文鳥問題.

《暖房の話ここをクリック

 文鳥は東南アジア原産ですが、日本で代々繁殖されてきているので、基本的には暖房は必要ないと考えています。しかし、暖房をしてはいけない理由もなく、どのようにしたら良いのかお悩みになる方も多いです。そこで暖房についての私見をまとめておこうと思います。【2005年1月】


暖房は必要か?

 文鳥の成鳥飼育において暖房が必要か、まずそこが問題となる。この点、地域によっても違うだろうし、家の環境でも違うものと思う。何しろどんなに寒い地方でも、24時間暖房していれば、外に出ることのない文鳥にとっては南国で生活しているのと変わらないのである。
 国産の文鳥はかなり寒さに強い。東京近郊でも野生化し、越冬繁殖していた時代もあったくらいなので、風雨をしのげる塒
(ネグラ)さえあれば、
氷点下数度まで十分に生活出来るものと見なせる。しかし、巣も設置していない鳥カゴを縁側などに放置しておけば、氷点下の朝方には生命の危険も考えられる。
 もっとも、人間が普通に居住する屋内で、温度が氷点下を下回ることはないはずなので、暖房がなくとも成鳥となった文鳥には問題がないと、一般的には言えそうだ。実際に何ら暖房する事もなく、元気で過ごしている文鳥は多いので、そういった経験を持つ飼い主にしてみれば、保温だ暖房だ、というのは過保護に見えないでもないだろう。そして、
 「我が家の文鳥が元気で長生きしたのは、季節変化に対応する強い体力が培われたからだ!」
 と考えても不思議ではないし、それは一面正しい話には相違ない。人間であっても、一年中温度の一定な温室育ちよりも、外で遊びまわって四季の変化を肌で感じて育ったほうが、丈夫になるはずである。

 しかし、当然のことながら、老齢や病気の時には話は別となる。健康な時に健康を保とうと鍛えるのは良い事だが、不健康になってしまったら養生が必要となる。若い頃と同じように鍛えようとしたら、「年寄りの冷や水」となってかえって体を壊すことなど、人間でも頻繁に見かける事実であろう。
 昔、人間にすら暖房の手段が限られた時代、人間は寒さに耐えざるを得ず、寒さへの抵抗力は現代人の比ではなかったものと見なせる。それでは、当時の人々は現代人よりも長生きしただろうか?昔は「人間50年」で70歳にもなれば、古来稀に見る存在だったのが事実だ。
 若く元気な時は暖房を必要としないくらい寒さへの抵抗力をつけさせ、老齢に達したら、無理をせずあまり寒くはならないようにする。「長生き」という命題を前提にすれば
(生きがいと言う命題なら話は別)、これが理想的な姿だと私は考える。

 暖房をしない少し苛酷な環境に耐えることで、丈夫にはなるかもしれない。しかし、その環境は、一方で健康を害する機会を与えてしまうものであることは否めない。人間なら多少無理をして風邪を引いた程度なら、大したことにはならず、むしろ病気を克服することで免疫力も強まるかもしれないが、小さな動物である文鳥ではどうだろう。ちょっとした体調変化が、重大な事態を招く可能性も十分に考えられるのではなかろうか。
 「寒さに耐えられず健康を害したら、それこそ元も子もない。保温に留意しなければならない!」
 これもまた、一面正しい話には相違ない。

 つまり、冬季に特に文鳥用の暖房を気にしなくとも責められるものではないし、逆に例えば熱帯からやって来た小鳥の飼育同様にエアコンをつけっぱなしにして20℃以上を保ち続けても不都合はないと思う。前者は、万一体調が悪くなった時や老齢になった時の保温の準備、後者は光熱費とエアコンが壊れた時の心配だけが必要となってくるが、どちらが良いとも言えない。

 

実際の暖房方法

 我が家の場合、カゴを窓際に置いているという環境なので、前掲の写真のように、冬は鳥カゴを置いたスチールラックにビニールカバーをして温室化してしまうことにしている(写真は昼なので前面が開いている)。これは背面から窓越しに冷気が伝わるのを避けるための防寒対策だ。さらに、カゴの外に数箇所カバー付き20W保温電球を掛けているのは、ささやかな暖房と言えなくもないが、朝方10℃を下回らない程度、寒くなり過ぎないための処置、つまり、保温というよりあくまで防寒対策と見なしている。

 私に限らず愛用している人も多い20Wの保温電球は、広い空間を暖房する能力はほとんど無いが、限定的な空間であればかなりの効果が見込める。したがって、ヒナ飼育や少数飼育の場合には、一台でも暖房機として十分に用が足りるものと思う。実際どの程度の力があるのか、論より証拠で次のような実験をしてみた。

 

幅33cm×奥行き27cm×高さ30cmのハムスターケージ。左右の格子部分をステンレス板などで完全に密閉しない程度に塞いでいる。

内部にマルカン製カバー付き20W保温器を一台設置し、一時間以上点灯。

次にこの上から毛布をかけて計測した。

 

幅28cm×奥行き22cm×高さ31cmの通院用鳥カゴ。

人間用の60Wアンカを『強』にして上部に設置。

この上から厚手の毛布をすっぽりかぶせ、一時間以上通電した。

また毛布を取らずに内部の温度がわかるように、写真の温度計を使用した。

室温10℃ → 18℃ (毛布使用30℃)

