【参考】 病気・外傷への対応例
あれこれ病名を考える暇があれば動物病院に行くのが一番ですが、参考までに、一飼育者に過ぎない「私」が、その経験や知識から、文鳥の体調変化をどのようにとらえ、今現在どのように対応しようと考えているかの、概要を挙げておきます。 |
≪おもに参考にしている本≫
『小鳥の飼い方と病気』 |
『手乗り鳥の健康の本』 |
『アニファブックス文鳥』 |
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手乗り鳥の健康の本
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少し古い本で絶版になっていますが、中古でも是非入手したい本です。 |
図や写真が豊富な事例集といった感じの本でした。 |
飼育書ですが、巻末にかなり詳しい病気の解説が載っていました。 |
病気への対応
起こりやすい症状と対応
【症状】 くしゃみや鼻水、鼻づまりを起こし、体をふくらまし加減にしている。
→ 人間の風邪に相当するものと考える(一般的に鼻炎、副鼻腔炎と呼ばれるものも含まれるだろう)。まずは保温(30℃くらい)し、改善しなければ早めに動物病院に行く。抗生剤などの投与で効果がなければ、いちおうカナリアに見られるという気嚢ダニの感染の可能性も考えたい。
【経験無し】
※症状が慢性化すれば、風邪というより副鼻腔炎(蓄膿症)と見なすことになるだろう。
なお、100g以下の小型の鳥では、注射でショック死を起こすこともあるとされているので、まして25g程度の文鳥では、よほどの緊急な必要性がない限り注射は避けるべきである。
【症状】 クチバシが薄くなり、体をふくらまし加減で、下痢をしている。
→ 細菌性腸炎を疑いつつ、まずは保温(30℃くらい)し、市販の鳥用胃腸薬『トモジン‐ネオ』(現代製薬、抗生物質ではなく細菌抑制に有効な化学合成薬【サルファ剤】)を与えて回復を待つ。当然ケースバイケースで動物病院で受診し、細菌性ならおそらく抗生剤の投薬、検査でカンジタなど真菌性の病気とわかれば、抗真菌薬の投薬をすることになる。
【経験談】
1997年にヒナ換羽前の若鳥を一羽亡くしてしまった原因は、細菌性腸炎であったように思える。早急な対応をとらなかったのが悔やまれる。
消化器系の問題 【症状】 嘔吐、下痢、未消化便、血色不良、体重減少、食欲不振、倦怠などなど |
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病原 |
概要 |
予測される診断と治療法 |
予防 |
細菌 | サルモネラ菌や大腸菌が増殖した飲み水や食べ物を摂ることで発症する。いわゆる食中毒。 | 光学顕微鏡で真菌や原虫の増殖が確認されなければ、これを原因として抗生剤投与となる。 | 飲み水やエサは毎日取替え(特に水分のついたエサは危険)、青菜は十分洗浄して与える。 |
真菌 | カンジタなど常時体内に存在する真菌が、体力低下時や抗生剤の長期使用時に急増する(体内の細菌が減ることで真菌が増えてしまう)ことで発症する。 | 光学顕微鏡によるそのう液や糞便検査で、大量に確認されれば、抗真菌剤などの投与となる。 | 換羽など体力の低下時には十分な栄養をとらせ、老齢になったら保温に留意する。また抗生剤の長期投与は獣医師と相談して慎重に進める。 |
原虫 | コクシジウムやトリコモナス原虫に感染していても、普通成鳥では発症しないが、体力が低下すると発症することがある。 | 光学顕微鏡によるそのう液や糞便検査で、確認されれば、各種それに適した薬剤の投与となる。 | 外部から鳥、特にヒナを迎える時は、感染している可能性を考え、他の文鳥との接触をしばらく避ける。 |
※健康なおとなの文鳥であれば、真菌や原虫が検査で少々発見されてもあわてる必要は無い。真菌は量の問題、原虫は駆除した方が安心ではある程度の話と言える。
