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研究活動松崎としよ墨表現の可能性を探る


松崎 としよ/Toshiyo Matsuzaki
 墨表現の可能性を探る 〜ワークショップ「墨と和紙のシンフォニー」に関連して〜
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1.ワークショップ「墨と和紙のシンフォニー」のねらい
墨は日本に昔からある身近な材料。
しかし、
現在の美術教育において、
豊かな表現活動を展開できる画材として
取り組んだ実践が少ない。
そこで、墨の特性や画材としての魅力を
体感して頂きたく、
ワークショップ「墨と和紙のシンフォニー」
を開催した。
6年生の図工の授業「墨遊び」の風景


2.描画材としての墨
 海外の美術館の子ども向けワークショップでは、オリエンタル・イメージとして「墨」と筆を使い、
自由に墨線の楽しさを味わえる試みが
組み込まれている事例が報告されている。
(右の冊子)


その中では、
鉛筆やペンでは表現できないものとして紹介、
推奨されている。


 一方、日本の美術教育では、
小学校高学年の鑑賞教育の中で、
水墨画の雪舟等の作品が
取り上げられているが、
子どもにとっては、
それは身近なもの、
楽しいものという取り上げられ方が
されていない場合が多い。

 「墨は字を書くもの」
としての概念が強く、
描画材として楽しく展開する例は少なく、
また、墨絵は
昔ながらの臨画という先入観が強い。
上と同じ冊子。アメリカ合衆国コロンバス美術館における親子のワークショップを紹介している。


しかし、
実際に描画材として実践してみると、
次のようなことがわかる。
  • 短時間に大きな作品が描けて、子どもたちはそれに夢中になる。
  • 子どもが描く線の一本一本は呼吸しているように生き生きとしている。
  • 墨の特性(濃淡、にじみなど)が面白い表現を簡単にできる。
そこで、
教育活動の中での墨表現の作品に
に点を当ててみたい。



3.墨を描画材として扱った子どもたちの作品例を考察

右の作品は、幼稚園児の作品。
虫や卵のいとおしい思いが、
擦れた墨線でいきいきと
表現されている。
「かぶとむしがたまごをうんだよ」幼稚園児


右の作品も同じく、
幼稚園児の作品。
ウインナーのおいしそうな表現が
にじんだ線で表された作品である。
「フライパンでウィンナーを焼く」幼稚園児


右の写真は、
ある学校の2年生の研究授業の写真。
題材名は、
「はんの木の見えるまど」。

全紙大の和紙に、共同で描いた作品。

国語の時間で学習した物語の好きな場面の
はんの木を墨線で思い切り大きく表現し、
水彩絵の具で彩色。

伸びのよい墨の表現は、
子どもの活動に弾みをつけ、
1時間ほどで作品は完成。
「はんの木の見えるまど」2年生共同作品


右の写真は、
3年生の作品。
海遊館で見たサメの雄大な様子を
墨線で一気に表現し、
その体の大きさを薄墨を使うことで、
伸びやかに描ききっている。
「じんべいざめ」3年生


右の写真は
1年生の図工研究授業の写真
題材名は「ねっこは生きている」。

伸びのよい墨の特徴を生かした実践。
全紙大の紙に、地中に伸びた根っこを
墨線で表現している。

墨だけでなく、刷毛やスポンジ、ローラーなど、
思い思いの道具を使って表現することで、
多様に墨表現に。

子どもたちは何のためらいも持たず、
線表現を満喫する姿が印象的であった。

※この研究授業の詳細は、
「教育活動」のコーナーの「学校教育」の中で、
詳しく紹介しています。

1年生の図工の研究授業
「根っこは生きている」


右の写真は
6年生の図工の授業「思い出絵巻」。
6年間の出来事を絵巻で表現。

描いているうちに、もっと描きたくなり、
気づくと10枚以上の和紙を
継ぎ足している子どもが多くいた。

また、この授業では、
子どもたちはくるくる巻いて保管できる
巻物の便利さを学ぶことができた。
6年生の図工の授業「思い出絵巻」


以上の作品および実践で
共通していえることは、

まず、
伸びのよい墨が生み出す活動により、
驚くほど早く描かれていることである点。

2番目に
筆以外、たとえば、ローラーや
スポンジ、刷毛、木の根っこ、
モップなどに墨をつけて、
面白い表現が楽にできることが、
子どもたちの心を掴むこととなった点。

3番目に、
子どもたちが描いた作品には、
描く気持ちを代弁するように、
自然ににじみやかすれなどの線が
濃淡を伴って紙の上に浮かび上がる。
このことは、
日本の墨表現で言われている
「線がその人をあらわす」ということでは
ないだろうか。

「かさこじぞう」2年生

















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