文鳥問題.

《補助食品》

ここをクリック 激動の20世紀の最末年、思えば、トウミョウってどんな野菜?が発端で、次に市販のペレットの批判をして、せっかくだから配合粒エサも考察して、すっかり深みにはまってしまった。今世紀の内に食べ物の話にはけりをつけておくべきだろう。残すはサプリメント、補助食品の話。これについては、大型インコのHPに素晴しく詳しく取り上げられているものがあるが、ここでは文鳥本位、実用本位で考えてみようと思う。
 しかしまず断っておくが、私はたぶん保守的な文鳥飼育者であり、食べ物や飲水に何かを添加することに対して否定的であり、さらに本来人文系なので、栄養価やら薬の内容などどうでも良いと思っている。したがって、使用したければ勝手にすれば良いというのが本音である。しかし、それではお話にならない。さらに、せっかく文鳥のためを思ってする事なのに、不注意で逆効果になってしまうのも忍びないと、おせっかいをやきたがる。やはり、ある程度目的をはっきり持ち、内容を検討して使用した方が良いはずだ。
 そんな感じに考えていたら、何となく資料が集まってしまったので、ここに提示して参考にしてもらい、ここでの食べ物の話のいちおうの帰結とすることにした。何となく使用を否定しているニュアンスが漂っているかもしれないが、それはペレットの話同様に個人的な志向性なので、その点は注意して、当然無視してもらいたい。
 取り上げるのは一般的と思う次の5つとする。ネクトンS・デミックス・カルマグバード・ポポンS・エビオス。他にもあるが、あとはこのページも参考にしながら、使用者個人個人で考えてもらいたいと思う。


【資料編】  成分等と含有量 参考文献
【考察編】  主要なビタミン等について 摂取量について 栄養補助食品の必要性 実際の使用法 総括
食べ物シリーズの結語−考え方の違いを超えて−

 参考資料

成分等と含有量

1、『ネクトンS』(ネクトン社・鳥用総合ビタミン剤(粉末)(1g中)
ビタミンA(6500)、1(0.67mg)、2(1.67mg)、6(0.67mg)、12(3.3mcg)、(16.67mg)、3(10)、(6.5mg)、3(1.33mg)、パントテン酸(3.3mg)、ニコチンアミド(10mg)、葉酸(0.17mg)、メチオニンリジンアラニンアルギニンアスパラギン酸シスチングルタミングリシンヒスチジンイソロイシンロイシンフェニルアラニンプロリンセリントレオニントリプトファンチロシンバリンカルシウム亜鉛マンガンコバルトヨウ素
 
2、『デミックス』(小鳥の友社・小動物用滋養飲料(液体)
ビタミンD2B1B2B6B12E各種アミノ酸各種ミネラルニコチン酸アミドタウリンブドウ糖白糖等
 
3、『カルマグバード』(現代製薬・小鳥用総合栄養補助食品(液体)
カルシウムマグネシウムビタミンA126D3Eナイアシンパントテン酸イノシトールタウリンニンニククロレラCPPトレハロース
 
4、『ポポンS【乳児用】(人間用総合ビタミン剤(液体)(1mL中)
ビタミンA(1300IU)、ビタミンB1(1mg)、ビタミンB2(1mg)、ビタミンB6(0.8mg)、ニコチン酸アミド(12mg)、パンテノール(5mg)、ビタミンC(70mg)、ビタミンD2(200IU)、ビタミンE(2.5mg)
その他添加物として、
ジブチルヒドロキシトルエンブチルヒドロキシアニソールパラオキシ安息香酸メチルポリオキシエチレン硬化ヒマシ油バニリン香料
 
5、『エビオス』(人間用滋養製剤(錠剤)(1g中)
ビタミンB1(0.13mg)、ビタミンB2(0.03mg)、ビタミンB6(0.028mg)、ニコチン酸(0.408mg)、葉酸(9.0μg)、パントテン酸(0.028mg)、イノシトール(3.65mg)、ビオチン(1.38μg)、コリン(3.58mg)、カルシウム(2.6mg)、(0.066mg)、カリウム(19.0mg)、マグネシウム(2.5mg)、ナトリウム(1.62mg)、リン(18mg)、(0.003mg)、亜鉛(0.048mg)、マンガン(0.011mg)、食物繊維(0.275g)

 

