嘉彦エッセイ


第129話(2015年03月掲載)


          



『Want とMust』


外来語が…などと言うといかにもおじさんエッセイの始まりの様だが、最近使う言葉(言語ではない)の1~2割が外来語で、
その大半は英語だ。日本語が英語になってしまった言葉も多くあるように、だんだん国境がなくなってしまっている。
特にパソコンや携帯に登場する言葉は短縮語や造成語が氾濫して分からないことがしばしばだ。

私自身も、仕事がらみでついつい単語として便利に外来語を使っているが、やはりそれも大半の語源は英語だ。

本業のVEやTear Downは発祥が米国であるし、IEの分野は発祥は欧米なるも、トヨタ生産方式が世界を席巻し、
KAIZEN、KANBAN、ANDON、JIT(Just In Time)等日本語が英語化したり、
日本で使った英語が改めて英語として技術用語になったりしているため、自然に使用していることが多い。

また、このタイトルの様に、もはや日本語には適当な言葉が見当たらない、的を得た表現の英語は日常茶飯事、
この言葉だけではなく数多くある。「今の話Pintが合っていないよ」とか、「今の手持ち材料ではカバーしきれない」とか、
「頑張るのは良いけどオーバーペースにならないように」・・・もはや英語の単語の方が理解しやすいことが多くある。

今日は、Want とMust のお話をしてみよう

仕事の優先順位を決める時に使ったり、日常会話にも使われたりするこの二つの単語。
日本語にすれば、I want…は、私は欲しい…をであり、I must 何々 は、私は何々をしなければならないだが、
表題の様に使うと優先順位の種別を明確にする使い方になり、適当な日本語より使いやすいものだ。


歳を取ってくると、身体のいろいろな部位に障害が出てきたり、早く動かなくなったり、行動範囲も狭まったりしてくる。

   スポーツをしても、昔取った杵柄ならぬ、適当に誤魔化し、ごまかし、滑ったり、打ったりして、結果オーライを決め込んでいる。
ゴルフのドライバーの距離が出ずとも、コースの真ん中なら大満足なのである。
一緒にプレーする仲間もだんだん同世代者が増え、お互いに褒めあって(慰めあって?)その瞬間を楽しんでいるのも実態ではなかろうか。

いつまでも若き時代の輝かしいプレーを再現できるわけではないので、どうにか動いて楽しめるのは、
妥協しなければいけない事であるも、動かなくなったり、痛んだりする器官にはやむなく手当を施さざるを得ない。
とはいえ、少々我慢のできる障害は選択が分かれる。
医師の判断を求めるのか、自己診断と勝手な治療を施すか否かに選択肢が移って行く。

多くは我慢で過ごしてしまうことがあって、これは後々の祟りが怖い。最近右手の小指がバネ指になり不自由し始めたら、
意外や意外・・・は第120話『小指の働き』で触れたが、伝染するはずがないのに伝染し出し(伝染しているのではなく、
原因=血流や養分の補給不足が近くの指にも該当しているだけのようだが)、左手の中指はついに手術をする羽目になり、
術後も指の動きが芳しくないためリハビリに通っている。
右手の小指は元々だし、薬指も怪しく痛みもあり、こちらも手術をし、指3本のリハビリ中。

肩が痛む、腰が痛い、力が落ちたなど支障を解決しようと市営のジムにも通いだした。
筋力が衰えてきているからだが、筋力を回復するには、負荷をかけた筋トレが欠かせないそうで、主治医からも勧められている。

リハビリは予約をして治療してもらっているが、ジムは自分の意思だ。リハビリは所要1時間、ジムは2時間だ。
リハビリ効果は中々現れてこないが、治療を受けなければもっと動きは悪いのだろうと思うとMustの感じがする。
ジムの筋トレはWantだが、筋トレ対象は上肢・下肢~身体の大半の筋肉を順に鍛えられるので自分の身体には大事な時間の割き方になる。
筋トレはやればやるほど記録(回数や負荷)が上がってきて満足感が増える。

さァ、どちらを優先するか。限られた時間の選択が始まる。
明らかにMustと言いきれるものがあれば当然其方が優先されるが、その分別が付くほど優劣が無いから迷う。
身近なMustWant


  日常生活でも、それも自分の身体の管理でさえ迷うものが、いざ仕事となると優先順位が付けにくいものでいくつも並列に並ぶ。
ついつい自分に甘くなり、易しいものから片付けたくなる。身近なものから片付けたくなる(メール処理等最たるものだ)。


短時間で終わりそうだから片付けてしまいたくもなる。

そうこうしているうちに重要な案件(Must)が後回しになって、だんだん心が穏やかでなくなり出す。
焦り始めると効率も出力の質も低下してくる。優先順位とは厄介な判断材料だ。

企業でのMustは往々にして、不具合発生、納期問題、決算に影響、
客先との約束(Commitment)不履行にかかわる事案・・・が発生した時に対象となり、大慌てする。

自分が割ける時間に限りがあるだけに、優先順位は、分かり切ったことで言えば当然Mustからで、
それも期限の迫っている順、問題の大きさ(重要度)が優先され、ここで心鬼にしてWantの易しいものに惹かれてはならないことだ。
と言いつつ、自分でもコントロールできていないのがこの優先順位。


  ある技術指導先で、優先順位を共有しやすくするために、Part-Time管理を用い、
クリティカルパス上の案件を優先順を高めるように指導してみているが・・・
これもPart-Timeで管理していない別件が飛び込むと、順位はまたまた狂ってしまう。なかなか理屈通りいかないモノだ。

こう書いては自分の管理能力、判断力の無さを反省している。

この頃、ここに書くエッセイは自分に教え直すために書いている気がする。 

    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE