとんど食べない。また、他の野菜より圧倒的に含むマグネシウムや蓚酸
(シュウサン)がカルシウムの体内吸収の
阻害要因になるとも考えられているのである(マグネシウムのこの程度の値は問題とならず、むしろプラスなような気がする)
 こうした否定的な点は、西洋種やサラダほうれん草では各段に減るものと思われるので
(ビタミンAの含有量も減ってしまうようだが)、そうしたものであれば文鳥に与えても心配はないものと思う。しかし、他にも野菜はあるので無理にほうれん草を利用する必要はないように思える。

 豆苗はグリーンピースの若芽で、そのビタミンAの含有量は魅力的だ。水耕栽培のため農薬の心配も少なく、値段も一定して安いので非常に利用しやすいという利点もある。ただ、菜差しでは与えづらいのが悩ましい。

 小松菜は日本原産の野菜で、トータルバランスに優れている。野菜にしてはカルシウムを多く含む点も心強く、文鳥用の青菜として、昔からの定番であるのもうなずける。しかし、害虫がつきやすいため農薬の使用は必至であり、残留農薬が心配な面はある(個人的には気にしない)。しかし、水耕栽培のものもあるので、気になる人はそれを利用する方法もとれる。

 大根の葉の栄養は小松菜に似て優れている。ところが本来が根野菜で、根の部分を食べ、葉は捨てるものと考えられているので、葉に対して配慮されていない栽培法がなされている恐れも大きい。また、葉野菜で収穫期の早い小松菜とは比較にならない程、大量な農薬をかぶっている危険もある。その大根の葉も食べられるといった表示がなければ、普通に買った大根の葉の廃物利用は止めたほうが良いだろう。

 チンゲン菜は前の野菜に比べれば栄養的に少し見劣りするが、水耕栽培の物が多いため農薬の心配も少なく、値段も一定して安いので利用しやすい。さらに茎が太いので菜さしにさして与えやすいのも有り難い。

 サラダ菜も他の野菜に比べれば栄養的に少し見劣りするが、水耕栽培の物が多いため農薬の心配も少なく、値段も一定して安いので利用しやすい。菜さしで与えるのは難しいが、人間のおかずの付け合せなどになるので 、無駄になることが少ない。濃い野菜が苦手な文鳥には、むしろ喜ばれるようだ。

 以上、ようするに簡単に手にはいる野菜で問題のないものは、豆苗、小松菜、チンゲン菜、サラダ菜といったところであると結論できよう。この中で、自分の文鳥の好みのものをメインにし、他の野菜もたまに与えるようにするだけで十分だと思う。

 我が家では小松菜がメインで、たまにチンゲン菜を代用にし、豆苗をカゴの外で遊ばせる際のおやつにしている。奇をてらう必要はないものと考えている。

※ 我が家の文鳥たちは食べてくれなかったが、猫草として市販されているエンバクの青草を薦める飼育書があり、農林省の『日本標準飼料成分表』1980年版にその成分が記載されているのを見かけたので参考までに掲げる。ただしビタミンAはカロチン220mg/kgとあるので、比較しやすいように100g中では22mg=2200mcg×0.55として効力に換算した。

品目 ビタミンA効力 カルシウム リン ナトリウム カリウム マグネシウム
エンバク
〔出穂前〕
1200IU 550mg 290 20 240 4800 260

【感想】ビタミンAの含有量はそれ程でもないが、ミネラル分が強力な数値となっている。突出したカリウムは過剰摂取しても問題とならないと考えられており、食べるようなら、とりあえず利用しない理由はないように思う。またその豊富なミネラル分を考えると、日常的な青菜というよりも栄養補助的に与えるのに優れているといえるかもしれない。(00/11/23)

 

ボレー粉・・・摂取すべき栄養素=無機塩類(ミネラル)特にカルシウム

 ボレイは牡蠣の音読みで、カキがらのことだが、栄養的には、ほぼカルシウムの補給源と考えて良いと思う。ただ固いので、文鳥はクチバシでこれをすり潰さねばならないことから、クチバシの手入れにも役だっているという面はあるかもしれない。
 また、鳥は砂のう
(後胃)に砂粒をためて、エサを胃内部で粉砕する助けとする(砂ずり)らしいが、
未消化の一時期にはボレー粉がこの砂粒の役割を果たしているような気もする。

