2003年12月23日のひとりごと(24号)

 

cat07.gif (655 バイト) 言葉の難しさ

 

 『そよ風の手紙』のMAILには、毎日多くの方々からメッセージをいただきます。100人いれば100通りのメッセージがあり、その内容も様々です。

 今回は、頂いたメールの中から、いかに”考え”を伝えることが難しいか、言葉の難しさを感じたやり取りを自分の反省も踏まえながらご紹介いたします。

 

【KさんよりのMAIL】(Kさんは5歳の息子さん(健常児)のお母さんです)

12/14の日記をを読んでメールしています。
前から疑問に思っていたことですが、りょうまパパさん、おじいさま、おばあさまはりょうま君を叱らないのですか?
それは、「叱ってもその意味がわからないだろう」と思われているからですか? 叱るとかわいそうだからですか?
息子は5歳児ですが、毎日のように叱られています。時にはおしりをぶたれて大泣きしています。特に人に危害を加えることや、自分の命に関ることについては、本気で叱っています。本気で叱れるのは、信頼関係にある人だけだと思います。
5歳児ですから、ものの道理が全てわかっているわけではありません。けれど、信頼している人が本気で叱ることは、よくわからないけどしてはいけないことなんだ、と彼なりに感じているようです。
子どもは一人一人違うので、他家の例は参考にならないかもしれませんが、子どもを思う気持ちに違いはないと思います。
りょうま君も、道理はわからないかもしれませんが、パパさんの気持ちを感じることはできるように思えます。
もし、りょうま君と息子が一緒に遊んでいて、してはいけないことをした時には、二人とも同じように叱ってほしいのです。

今年のはじめ頃、名古屋でしょうがいを持った方が、帰宅途中の保育園児を抱え挙げて路面に叩きつけるという事件があったことを覚えていらっしゃるでしょうか? 現場にかけつけたおばあ様が、その方に「だめじゃない」とおっしゃり、その方は「ごめんなさい」と答えたと新聞に報道されていました。「してはいけないこと」をした時にきちんと叱ることはできなかったのか?と、ずっと疑問に思っていました。こんなことを書くと「何もわかってないくせに」とお叱りを受けそうですが。

長々と、お気に障るであろうことを書きました。
シートベルトの件以来、疑問に思っていましたので、書かせていただきました。

【りょうま父⇒Kさん】

K様

メールありがとうございました。疑問にお答えします。

まず、Kさんが考えている”叱る”ということと、我々自閉症児を持つ親が”叱る”と言うのは大きく違います。Kさんが言う”叱る”に関しては、本当にりょうまがもっともっと小さいころから健常児のお子さんの何倍も行っているつもりです。そして、現在も毎日のように、言ってみれば必要以上に”叱っている”のです。

なぜ何倍もなのか?例えば、Kさんのお子さんが足の不自由なお子さんで、そのお子さんに歩くことを教えているとします。Kさんならどうしますか?1mの距離さえ介助なしには歩けない子をそのまま放っておきますか?私ならきっと1歩ずつ手を差し伸べながら徐々に歩くことを教えます。でももしかするとそれでも歩けない可能性もあります。

一目見て解る肢体不自由の人に”何で歩けないの?健常者と同じように歩きなさい!”とは言わないと思います。これを知的障害(特に自閉症の場合)に置き換えると、前記の部分は”何で理解できないの?健常者と同じように行動しなさい!”なのです。私を含め自閉症児の親のほとんどがこの悩みを抱えています。そして、”何で理解できないの?健常者と同じように行動しなさい!”という”叱る”を行ってしまっているのです。健常者にとって当たり前のことも、知的障害者にとってはその当たり前を理解することから始まるのです。

例えが悪く、もしかするとなかなか理解しにくいかも知れません。しかし、それが現実なのです。

元気日記で書いた”叱る”は、その意味ではなく、”1歩ずつ手を差し伸べながら徐々に歩くこと”に当たる”叱り”であり、一般的な”叱る”ではないこととご理解ください。これは想像以上に根気の要る”叱り”なのです。前者の”叱る”であれば、何倍もやりすぎるぐらいやっているんです。(多動なりょうまを、数分おきに何かしらのことで叱っています。もちろんじい・ばあも同じです。)

それと、あまり報道をそのまま真に受けないで欲しい。。。これが率直な意見です。新聞記事やメディアが全て正しいことを報道しているかと言えばそうではないと思います。我々の周りにはあたかもそれが全てであるような報道が溢れかえっています。松本サリン事件の時、どのマスコミも近所に住む人を犯人と決め付けた報道があったと思います。横田めぐみさんが拉致されたあとも、ほとんどのマスコミは北朝鮮がそんなことをする訳が無いという態度でした。私はメディアに対しては、一歩引いて見るようにしています。事実は、特に障害者報道の場合、障害者側に正確な事実を伝えるすべが無いために、その報道は一方的なものとなりがちです。そんな訳で、何か私にしては真面目すぎるぐらい真面目なお話になってしまいましたが、貴重なご意見ありがとうございました。言いにくいことを言っていただけたこと、本当に感謝です。これからもどんどんご意見や感想をいただけると嬉しいです。