考察にあたって参考にした文献

@ 『家畜栄養学−第3版−』(神立誠監修、国立出版1987年)
A 『改訂版基礎家畜飼養学』(亀高正夫他著、養賢堂1994年)
B 『鳥の飼育と疾病』(宮川知典他訳、学窓社1980年)

主要なビタミン等について

 何となくビタミン・ミネラル=健康というのがイメージだが、実際これをしっかり摂取しないと、人間も文鳥も体調を崩してしまう。しかし、そもそもビタミンとは多種あり、それぞれに効用も違っている。主なものは次のように整理されよう。



効 用 必 要 性 過 剰 摂 取




体内の代謝全般と特に眼の機能に関与する。 不足すると眼や皮膚、生殖その他に障害や発育不全を引き起こす。 脂溶性のため過剰分は排泄されず、他のビタミンの吸収を阻害してしまう。 青菜のβ‐カロチン(プロビタミン)を摂取し、必要量が体内でビタミンAに転換される。




B
1
炭水化物の代謝に関与する。 不足すると食欲減退をおこし、筋力低下、神経系障害を引き起こす。 水溶性で、過剰分は排泄されるので、問題は起きないと考えられる。 粒エサの穀物のヌカ(胚芽部分)から摂取される。




D
3
カルシウムの代謝に関与する。 不足すると骨格形成不全や骨軟化、クル病を引き起こす。 脂溶性のため過剰分は排泄されず、内臓その他にカルシウムを沈着させ、機能障害を引き起こす。 基本的に動物性なので経口摂取する機会は少ない。紫外線を浴びる事により体内形成される。




骨格の構成成分。 ビタミンD3同様の現象を引き起こす。産卵障害の基ともなる。 過剰というより、リンとの摂取バランスが崩れると、吸収されなくなってしまい、欠乏症状を起こす。 文鳥の場合はボレー粉やカトルボーン(イカの甲)で摂取される。

 

摂取量について

 効用がわかったところで、いったいどれくらい摂取するのが適当かわからなければ話にならない。ところが、文鳥の適量ははっきりしないのが現状だ。仕方ないので参考値から類推してみることにする。

摂取
10g
 ビタミンA   標準50(IU)  人工79   比較40 
 ビタミンD3  標準10(IU)  人工8  比較5
 カルシウム  標準0.5(%)  人工0.37  比較0.34

※ 「標準」はインコ・スズメ目の摂取標準としてHP『飼鳥の医学』が紹介している数値。「人工」はラウディブッシュ社のペレット「維持食」の数値。「比較」は参考文献Aの家禽の「要求量」中最も高い産卵鶏の数値(P285家禽の養分要求量、『日本飼料標準』よりの抜粋)。なお、それぞれを10g中に置き換えた。

 どれも大差はないものと思う。「標準」がD3とカルシウムで上位なのは、数値から見て概算的なものだからなのかもしれない。「人工」のA上位は多少過剰でもD3よりは問題はないとの判断ではなかろうか。「比較」は栄養の必要な特殊な場合ですらこの数値だから、他の2つがすでに十分量であることの証明となりそうである。

 とりあえず、上記の範囲内でやや控えめに、ビタミンA50、ビタミンD37、カルシウム0.35としておく(100g中ではA500IU、D370IU、カル0.35。そして、実際文鳥が食べる量はせいぜい8g程度だと思うので(配合エサ5g、青菜2g、その他1g。ただし、いろいろ偏差があるはずなのであくまでも目安)、この80%を文鳥の一日摂取標準としておきたい。