※ ボレー粉(カキ殻)の成分が一部わかったので参考までに掲げてお く(『日本標準飼料成分表1980年版』ただし100g中の表記に統一)(00/11/23)

品目 カルシウム リン マグネシウム カリウム ナトリウム
カキ殻 38.1g 70mg 300mg 100mg 210mg 290mg

 ボレー粉の問題といえば、その一部の商品に合成着色料の添加が疑られる点で、確かに青緑色したものを煮出すと尋常でない色をした液体が出現する。葉緑素を添加していると宣伝されているが、ちょっとそう言ったものではない印象の色ではある。
 野菜を別に与えるので葉緑素の心配など無用なのだが、飼料会社としてはただカキがらを砕いて袋づめするだけでは申し訳ない気がするのだろう。しかし
、それは余計な事には相違ないので、気持ち悪く思ったら洗って使用した方が良いだろう。

 さらに使用されている原料のカキがらの洗浄が十分ではないために、微量にせよ汚染物質が付着したまま製品化している物が多いとの指摘もなされている。これはさらに気にするほどのものではないと思うが、どうも面倒ながら、今の段階では洗浄すべきものなのかもしれない。飼料会社は余計な事をせずに基本的な事をしっかりして欲しいものである。

 情報を集めてみると危険な話がたくさんあってギョッとする。個人的には合成着色料も洗浄不十分なのも許容レベルの問題だと思っている。しかしそうは思いつつも、やはり洗浄して用いている(着色されていない、いわゆる白ボレー粉も)。ザザッと水洗いして、なべの熱湯の中に放りこみ、グルグル回してザルにあげ、水でガシャガシャ洗った後で水気をとり、レンジで3〜5分チンとして、暇だとさらに布状のものにいれて、上から金槌でゴンゴンたたいて、少し細かくしてから空き瓶に放りこんだりする。※実際の変化の様子は、『その後』を参照頂きたい。

※ ボレー粉の成分を見るとナトリウム、つまり塩分が案外少ないように思える。1gのボレー粉を食べても、摂取量は2.1mgに過ぎないとなると、粒エサと洗浄ボレー粉(市販のものには塩が添加されている可能性がありそう)と青菜だけだと、今度は不足してくる可能性が高くなる。我が家の文鳥は煮干とかビスケットとかおやつで食べているので平気なのかもしれないが、そういった怪しい行動に走らず、ボレー粉をきっちり洗浄する場合は、最後に少々塩を添加するか(100gに3g程度【小匙1】)、週1回でも塩土(成分のおそらく2、3%が塩)を食べる機会をつくる事も必要となるかもしれない。ただそれは、とりあえず塩土あたりを一所懸命食べているようなら考えれば良いことで、そういった様子がなければ、わざわざ先回りして添加する必要はないであろう。(00/11/23)

 ※ 通販飼料店『キクスイ』のフィンチ用を洗わずそのまま使用している。(2005・8)

 

塩土・・・摂取すべき栄養素=無機塩類(ミネラル)特に鉄分か

 塩土は赤土などの鉱物にボレー粉と塩を少々混ぜた飼料で、ミネラルの補給と鉱物の粒による砂のう(後胃)における消化の補助(砂ずり)として役立つものとされている。
 しかし塩土については、無機塩類、特に鉄分の補給手段の一つとして有効なのは確かだが、個人的にはあまり重視していない。野菜やボレー粉が十分に与えられていれば、文鳥の飼育においては
なくても構わないと思っている。

 塩土についてはHP『ぶんちょといっしょ』が詳しく検討されていて、私もいろいろ質問(難癖をつけるともいう)したおかげで、問題点がわかってきたように思っている。ようするに、この飼料の現在の姿は間違っているのだ。