【症状】 クチバシが黒味を帯びるほど真っ赤となり、動作が鈍い。
→ 糖尿病的状態と考え、肝臓、腎臓などの異常を疑う。栄養過剰や運動不足があれば改善、動物病院に行くかどうかはケースバイケースで考える。
【経験談】
脚を骨折した文鳥が、予後の運動不足から糖尿病的な慢性症状が出てしまった。粗食に切り替えておくべきだったかもしれない。
※私はクチバシの色などで判断するだけだが、肝臓はお腹を見れば位置や大きさを確認できるので、普段から確認する習慣をつけておけば、より確実に判断できる。
【症状】 クチバシが青紫となり、体をふくらまし加減で、呼吸の際に口をパクパクとさせる。
→ クチバシが青いのは貧血症状(チアノーゼ)なので、循環器系の異常を疑う。心臓病、肺炎、重度の気道炎、病名はわからないが、とにかく保温をし、動物病院に行くかどうかはケースバイケースで考える。呼吸器症状が出てしまうと、入院して酸素室に入れるなどの処置も必要となるはずだが、それはすでに重篤な状態と認識しなければならない。
【経験談】
呼吸器症状が表れたら、天命だと思うことにしている。
※小鳥に対しても、手軽に入院を勧める獣医師がいるようだが、環境変化がどれほど繊細な小鳥の健康に悪影響を与えるかという、根本的認識を欠いているものと思われる。私の場合は、「十分な治療」などよりも環境変化での悪化の方を重視し、何より看護も出来ずに万一の際看取れなくなることを恐れるので、いかなる理由でも入院は選択しない。
病気の知識と対応
○腫瘍
悪性腫瘍(ガン)は文鳥にも生じ、首筋や尾の付け根に出来る腺ガンが多いらしい。以前には見られなかったコブ状の盛り上がりに気がついたら、基本的には早急に動物病院に連れて行きたい。腫瘍が小さく可能な場所であれば切除、切除が不可能ならステロイド剤や免疫力を向上させる生薬(アガリクス・メシマコブなど)などの投薬で、改善をはかることになるだろう。
【経験談】
2003年5月メスの下腹部(総排泄口の上部)が膨らんだままなので、卵管炎を疑い受診。1時間ほど切開手術し調べたところ腫瘍と診断され、抗ガン薬を日に数回クチバシ横からの点滴し、メシマコブとアミノ酸粉末及びビタミン類液状剤を飲み水に混ぜて与えることとなった(術後一週間ほ処方された抗生剤を加え4500円…この病院は安すぎて基準にならない)。その後薬をもらいつつ(食欲がなくなるようなので、悪化した際にビタミンヨード剤はやめる)、体調の良さそうな時に時折受診。しかし、食欲はあったものの徐々にやせ、8月に亡くなった。
【経験談】
2003年10月、オスの首に赤いコブを視認したが、年齢や性格などを考慮し病院には行かないことにする。放鳥時にアワ玉主体の我が家流ヒナ用のエサにアガリクス、メシマコブ、スピルリナを混ぜた湯漬けエサを提供したくらいで、基本的に普通の生活を元気に続けさせた。腫瘍は徐々に膨張しホオズキのようになり、翌年8月に破裂、その傷は克服したものの、11月に亡くなった。
※私の場合は、文鳥の年齢によって対応が変える。6歳くらいまではがんばって通院し病を克服してもらおうと思うが、それより高齢だと、病と共存しつつゆったりと生活してもらうことを第一義にし、無理はさせない。
なお、隔離してカゴから外に出さないようなことは絶対にしない。出たがれば出して遊ぶ。獣医さんに尋ねれば、立場上絶対安静と言うかもしれないので、改めて訊くくようなこともしない。危険とならないよう、負担とならないように気をつけつつ、文鳥がストレスを感じたりさびしい思いをしないようにするのは、患者である文鳥のことを一番理解し、実際に看護する飼い主が考えるべき領域だと考える。
なお、尾の付け根にはイボ状の器官(尾脂腺)があるので、これを腫瘍と誤認しないように、普段はどのようになっているか見ておいたほうが良い。
○胆のう腫
