嘉彦エッセイ


第130話(2015年04月掲載)


        



『お医者さんと品質管理』


 その昔から、医は仁術と言い、広辞苑を引くと「医は、人命を救う博愛の道である」ことを意味する格言と出てくる。

Wikipediaを紐解くと、その格言は江戸時代に盛んに用いられたそうで、その思想的基盤は平安時代まで遡ることができ、
西洋医学を取り入れたのちも長く日本の医療倫理の中心的標語として用いられてきた。と説明が有った。

 今回はお医者さんにまつわる話から仕事の品質について考えてみたいと思います。

  最近、群馬大学付属病院で、手術の失敗から8人もの患者が亡くなったニュースを聞いてびっくりした。
腹腔鏡手術と言う手術の方法での治療の結果だそうで、
そしたらその先生は、開腹手術でも10人の患者が亡くなる執刀をされてきたお医者さんだったそうです。


  15年ほど前(2002年)に、某自動車会社の大型トラックが、タイヤが外れて親子3人を死傷に至らしめてしまった事故があり、
設計ミスが原因で、上司は「わしゃ知らん」を決めて掛かり、とうとう経営トップが逮捕されると言う事故(事件)が有ったが、
これは、原因(タイヤを締め付けるハブ周りの強度不足)に対して管理責任を管理者が逃げまくって、
とうとう責任を社長に押し付けた結果だが、通常は直属の上司か部長級が責任を取る事件。
当時自動車産業に携わっていた私には、無責任な管理者集団に見えたものだった。

今回の事件も、周囲の人は気づかなかったのか、
その医師を取り巻く、看護師さんや、放射線科や内科や麻酔科や関連する科目も関与したはずなのに、
そしてその医局関係者の上司がいたはずなのに、「医は仁術」ではなく、痛ましい事故が相次いだ背景には、
個室型ビジネスの欠陥をさらけ出したものと私は思った。

 個室型ビジネスとは、学校の先生などは教室に入ると天下人で、
周囲から指示や指摘を受けることなく進めていくビジネス形態を私名付け、同じくお医者さんは診察室に入ると天下で、
もう誰からも指図を受けない仕事する人を私はそう言い、自分の誤りを指摘する環境を持たないビジネスマンを指している。
モノづくり企業にも沢山この形態のビジネスが存在していることをわすれてはいけない。

医療の世界では、お医者さんは自分の診察室に入ると天下で、傍に付く看護師さんが、
お医者さんを至れり尽くせりでサポートする。威張っているから恐れをなすのか、そう訓練されているからか。

簡単な消毒をするにも、ピンセットを渡され(受け取り)、消毒薬の付いたガーゼを渡され、チョコっと塗って、
看護師さんが持つ膿盆に投げるかのように捨てる。傷口に貼る絆創膏も、糊に付いている剥離紙を剥がすのを待って、
受け取り、同じく捨てる。受けるのは看護師さん。
自分で取って使って、自分で置いてある膿盆に捨てればよいだろうと私(患者)は思う。
看護師さんって、患者の看護ではなく、お医者さんの看護だったんですね。

今日の本題は此処からで、病院でよく見る姿が、お医者さんのだらしない服装、横柄な言葉。気になりませんか。

靴はかかとを踏んで履き、ズボンはよれよれだったり時にGパンであったり、スポーツシャツやTシャツの上に、ボタンをしない白衣をだらしなく着る。
白衣が着難いなら、着やすい医療服を提案すればよいではないか。


  昔のお医者さん、いや私の現在掛かっているお医者さんは、糊のきいた白のYシャツにネクタイ。
白衣はきちっとボタンをし、その襟にはどこやらのバッチが光る。革のドクタースリッパ。
これがお医者さんのスタイルではないか。
聴診器を使う際には、ポケットから使い捨てカイロを取り出して聴診器を温めてから、患者(私)の胸に当てる。
立派なマーケットインのお医者さんです。


   だらしないお医者さんに限って言葉遣いも荒い。私の息子より若い先生が、まぁ、乱暴な口を利くこと。
ある病院では小柄の女医さんが、引きずるように白衣をだらしなく着て、偉そうに口を利く。言葉は乱暴。
女言葉を使ったら?と言いたい。いたわりなどなく、威張る。私は名医と言わんばかりに。
患者の人格や年齢は無視。体育会系の私には、1年違ったら天皇陛下とコジキの差があると鍛えられてきたから、
若いお医者さんに乱暴な言葉で質問を受けるとムカッと来る。
医学博士だから偉いのだろうか。単なる身体の修理屋ではないか、とさえ言いたくなる。
患者からすると、長い時間またされて相当イラついているからなおさらだ。そんなことを全く考えない言動。
お医者さんも沢山の患者相手に大変だとは思うが、乱暴に扱われると、それが仕事でしょ、と同情は消えてしまう。

車の修理屋さんは、治らないと患者(車の持ち主)にこっぴどく叱られる。
病院では治らないのは患者の病状が悪すぎたことになって医者は責任を取らない。挙句の果ては群馬大学になる。

同じ医療機関でも看護師さんにはほとんど横柄な態度は見られないしいて言うと、入院している個室に入る時はノックぐらいしてほしいなと・・・
と思ったりするが概ね優しく、素敵で感謝できる。看護学校の教育がしっかりしているのかもしれない。


全員ではない。私がかかる個人医にそんな人はいない。診察室に入ると、立って挨拶をしてくれる。
ある眼科では必ず先生の言葉に元気をいただける内容がある。うぬぼれ先生だけではない。
これは総合病院に見られる姿で、管理者に問題があるのではないか。個室型ビジネスに立ち入らず、放任しっぱなしなのではないか。
某自動車会社の監理者と同じではないか。


  一般のものづくり企業では5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)の一環で、服装をキチッとさせる。
品質管理のイロハのイだ。きちっとできない人は必ず品質不良を起こす。台湾企業では6Sを唱える企業もある。
6番目は
整軍。軍隊を意味するのではなく、整列や身体の動きをテキパキすることを指している。


チョットした注意の目線を変えるだけで会社は変わる。病院だって変われるはず。
QCサークルを先生方がやって見れば良くなるかもしれない。
QCサークルには自分たちを顧みるプロセスがあって、自責から自分を見直してみる。

と、言いつつ私はどうか、私のスポーツ組織はどうか。もう一度原点に帰ろう。そういえば威張ってるな・・・。



    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE