文鳥問題.

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 からむきエサについては、その穀をむいた穀粒を栄養成分表の「精白」として考えて良いのかなど判断しにくい点が多いので、ここではから付きエサを中心に、実際に使用している感想を中心に考えてみたいと思います。

 配合飼料として市販されているものの中身は、普通はアワ、ヒエ、キビ、カナリアシード(カナリ―シード)、これに「文鳥用」となると青米(未熟米)が加わる。

 とりあえず私は『カスタムラックス』という市販のから付きエサの文鳥用をメインにしていたのだが、この商品は赤キビがつややかでうまそうなのと、モミ(籾、からの付いた米)が配合されているのが、気に入っていた。モミは大きいので、一見食べれるのか疑問に思うが、我が家の文鳥にはクチバシにくわえてコリコリ長い時間をかけておいしそうに食べるものが多い。しかし不満もある。余計なものが入っているのだ。
 配合は季節により一定ではないようだが、ざっと見た所、マイロ
(丸く大きな赤い粒)が目に付く。これを我が家の文鳥はほとんど食べない。しかし、マイロについては食べる文鳥もいるらしいので(「慣れると良く食べます」と説明する飼育書がある)我が家の文鳥の嗜好性の問題かもしれない。しかし、文鳥が食べるとはあまり聞かない大麦や小麦も入っている。形状か味か原因はわからないが、我が家の文鳥は全く食べない。さらに麻の実まで入っている。これは
鳩やインコ類は食べてもまず文鳥は食べない飼料ではなかろうか。とりあえず文鳥に与えると言う話はあまり聞いたことがない。以前エサの中にたまたま一粒のサフラン(サフラワー、紅花油の原料。しかし今考えるとあれは大麦だったような・・・)があったおかげで、獣医さんの能書きを聞くはめになったものだが、我が家の文鳥はこうした高脂肪のもの(30%程度脂肪分)は必ず食べ残す。

『カスタムラックス』に配合されていた特殊な飼料
麻の実 マイロ(コーリャン) 大麦 小麦 モミ
麻の実 マイロ 大麦 小麦 米(モミ)

 なぜ、食べないものをわざわざ加えているのだろうか。麦類についてはわからないが、麻の実はおそらく裏書にある成分表の「脂質6.85」を維持するためのものではないかと思う。アワ、ヒエ、キビやマイロ、大麦、小麦、モミといった配合されている穀類はすべて脂肪分は3〜4%程度、カナリアシードの脂肪分を最大に見ても6.2%(某商品の裏書)で、これらのみでは6.85%という数字にはなり得ないのだ。そこで、文鳥があまり食べない麻の実やサフラン(今回見たものには入っていなかった)という高脂肪の種実を混入させる必要が出てくるのかもしれない。
 「ダイエット」=脂肪は敵という発想からこの数値を見て、『カスタムラックス』を敬遠する人もいるような話も聞いた事がある。しかし、まず脂肪分の高いものは食べないので、このエサを使ったからと言って、脂肪過多になる心配は少ないかも知れない。しかし、食べないものを数値合わせのために配合しているのであれば、実に無駄な事といわねばならない。

※ 例えば、脂肪分4.5%のエサに麻の実(27.9%脂肪)を一割配合するだけで、全体の脂肪分は6.8%を超えてしまう。

 よく文鳥は好き嫌いがあり、具体的にはカナリアシードばかり食べて、他のエサを食べないので困ると言う話があるが、それはエサ箱にたくさん入れているから起こるだけだと思う。文鳥は嫌いなものばかりなので1日絶食するというような行動は出来ないから、カナリアシード以外も食べなければならないように量を制限すれば良いだけの話だと思う。そうすれば、カナリアシードから食べようと、それがなくなれば他のエサを食べねばならないので、結局バランス良く食べることになる。
 ただ、文鳥は機械ではないので、1日の摂取量は一定ではないし、エサを取りかえるのを忘れるという本来あってはならない事態も飼い主側に起きないとは言えない。そんなことで飢えさせてはかわいそうだから、緊急避難用に、おそらく最も人気のないむきアワ(人間用の小袋ならスーパーでも買える)を別の容器に入れておけば良いのではなかろうか。私などは少しこだわりたいから付きのエサに、こだわらない市販のむきエサを混ぜるという、たぶん飼料会社が聞いたら怒るような事をして、さらに食べ残しを捨ててしまう(カナリアシード以外のむきエサ、色つきミレットなどが残る)という、年寄りに「バチあたりめ!」と怒鳴られること疑いなしの行動をあえてしでかしている。