文鳥の一日摂取量の目安
 ビタミンA 40IU  ビタミンD3 5.6IU  カルシウム 28mg 

※ 例えばこの数値を満たそうとすると、ビタミンAのため小松菜を2g以上食べた上で、ビタミンDのために煮干で1g程度毎日摂取しなければならない。実際の飼育者サイドから言えば、小松菜を毎日2g、約1枚超を食べることは少ない(日によって違う)。また煮干1gとは、4cm以下の小さなもので3個ほどの量だが、そんなには絶対に食べない。まったく食べないことも多いくらいだ。そもそも、文鳥飼育に動物性たんぱく質を必要とした歴史はどこにもない。実際にこれが生命維持に必要であれば、飼鳥はペレットが出現する以前に全滅していたに違いなく、さらに言えば、自然界に穀類を主食とする鳥は存在できなくなる。つまり、ペレットの栄養添加量をも決めるはずの「科学的」な目安自体が、穀物を主食とする鳥の実際の必要量より、特にビタミンDについて過剰となっている可能性が考えられ、もう少し慎重であった方がよいと思う。
 そこで種がまったく違うので単純な比較は出来ないものの、それなりに科学的裏打ちのありそうな人間の1日の摂取量目安
(必要最低〜許容上限)を参考にあげれば、ビタミンA2000〜5000IU、ビタミンD100〜2000IU、カルシウム600〜2500mgとなっている。これを単純に体重比で2000分の1(人50kg文鳥25g)とすると次のようになる。ビタミンA1〜2.5IU、ビタミンD0.05〜1IU、カルシウム0.3〜1.25mg。これなら、青菜を一口飲み込む程度、ボレー粉を一回かじる程度で大丈夫そうだ。実際、穀物だけで問題なく生活している文鳥が存在することを考えれば、生活を維持する必要最低量としては、こちらの数値のほうがよほど現実的な気がする。〔2004・6〕

 

栄養補助食品の必要性

 B1(チアミン)について考えていないが、文鳥の場合、普通に食べる粒エサ、その穀物のヌカ部分はビタミンB1などの給源となるため決定的に不足しないはずで、また水溶性のため過剰分は排泄されると考え省いた。
 もっとも、江戸時代の日本で豊作の年に脚気が増えるといった話や、精米を兵糧とした明治時代の陸軍に脚気が続出したのは、精米してヌカ部分を除去した白米ばかりを食べたためのビタミンB
1などの不足が原因、というのは有名な話なので、精米に類するからむきのエサを使用する人は、少し留意した方が良いかもしれない。
 こうした一般的な飼育法での実際面の話で考えるのであれば、Aは
小松菜を一枚以下(一枚4gで72IUだが、βカロチンから効率は人間と同じではないのでさらに微量でも摂取量が満たされる可能性がある)、カルシウムはボレー粉1g以下で摂取できる(ボレー粉は40%程度がカルシウム)。従って、本来はこの面で不足はあまり考えられない(産卵期のメスは別)

 問題はビタミンD3、これは動物性の食品に由来するので、文鳥の普通の食事では摂取できない。唯一給源となりうるのは、アワ玉にまぶされた鶏卵の黄身くらいであろう。しかし、黄身はかなりのD3を含む食品だが、アワ玉にまぶすくらいの量では、それだけで十分に摂取する事は出来そうにない。
 D
3は紫外線を浴びる事により体内で形成できるので、日光浴をさせている限りは問題とならないはずだが、それでも紫外線も弱まり日光浴の難しい冬季は問題があると言えなくもない(その代わり冬にアワ玉で補完しているとも言えそうだ )。まして日光浴が出来ないとなると補給した方が無難とも見なせる。
 さらに窓ガラスは紫外線をほとんど通さないとされている
(参考文献@P75)。個人的には窓際に置いたままで問題が起きていないので、文鳥のような小鳥では窓越しの紫外線程度でも大丈夫な気がしないでもないのだが(薄ガラスでは紫外線を完全に遮断できない)、我が家の場合は、ビスケットやら煮干といったものを微量ながらかじっているので、その辺で適当にバランスを保っているのかもしれない(煮干はD
3を多く含む食品で1gで7.3IU)。しかし、これは一般的に薦める勇気はない。
 とりあえずたまには日光浴をさせ、日光浴の無理な冬季には少しアワ玉も与えてみるくらいの対応は十分に必要であり、それでも不足する可能性は残るので、理屈の上では
栄養補助食品の必要性は高いものと思われる。

※ その後、文鳥においてビタミンDの必要量は小さく、これへの配慮はあまり意味がないと考えるにいたっている。(『文鳥問題21』)(2005・8)

 また当然、ボレー粉嫌いや、青菜嫌いの一つの対策として、導入するのも無理はない。

 以上のような、通常の食事とビタミン等の基本的な関係を踏まえて、次にそれぞれの製品を使用するものとして、実際面で検討してみたい。

 

実際の使用法

 文鳥に摂取させる方法として、飲水に混ぜることが一般的に行われているが、それには一体どの程度一日に水を飲むのかを明確にしておく必要がある。なぜなら、もし飲水量が2mlが4mlになっただけでも、摂取量は2倍になってしまうのである。この点で「少し」という人間の主観は危険といえよう。

