2004年12月30日
晴れの鎌倉
やぐらに彫られた布袋様の笑顔に
元気をもらったお礼がしたくて
境内に散っていた
山茶花の花びらを拾い
くすくすと笑いながら
布袋様の指にそっと乗せたら
これっ!と突然背中に声が掛かり
肩をすぼめて振り返ると
そこには
竹箒を持った和尚様が
布袋様と同じ顔をして
優しく立っていました
山あり谷ありの一年が
ゆるやかに
終わろうとしています

2004年12月29日
クリスマスの喧騒さえ
目立たぬままに過ぎ去った
麗らかな年の暮れ
ある朝目が覚めると
隣りの屋根が白くなっていました
今年の冬初めて見る雪は
眩しいくらいに白く輝いていて
細く開けた窓から
僕は膝を抱えて
いつまでもいつまでも
落ちては溶ける
白い花を眺めていました
やがて空から落ちる花は
白い牡丹に変わり
僕はのろのろと外に出て
白い息を吐きながら
空に向かって大きく手を広げて
静かに落ちてくる白い花を
身体いっぱいに浴びました
鼻の頭が冷たくなったころ
僕は部屋に戻り
また窓に向かって腰を下ろし
膝を抱えてその上に
ぽつんとあごを乗せました
鼻の頭に温かさが戻ったころ
膝を抱える自分の腕の力が
さっきよりもずいぶん
柔らかくなっていることに気がついて
僕は少しだけ笑いました

2004年12月28日
あの人に逢いたいと思う
あの人の声を聴きたいと思う
あの人の笑顔を見たいと思う
触れなくても良い
ただただ純粋に
そう思う
2004年12月24日
仕事を休み
横浜駅から反対側の
ホームに立って
鬱な心のまま
木枯らし吹く
北鎌倉を
ひとり歩く
観世音菩薩に手を合わせ
御朱印の記帳をお願いして
ぼんやりと
佇んでいたら
墨を磨る僧侶から
「思いつめずに心の平静を」
・・・
と静かに諭され
ふいに
目頭を熱くする
2004年12月22日
暗闇の中
自分という名の
小さなノミで
硬い心のトンネルを掘る
たとえ
1日に1cmしか
掘ることが出来なくても
必ず
この先に
光があることを
信じて
命ある限り
その先には
必ず
光はあるのだと
・・・
2004年12月20日
鬱
という
峠を越えに
…
ちょっとだけ
頑張って
きます
2004年12月19日
感受性こそ
人間の財産だと
思う
でも
その感受性の重さに
耐え切れなくなって
僕は時々
ロボットになりたいと
思う
2004年12月17日
ため息が
あくびに変わって
少しだけ
気持ちが楽になった
瞬間
…
2004年12月16日
仕事帰り
背中が丸まっていたら
イチョウの葉の散る
小さな公園に
寄ってみよう
月夜の下でブランコに揺られ
足を伸ばして
大好きな歌を唄えば
何時の間にか
背筋も延びて
見上げるお月様が
さっきよりも
ずいぶん
近くで笑っているよ
2004年12月14日
オラウータンに
肩を揉まれている
夢を見た
今度の日曜日は
動物園に行こうと
思う
2004年12月11日
ひねくれ顔で
夜明けの
鎌倉を歩く
人の姿のない
古寺にゆっくりと陽が登り
紅葉の紅が
逆光の空にゆっくりと広がる
深呼吸をひとつしたら
胸の奥まで
紅くなったような
気がした
2004年12月10日
裏北
連載開始
いつか
単独で
本
出しちゃおっと

2004年12月9日
品川駅で
テレビでよく見る
女優を見かけた
美人だけれど
人形みたいだった
横浜駅で
夜空を見上げる
おねえさんを見かけた
美人じゃなかったけれど
どきっとした
2004年12月6日
快調だよ
遊ぼうぜ
右のコメカミが言う
痛くてたまらねえよ
もう寝ようぜ
左のコメカミが言う
仲良くしてくれよ!
真ん中の俺が叫ぶ
2004年12月2日
3歩進んで
3歩下がる
しばらくは
それでいいやと
思えた瞬間
少しだけ
心の霧が
晴れた気がした
2004年11月23日
偏頭痛の頭を
うずくまって抱えながら
思わず
島倉千代子を
くちずさむ
くりかえす くりかえす
さざなみ〜のよぉ〜に〜♪
イェイ

2004年11月18日
料理番組で
極上のマグロを食べ
「旨い!まるで和牛みたい!」
と叫ぶタレントに
「んじゃ、マグロじゃなくて和牛食えばいいじゃん」
とテレビの前で
玉子かけご飯を頬張りながら
思わず
突っ込みを入れる
2004年11月16日
孤高の美