 

【KさんよりのMAIL】

不躾なメールに対して、お忙しい中、すぐにお返事をいただきましてありがとうございます。

私達の子育てというのは、本質的にそんなにも違うものなのでしょうか?
しょうがいを持たない子どもの叱り方は、ただ「叱る」だけなのでしょうか?
親は子どもの成長のために叱るのではないでしょうか。成長の速度は子どもにより早い・遅いがありますが、将来大きくなった時にできるだけ幸せに生きられるように手助けするために叱るのではないでしょうか。
日記の中のりょうま君は、確実に成長していますよね。それがしょうがいを持たない子どもに比べてゆっくりだとしても。
そんなふうに思っていたので、頭から「違います」と断定されてしまうと、返す言葉がありませんでした。
もちろん、しょうがいを持たない子どもにも、その親にも、しょうがいをもつ人やそのご家族のご苦労を本当のところで「わかる」わけではありません。でも、「わからない」ままでいるより、「知って」少しでも「理解する」努力を続けたいのです。
これからも不躾な質問をするかと思いますが、どうかよろしくお願い致します。

【りょうま父⇒Kさん】

K様


今仕事から帰りました。
言葉が足りないことと、自分の伝えたいことに対するボキャブラリーの無さにただただ、反省しております。
たとえも悪かったですし、本当に言いたいことを伝えられなかったことを悔やんでいます。ごめんなさい。

”しょうがいを持たない子どもの叱り方は、ただ「叱る」だけなのでしょうか?
親は子どもの成長のために叱るのではないでしょうか・・・・・”

上の1行は、そんなことはありませんし、下の1行はその通りです。


決してKさんへの私の回答は、そんな意味で言ったわけではないのです。
むしろ根底にあるのは全くその部分はおなじ考えです。
Kさんの言うとおりです。


自分も自分の言いたいことが息子に伝わればいいなあ、そして伝えたいなあと思います。

1を伝えたら1が解ればそんなに嬉しいことはありません。

でも解ってもらいたいのは、1を伝えるのに10の力いいえ無限大の力が必要なのです。それでも伝わらないこともいっぱいあるのです。

じゃあ10や無限大の力を出せばいいではないか・・・。その通りです。出せば良いのです。日々努力しています。

生まれてからずっとです。


でもそのエネルギーは、かなりのものを必要とします。

人によっては、やってもやっても先の見えないこの状態に、絶えられず、ノイローゼになったり理解してくれないことで将来を悲観して子供を道連れに自殺をしたりする人さえいます。

自分は楽天家なのでその前の段階で当然のごとく頑張り過ぎないようにしています。だからこそ冷静に見ていられると思うのです。

そよ風の手紙の”自閉症って?”のページの中に、次の一文があります。

『今、私がお願いしたいのは、少しでも障害を理解して頂きたいという事です。障害児(者)の周りの人々は大なり小なり苦しみを持っています。特に障害児と日中、長時間にわたる時間を過ごす母親をあたたかい目で見て欲しいのです。時々、しつけの悪い子だと思う親子を見たときはその様な障害を持つケースも存在する事を理解して欲しいのです。母親の姿を見れば大体判断できます。その場合公衆の面前で怒って子供を叩いているということはないはずです。』


まさに、この一文に言いたいことが詰まっています。

障害児のしつけ(つまり、悪いことをやった時叱る等)は、なかなか伝わらない(にくい)のは間違いありません。

それも10人いたら10通りの困難があるのです。

解りにくいと思いますが、少しでも解ってもらえると嬉しいです。

叱ることの難しさ。と言うよりも、叱っても叱っても理解されない難しさ。

もし、自閉症の障害児を持つ友人がいたとすれば、その方なら身を持ってわかると思います。

本当のことを言えば、今回の元気日記は、そういう悩みを持つ親御さんたちへのメッセージだったのです。

現に、多くのそういう方たちからの感想のメールを頂いております。

でも、HPはそれじゃいけませんね・・・・。

今回のKさんからのメールでよく分かったし、反省しております。


誰もが理解できる、HPにしてゆきたいと思います。

本当に誤解させてしまったこと、今後の反省材料といたしますね。


ありがとうございました。//

 

 

以上、これからもできる限り解りやすい言葉と、できるだけ多くの方々に誤解のないようなメッセージを送り続けたいと思います。

皆さんの意見が大きな力になるのは間違いありません。様々なご意見をこれからもよろしくお願いしますね。。。

 

あっ、それから皆さん

  Merry Cristmas!

                                     楽しい時間をお過ごしくださいね。。。。。