「DOG'S MESSAGE」

ハ チ か ら 一 言(Part76〜80)

2005年9・10月合併号掲載分(Part76)

介護される犬たち

 みなさん、こんにちは!お元気ですか?
 御主人様ったらTVを見て、また涙ぐんでる。どうしたの?たずねたら、教えてくれました。
 老犬介護の番組をやっていて、大型犬の寝たきりを腕のリウマチがある母と、腰痛の娘で介護している家庭、飼主の医者通いが、毎日なんだって。老夫婦のお宅にいる老犬は、心臓の薬代が月に3万円もかかるんだって。夜中、1時間おきに遠吠えするワンコ。飼主はそのたびに2階から降りてきて、水を飲ませる。それが朝まで続くそうです。みんなすごくがんばってる。人間もワンコも。どうしてそんなにがんばれるんですか?というリポーターの質問に、“理由なんて考えてる暇なんてない。目の前の苦しんでる家族を助けてるだけ”と、淡々と答える。
 欧米では、ワンコの死亡原因の1位は、『安楽死』だそうです。年老いて苦しむ姿は見たくないんだって。若犬のとき、十分に楽しめればそれでいいんだって。家族じゃなく、まさに“ペット”だよね。
 10歳を過ぎ、白髪混じりになった私を、御主人様は見つめ、「いろんな考え方があると思うけど、ハチがもし寝たきりになったって、僕らの事が分からなくなったって、最後まで一所懸命かわいがるよ。大事な大事な家族の一員だからね。」分かってるよ、御主人様。そんな事ずっと分かってる。もし白内障で目が見えなくなっても、認知症になっても、御主人様の匂いや優しい手の温もりは、私の心が、体がしっかり覚えてるもの。
 年老いたワンコのみんな、そしてその御主人様たち。悔いが残らないように、みんな精一杯がんばろうね。

TOPへ

2005年11・12月合併号掲載分(Part77)

似たもの同士なの・・・

 みなさん、こんにちは!お元気ですか?
 9月で私も10歳になりました。6〜8歳くらいの間には何度か脂肪腫ができて切除手術したりして大変だったけど、このごろは体調もすごく良くて、御主人様にも「何か前よりも若返ったみたいだね。とっても生き生きしてるよ。」ってほめられるんだ。
 去年の4月から御主人様が職場の異動で休日や勤務時間が不規則になって、お母さんのお仕事のお休みとズレたから週に4日以上は御主人様かお母さんが家に居てくれるから、お留守番の回数がすごく減って、私はとてもうれしいの。だからその分ストレスが減って、元気なんだと思うんだ。
 でもね、日中の私は寝てばかりなので、お母さんも「ハチの寝顔見てると、私まで眠くなっちゃう。」って言って、いつも私にくっついて寝てしまうんだ。(御主人様には内緒よ。)そのせいか最近お母さん、激太りで体重がすごく増えてしまったんだって!
いつも私に「太るからおやつはダメよ!」って言ってるくせに・・・今度は私がお母さんのダイエットのお手伝いしてあげるね。あ〜、でも眠い。お母さんの眠そうな顔を見てると私まで眠くなってきちゃう。
 きっと私たち似たもの同士なのね。

TOPへ

2006年1・2月合併号掲載分(Part78)

ごめんなさい、お母さん・・・

 みなさんこんにちは、お元気ですか?
 私、今ちょっと落ち込んでます。
 実は私、お母さんにケガをさせてしまったの。その日は御主人様のお仕事が遅い日で、夕方お母さんがいつものとおり私を散歩に出してくれたの。辺りはもう薄暗かったけど、私は喜んで出かけたわ。
 家を出発して最初の曲がり角、横から私とウマが合わないワンコの散歩…突然ワンワン吠え掛かってきたその瞬間、もうそのワンコしか目に入らなくなってしまった私は、お母さんとリードでつながってることをすっかり忘れて、お母さんを真横になぎ倒し、引きずってしまって…。結果はお母さん、手足にケガ、そのうえ打ち所が悪く、あばら骨を折ってしまったの。お母さんは痛みをこらえて何とか私を連れて家に帰り、急いで御主人様を呼んだの。お母さんが血だらけで、痛がってうめいているし、私は大パニック。飛んで帰ってきた御主人様に大目玉を食らった私は、落ち込んでしまった…。
 近頃、悲しい事件が多いから、暗くなってからの散歩は私が鼻を効かせて、お母さんを守らなきゃって思っていたのに…。反省しつつ、夜中におしっこしたらシーツを取替えに来た御主人様が、「ハチ!どうした?血が混じってるよ。大丈夫?痛くない?」って叫んだの。え?そういえば何か体がだるいな。それから朝まで10分おきくらいにおしっこに行って、そのたびにだんだん出血が多くなっていったの。すぐに獣医さんに連れて行ってもらったら、「おしっこに問題はないけど、ハチ、何かストレスがたまるようなことがあったかい?」って先生に聞かれたの。あー、もしかしてお母さんのことで落ち込んでたから…?あーん、もう私ったら、またお母さんに迷惑かけちゃった。
 病院から帰ってくると、事情を聞いたお母さんが、「もうケガのことは気にしなくていいんだよ。ハチの責任じゃないの。お母さんがハチより先に、あのワンコに気づけばよかったのよ。ごめんね、心配させてハチを病気にしてしまって。もう大丈夫だから早くお薬飲んで良くなろうね。」って言ってくれたの。お母さんのほうが痛いのに、ごめんなさい。ちゃんとお薬飲んで早く良くなるね。だからお母さん、ケガが治ったらまた散歩に連れて行ってね。お母さんと二人の散歩も大好きなんだ、私。