胆のうの異常で、運動障害などさまざまな症状を引き起こし、時に急性、時に一年程度の闘病の末に死にいたる。お腹の中央右よりに青黒いあざのような病変が確認されるので、飼い主にも判断しやすい。文鳥が独自にかかえる病気として昔から知られているが、現在まで原因は不明のままで、治療法もないとされている。
不治の病である以上、病院に行き、一縷の望みを抱きつつ対処療法を施すか、自宅で保温などの看護で大切な時を過ごすかは、飼い主の判断次第となる。
【経験談】
胆のう腫を疑った時点でお腹を見たくない。我が家の場合は、運動が緩慢になり少しおかしいと思っていると、数日後に羽毛を膨らまし衰弱した状態となり、その後持ち直し割に普通の生活を続け、数ヵ月後に亡くなるケースが多いようだ。療養では、保温となるべく栄養を摂らせることが必須となるが(食欲は旺盛でも痩せる)、動けるなら、文鳥の「意志」を尊重したい。
○けいれん発作
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突然、キューキューと声を漏らし動けなくなったり、口を苦しそうにパクパクさせたり、もがいて羽をばたつかせるのみで飛べない様子であれば、いわゆるてんかん様発作を疑う。ただし一括されることが多いが、これはてんかん性発作、心因性発作、心臓発作と分けて考えた方が良いかもしれない。
てんかんは脳のけいれんで、特定の原因もなく突然発作を起こし、数分後には何事もなかったように正常に復する。てんかんそのものが生命を奪うことは少ないはずだが、発症すると発作は時折突発的起きる可能性が高いので、鳥カゴにはぶつかって危険となるようなものは置かないようにする。何度か同症状が起きる場合、動物病院で相談しても良いものと思う。
心因性の発作は、何かしらのトラウマがあり、その恐怖と同様の状態になった時に起きてしまうようだ。人間のパニック症候群と同じものと考えられる。例えば手でつかもうとしたり、カゴを移動させるなど、決まった行動の時に発作が起きるなら、その行動は出来る限り避けるようにしたい。
特に病気などで体が弱っている時に、心臓に異常が生じ発作を起こし死に至るのも、人間と同じだ。
【経験談】
1998年秋、産卵の影響で前年より虚弱となっていた(いつも羽毛をふくらまし加減で、つぼ巣でうつらうつらしている)メスが、放鳥時間に手の中で突然痙攣して落下、拾い上げるとすでにぐったりしており、亡くなってしまった。
【経験談】
2003年7月、突然鳥カゴで暴れる音がしたので見に行くと、オスが底でキューキューと声を出しては七転八倒している。あわてて取り出して手の中に入れておくうちに亡くなってしまった。
【経験談】
2007年頃から、ケージ内でで捕獲されそうになると、気絶してしまうオスがいる。目をつぶりじっとして動かなくなるが、放っておくと5分ほどで回復する。
また、右の写真のオス2羽は、老齢になり、ひんぱんに同様の症状が現れるようになった。
※はじめのケースは心臓発作だと思うが、2番目のケースはてんかん性だったかもしれない。あわてて取り出したことで呼吸を阻害してしまったのではないかと後悔している。発作を目の当たりにするとビックリするが、しばらく様子を見たほうが良い。3番目のケースは心因性のものと思われる。
○毛引き症
文鳥の場合羽毛を引き抜くことはせず、風切り羽(翼の羽)を曲げてしまう。原因もインコで指摘される精神的ストレスではなく、換羽その他のイライラを紛らわすため強く毛づくろいするうちに、たまたま風切りを一枚でも曲げてしまうと、その曲がった羽が視界に入りさらに執拗に曲げ続けるといった悪循環の結果と思われる。曲がった羽はお湯につけるなどすれば矯正できるが、クセになると何度でも曲げ、一日中気にしてイライラし続けるので、根元から引き抜いてしまった方が良い。
【経験談】
生涯で一度だけ曲げた文鳥と、数年間隔で2回思い出したように曲げた文鳥(ともにメス)がいるが、いずれも最終的には羽を抜くことで解決するしかなかった。なお、我が家の文鳥は風切り羽を数本抜かれても、平気で飛び回る。
