おやつ擁護論はなかなかないのであえてしてしまう
かなりくどい説明

<決しておやつを奨める意図のものではありません。気をつければ、絶対に厳禁と考える事もないという趣旨です。>


 私は、文鳥が食べた途端に調子をおかしくするようなものでなければ、少し食べる分にはかまわないと考えています。当然、人間の感覚で「少し」ではなく、小鳥が調子を崩さない程度を「少し」と見なしているわけですが、実際、我が家の場合、おやつが食べられるのは放鳥の2時間未満に限られているので、その間食べられる量は文鳥の体の構造上も大したものにはなりません。なぜなら、文鳥は「夜にお菓子が食べられるから、昼間は主食を食べずに我慢する」などという芸当は出来ないので、一定の時間内で食べられる量は限られているのです。お菓子を食べ過ぎて、夕飯が食べられない人間の子供とは違うわけです。
 したがって、一日中だらだら人間のおやつのお相伴をさせるのでなく「少し」なら健康上も目くじら立てる必要はないと考え、むしろ、「いろいろ食べれて文鳥も楽しいだろうな」と思っています。

 そこで、わざわざ文鳥用にオヤツを用意してしまうのですが(『狂宴』と称して文鳥の前に弁当を広げたり、焼き魚があったりするのは、一時期家の者の食事時間が放鳥時間に重なった結果で、普段は放鳥時に物を食べたり飲んだりしません。我が家でも特異な状況写真をあえて掲載するのは、あまりに教科書的な飼育スタイルを掲げるホームページが多いので、そのアンチテーゼです)、それなりの理屈があります。例えば、月に一回与えるか与えないかの『サッポロポテト』にしても、健康に悪すぎると判断していないから、与えているのです。
 
100g中にナトリウム量507mg(裏書の表示を100gで換算)を含む『サッポロポテト』、この数値は、もちろん普通の自然食品にはありえない異常なもので、ナトリウム=塩分ですから、さては過剰塩分によって心臓疾患など害となるのは一目瞭然ではないでしょうか。ところが、現実的にはそうでもないのです。久々に『サッポロポテト』を前にした我が家の文鳥たちは、それは熱心にパリパリ・ポリポリ食べるわけですが、それでも、せいぜい15羽で24本程度しか食べられないのです。これは重量にすれば7gに過ぎません。そこに含まれるナトリウム量は35.5mg、一羽あたりでは2.4mgでしかない計算になります。
 2.4mgの塩分は人間にしてみれば極々微量です。文鳥にとってはどうなのでしょう。「人間にとっては少しでも、文鳥にとっては・・・」などとどこかで聴かされた言葉の合唱など無視して、冷静にこの数値をみれば、実は文鳥の1日に取るべきとされるナトリウム量にも全く満たないのです。なぜなら文鳥の類では100g中150mgが1日のナトリウム摂取量の標準とされていますが、文鳥が一日に実際に食べる量が8gと仮定すると(粒エサ5〜6g、その他2〜3g)、100:150=8:]・・・、文鳥の
ナトリウムの摂取基準は12mgとなるのです(ただし個人的にはこの数値は過剰な気がするので、上限と考えた方が良いように思います)。
 最悪と思われるであろう人間のスナック菓子ですら、「少し」であれば塩分については問題とはならないわけです。まったくこれは、純粋に量の問題なのです。

 ただし、量的には問題ないとしても、「ケンコー、ケンコー」と現実面をあまり考えない健康第一主義の人々の言うことが正しくて(思いっきり嫌味です)、今は健康に見えても、徐々に悪影響が出て短命につながる可能性は否定できません。油で揚げてあるスナック菓子など文鳥の体に良いとは思えませんし、その他の人間の嗜好品なども与えない方が健康的には無難に違いないのは常識的に考えれば誰だってわかると思います(ただし、塩土も与えないような飼育では、むしろナトリウムは絶対的に不足するでしょう。なぜなら粒エサや青菜、洗浄してしまったボレー粉にはほとんどナトリウムが存在しないのです)。
 しかし、それを食べたら、すぐに食あたりを起こすとか、そのう炎になるなどとするのは、「週に一度缶ビールを飲んだら、肝臓がんになる」というのと、さほど違いはないと思います。それが本当なら、我が家の文鳥は皆そのう炎です。現実にそぐわない話を専門知識として振り回すのは、机の上だけにするべきでしょう。