 まず市販のものをみると、不自然にガチガチに固められ、文鳥のクチバシではなかなか食べづらい形状をしている。おそらく凝固剤でわざわざ固めているものと思われるが、なぜそのような事をするのであろうか?それはおそらくインコ類のクチバシの手入れのためだと私は思う。インコ類は文鳥などと違ってクチバシが伸びやすく、固いもので研ぐ必要があり、さらに両足の使い方が巧みで、脚でエサを押さえつけてかじるという行動がとれる。
 つまり固められているのは
インコ類のためであって、文鳥にとってはほとんど意味がない。
 インコに興味はないが、クチバシを研ぐ目的でこれをかじらせると、必要以上に鉱物や塩分を摂取する事になり、かえって有害なものと思えてならない。やめた方が良いのではなかろうか。

 また砂ずり効果については、小鳥にあってどれほど必要なものか疑わしい。このために細かな砂(グリット)も存在するが、それを与えないために文鳥に弊害が起きるという話は、いまだ聞かない。
 ミネラルも野菜とボレー粉でまかなえると思うし、第一、文鳥は塩土をなめる程度にしか食べない。この面でも、それほど多大な期待をかけないほうが良いのではなかろうか。

 つまり現状の小鳥用塩土は、@砂のうにおける砂ずり効果、Aミネラルの供給効果、Bクチバシの手入れ効果、という三つの異なった用途をすべて満たそうとするもので、このうち、Bは文鳥にとって意味がなく、@もその必要性が疑問であり、Aのみが若干の意味をなすに過ぎない。
 とすると、文鳥にとって必要な塩土とは、
ボレー粉にサラサラの土と塩をまぶし全く固められていないもの、という事になるのではなかろうか。
 実は鳩用の鉱物飼料にまさにのぞむ姿のものがあったのだが、「強壮剤入り」とあって、不気味なので与えていない。

 結局のところ、無理をして与えるほどの意味があるものとは思えない。極少量、鉄分の補給程度の気持ちで、たまに与えれば良いのではなかろうか。

※ 通販飼料店『キクスイ』の塩土ボレーは固体になっておらず使いやすい。(2005・8)

 

その他・・・摂取すべき栄養素=必須アミノ酸

 文鳥の成長期や産卵期、特に余分に必要となるのはたんぱく質中の必須アミノ酸だが、これは『アマランサス』のような今だ普及していない穀物以外では、植物から十分に摂取するのは難しいようだ。そこで動物性たんぱく質が必要となってくる。
 このために昔から、アワや米に卵をまぶしたアワ玉や卵米というものが存在しているが、文鳥は煮干も好きなので、そういったものを与えるのも有効だと思っている。
 野生の文鳥はスズメのように虫も食べていると思うので、ミールワーム(市販されている芋虫)も食べるのではないかと密かに考えているのだが、喜んで食べられても気持ち悪いので試してみたことはない。

 後は、飲水やエサに小鳥用の栄養剤を混ぜたり、人間用の薬を混ぜる人がいるが、文鳥の調子がおかしくなるほど大量に与えなければ、個々の飼い主の信条とか趣味の問題だと思う。その文鳥にはそれが必要で、確かに健康の役に立っているかもしれないので、現状がうまくいっている場合、極端に変えることはないと思う。
 ただすべての文鳥の体質に合うとは限らないので、新たに試して見る場合は、
「少なめに調合」を心がけ、少しでも体調の変化があれば無理して続けてはいけないだろう。問題がないのに、無理に与える必要はどこにもないのだ。

 また人間のお菓子類を与える人(私)もいるが、これも程度問題で、絶対ダメだと目くじら立てることもないと思う。ただ、与えすぎるのは害だというくらいの認識は当然必要だろう。

 

 以上長々と、文鳥の食べ物について考えてきたが、元々私は配合エサに小松菜とボレー粉で良しとする保守的な飼育を基本としていたが(おやつについて基本を逸脱しているが)、調べれば調べるほど、実にいろいろと選択肢があるのに驚いてしまった。ペレットに、新穀物、豆苗にボレー粉の着色問題、塩土やグリットの有無などなど、一昔前までは存在しなかったり、問題にもされなかった事ばかりで、実際のところ私自身最近まで考えもしなかったことだ。
 今後はさらに、いろいろなものが登場し選択肢もますます多くなっていくものと思う。氾濫する情報の中で、自分の愛する文鳥と飼い主である自分自身の幸福のために、ベストもしくは
ベターな選択をそれぞれの飼い主が見つけていかなければならないようだ。


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