新井邦宏さんの投資の王道に学ぶ株式市場のテクニカル分析

テクニカル分析の教訓とコメント

　本書はテクニカル分析の教科書であると同時に、新井邦宏さんの相場哲学書です。本書が説くテクニカル分析のポイントを抽出してコメントを加えてみました。

教訓１
　テクニカル分析の基本は主要な高値・安値の確認である。ポイントとなる価格帯をブレイクするかどうかを地道に確認する作業の繰り返しである。

コメント
　テクニカル分析というと、複雑な計算式のテクニカル指標を思い浮かべがちですが、基本は大まかなトレンドを確認することから始まります。

教訓２
　トレンドに乗ることが安全な投資である。トレンド・フォローが基本である。

コメント
　投資スタイルを投資タイミングで分類すると、順張り(トレンド・フォロー)と逆張りとに分かれます。
　順張りは現状のトレンドが続く限り、トレンドに追従することで利益を上げるやり方です。

教訓３
　逆張り、ナンピンは危険である。

コメント
　逆張りは下降トレンドの途中で買い出動して、リバウンドしたら売り抜ける戦略です。
　うまくリバウンドすれば利益が得られますが、下降トレンドが継続した場合は損失が広がります。

教訓４
　オシレータ系のテクニカル指標は無用である。

コメント
　ＲＳＩやＲＣＩに代表されるオシレータ系のテクニカル指標は、株価が一定の価格帯で上下動を繰り返すトレーディングレンジの状況で効果を発揮します。
　株価が一定の価格帯をブレイクした場合は指標が機能しなくなるので注意が必要です。

教訓５
　大負けしない為にはロスカットが重要である。

コメント
　市場や銘柄によって一概には言えませんが、株価が下降トレンドで下落する際には、想像以上に値下がりすることがあります。
　買値から５０％値下がりしても耐えられるのなら、そのまま保持するやり方もありますが、耐えられないのであれば一定の割合の評価損が発生したら損切りした方が、相場の世界で長く生き延びることが出来ます。

教訓６
　ロスカットには逆指値が必要である。ストップ・ロス・オーダーを使うことで大負けを防げる。

コメント
　損切りは機械的な損切りと心理的な損切りとに分類出来ます。
　心理的な損切りは、この程度値下がりしたら損切りするという一応のルールを決めておきますが、実行するかどうかは本人の裁量によります。
　逆指値注文による手仕舞いは、予め決めておいた価格に値下がりしたら、売り注文が実行されるので、心理的な迷いが入る余地がありません。

教訓７
　買い(売り)出動においても逆指値が必要である。

コメント
　一般的に、株を買う際はなるべく安く買いたいと思います。
　しかし、株価が安い時はそれなりの理由があって安い価格に放置されていることがあります。
　逆指値で仕切るということは、例えば上値抵抗線をブレイクした時に買い出動するという具合に、トレンドに変化が生じた時に動いた方が勝機があるという考え方です。

教訓８
　チャートはローソク足(日足)、移動平均線、ボリンジャーバンド(σバンド)、一目均衡表で十分である。基本的な道具を使いこなせば戦える。

コメント
　基本的な指標を使いこなせないのに、複雑なテクニカル指標を使っても空回りしてしまいます。
　自分が得意なシンプルな指標を重点的に使った方が結局はうまく行き易いという考え方です。

　本書のポイントを押さえて株式投資を行なえば、少なくとも大負けすることは無くなると思います。トレンド・フォローに徹し、トレイリング・ストップで利益を追求し、ストップ・ロス・オーダーでリスクを限定すれば、資産を増やすことも夢ではないと思います。
　株式投資で実際の売買経験の無い方には、本書は若干難しいかも知れません。役に立たないということではなく、真意を理解しづらい可能性があるということです。
　逆に株の売買経験が少しでもあり、相場の価格変動に翻弄され、損失を出してしまったことがある方には是非読んで頂きたい本です。

著者

新井邦宏

出版社

日経ＢＰ社

目次

はじめに
　株式投資は幸福を実現する手段
第１章　テクニカル分析の考え方
　身の安全を確かめるには確かな道具が必要
第２章　使える指標と使えない指標
　主要３６テクニカル指標完全ガイド
第３章　新井邦宏の相場哲学
　「逆指値」で損切り・利益追求の徹底を
第４章　実践相場の中での考え方
　σバンド＆一目均衡表による実践チャート分析