 オウム類とスズメ類全体を含むかなり雑な数値だが、脂肪分は食物摂取量の4.0%が標準値とされている(HP『飼鳥の医学』)。食品栄養成分表の「玄穀」の数値を採用すれば、アワの脂肪分は3.7%、ヒエ4.8%、キビ3.8%、カナリアシードは不明瞭だが上記の高い数値を採用すると6.2%、これをどのように配合するかはそれぞれだが、ヒエ4割(以下「割」省く)・アワ2・キビ2・カナリアシード2とかなり贅沢に配合しても4.66%にしかならない。ちなみにカナリアシード抜きで、アワ3、ヒエ4、キビ3と配合すると4.2%以下となる。これは実に低脂肪と言えそうだ。何しろ、実際はこれのみでなく、青菜やボレー粉といったほとんど脂肪を含まないものも食べるはずなので、摂取量に占める脂肪の比は4.0%以下になるはずなのである。つまり、カナリアシードばかりで青菜も食べないといった状況以外では、配合エサ主体の飼育をしている健康な文鳥に、脂肪過多は起こり得ないといえる。

 問題は文鳥がバランス良く食べないと言うことにあるのだが、とりあえず市販の配合エサを具体的に見てみよう。

から付き配合エサ からむき配合エサ
うまいヒエとオートミールが特徴  「文鳥向き」に燕麦が入っている

・燕麦
 ・・・殻むきのオートミール、大きい。
・ヒエ
 ・・・黒っぽく、いびつな形をしている。
・カナリアシード
 ・・・細長い形
・アワ
 ・・・円形で最も小さい粒。
・キビ
 
・・・白っぽく円形でアワより大きい

創意工夫が満載のむきエサ  「文鳥専用」で青米が入っている

・ヒエ
 
・・・円形でやや黒ずんだ小さな粒。
・キビ
 
・・・円形でやや大型に見える粒。
・アワ
 ・・・円形で小さな粒
・カナリアシード(左が皮むき)
 ・・・皮むきはこげ茶色。
・青米
 
・・・米粒、青みがかったものがある

 から付きは通販で購入したもので(700g234円)、普通のものに比べてヒエの配合率が高い。からむきの方はアワが多く、「クロレラミレット」「ビタミンミレット」(ともにアワにコーティングされたものらしく、緑と赤色の粒)、ボレー粉まで入り、さらに「食欲をそそる」として香料が添加されている(オレンジの香り)。某ディスカウントショップで購入(650g400円と表示されているが小売価格は198円・・・)。いろいろこり過ぎの気がしないでもない。

 これらがどのような比率で配合されているかわからないが、かなり商品間でばらつきがあるものと思われる。例えば飼育書(『かわいい文鳥の飼い方』)には次のような配合が紹介されている。

アワ3ヒエ6キビ1/アワ2ヒエ5キビ2カナリアシード1/アワ4ヒエ6/アワ3ヒエ4キビ3

 ヒエを中心にアワ・キビ・カナリアシードが配合されているものと考えられる。しかし市販のものでは、ヒエは10%程度でアワを60%程度とするものも、40%がキビというものもある(袋に明示されている)。全く基準がないと言える。
 それどころか、基本となるヒエ、アワ、キビ3種の評価も一定ではない。例えば、古く大正期の飼育書では「一番籾を好きまして」とあり、続いて、キビ、ヒエ、アワ、の順に食べるとしている。下って1978年初刊の飼育書でも同じく3種の中では「キビを一番好む」とし、続いてヒエ、アワの順とし、キビを最も高価で消化しにくいと断じ、ヒエを最も安価で消化しやすいとしている。ところが1999年初刊の飼育書になると、アワを「ヒエ程好」まないとし、キビも「好む餌では」ないとしており、ヒエ、アワ、キビの順に考えられているようだ。またキビは価格が安く配合飼料に多く入っているともある。
 特に
キビの位置付けが明らかに違う。明治期に夏目漱石が文鳥にアワを食べさせているのに対し、飼鳥のプロと言える内田百閧ェ「黍(きび)の方が本當」と評しているように、本来は文鳥が好むのはキビで、最も栄養的にも優れているものの、高価なので安価なヒエを中心に配合エサを作らざるを得ないといった認識があったようだ。しかし下に掲げたように、実際には3種間に目立った栄養価の違いはない。キビが最も希少だったので、何となくそれを尊重していただけなのだろうか?








