敬老の日の老人ホームの家族会
九月十五日は茨城の水郷荘老人ホームで家族会がありました。私たち老人フィルハーモニーオーケストラの出番です。聴衆である当日来荘された家族の方たちに向けて、「私たちの生活の場は楽しいところですよ。元気ですよ」といったメッセージを発してるような演奏だったかなと思っています。
私も毎週土曜日の夜に通っているバイオリンのレッスンで最後の仕上げをして舞台に上がりましたが、皆と楽しく演奏できたような気がします。
演奏曲は、「まりと殿様」でした。
ふと手をそれたまりが、偶然出会った大名行列について行ってしまいます。持ち主はまりが戻ってこないので、紀州のみかんになったにちがいないと想像するのです。
西条八十の豊かな発想、リズムの使い方がいつも素晴らしいと思っている中山晋平の曲は、街道をゆく大名行列の人馬の歩みを思い起こさせます。
てんてん手まりは殿様に 抱かれてはるばる旅をして
紀州は良い国 日の光 山のみかんになったげな
赤いみかんに なったげな なったげな
ところで、中年期をすぎて子供を独立させたあと、心の中にぽっかり穴があいたように寂しく無気力になる母親たちの状態を「空の巣症候群」と呼ぶことがあります。しかし帰らぬことを嘆くより、その前途を祝福し幸せを祈るほかはないのです。
現在の三十代以前の若い世代のように女性の役割が変化して人生の一時期が子育て一色になる形が見られなくなった時には、以上のような「推論」が当てはまるとは限りません。彼女たちの老年期には別の形の癒しが見い出される必要があるでしょう。
「空の巣症候群」などは昔話になるのかもしれません。それでも幼年期の子守歌の記憶が残る限りは、子守唄はその意義を失わないことでしょう。