2004年11月14日
ありがとうって
言葉が好き
言われるのも
言うのも
好き
2004年11月12日
カビの生えかけた
聖子ちゃんの
LPレコードに
針を落として思う
天使のウィンクって
どんなのだろう
2004年11月10日
病院帰りに
寄り道して逢いに行った
かわせみ君は
ひと夏越えて
ずいぶん威張った
坊やになっていて
涼しげに空を見上げる
その瞳から
僕は少しだけ勇気をもらい
てんこ盛りの薬袋を振り回しながら
家路に着いた

2004年11日2日

旅先にて
父詠む
2004年11月1日
そのカクテルの名は
「そよ風とピンクの帽子」
一度飲んでみたいのだが
どうしても口に出して
注文できない
2004年10月30日
朝一番で病院に行き
久しぶりに採血の検査
注射針が刺さる
自分の腕から目を逸らし
真面目な顔の看護婦さんを
じっと見る
もう
……
そんなに見ないの
そう言って尖らせた
紅をひかない
あなたの唇が好き

2004年10月27日
風呂上りの深夜
パチン パチンと
足の爪を切る
パチン パチン
静かだなあ
2004年10月24日
お山のてっぺん
芝生の上に寝転んで
大きな空を眺めてみよう
ゾウさんみたいな
でっかい雲に連れられて
心の中の黒い雲も
空の向こうに
飛んでいきますように
2004年10月17日
生まれて初めて眼鏡を買った
詳しい検査をいっぱいして
お手元用でお作りします
と綺麗なお姉さんに
素敵な笑顔で言われ
カッコいい眼鏡を渡されて
生まれて初めて眼鏡をかけた
でもねお姉さん
この眼鏡
手元はすごく良く見えるんだけど
あとは全部ぼやけちゃうんだよね
するとお姉さん
にっこり笑って
「お手元用ですから」
・・・
う〜ん
お手元用って
もしかして老眼鏡のこと
???

2004年10月15日
あなたは
こっちの方がいいと思って
ケーキじゃなくて
美味しいワインにしたわ
わかってないなあ
いくつになっても
誕生日は
君といっしょに
部屋の灯りを暗くして
ケーキに
ロウソクでしょ
2004年10月13日
ここ一週間で
5日雨が降り
そして僕は
傘を3本なくした
2004年10月11日
地獄のサウナで
2キロ痩せ
天国のビールで
元に戻す
2004年10月8日
ファンヒーターを
しまう前に
そろそろ
涼しくなってきた
2004年10月7日
雨上がりの秋の道
キラキラ光る水溜りに
金木犀の香りが
ほんのりと
浮いていた
2004年10月5日
経験を語る事は
今だって出来る
しかし人生について語るのは
己の終焉を迎える時まで
待つべきだ
マツモト・デ・ノンデール
2004年9月30日
台風一過の朝
通勤電車に乗り込む
不良サラリーマンの
憂鬱
2004年9月27日
水族館に行く
ぺんぎんの背中に感じる
哀愁が
力強さに変わるまで
その背中を
じっと
眺め続ける
2004年9月26日
一秒でも永く
今を感じたくて
悪あがきするように
夜更しをする
自分に切なくなり
深夜の通販番組を見ながら
不意に涙する
2004年9月22日
2.5リットルペットボトルの
焼酎をグラスに注いで
アイスウーロン茶で割り
う〜〜〜ん
なんだか酒が強くなっちゃったなあ
などと
5杯もお代わりしたところで
ペットボトルの中身が
先週汲んで来た
丹沢の湧き水だった事に
初めて気付いて
ずっこける
2004年9月19日
石の上にも三年と言うが
子供の頃から
僕は
石の上に五分も
じっとしてはいられない
2004年9月16日
ほらね
やっぱり笑顔が
いちばん
可愛いじゃん
2004年9月14日
のんびり時間を使いたくて
各駅停車に
揺られてみる
がらがらの車両の中で眺める
吊り革の
ラインダンス
2004年9月13日
たとえ
松嶋奈々子に
ふたりだけで
観覧車に乗りましょう
と誘われたって
僕は絶対に
首を縦に振らない
それほど僕は
高いところが
怖いのだ
2004年9月12日
おぼろ月夜の帰り道は
草むらで奏でる
秋の合唱団の
素敵な
プロムナード
2004年9月9日
車についた
小さな擦り傷
ひとつにさえ
残る
旅の思い出
2004年9月7日
仕事の打合せをした
薄井という名の
太った女の子に
薄いのに太いぞって言ったら
ぶっ飛ばされた上に
飛騨牛ハンバーグを
おごらされた
2004年9月6日
「テレビは離れて見なさい!」
パソコンに向かいながら
横目で
そう注意することの
矛盾感
2004年9月5日
どうせ俺なんかと
自嘲気味に笑った
あいつの眼は
スーパーに並んだ
賞味期限切れ直前の
魚の瞳に似ていた


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