先代ロクへ

 ロク、天国で元気にやってますか?
 ロクがいなくなってから、もうすぐ1年。そういえば去年の今頃もすごく寒かったね。
 ロク・・・もう1年経つから時効かな?ほんとのこと話すね。

 あの日、ロクが私たちの所に突然現れた時、私たちはきっと元の飼い主が現れるだろうって最初は気楽に思ってた。獣医さんもそう言ってたよね。目も耳も足も悪く、こんなかわいそうな子を飼い主がほっとくわけないって思ってた。
 ロクは家に来てから夜鳴きがずっと止まなかったね。遠吠えにも似た悲しい声。きっと元の御主人様を想って鳴いていたんだよね。それに気づかない私たちは、このまま元の飼い主が現れなかったらどうしよう、ずっとこの状態が続くの?と、落ち込んでしまい、一時は最悪の決断まで考えてしまった。でもロクは、しばらくして夜鳴きが治まった。御主人様がもう迎えに来てくれないことをわかったんだね。
 それからのロクは、私たちが仕事から帰ってくると、吠えるけど尻尾をぶんぶん振って迎えてくれたよね。ハチと一緒に少し散歩のお供をしたり、不自由な足ながらもお庭で自由に歩き回ったり、近所の子供が遊びに来てくれるとうれしそうに撫でられてたね。短い間だったけど、幸せだったね。

 秋が過ぎ、冬が来て、夏にはあんなに元気だったロクが寒さとともに急速に衰えてきて、私たちは朝起きたときや仕事から帰ったときにロクの様子を見るのが、ほんと不安だったよ。初めて経験するだろう”死”に直面するのが怖かった。そんな私たちに、ロクは”死”というものを優しく教えてくれた。

 今、すごく後悔してることがあるんだ。もっとロクを抱きしめてあげればよかった。先住犬のハチに気を使って、匂いがつくことに気後れしてあまり抱っこしてあげられなかった。ゴメンね。もっと抱っこして、やさしく撫でて、人のぬくもりを感じてもらいたかった。
 ロクは決して元の飼い主を恨んではいなかったよね。安らかなロクの死に顔を見てほっとしたよ。

 ロク、前の飼い主さんに報告に行った?私たちにはその人に伝えるすべがないから。
 今、ロクの写真を見て、涙しながらこの手紙書いてます。
 いつまでたっても悲しいね。私たちの家の子ロク。ロクが来てくれて私たちはほんと幸せだったよ。だから今、こんなに涙が出てくるんだよね。ロク・・・ほんとにありがとね。



                                          2001年2月   主人より


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