 とりあえず参考文献Bに、セキセイインコの一日の飲水量を2〜3mlとされているのが参考になりそうだ(P78)。むしろ、この飲水量が基準となって用量が決められている気配すらある(ネクトンSは約250倍に希釈するように書かれているが、この希釈水を2〜3ml摂取すると、ビタミンAは約52〜78IUと的確な数値となる)
 しかし、この飲水量は平均であり、実際は0.05〜10mlと偏差はかなりあるともされている。さらにセキセイインコに比較すれば、動作が各段に機敏な文鳥は、より飲水量が多い印象もあり、飼育環境によっても偏差は大きいものと思われる。
 従って、この点は使用者が一度は確認して調整した方が良いかもしれない。ただここでは、計算の利便性のため、一日
5ml≒5gとして考えていく事にする。また使用する容器は小さい半月型のもの(2つ入りの大きな方)で25mlほどの水が入るので、これを使用するものと仮定しておく。

 

1『ネクトンS』
・・・ドイツ製の鳥用総合ビタミン剤で、たぶん世界的に著名な存在。さすがというか、総合の名が示す通り、ビタミンはすべて網羅し、さらにアミノ酸類にミネラル類まで含む強力な内容となっている。
 しかし含有量を見る限り、ビタミンAが十分であるのに対し、ビタミンD
3は過少ではなかろうか?また説明書によれば、500mlに2gを溶かすようにあるが、動物園ではないのでそのような量は家庭では必要としない。また説明書に「与えすぎても害にはなりませんので、用量が正確でなくても、ご心配ご無用です」とあるが、これは大胆な発言と言わざるを得ない。多少は大丈夫でも、多大の過剰はやはり危険であろう。どうも少し説明書には問題ありそうだ。
 ともあれ、小型の半月エサ入れに入った水
(25ml)
0.05g(耳かき1杯くらいか)入れると、ビタミンAの想定必要値50IUを超える65IU程度が摂取できる。一方D3は表記どおりなら0.1IU程度にとどまる。つまりこの製品はその他必要栄養素も多く含む事で、補助的、滋養的なものではあるものの、基本的にビタミンA剤と考えるべきであると思われる。従って他のビタミンA添加物との日常併用は厳禁とすべきであろう。
 また強力なAの効力により、少し多めにするだけでビタミンA不足の文鳥に即効があるものと思われるが、それを常時続けるのはやはり不適当で、毎日使用する場合は
耳かき1杯以下が無難なところであろう。

 なお、某大型ペットショップでは35g1800円で売られていた(買っていないけど…)。これを上記の使用法で一羽に使用した場合、ざっと700日、2年程度はもつ計算となる。一日約1.6円と考えるとかなり安価といえる(ただし特に夏季は変質してしまうため、途中で取り替えた方が良いらしいので、このようには節約できないかもしれない)。

 

2『デミックス』
・・・安価に市販される事もあり、文鳥飼育者の中で使用する人の話をよく聞く。しかし、箱の中に説明書もなく、消費期限もなく、成分も列挙されるのみで含量は分からない。したがって、詳細に検討することは出来ないが、ビタミンDはD
2なのが問題となるかもしれない。なぜなら鳥類ではビタミンD2は有効ではないらしく、参考文献@によれば、ニワトリではD2はD3の3%の効力しかないという(P78、哺乳類では変わらない)。つまり、この薬品によって、文鳥にビタミンDを補給することは出来ないものと思わる。
 以上の点から、個人的にはブドウ糖や白糖によって、ちょっとした体調不調時の、一時的な滋養効果を期待して使用するのに適したもので、毎日添加しつづけるのには抵抗を感じる。毎日使用する場合は、あまり薬効などとは考えず、あくまで補助的なものと割り切って、普通の水入れに数滴
(つまり用量より薄く)といった、特別な必要性はないが
「何となく」使用するものとして、手ごろな存在といったところではなかろうか。

 なお、この商品は通販の帳尻あわせのために購入し、現在未使用のまま冷蔵庫の中に眠っている。調子の悪くなったものに気付けとして使おうという魂胆だが、結局使う機会はないかもしれない。某大型ペットショップでは50ml250円で売られていた。これはずいぶん安いのではなかろうか。一体標準価格はどのくらいなのだろう。

※ 穀物主食の飼育でも、繁殖期以外はビタミンDをほとんど摂取しないですんできたことを考えれば、日常の補助的総合ビタミン剤としては、この程度のビタミンD添加量で良いものと考えるようになった。(2005・8)