TOPへ

2006年3・4月合併号掲載分(Part79)

桜の季節

 みなさん、こんにちは!ハチです。お元気ですか?
 今年もまた桜の季節がやってきました。きれいな桜を見ながらのお散歩。楽しいはずなのに御主人様は、あまり桜を見上げようとしない。どうして?御主人様が話してくれました。前にもみんなにお話したけど、御主人様は今、不幸なワンコやニャンコが集められる職場に勤めています。
 ある日、道端にうずくまって動けずにいるワンコが捕獲檻に入れられて連れてこられたの。体はガリガリで全身の半分は皮膚病で、毛がはげ落ちてる。車とぶつかったのか、わき腹に傷がある、まだ若そうなオス犬だったの。”捨てられてしまったんだね。かわいそうに…”御主人様がご飯と水を、カップ麺の空容器に入れて持っていくと、最初はうなってたけど、そのうちガツガツ食べてくれたんだって。そして、丸一日経ってもトイレをしてないことに気づいた御主人様は、私が小さいときに使っていた首輪とリードを持っていって、散歩に連れ出したんだって。そしたらすぐに大量のおしっことうんちをしたそうです。きっと飼われてたとき、ハウスではしないようにしつけられてたんだね。それから御主人様は、朝はいつもより1時間早く出勤、帰りは仕事が終わってから、週末もご飯と散歩をしに行きました。結局一週間経っても飼い主が現れず、動物保護管理センターへ連れて行かれてしまったの。(そこでも飼主が現れなければ命を絶たれる。)御主人様は空になった檻を掃除しに行ったの。そしたら、毎日あげていた水の容器に桜の花びらが2枚、きれいに浮かんでいたそうです。それを見たとき、御主人様は我慢できなくなって、思い切り泣いたそうです。朝夕、ご飯を持っていくと、尻尾をぶんぶん振って迎えてくれた彼。散歩に出すと、途中で何度もうれしそうに見上げてくる彼。 桜の季節が来るたびに、桜の花のようにぱっと散ってしまった、そのはかない命を思い出し、御主人様は悔しさでいっぱいになるそうです。悲しいね。でも、いつかまた、御主人様が私と楽しく桜の花を眺められるように、私なりにがんばってみる。御主人様の想いはみんなに届いてるよ。そして、みんな”ありがとう”って言ってくれてるよ。私にはわかるんだ。

TOPへ

2006年5・6月合併号掲載分(Part80)

幸せって・・・

 みなさん、こんにちは!ハチです。お元気ですか?
 あーん、もぉ。お母さんたらまたテレビ見て泣いてる。どうしたの?こぼれる涙をなめてあげて聞いたの。そしたらね、動物園の白クマの人工保育のことをやっていて、生まれてすぐ母クマに育児放棄されてしまった子グマを飼育係のおじさんが家に連れ帰って、ミルクから育て上げ、今5歳になったんだって。体が大きくなって、おじさんと離れて動物園で一人で暮らさなくてはいけなくなった日。体が大きくなって危険だからという理由で、おじさんと遊べなくなった日。おじさんが連休を取って、自分を覗いてくれなかった日。白クマは子供のように寂しがり、おじさんを捜し、体調を崩し、発作で倒れた。その純真な心が、幼いころの私とダブってしまったんだって。
 飼育係のおじさんが言ってた。「人間が考えるその子の幸せと、その子自身が感じる幸せとは必ずしも一緒ではない。」って。お母さん、その言葉にハッとしたの。ハチを迎えてから飼育本を何冊も読みあさり、マニュアルどおりにここまで来たけど、ほんとにハチはそれで幸せだったの?お母さんの言うことだけを聞いて大きくなったハチは、ストレスを感じていたんじゃない?お母さんたら、もうじき11歳のおばちゃんの私に、今更ながら聞くのよ。
あーん、もお、わかってないんだから。お母さんを見つめるこのキラキラした瞳と笑顔を見ててくれればわかるでしょ。お母さんが私のために考えてくれてる幸せと、私が感じる幸せは、もちろん同じよ。そして、お母さんが感じる幸せは、私が今ここにいるっていうことなんだよね。

TOPへ

前のページに戻る