(kcal)


(g)





(g)


(g)




(g)





(mg)




(mg)





(mg)






(mg)


(mg)

(mg)


(mcg)

(mcg)





(mg)





(mg)





(mg)




(g)
玄米 351 15.5 7.4 3.0 72.8 2.0 250 10 110 300 1.1 1800 250 0.54 0.06 4.5 3.4
アワ玄穀 307 13.0 9.9 3.7 70.5 4.0 500 21   240 5.0     0.40 0.10 4.5  
アワ精白 364 12.5 10.5 2.7 72.9 3.0 330 11 110 190 2.0 2500 510 0.20 0.07 1.7 3.4
キビ玄穀 299 13.5 12.7 3.8 66.2 2.0 1200 20   270 3.5     0.40 0.10 4.0  
キビ精白 354 14.0 10.6 1.7 72.5 2.0 180 11 85 240 1.8 2700 380 0.15 0.05 2.0 1.6
ヒエ玄穀 311 13.0 9.3 4.8 69.6 2.0 380 33   330 3.5     0.40 0.10 4.0  
ヒエ精白 370 12.0 9.8 3.7 73.2 2.0 320 12 40 270 1.7 1900 85 0.05 0.03 2.0 4.4
オートミール 372 11.5 13.5 5.6 67.6 3.0 360 30 120 360 3.4 2500 330 0.20 0.08 1.1 9.3

四訂食品成分表による、なおこうした食品の栄養成分は科学技術庁「食品成分データベース」で検索出来る。
http://food.tokyo.jst.go.jp/ 
※「玄穀」は食べない殻をも含んだ数値で、いわゆる「可食部」の数値ではないので、若干注意が必要。

 しかし、雑穀全てがほとんど輸入品である現在では、むしろキビは最も安価になってしまい、からの多いヒエに比べ(全重量の40%程度殻であるようだ)、特にむきエサでは大量に配合されるようになり、類似穀類の混入もあって評判を落とし、最近の飼育書の評価につながったのかもしれない。つまり、ヒエ、アワ、キビの評価は、かなり社会情勢を反映しているようなのだ。

 そこで先入観念を持たず、実際に食べている様子を見ると、我が家では3種間に決定的な違いが見当たらない。ヒエ≧キビ≧アワ(左ほど好物)くらいの感じだろうか。飛びぬけてカナリアシードが好物なので、3種の違いは目立たないようだ。我が家の場合、から付きとからむきを混ぜてしまうので、カナリアシード≧むきカナリアシード>ヒエ≧キビ≧アワ>むき3種、といった関係で、むいた物を食べ残し、結局から付きはほぼ食べ尽くしているように見える。
 一見この順序は脂肪分の割合に比例するようだが、脂肪分は3.0%に過ぎないお米
(玄米の値)
ヒエ以上に好むものが多いので(モミ状態では食べないものもいる)、単純に言えそうにない。文鳥の嗜好性は一筋縄にはいかないようだ。

 栄養的にも大差はないとはいえ、数種の形も味も違う穀類により微量栄養素が相互補完されるはずであり、さらにその多様性で文鳥に飽きを感じさせないという配合の有効性も考えると(ヒエを多くし続けると、アワやキビの方を食べたりするようだ)、極端に一つの穀物だけを与えるのはためらわれる。一方で、栄養的に大差はなく、従来決まった配合率があるわけでもないのだから、自分の文鳥の好き嫌いに合わせて、その配合率はいろいろ調整してしまって良いのではなかろうか。もし嫌いなものでも、配合量を少くすれば食べるようになるかもしれない。
 そこでなるべくいろいろなものを配合したい私は、どのようなものを食べるのか、数週間注意して見ていた。そして、上記のように麻の実、マイロ、小麦、大麦などは食べず、サフランも受け付けず、健康的とされるソバの実も全く手をつけないのが明らかとなった
(以前キヌアやアマランサスといった新しい穀物にもほとんど関心を示さなかった)。さらに青米はほぼ残さず食べ、モミ状態だと敬遠するものが少しいて、エンバクはから付きだと手をつけず、穀むきしたオートミールだと食べているのもわかった。
 こうした我が家の文鳥の嗜好性に合わせ、あまり一種類に偏らないように、さらにキビの比率が押さえられる伝統をも加味して配合するとしたらこのようになる。

アワ2、ヒエ3.5、キビ1.5、カナリアシード1.5、青米(モミ)1、オートミール0.5

 ちなみに、これの脂肪分を計算すると4.5%(玄米3.0%、エンバクは穀むきしたオートミールとして5.6%で計算)となる。
 さらに参考までに脂肪太りの改善が必要な場合を考えると、
お米は低脂肪、低タンパクでかかせないから、比較的に脂肪分の多いオートミールとカナリアシード(本当は少ない可能性もあるが)を省くと良いだろうと思う。
 アワ3、ヒエ3、キビ3、青米1、脂肪分は3.99%、4%未満だ。