 

3『カルマグ・バード』
・・・「健康補助食品」とされるもので、栄養成分量は不明だが、いろいろ入っている。宣伝文句をそのまま書くと、「健康充実・卵殻と骨格強化」を目的としているようだ。したがって骨格形成に関与するミネラルのカルシウムとマグネシウムを配合し、「カルマグ」なのだろう。さすがに動物医薬品メーカーだけあって理屈が通っている。とすれば、その目的意識からすると、問題のビタミンD
3も割合意識的に多めに配合されているかも知れない。
 またメーカーは「小鳥用健康補助食品」と位置付けているのだから、過剰配合の心配はおそらくないものと思われる。したがって、やはり補助的に、つまり
手軽に使用するにはちょうど良い気がする(含有量が分からないので、過度の期待は出来ない)
 メーカーの適量にあわせる限り、小型の半月エサ入れに入った水
(25ml)に0.5(約12、3滴という)〜1ml、夏に0.5ml、冬に1mlといった感じにするとメリハリがつきそうだ。

 なお、これは某大型ペットショップで50ml530円だった。同社の製品にはさらに一般的で安価な『カルビタ』があるが、新商品(?)のこちらを購入した(したがって『カルビタ』についてはは知らない)。産卵期にメスが調子がおかしくなったら使おうとの魂胆だ(しかし、最近の様子を見ると、これも登場の機会はないかもしれない)。上のように省エネな使い方をすると、50〜100日持ち、一日5円〜10円のコストとなる。

 

4『ポポンS』
・・・「ポポン、ポポン」とCMが流れている人間用の総合ビタミン薬だが、鳥用のビタミン剤の代替品として用いる人がいるらしい。確かに容易に手にはいる利便性は魅力的だ。
 しかしこの薬に含まれるビタミンDは『デミックス』同様D
2なのでこの面では期待できない(成人用はD3だが糖衣錠なので利用は難しい)
 また、この薬にはビタミンCがかなり含まれているが、このビタミンは鳥類は内臓で生成できるので
(人間は出来ない)、意識的に補給する必要は特にないと思われる。
 ようするに、この薬品を文鳥に使用して効果が期待できるのはビタミンAとB類。つまり青菜を食べず、粒エサで偏食傾向のある文鳥の補助としては有効なものとなりうるものの、本来人間用のものであるため、小鳥にとっては
余計な部分が多すぎるように思える。なるべくなら使用は避けた方が無難かもしれない。

 適量は小型の半月エサ入れに入った水(25ml)に5滴入れると(1滴≒0.04ml)、ビタミンAの想定必要値50IU程度になる。B類は水溶性なので多くとってもまず問題ないようなので、これが上限という事になろうか。ビタミンA剤と割り切って使用した場合、1、2滴では十分とは言えないようなので(ただし飲水量による)、その場合は週に一度以上青菜も併用した方がよさそうだ。

 

5『エビオス』
・・・人間の著名な薬で、いろいろ入っていて、その組成も確認できるので安心感がある。主要ビタミンとしてはB
1だけだが、その他微量のビタミン類、なかなか摂取しづらいミネラル類が網羅的に含まれており、まさに栄養補助剤といった感じがする。つまり人間と同じく、滋養のために添加するものと考えれば、大変に有意義だと思われる。
 実際の使用では、すり潰して、粒エサと混ぜあわせる
(シャッフルする)という。その量については、B類は基本的に水溶性なので、まず大量に添加しない限り(あまり多く添加すると糞が赤くなるという話を見かけた気がする)は問題ないはずだが、用量は使用者に経験値を聞いてマネをするのが無難であろう。
 しかしビタミンAやDを含まないので、この点は期待できず、全く別に考える必要がある。

 

総括

 普通に粒エサとボレー粉と青菜、さらに塩土といった飼育をしているのであれば、文鳥の場合、本来不足する可能性のあるものは、とりあえず動物性のビタミンD3程度だと思うのだが、上で紹介した中では、その補給目的に沿ったものは見出しにくい。あえて挙げれば、『カルマグ・バード』がそれに近い印象だが、それぞれの栄養素の含量が不明なので過信は出来ない。したがって、アワ玉(卵黄)のようなD3を含む飼料を組み合わせながら、補助的に、まさに「健康補助食品」と考えると気が楽であり、適当といえるかもしれない。
 他の栄養素は、普通の食事で足りているはずだから、薬効と言うより滋養を目的に考えれば、多くの栄養素を含みながら、
不必要なものをあまり含まない『エビオス』がもっとも適しているような気がする。主食がむきエサであれば、ヌカ部分のビタミンB1の減少が考えられるので、さらにその必要性は高まるかもしれない。またそうした場合、より利便性において優れている水溶液の『デミックス』使用も検討されよう。