 さて、粗食で長生きするより好きなものを食べて短命の方を私は選ぶ、と言われたらどのように思うでしょうか。私は、ひたすら健康第一主義よりも、むしろこの考え方に共感を覚えます。もちろん自分の文鳥たちには長生きして欲しいですが、だらだら長生きするだけが生物の幸せとは思えないのです。そして、粗食で文鳥に長生きさせようと血眼になるのも、結局一つの人間の価値観の押し付け以外ではないとも思います(ただし、毎日放鳥の時間に「少し」ビスケットをかじっていても、我が家の文鳥は短命でもなければいたって健康で、羽毛の色つやも良いのが現実です。私の方針は「太く、なるべく長く」です)。
 もっとも、美食で糖尿病になるのも感心しませんし、自分で判断できない文鳥に、明らかに健康を害するようなものを与えるのも飼主側のエゴ以外ではないと認識しています。ただ、私自身魚肉を断って山奥で修行するのも真っ平ですし、飼主である自分は気ままな食生活をしながら、文鳥のためを思えば、決然として与えないと
悲壮な覚悟を固めるような禁欲的(ストイック)な飼育法をとる気にもなれません。ストイックな方法自体は、一つの方法としては尊重しても、それが絶対的に正しい態度とも、飼育方法とも思いません。なぜなら、「少し」であれば、一部の人々が思い描くような重大な健康被害は、理屈の上では否定されねばならない程度なのです。

 一般論として「お菓子をやってはいけない」とするのは正しいでしょう。しかし、実際の飼育上は「少し」なら問題ないのが事実である以上、文鳥とともに生活する現実の問題のなかで、一般論(医学的なお題目)だけを振り回すのは、いかがなものかと思います。専門家が一般論をあげるのに対して、馬鹿正直にそのまま鵜呑みにすることではないでしょう。「酒もタバコもオヤツもやめて、塩分控えめ、一日10キロの歩行」と人間ドックにやってきた患者にお医者さんは注意するでしょうが、それを100%励行したら、ストレスでご臨終する人も多いと私は思います。
 そこで私は、適当に、ほどほどに気を使いつつ、文鳥が嗜好品をうまそうに食べる姿を楽しく眺めることにしています

 なお、「太く、なるべく長く」愛する文鳥たちが生活できるように、オヤツとして常設しているものには、とりあえずこだわりがあります。参考までに、次に一つ一つの説明をします。


@ カナリアシード、カナリアの食べる穀物として著名なこの種子は、小学館の百科事典によればカナリーグラスまたはカナリークサヨシと呼ばれる地中海沿岸原産のイネ科の一年草の種子だそうで、表記上はカナリーシードともされるものです。大西洋のカナリア諸島や(こちらが原産ではないかという気がするのですが…)、アフリカ大陸西岸にも自生しているらしく、現在では鳥の飼料として南米など世界各地で栽培され、日本に輸入されているもののようです。
 市販の配合エサにも10%程度配合され、東南アジア原産の文鳥とは縁のない存在だったはずですが、
えてしてこればかり食べてしまうほどの好物である事は、誰もが知るところです。ところが、脂肪分が多いとされ、警戒する声も多く存在している穀物です。
 しかし、その警戒の根拠は必ずしも明確ではなく、実際の脂肪率もさまざまに言われています。目に触れたところだけでも、3.5%、4.9%、6.2%とまちまちなのです。とりあえず『原色飼鳥大鑑』の数値で考えると、カナリアシードの脂肪率6%ですが、この数値は配合エサに含まれる他の雑穀〈ヒエ・アワ・キビ〉の4%に比して、
大した違いはないものと思います(例えば麻の実などが32%〈あくまでも『原色飼鳥大鑑』の数値〉とはけた違いです)。またタンパク質比もカナリアシード14%、キビ13%で微差です。確かに文鳥の食べる他の雑穀に比較すれば栄養価は高いですが、むしろ「優れている」と肯定的に捉えるべきかもしれず、少なくとも若干の摂取量の相違で、悪影響を及ぼすものではないことは明らかだと思います。
 主食としてこればかり食べさせれば、他より栄養価が若干でも高いのですから、脂肪過多なども起きるかもしれませんが(可能性は低いのではないでしょうか。他の可能性を考えた方が賢明です)、短時間のおやつには、むしろ非常に良いものではないでしょうか。
 我が家の文鳥たちは1時間程度の間、好きなだけたらふく食べていますが、何ら問題は起きていません。

 