※生えそろっている羽は、すでに神経も血管も通らない角質化した存在なので、切っても抜いても問題にならない。切ると生え変わるのに時間がかかるが、抜いてしまえばすぐに新しい羽の形成が始まるので、ちょっとねじるようにして抜いたほうが、早く正常に復すことが出来る。
○外部寄生虫
≪ワクモ≫
ワクモは夜間吸血するので、夜中に文鳥が落ち着かずソワソワするようなら発生を疑い、つぼ巣や止まり木、カゴ全体を熱湯消毒するなど徹底的に清掃する。それでもしきりにかゆがり、クチバシやアイリングの色が薄くなるようなら、早急に動物病院に行く。おそらく内服薬で駆除することになる。病院には行かず、市販のスプレー剤や粉末(『ノックレン』、『キクトール』)を文鳥自身にかける人もいるが、誤まって吸引させてしまうと危険なので止めておく(鳥カゴの周囲にはまく)。
≪ハジラミ・羽毛ダニ≫
ハジラミや羽毛ダニは羽毛などを食べるので、つやがなくなり、ボロボロになっているように思えたら発生を疑い、抜けた羽毛を詳細に観察する(電球にすかす、白い紙の上でたたく、虫眼鏡や光学顕微鏡でのぞく)。細かい粒々が発見できたら、市販のスプレー剤や粉末を文鳥自身にかけるのが有効だと思うが、誤まって吸引させてしまうと嫌なので、早急に動物病院に行き、外用薬などで駆除してもらう。
【経験無し】
※外部寄生虫は、ペットショップなどから新しく迎える時に要注意だが、通気性の良い鳥カゴで、普通の衛生環境を保った室内に置く限り滅多に発生はしない。従って、禽舎での多数飼育や屋外のニワコで飼育を前提とした話を小耳に挟み、過剰に不安を感じる必要はない。
また、日中体をクチバシでつついていたり、脚ではたいたりといった動作は、普通の羽づくろいとして行なわれ、特別かゆいわけではない。文鳥の行動の基本は、エサを食べるか、寝るか、羽づくろいするかなので、その点は理解しなければ無用の心配をすることになる。
○内部寄生虫
≪条虫≫
フンの中に白くてコロコロして微妙に動くものがあれば、それは腹中の条虫(サナダムシ)の体節(節ごとに分裂した体の一部)と考えられる。普通は食べるわりには太らず、たまに下痢になる程度なので、非常に有害と言えるかは微妙だ。しかし、体力が低下している時には有害になりかねないので、コロコロの体節をラップに包んで動物病院に持って行き、受診の上で駆虫剤の処方を求める。
≪回虫≫
フンの中に白くて細長いものがうごめいていたら、それは腹中の回虫の一部と考えられる。症状は条虫と同じだが、それ以上に腸炎を引き起こし危険とされているので、発見したら早急にそのフンをラップで包んで動物病院に持って行き、受診の上で駆虫剤の処方を求める。
【経験無し】
※条虫は、寄生している昆虫を摂取することで感染するので、屋外のアオムシなどを与えるのはやめたほうが無難かもしれない。回虫は感染した鳥のフンから伝染するので、他にも鳥を飼っている場合は、その鳥たちも動物病院で検査してもらった方が良いだろう。
○皮膚病
≪疥癬(カイセン)≫
おもにクチバシやクチバシの付け根が白っぽくがさつき、かゆがって止まり木などに患部をこすりつけていたら、疥癬虫(トリヒゼンダニ)の感染を疑う。放っておくとクチバシの変形なども起きるので、すぐに病院に行き駆虫剤の処方を求める。
≪はばき≫
脚、指の皮膚がうろこ状に角質化しがさつくのは、いわゆるはばき現象だ(はばき=脛巾)。老齢ならある程度仕方がないが、浮き上がるほどになると血行障害を起こすとされるので、お湯につけて少しずつはがしたい。当然、普段のビタミンA摂取を心掛けることが、予防の第一となる。
【経験談】
2012年、代謝に問題があるようで、換羽が正常でないことの多い文鳥のすね部分のウロコが、ガサガサにささくれ立ってしまった。そこで、捕まえて、指で一枚一枚はがした。簡単であった。
