問題のその後


取り上げてしまった問題について、メールのご指摘などを通じてその後考えた事を載せようと思います。


台湾産白文鳥と桜の固定化(2002・7)

 私は、かつて、同じ白文鳥でも、遺伝子的には3種類存在するものと推論したが(文鳥学講座)、それについて、面白い報告を見つけたので、ご紹介しよう。

愛知県農業総合試験場『研究報告』第33号(2001年12月)

「台湾産ブンチョウの羽色の表現型とその活用法」

 弥富の白文鳥同士の交配は、25%の致死遺伝を引き起こすため、白と桜を交配させるのが効率的に良い(孵化率が良いわけである)として、以前より生産農家にこのペアリングを推奨していたのは、まさにこの「試験場」だったと思うが、白文鳥のみを生産したいのが本音であり、その方策をいまだに模索しているらしい。この発想自体、白文鳥が圧倒的な人気を誇るわけでもない現在、まったく古臭いテーマでしかないことに気がつかないというのも困ったものだが、それはともかく、研究員の諸氏は、その解決方法を台湾産の白文鳥に求めた ようである。

 何しろ台湾産の白文鳥はヒナの段階から真っ白で、背中が灰色の日本産とは異なる。つまり同じ白文鳥でもタイプが異なるわけで、その理由を調べ、白文鳥生産に「活用」できるはずなのである(こんなこと20年前に気づく者がなかったのかなあ、と少し思う)

 そこで、上記のページにある内容を興味深く読んだ。まず「台湾産白ブンチョウは桜(有色)に対し劣性である白の遺伝子をホモ型で保有していると推定された」とある。どうして推定できたのかわからないが、これは私の素人推測と一致している(ww型の白文鳥)。さらに、「台湾産白ブンチョウと弥富産桜ブンチョウの交配から発生した子はすべて桜ブンチョウの羽色で多量の白い刺し毛が存在していた」と実証例に基づくらしい部分は、ww型の白文鳥と桜文鳥(gg)では100%ごま塩頭の文鳥(wg)が生まれるという、私の個人的な経験則と完全に一致する。
 素人のあて推量も、たまには当たるようである。

 それにしても、国内産でも弥富以外の白文鳥で、桜文鳥と交配すると子供はごま塩文鳥となるものを集めてきて、何代か繁殖していけば、台湾産と同じくヒナの時も真っ白な、安定した白文鳥の系統となったのではなかろうか。何しろ、台湾の白文鳥などといっても、起源は間違いなく日本産であり、現地で白文鳥ばかりを交配した結果、ヒナの時も白いものになったとしか考えようがないのである。ようするに台湾の白文鳥の例は、いかに、種の固定化を日本人が怠っているかの証左のように思えてならない。
 シナモンも、シルバーも、日本の生み出した白文鳥さえも、外国に固定化してもらっているというのは、困ったものである。桜文鳥くらいは日本で固定化してみたらどうかと思ってしまう。

※ その後内容も掲載されたので読んだが、弥富産桜文鳥と台湾差白文鳥の繁殖実験の結果、「多量の白い刺し毛」をもつ子どもが得られ、このF1(雑種第一代)同士の繁殖では、白25%、桜75%の子が生まれたとしている。
 この結果から、台湾の白因子は桜の有色因子に対して劣性とするのだが、両因子間に優劣を考えると、そもそもF1が「多量の白い刺し毛」、つまり弥富産では見ることの無かったゴマ塩の姿になることが説明できない。白が劣性なら、有色因子のみが表現され、桜の姿になるはずである。この点、報告書の説明は苦しい。
 私はこのF1同士の繁殖から得られた桜75%は、実はゴマ塩50%、桜25%だと思う。「種々の程度で白い刺し毛が存在」とあるのもそれを証明している。例えばAB型の人同士の子どもは、AB型50%、AA=A型25%、BB=B型25%と分離するのと同じで、台湾の白因子と有色因子は『共優性』、つまりどちらも表現される対等の存在と考えたほうが良いだろう。
 台湾産は私の言うところの関東系と同じ遺伝子型を持っているものと考えれば、仮説は実証されたことになる。


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