A ビスケットは森永製菓の『マリー』を定番としています。この著名な市販ビスケットは牛乳が多く使われていて、バター主体のものより脂肪分もカロリーも圧倒的に少なかったりします。人間の幼児向きのより軽いビスケットを試したところ、あまり食べなかったのでこれに落着きました。一枚を手で砕いて容器に入れて大体2、3日(冷蔵庫保管)で取りかえる感じですが、こればかり食べ続けるようなことはなく、結局かなり残ってしまうことが多いです。
 下の数値を見ると、糖分が明らかに過剰に思うでしょうが、主原料の小麦粉による炭水化物(糖質)に由来するものが多く、ビスケットに使用する砂糖の量は全体の20%程度、アンコやチョコレートに比べれば半分に過ぎないのが現実です(四訂食品成分表)。むしろナトリウム=塩分の方が気になるのですが、一枚約6g、15羽が3日で消費するとして、一羽が1日に食べる量は130mg程度で、それに含まれるナトリウムとなると・・・
0.43mg以下です。この摂取量は極微量と表現するしかなく、問題視する必要はないものと判断します。
 また練り物は「そのう炎」などの原因となると言う話をどこかで聞いた気がしますが、それが事実であれば、同じ小麦粉などの練り物であるペレットを主食とするのは厳禁ということになると思うので、何らかの思い込みか、「為にする」議論、少なくとも、ほとんど気にする必要のない程度の話でしょう。

裏書にある成分値を
100gに換算
エネルギー タンパク質 脂質 糖質 ナトリウム
約433kcal 約7.1g 約10.7g 約77.2g 約319mg

 

B ある飼育書に人間の指のささ剥け(爪の横の皮)をかじる文鳥は、動物性タンパク不足かも知れないので、煮干を与えると良いでしょう。といった記載があり、なるほどと思って与えてみたら好評だったのが起源です(ただしささ剥けかじりは止めないようですが・・・)。毎日小さな煮干を2、3個手でほぐして容器に入れて置いています。
 煮干そのものに特別のこだわりはないのですが(普通市販されているものはイワシが原料)、サカモトという会社の『健康食べる小魚』という煮干を使っています。たんに近くのスーパーで売っているからですが、この商品は小さいので食べやすく、包装袋にチャックがついているので気にいっています。下の成分を見ると、
カルシウムに鉄分もとれて、さらにDHAやらEPAなどと言う成分も含まれているそうです(個人的には全然期待していません)。
 ところで煮干は動物性タンパク質、
ビタミンD3に富み、大変文鳥に良いものと思います。ただ塩分(ナトリウム)の数値が少し高いのが難点でしょうか(この商品は低塩分をうたっていて若干低いです)。しかし、カゴの中に入れておくわけではなく、食べる量はけし粒ほどですから(15羽で1g程度、さすがに計算するのが馬鹿馬鹿しくなります)、この点でもビスケット以上に気にする程ではなく、おやつには適していると考えています。
 実際にはオスよりもメスの方が喜んで食べてるようです。

裏書にある
成分値
タンパク質 脂質 ナトリウム カルシウム その他
71.4g 6.8g 0.5g 2.7g 9mg DHA(頭が良くなるという)0.6g EPA(血流が良くなるという)0.6g

 

B 文鳥系のホームページを見ていたら、人間の薬(と言うより栄養食品でしょうか)『エビオス』が含むビール酵母が文鳥にも有効らしいとありました。そういえば昔あまり胃腸が丈夫でなかったらしい祖父が『エビオス』をボリボリ食べていた姿が思い出され、個人的に懐かしい思いがしたものです。しかし私はそれを飲む(食べる)習慣がなかったので、わざわざ文鳥のために用意する事もないと思っていました。ところがスーパーで「ビール酵母入り」という文字、ハイペット社『バードカルシウム』でした。なかなか鋭い事をする会社というべきでしょう(ただし『エビオス』が文鳥に良いとしたら、ビール酵母よりもむしろ、それが各種のビタミン、ミネラル、アミノ酸類を含んでいる点にあるのかもしれないです)。
 このアワ粒大にきれいに整形されたペレット状の飼料の栄養構成は不明ですが、貝殻粉を原料に含み、
カルシウム不足対策の補助飼料と位置付けているようです。ビール酵母にひかれて買い、試しに並べておいたら、結構好評、特にヘイスケが気に入ったようなので、冬場には常設する事にしました。
 
栄養構成が不明なので過信は出来ませんが、おやつ程度に食べる分には問題ないものと判断しています。
 実際には、かなり好きな文鳥とそうでもない者がいるようです。産卵期にはカゴの中に常設するといった利用もしています。

 

