読者から
1)
「音楽療法改訂2版」(南山堂)を早速送っていただき感謝、感謝。もう一冊の「高齢者のメンタルケア」(南山堂)にも言えるのですが、河合さんの著書の大きな特徴の一つは、著者(達)が自分の生とどう向き合おうとしているかが、行間から立ちのぼってくることだと小生は感じます。そのため、読者もふと自分の生と向き合うというのがインパクトの一つとなっています。これはアカデミック出版物では本当に希有なことで、わずかにサールズの著書に類似のテイストを感じるのみです。小生も自分の生活がうっとうしくなった時、先生の本を開いています。この本が末長く多くの人に読まれることを念じています。とりあえず御礼まで。
(注:この項の筆者は著者の永年の友人で、大学講師。精神病理学専攻。)
2)
河合の「音楽療法」を読んではじめて、河合がどんなことを老人病院でやったのか具体的にイメージがもてた。
章によって科学者河合が書いていたり、哲学者河合が書いていたり、医師河合が書いていたり多面的で、こんな風にいろいろな所から光を当ててくれれば、門外漢にも、未だ暗中模索の音楽療法という分野が少しは見えてくる。
私にとっては、この本は今まで知らなかった音楽療法という分野への扉であった。
私が思ったのは、河合は長い旅をした。遠くまで来た。河合は満身創痍に違いない。でも人間にとってのテーマというのは、たった一つ、「人は人を信じられるか」。だから「仕事」の名に値することをした河合にとって、大きな喜びだったということだ。
仲間のコラムはそれぞれ面白かったが、谷川岳の麓での河合らの音楽合宿を企画した、自らはボヘミアン的生活を目指しているこの人は何者なのだろう。
別の仲間のコラムで、「人生は、大は大学、就職、結婚などから…限りない選択の繰り返しであるといってよい。一方を選べば一方を失うのであって、年齢を重ねるにつれて失うものが多くなるのは道理であり…」。このフレーズ。この抽象度の高さ。
本当にそうだ。それが人生だ。
(注:この項の筆者は、東大卒業後、東京学芸大学音楽科再入学。音楽教室主宰。)