フレーム破壊

イーサネットの障害解決:物理層でのフレーム破壊

 イーサネットネットワークの障害解決をするときに、まっ先に探さなければならないのは、物理層で破壊されたフレームです。 ここではフレームの物理層破壊の原因とその特徴について説明します。 ここで述べるフレームの破壊は、同軸イーサネットに特有のものです。 ツイストペアのイーサネットではこれらの破壊のパターンを示しません!

 ここでは Sniffer による解析によって障害解決について説明します。 ここでの情報は普遍的なものですが、他のアナライザでは役に立たないかもしれません。


 イーサネットネットワークのフレーム破壊には4つの原因があります。 破壊の方法がそれぞれが異なっているので、見分けることができます。

 その4つとは、以下のものです。

電気的ノイズ 電源装置、蛍光燈、レントゲン装置等の近くにあることが原因です
信号反射 終端処理されていないケーブル、インピーダンスの不一致、ケーブルの最大曲げ角度を超える曲げが原因です
コリジョン 規格外ケーブル、ハードウェア障害が原因です
ハードウェア障害 目に見えない小悪魔、助けになるユーザ、天災等が原因です

 障害解決の手順を見れば、フレーム破壊の原因を特定するのに役立つでしょう。 繰り返しますが、これらの破壊パターンは、10BASE5 と 10BASE2 においてのみ見られるものです。 ツイストペアのイーサネットネットワークではそれぞれのステーションはハブやスイッチに接続されているので、 このような厳密な破壊パターンは見られません。

コリジョン

 コリジョンは4つのフレームの物理層破壊の原因の中でもっとも簡単に見分けられるものです。 一般的にコリジョンが起こると、衝突したフレームのプリアンブル数バイト分が、信号が完全に破壊される前に、 Sniffer のバッファに読み込まれます。 これらの数バイト分は、フレームの最後の部分が AA または 55( 16 進表現 )という形になって見えます。 AA(16 進表現)= 1010(二進表現)。55( 16 進表現)= 0101(二進表現)です。コリジョンがどこで起こったかによって、 どちらかの形で見えます。

 プリアンブルは 1011 で終わり、8バイトしかないので、8バイト以上の AA または 55 が見えれば、 その破壊はコリジョンによって引き起こされたものではないということになるので、さらに調査が必要です。


信号反射

 信号反射は文字通り、電子が折り返すことによって起こります。 信号反射は、終端処理されていないケーブルによって起こることがあります。 電子はケーブルの終端まで行くのですが、電位を吸収する抵抗がありません。そこで開放されている終端から反射されます。

 異なるインピーダンスのケーブルを使用しているために起こることもあります。 インピーダンスは「流れの率」とも言えます。 電子がインピーダンスの高い同軸から低い同軸へ流れようとすると、できないことがあり、そのため信号が破壊されます。

 最大曲げ角度を超えてケーブルを曲げたために起こることもあります。 最大曲げ角度を超えると、銅は変形し、反射を引き起こします。

 信号反射の特徴は、非常に短いフレーム(典型的には 16 〜 32 バイト以下)です。そのフレームにはプリアンブルはありません。 またすべてのフレームが1、2バイト以内の同じ場所で短く切られたています。 この現象もアナライザの 16 進表現を見ることによって特定することがでます。 Sniffer ではたぶん、高率の物理層破壊フレームと同様に、高率の短いフレームを検出するでしょう。


電気的ノイズ

 電気的ノイズが原因で起こるフレームの物理層破壊は、フレームにプリアンブルがない点で信号反射による破壊と似ています。 しかし、フレームが切られたように見えても、一般的には長さがまちまちであるところが異なります。


ハードウェア障害

 ハードウェア障害によるフレームの破壊は、潜在的にもっとも原因を突き止めにくいと言えます。 ハードウェア障害の原因には様々な要因があるからです。 一般的に言って、ハードウェアの障害は無作為に、絶えず起こりますが、規則的ではありません。 フレーム破壊のタイプを予測することはできず、一般的に、でたらめなゴミのようなフレームが見えます。 しかし手がかりもあります。
1またはゼロが続く。 トランシーバは壊れると、話し続ける状態になります。これをジャバーと呼びます。 ほとんどのトランシーバはある一定の時間より長くデータを流しつづけないように、ジャバー検出回路を持っています。
規定より大きなフレーム( 1500 バイト以上) 上記と同様です。



障害解決の手順

注意:以下は同軸イーサネットにだけ見られるものです。
  1. プリアンブル( 8 バイト以下の AA または 55 )がフレームの終わりに見られますか?

    「はい」なら、

    ケーブルが仕様通りが調べましょう。(ケーブル長、リピータの数など)
    「分けて、突き止める」方式を使って、障害の発生源を分離します。 ブリッジを使用してネットワークを半分に分け、どちら側に問題があるかを見ます。それを繰り返します。

    「いいえ」なら次へ。

  2. フレームはとても短く、どれも同じ長さですか?

    「はい」なら、

    問題はたぶん信号反射です。 まず、ケーブルの終端を調べます。もしケーブルが正しく終端処理されていたら、問題は少し難しくなります。 新しいケーブルが最近取り付けられたのなら、間違ったインピーダンスの組み合わせが問題でしょう。 (可能なら)すべてのケーブルを同じロットのものでそろえます、必要に応じてケーブルを調達するより、一度にすべてのケーブルを買い、 余ったケーブルを保管し、必要に応じてそれを使用することによって、この問題を避けます。 最後にケーブルの曲げによって変形が起こってないか、ケーブルの上に重いものが置かれていないかを調べます。
    このような問題には TDR を使うことが有効です。 TDR を使用すると、どの部分で信号の反射が起こってるかがたぶんわかるでしょう。

    「いいえ」なら次へ。

  3. フレームは長さがまちまちですか? ビット列が続いていたり、他のハードウェアの障害のしるしもなく、きれいに切られていますか?
    「はい」なら、

    問題はたぶん電気的ノイズです。 1で説明した「分けて、突き止める」方法を使って、どこでノイズが発生しているかを突き止めます。 そして、直感を働かせます。 (この文書を書いた人は)歯医者のレントゲン装置が壁の向こう側にあって、その上に配線されていたため、 歯医者がレントゲンを使うたびにネットワークがダウンした、というケースを経験したことがあります。

    「いいえ」なら次へ。

  4. ここまできたのなら、問題はたぶんハードウェアの障害でしょう。「分けて、突き止める」方法を使いましょう。