※換羽の前提でクチバシのつけ根がはげていることもあるので、疥癬と混同しないように注意が必要だ。たんに羽が無くはげているだけなら問題ない。
○白内障(シロソコヒ)
瞳が白くにごって見えたら白内障と考える。人間にもほとんど必然的に生じる老化現象で、水晶体がにごり、視界がぼやけ徐々に見えなくなるが、小鳥では手術出来ないので治療は不可能と考えるしかない(老化現象の場合)。進行を遅らせるために、ビタミンA・E・Cなどの摂取を心掛け、発症したら、視力が低下しても生活しやすい環境を工夫し整えたい。
【経験談】
おそらく打撲のため(ブランコを振り回すのが趣味の文鳥なので、それが当たったか?)片目の周囲が少し腫れ、腫れが引くと、今度は徐々に目が濁って輝きを失った。おそらく外傷性の白内障だが、片目は健常なので、不便はあるのかもしれないが、日常生活には大きな影響はない。
※メラニン色素が少なく、光刺激に弱いはずの赤目の文鳥(シナモン・アルビノなど)は、白内障を起こしやすいものと考えられる。これらの品種では、若い頃から直射日光には当てないようにした方が良いだろう。
メスの病気への対応
○卵づまり(卵秘)
産卵期のメスが、朝、羽をふくらましけだるそうにしていれば、卵づまりであることが多い。体質にもよるが、カルシウムなどが不足すると正常な卵の形成が出来ずつまりやすくなるので、栄養の摂取が何よりも予防となる。見た目は苦しそうだが、すぐに死につながることは考えにくいので、まず保温し自然に産卵するのを待ち、お昼ころになっても改善しなければ、動物病院に行くことを考える。
【経験談】
朝卵づまりになっても、産卵できなかったことは今までにない。むしろ、卵づまりをきっかけに虚弱体質となり、徐々に衰弱してしまったことがある。
※メスがいかにも苦しそうなのであわててしまうが、通院で衝撃を与えるより、まずは自然の産卵を待った方が無難だ。
○卵管脱(クロアカ)
産卵期のメスの総排泄口(肛門)から、血色の細長いものがぶらさがっていたら、卵管脱と見なす。卵がつまるなどしていきんだ結果飛び出した輸卵管を、つついたり引きずったりして損傷させないうちに、ただちに動物病院に連れて行き整形してもらう(押し込む、もしくは外科的に縫い止める)。
【経験談】
2011年元日夜、手の中に潜り込んだ発症、右の状態となっていた。やむなく金属製の耳かき状の棒で、根元の方から少しずつ押し込んだ。その後再発せずに済んだ。
※同一症状に見えるものとして直腸脱、つまり脱腸があるそうだが、当然ただちに動物病院で整形してもらわねばならない。
○卵管炎
産卵期のメスの総排泄口(肛門)より上あたりが、ぽっこりとふくらみ、それが産卵が終わっても治まらなければ卵管炎を疑う。未形成卵などが輸卵管に滞留して炎症を起こし、他の合併症を起こす危険があるので、早急に動物病院に連れて行く。
【経験談】
外傷の影響から、片目が白内障になってしまったオスがいる(打撲的に片目の周囲が少し腫れ、腫れが引いてしばらくしてから徐々に目の輝きが鈍くなった)。片目は問題ないので、少し不便そうだが、カゴの中での日常生活には、さほど支障はなさそうだった。ただし、遠近感がつかみづらくなるのか、飛行後の着地点が定まらず、バランスも悪くなり、あまり動かないようになってしまった。
※産卵させる以上は、正常の産卵がしやすいように、ボレー粉、アワ玉、青菜など、栄養面に十分留意したい。
※重度の場合、輸卵管摘出という方法も考えられるが、私は選択しない。輸卵管摘出後は発情抑制のため内科的な治療(ホルモンの抑制)が継続的に必須となるが、切除すれば全復は見込めず、その状態でいつまでも環境変化を強いる気にはならないからだ。
ヒナの病気への対応
○そのう炎・食滞
お店で買ってきたヒナのそのうが赤く充血し、嘔吐し、そのうのエサがいつまでも(一晩たっても)消化しなければ、トリコモナスの感染による症状と考える。とりあえず保温を十分にし、早急に動物病院に行く。薬をもらい、食べない場合は強制給餌となるので、それらの方法を実演して見せてもらったほうが良い。