C 塩土は塩分、鉄分などの栄養摂取や筋胃でのグリット効果(胃の中に止まり消化の助けをする)に有効とされる飼料ですが、鳥カゴに入れてもなめる程度に消費するに過ぎず、文鳥ではカゴに常設する必要はないとされているので、遊び時間に好きなように食べれば十分と考えています。いちいちカゴの中に入れたり出したりしないで済むので楽です。
 とりあえず市販のものを買ってきて(原田鉱業の『バードミネラル』
〈小さいのが3つ入っている〉を用いることが多いです)、トンカチでたたきつぶして、電子レンジで1分ほど加熱してタッパに入れておき、少量を半月型エサ入れに入れて4、5日で交換しています。
 実際には若干舐める事があるといった感じの食べ方をしますが、わりにうまそうにつまんでいる文鳥もいれば、ほとんど見向きもしないもの、塩土の中に含まれるボレー粉をかき分け食べるのがお気に入りらしいものなど、さまざまです。
 文鳥個々が、
勝手に摂取するのに任せておけば良いものと考えています。

 

 その他、トウミョウという野菜は3cm幅くらいに切って、放鳥時に食べられるようにしています。また夏はゆでるか蒸すかしたトウモロコシ(当然塩ゆでにはしない。なぜなら文鳥用なので、わざわざ塩気を加える必要がない)を週に一度、冬はミカンを3日に一度程度与えている気がします(まったく適当です)。

 最後に、参考までに、表に出てくる食べ物の一部の成分表(四訂)をあげておきます。








(kcal)


(g)




(g)


(g)




(g)





(mg)




(mg)





(mg)






(mg)


(mg)

(mg)


(mcg)

(mcg)





(IU)




C

(mg)




E

(mg)





(mg)





(mg)





(mg)




(g)
甘栗 249 38.4 4.9 1.7 53.6 2.0 2.0 30 (44) 110 2.0 (600) (410) 42.0 2.0 (0.2) 0.20 0.18 1.3 (4.9)
いりピーナッツ 587 1.9 26.6 49.5 19.7 2 770 50 200 390 1.7 3000 690 0 0 11.1 0.23 0.10 17.0 7.2
ゆでトウモロコシ 97 74.7 3.3 0.4 20.9 0 290 3.0 (35) 65 0.6 (760) (130) 24 0 0.4 0.16 0.14 2.3 (3.4)
ゆで枝豆 139 71.1 11.4 6.6 9.3 1.0 570 70 (60) 140 1.7 (2000) 520 55 27 (0.6) 0.27 0.14 1.0 (10.1)
40 88.6 0.3 0.1 10.7 2.0 140 3.0 5.0 11 0.1 85 75 0 3.0 0.1 0.03 0.01 0.2 0.9
みかん 44 87.5 0.8 0.1 11.2 0.1 150 22 12 17 0.1 55 37 65 35 0.4 0.10 0.04 0.3 1.9
60 83.1 0.4 0.2 15.9 1.0 170 9 6 14 0.2 46 32 65 70 0.1 0.03 0.02 70 1.6
りんご 50 85.8 0.2 0.1 13.6 1.0 110 3 3 8 0.1 22 50 0 3 0.2 0.01 0.01 0.3 1.3

 文鳥の本来の食性を、穀物と青菜と微量の昆虫類と考えれば、上記のものはすべて余計であり必要なものではありません。しかし、人間の稲作文化に寄生する形で存在する文鳥は、野生であっても、実際は雑食性が強いものとも考えられます。日本のスズメが何でも旺盛に食べるのと、その点あまり変わりないでしょう。つまり、メジロやその他繊細な野鳥に比べれば、いろいろな食べ物を害とはしない生き物と考えるべきなのです。
 そういった雑食性を帯びた文鳥に対して、
「人間の食べ物を与えるのは虐待」などと教条的に断定するのはあたらないでしょう。稀に、時間限定で、つまりはオヤツとして食べる分には問題が起きると考える根拠はむしろ少ないのです。消化に悪い、肥満する、害がある、さらに小難しく食滞をおこすの何のといったことは、主食に影響が出るほど与えすぎてしまったり、その文鳥の消化器官などの先天的な問題を主因とすると見なした方が、適当なことが多いように思います。
 与えすぎないようにするのは飼主の責任ですし(人間がオヤツを食べる姿を見て文鳥が欲しがるなどという話がありますが、見えないところで食べれば良いのです。否定するために、何でもかんでも理由にあげるのは虚しいだけです)、もし問題が起きれば、
飼主の判断ですぐに余計なものを与えるのをやめれば良いのです。難しく考えることなど、何もありません。反対に、問題がなければ、やめる必要をわざわざ探し出すなど滑稽でしょう。

 もし、まだ文鳥を飼い始めて間がなく、自分の文鳥の健康管理に自信がもてないなら、はじめから与えない方が気が楽には違いありません。しかし、自立した(もしくは自立したい)飼主が、自分の文鳥の健康状態に責任をもっているのなら、与えようと与えまいとたいした問題ではないと、私は思います。後は、飼主個人個人の判断でしょう。他人が押し付けることではありません。


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