 本来ビタミンAは青菜からβカロチンの形で摂取すべきで、万一普通に使用される小松菜を食べない文鳥であっても、チンゲンサイ、トウミョウ、サラダ菜などを試してみる余地はあり、すべて拒絶しても、粉末状のものやペレット状の食品で代替する選択肢もある。しかし、より確実な方法として当然ビタミン剤の使用は有効であろう。
 明確に
ビタミンAの摂取を目的とするのであれば、上のものの中では『ネクトンS』が適当に思える。これを使用する限り、A不足はまずありえず、他のさまざまな栄養素も補助的に摂取できる利点がある。しかし、入手し難がたかったり(ちなみに日本の輸入販売元のHPはコチラのようだ)、さらに小鳥の飼育は、禽舎での多数飼いが主体であるらしい(小学館『飼い鳥』1985年、柿澤亮三氏まえがき)ヨーロッパの商品だけあって、少量で使用するには不親切な仕様となっているのは難点といえるかもしれない。
 その点では、添加に容易な『ポポンS』を代替させる余地もあるかもしれない。しかし、人間用にかなり含まれているD
2の存在は気がかりであり、さしせまった理由がなければ、これはやはり避けた方が無難であろう。

 こうした補助食品を日常のエサに組み入れてみるか、副食的な食品を考えるか、もしくは根本的にペレット導入に踏み切るか(ペレットはそれ自体が総合食品なので、基本的には「補助」を必要としないはずの存在。もし補助食品と併用したければ何倍にも薄めたり日にちをおく必要がある)、現在はいろいろと選択肢があるわけだ。あとは個人個人の選択であり、また、うまくいかなければ違った方法も考えれば良いといったものと思う。
 個人的にはなるべく栄養素は、いろいろな食品から文鳥自身が食べて摂取してもらう方針だが、病気になったり、老鳥になれば、エサの殻はむきづらくなるだろうし、ボレー粉など食べられないかもしれないので、そうした時には臨機応変に対処したいと考えている。

 

食べ物シリーズの結語

 以上のような内容でも、すでに愛用している人の中には非難がましく受け取る人もいるかもしれない。しかし、薬剤やペレットの使用などに対する姿勢の相違は、あくまでも方法論の違いなので、何が絶対的に正しいといったものでもなく、それによって敵対するといった性格のものでもないと考える。誰もが同じ結論に達する必要はないのだ。
 このHPの内容も、参考になりそうな部分だけつまんでおけば良いものと思う
(ただ勝手な解釈をしてもらっても、私の関知するところではない)。せっかくいろいろな選択肢があるのだから、情報を集め、固執せずに、自分と自分の文鳥の場合、何が必要で何が足りないか冷静に見定めた上で、それに適した対応をしていけば良いのではなかろうか。
 信じてもらえそうもないが、私は本来、食べ物の中身を細かに点検する性格ではない
(小松菜の農薬など気にしないし、おやつも苦しからずだ)。しかし、他人に「粒エサ中心が一番だ」という立場を表明する(ように受け取れる内容を書く)には、いろいろと理論武装する必要があると考えている。そしてこれは「ペレットが一番だ」「補助食品は必要だ」といった立場に立つように受け取れる文鳥系のHPにも、ある程度必要な態度ではなかろうか?エサの話を云々するのであれば、
抽象論ではなく具体論を示し、それぞれの利点や欠点を明らかにすべきだと思う。それによって、互いの問題点も明確になり、妙な派閥意識を持たず、方法論としてお互いを認めていく事ができるように思う。

 せっかく文鳥が好きだと言う共通点を持つのに、方法論などでいがみ合うのはつまらない。方法論の相違などは、お互いに感情的にならず、基本的に許容しながら切磋琢磨していくべきものだろう。切磋琢磨の議論から文鳥にとってより良い方法を見つけ出せれば、「何とか派」の枠を超えた文鳥愛好者にとってこんなに喜ばしい事はないだろう。新しい世紀には、そのような前向きな議論が普通に展開出来ることを願って止まない。


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