室温10℃ → 毛布使用10.6℃

 20Wであっても、鳥カゴをある程度の密閉空間(空気穴をのぞく)におけば、8℃の暖房効果があり、さらにそこに毛布をかけるだけで、飛躍的に暖房効果が高まることがわかる。20℃もの暖房効果があれば、ヒナや老病鳥の温室としても十分応用可能であろう(むしろ室温によっては暑くなりすぎないように調整が必要)
 一方比較のために試した人間用アンカは、60Wで表面温度こそ高くなるものの、空間を暖める能力を期待出来るものではないことがわかる。
 カゴが1台か2台であれば、そのカゴを置く空間を一定の密室状態に出来れば、20W1台でも十分な暖房効果が得られるのだから、あとは工夫次第といえる。
(もし私が一羽飼育なら、カゴの入る大きさのカラーボックスの裏面を透明ビニールかアクリル板などに変え、前面にビニールを垂らすか開閉するようにして、温室を作ってしまうと思う)

 実際さまざまに工夫している人の話をお聞きすることがある。例えば、夜寝る際にカバー付き20W保温球を設置点灯させたカゴの上から、衣類やダンボールなどをかぶせると言う。これだけでも実験の「毛布使用」に近い効果が期待出来るものと思われるが、一方でその安全性を危惧する 声もある。この点はどうだろう。

 20Wの保温電球は表面温度が150℃に達すると、『旭光』20W保温電球の箱書きにある。150℃では通常発火する事はないし、まして金属製のカバーがあるので、発火の危険はほとんど空想上のものと言えそうだ(カバーは触っても平気だが握る事は出来ない程度の熱さ)。つまり、電球の接合部にわらくずや糸くずがはさまりショートでもしない限り、この保温電球がもとで火事となることはないだろう。その点、普通の電球と変わりはないものと考えて良さそうだ。
 保温電球に水がかかるとショートしたり、破裂したりする危険があるが、電化製品に水は禁物なのは、保温電球に限ったことではない。また割れたところで、カバーがあるので危険性は軽減される。
 保温電球が割れたと言う話が以前あったが、それは100Wでの話で、20Wでは聞いたことがない
(水に落としたら割れたなどという当たり前の話を除く)。20Wは100Wに比べて表面積が小さいのでもともと割れにくい上に、表面温度も150℃までなので、200℃に達するという100Wに比較すれば(40Wで160℃、60Wで180℃とされている)水滴などが付着した場合の温度差も少なく、破裂する可能性も低いものと考えられる。同じ保温電球でも大きさで違ってくるので、混同しないように気をつけたいところだ。
 唯一多少心配になるのは、カゴの内部に設置した場合、文鳥がカバーに引っかかってしまう危険があることだろう。心配ならカゴの外に引っ掛けたい

 つまり、20Wのカバー付き保温電球は、電球表面に可燃性のものを密着させ続けたり、電球がしっかりはまっていなかったり、すぐ横で水浴びさせたりしない限り、安全な存在と見なせる。電気代は1カ月24時間点灯し続けても300円程度にしかならない。コンパクトでもあり、実に重宝な存在と言えよう。

 同じカバー付き保温電球でも、私は20W以外は使用しない。20W以外は電球自体が大きく、カバーも巨大化し、さらに表面温度が高くなるので、カゴの内部では使用しづらいと考えているからだ。もし小さなカゴの内部に大きな保温電球を設置してしまえば、文鳥にとっては熱くなっても逃げ場が少なくなり、近づけば火傷する可能性もある。また、大きくなることでカゴとの隙間を広くなってしまうので、そこに挟まる事故も考えられる。もちろん、最近はメーカー側も割れにくいように改良を加えてはいるが、前述のように破裂の危険が高くなるのは避けられない。
 手あぶりの火鉢は近くにあるから有り難いのと同じで、保温電球と言うものはコンパクトで安全で近接して使用出来るから素晴らしいものではないだろうか。離れたところにある火鉢に高い暖房効果を期待して、より巨大な火鉢を用意するよりも、その用途ではもっと良い暖房機器があるものと思う。単刀直入に言えば、より広い空間を暖めるのであれば、人間用の暖房機を使用したほうが安全かつ確実であろう。

 文鳥のいる室内全体を、エアコンで暖めることが出来れば最高だ。しかし、それにはかなりの電気料金を覚悟しなければならない。そもそも、文鳥のいるカゴの中だけが暖かければ良いのだから、室内で24時間放し飼いにするのでもなければ、室内全体の暖房は必要が無いし無駄とも言える。
 暖める容積が小さくなれば、それだけ熱源も小さくて済む。これを突きつめていけば、カゴにカバーをして20Wと言う事になるが、例えば温室化されたラック全体、もしくはカゴの置かれた空間
(カーテンなどで仕切られた2畳程度?)の暖房であっても、エアコンほどの大出力は必要ではない。例えば、人間のトイレや脱衣場の暖房として使われる小さなパネルヒーターやオイルヒーターで十分であり、またそれらの暖房機は、空気も汚さず音も静かで明るくもならず安全性も高い。さらに普通はサーモスタットが内蔵されているので、高温になる心配もない。
 200W〜500W程度で通電し続ければ、それなりの電力消費になってしまうが、暖める空間がせまければサーモスタットによって通電されない時間も多くなり、節約も可能であろう。試しに『ヨドバシカメラ』の通販サイトをのぞいて見れば、320Wのミニパネルヒーターが6250円、500Wのミニオイルヒーターが13400円だ
(2005年1月23日)。100Wの保温電球もカバー付きで5、6000円するし、それにサーモスタットも加えれば9000円以上必要となるので、初期投資としても大差が無いように思える。

 もし私が冬に20℃以上の保温を目指す立場であれば、実際にそのようにされている方たちのまねをして、適当な大きさの室内温室(ビニール囲いの出来るラック)をホームセンターの園芸コーナーなどで買い、その下段にオイルヒーターを据えて、上段のカゴを設置する場所、特に最上段が高温にならないか確認し、暑くなるようなら息抜きの穴を少し開けるなど調整するくらいで、満足出来るのではないかと想像している。


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