文鳥学講座


第3回 ーペットショップを選ぶー

 「ペット選ぶ前に買う店選べ!」

 これが結論である。都市部に住んでいる場合は、文鳥のヒナが売っているお店も複数存在しているはずなので、ヒナを選ぶ以前に、お店を選ぶ余地があるものと思う。何しろ初心者にとって、ヒナの健康状態を判断するよりも、信頼できるお店を見つける方が、はるかに簡単なことなのである。なぜならそれは、店内の掃除も出来ていないラーメン屋では、昼食をとらないのとたいして変わらない話なのだ。

 『文鳥の系譜』というふざけた記録を読まれた方はご存知のように、私は『ペットショップ』をのぞくのを半ば趣味にしている。すでに神奈川県東部地域の横浜・川崎・鎌倉・藤沢・茅ヶ崎・大和市域に所在するものはしらみつぶしにしており、その魔の手が東京都南部に達するのは、時間の問題といって良い。
 いろいろなお店を見てまわった私は、およそ世の中の『ペットショップ』(小鳥を商う店)を三つに分けて考えるようになっている。
   @ いわゆるペットショップ
   A いわゆる小鳥屋さん、
   B 鳥屋
 @は小鳥だけでなく、他の小動物やら犬猫やら魚類、爬虫類、両生類、昆虫、その他もろもろの魑魅魍魎(チミモウリョウ)を扱う総合的何でもありの巨大店舗だけでなく、町の小さいお店でも、金魚類がたくさんと小鳥数羽のようなのは、この
範疇に入っている。つまり、
小鳥をメインにしていないお店すべてをさす。Aは逆に小鳥が商売の中心になっている店を指し、大小はあまり関係ないが、実際問題として余り規模の大きなお店はない。Bは小鳥というより、鳥類を専門に商う店で、独特のアジア的な怪しくも素敵な雰囲気を醸していないといけない(その説明は難しい)。

 まず初めて文鳥を購入する場合、@、特にデパートの屋上のほうだとか、巨大なお店はなるべく避けたほうが良いものと思う。さらに具体的には、若いネーちゃんが白衣だかピンクだかの制服を着ているようなお店は疑ってかかったほうが良い。何しろ、このような人間(アルバイト店員)が文鳥についてどの程度知識を持っているかは、非常にあやしく、ろくなアドバイスを期待できない(本当は愛玩動物の管理資格があるはずだが、それを取得した店員はまず存在しない)。
 お店の人に飼育の相談をしたいのなら、小鳥好きのおばちゃんが、趣味がこうじて開いてしまったようなAの類の小さなお店が望ましい。何しろ
半ば趣味なので、かなり知識は豊富なはずだし、たいがい客への面倒見が良い。そんなおばちゃんがいたら、お店のすいている時間に世間話でもしながら、その人間性を推し量ってみたいものである。

 当然飼育環境も良くみなければならない。お店側の策略に乗ってプラケースのヒナを衝動買いなどするのは、危険というより無謀である。特に、巨大な透明プラスチックケースの中に、インコや小桜などの別種のヒナとまとめて大量に放りこまれ、保温というより客に見せる目的で、がんがんライトを当てつづけておくようなところでは、絶対に買ってはならないし、あえて購入するなら、それは救出以外の何物でもないことを十分認識すべきであろう。そのような無茶苦茶な状態に置かれていたヒナに、病気に罹患しているものが多いのは当然なのである。
 本来、そういう光景をみて「かわいい」などと思うことすら、大間違いだと私は思う。まともな常識を持った大人なら、異種生物を混在させ、本来静かに眠っているべき幼い生物を、衆人環視の明るいところにさらしている異常さに気がつかないでどうしよう。
 文鳥は文鳥のヒナだけ四・五羽ずつ、フゴやマスカゴに入れて暗いところにおいてあり、客に言われると取り出してくるような、
実に非商売的で慎ましいお店こそが、もっともヒナを購入するのに望ましいところなのである。少なくとも、マスカゴに入れて、上からタオルをかぶせてあるくらいの配慮がなければ話にならない。もし判断能力に欠けた子供が、透明ケースのなかで明かりに照らされたヒナを見て、欲しいとせがんでも、その手を引っ張ってまともなお店で購入するのが教育というものなのである。

 さらにヒナを買う場合は、フゴやマスカゴの下に敷いてある物(種類は何でも良い)が汚くなっていないかくらいは確認すべきで、乾いたフンがごろごろしているようなお店は問題外である。しかしワラなどが底に敷かれていると、不潔かどうかはわかりづらい。たちの悪いお店は、それがねらいでワラを敷いていたりするようだ。むしろ安易なようだが、ティッシュペーパーを頻繁に取り替えているような所の方が、ごまかしが少ないかもしれない。

 数えあげればきりがないが、このくらいのチェックは誰にだって出来るのではなかろうか。かわいらしいヒナの姿に目を惑わされる以前に、その置かれた環境に気をつけなければならない。値段が安くとも生き物なのなのだ。晩のおかずのイワシの鮮度以上の注意は、必要に決まっているのである。

 成鳥の場合もカゴの中が不潔でないか、水はきれいか程度のチェックをするのは当たり前で、近くに禽獣の〈フェレットなどが入ったケージ)が置かれていたら、それだけでうさんくさいと思って良いと思う。なぜなら、シラミどころかダニ・ノミの寄生の疑いが濃厚となってくるからだ。
 その他、よくよく確認すべき点は山ほどあるし、ひどい店などそれこそ五万とあることを十分に認識し、安易にお店を信用しないことが肝心であろう。

 当然、おしゃれでキレイで洗練された店先なら安心できるなどと、勘違いしてはいけない。極論すれば、そんな装飾に資金を投入できるというのは、ペットの飼育に必要なコストを切り詰めている可能性だってある。何しろ、商人というのは、売れるものなら何でも売り、コストを削ってもうけるのが本来の姿でなくてはならず、「自分の好きな小鳥との生活をみんなに分かち与えたい」などというボランティア精神だけで商売が成り立つかどうか、資本主義の国で生まれ育った者なら、誰だって承知しているはずである。一方的に店側の無限の善意を期待すること自体間違っている。
 しかしコストの削減は、商品の質を低下させない程度において認められるものであり、ましてペットというのは生き物だから、本来腐った商品を捨てるようなわけにはいかず、商売を離れた部分が大きくならざるをえない。
 商品である動物の健康面を重視すると、採算がとれなくなってしまうのだから、『ペットショップ』というのは、実に難しい商売で、その経営者の思想に左右される要素が極めて大きくなってしまう。当然その内実は千差万別で、お店にとっての客、消費者でもある飼主志望者は注意してし過ぎるということはない。

 複数のお店が近所にある場合は、ヒナに飛びつく前に、趣味的な要素を少しでも多く含み、相談に乗ってくれそうなお店をゆっくりと、問題意識を持って探してみてもらいたいと思う。

悪質なペットショップへの対処法(河合さんへ)     続き(将来的な余談など)→→→

来月は文鳥の持つ能力の話


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