 こうした組み合わせは、いろいろ工夫出来て楽しい気がしてきた。

 さて、以上は机上の空論。次に、実際配合の違いは見た目ではどうなるのか確認したくなった。そこで飼料の量り売りもする小鳥屋さんに行く(一般的には珍しい存在と思うが私は幸運なところに住んでいる)。ここでは枡(マス)を使って「1合いくら」で小売してくれる。アワ、キビ、青米を2合ずつ、ヒエを5合買う。
 ヒエはオーストラリア産と国産があると言う。見た目ではわからないが国産
(長野県?)を買う。オーストラリア産は1合45円位だったようだが、国産は60円位する。確かに割高だが、
商売目的に大量に使用するのでもない限り気になる値段ではない。関係ないが揚げせんべいが一枚5円だった駄菓子屋を思い出す。ちなみにアワは1合(計ったら133g)34円、キビが1合(142g)36円、青米が1合(151g)60円であった(ヒエは1合110gだった)。カナリアシードはすでに家にあるので買わなかったが(通販で買った740gも入って270円)、いずれにせよ、気が抜けるぐらい安いものといえる。

買ってきた四種類の穀物
ヒエ(稗) アワ(粟) キビ(黍) 青米
ヒエ アワ キビ 青米

 とりあえず、机上の配合を実現させたのが下の図、違いがわかるだろうか。

アワ2ヒエ3.5キビ1.5
カナリー1.5青米1オート0.5
アワ3ヒエ3キビ3青米1
団地スペシャル 団地ダイエット

赤キビ赤アワ キビが多い分右の方が白っぽい印象を受けるが、注意してみないと良くわからないかもしれない。なお、アワやキビには右のような赤いものもあり、概して文鳥はそちらのほうが好きなようだ。味は変わらないと思うが、色が食欲をそそるのだろうか。何となく鶏卵の赤玉を思い出す。

 商業的には外国産のなるべく安価なものを用いた方が良いのは明らかだが、すでに安価で画一的な配合エサで納得できるような時代ではないと思う。少々高くなっても納得のいく安全なものこそ多くの飼育者が求めるのは疑いのないところだろう。しかし文鳥専用の、つまりは青米の入った配合エサを見ると、不必要な高脂肪種子が入っていたり、意味不明の「ドライ野菜」が入れられていたり(生の青菜を与える飼い主には大きなお世話)、余計な付加価値ばかりを追い求めているような気がするし、品質そのものに疑問が残るものもあり、どうも市販のものでは満足できない気がする。
 この際、だいぶ割高となっても、品質の良い原料をそろえ、それぞれの飼育者の希望に応じてオーダーメイドしてもらえるところがあれば有り難いのだが、家庭で使用する程度の少量の注文に応じるのは中々難しいかもしれない。現状では原料そのものを少量ずつ手に入れるのさえ困難だし、それ以前に通販では商品価格以上に送料がかかりかねない。

 その点では『キクスイ』(http://www.kikusui-jp.com/)が2000円以上送料無料、ほぼ翌日配達、後払い、と三拍子そろったサービスをしてくれ、カタログ販売などと面倒なことを言わず、メールで注文出来てしまう。何より扱う飼料も我が家の文鳥にはなかなか好評だし、正直言って感心させられた。ただし配合エサにお米が入ったものはなくて、単品で売られる原料にも青米はなく(ー追記ー扱っているが840g260円というお話であった)、また配合率を変えるにも取り扱っている単品飼料の容量(700g程度)では、一般家庭で使用するには多すぎるという難点もある。
 とりあえず今回いろいろ買ったので、個人的にはしばらくエサの心配はいらないが、今のところ『キクスイ』の「赤皮付餌PLUS」
(700g242円)に青米を自分で加えたものを基礎飼料にするのが簡単で良いかもしれないと思っている(ただし宅配は1000円以上から)

※ さまざまな穀物・種子の単品販売を100g単位にし(50gも可能)、オーダーメイドも受けてくれる最強のお店として評判が高いのが兵庫県加古川市の「アニマル・ハウス」。ご迷惑をおかけしつつもカタログを送っていただいた。そこでとりあえずカタログ上での感想だが、ざっと好みの調合をしてみると2kgで1400円となる。これだけなら割高程度で問題とならないと思うが(『カスタムラックス』なら1100円程)、送料(関東で700円)が加算されるとほぼ倍額となり、悩ましい気持ちとなってくる。さらに少量の場合は、やはり送料問題で利用しにくいかもしれない。(00/11/11)
 その後「アニマル・ハウス」さんはWebサイトでの通販も始められました。≪
コチラ≫です。(02/4)

 以上が2000年秋段階での配合エサ使用者の雑感であった。


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