※お店でヒナを購入する際は、しっかり見て、異常があるヒナが一羽でも見受けられたら、購入は控えるべきだ。
数時間前の湯漬けエサなどを与えると、細菌性の食中毒を起こし、同様の症状が表れる恐れがあるので、湯漬けエサはその都度つくり、残りは捨てねばならない。
パウダーフードで餌付けする場合、そのうにエサが無くなる前に次のエサを与えると食滞を起こすとされている。一方アワ玉主体のエサの場合、前のエサが残っている方が普通であり、何ら問題とはならない。また、アワ玉とパウダーフードを同量程度混ぜると、食滞を起こしやすいとされているので注意したい。
【経験談】
小学生の頃なので飼育の主体は父親だが(苦情を言われても困る)、普通のムキエサ(カナリアシードは殻がついている)を湯漬けしたものだけで、自家繁殖のヒナに餌づけをしていた。かなりの確率で死なせてしまっていたのは、やはり食滞なり消化不良であったろうと思う。
≪補足≫ トリコモナスについて 現在お店で売られている文鳥のヒナに、トリコモナス原虫の感染が多くみられる。トリコモナスは成鳥では感染しても症状が現れない程度で危険性は少ないが(そもそも健康であれば感染しない)、免疫力の弱いヒナの時には容易に感染し、真菌やコクシジウム原虫感染症などとは比べ物にならないほどの致死率を示す。
※一部に誤解があるが、特別な病原性を持つ真菌などは稀で、文鳥で問題とする人もいるカンジタ菌(「カビ」と表現されることも多い)も、ごく普通の常在菌と言って良い。つまり、カンジタで病気となるとすれば、その有無ではなく量なのである。もし量が多くなれば当然治療しなければならないが、常識的に考えれば、常在菌のバランスがくずれ真菌が増加した原因こそが真の問題で、文鳥のヒナであれば、まずはトリコモナスを疑うのが妥当だと思う。 |
○栄養性脚弱症
生後3週間以降のヒナの脚が内側に曲がったり、指が閉じて開かないなどしていたら、栄養性脚弱症と見なして、餌付けエサの内容を改善しつつ、なるべく動物病院に連れて行く(特に脚の曲がりがひどく良化しない場合)。一括されてしまうことが多いが、仔細に見れば、ビタミンB1の不足による脚気(かっけ)、ビタミンD3の不足によるクル病(骨軟化症)、カルシウム不足による骨格形成不全の別があると思われる。ただのムキアワのみで餌付けをすれば、この3つがすべて当てはまることになってしまうので、注意しなければならない。
【経験談】
小学生の頃なので飼育の主体は父親だが(苦情を言われても困る)、1羽脚が曲がりトドのように這い歩くヒナがいた。飼育書にある脚弱症だからそえ木しないといけないなどと、姉と相談しているうちに亡くなってしまった(飼育書を見ても理解出来ていなかったのは明らか)。あれは脚気による心臓発作ではなかったかと思う。そえ木の心配をする前に栄養を考えるべきだったのだ。
※この栄養不足の危険を避けるため、パウダーフードのみでの餌付けを推奨する意見があるが、そもそもムキアワのみの餌付けなど論外であり、それを根拠に従来の方法を否定するのはおかしい。文鳥の場合、ムキアワをアワ玉にするだけでも栄養不足の危険はかなり減少し、まして、それに総合ビタミン剤やビタミン類が添加されたヒナ用添加食品を混ぜるといった推奨されてきた処置をとる限り、栄養面の問題は存在しなかったのである。
もし飼い主に、ビタミン剤など人工的なものを避けたい志向があっても、ヒナの栄養は十分に補える。例えばタンパク補充にきな粉(大豆)やフナ粉(魚)、B1補充にぬか(米)やビール酵母(大麦)、ビタミンD3補充に卵の黄身やフナ粉(塩分控えめの煮干し粉でも良いだろう)、カルシウム補充にボレー粉末やカトルボーン粉末、・・・こうした一般的で簡単に手に入る数ある選択肢の中から少しずつ混ぜれば良いだけなのだ。また、それらがいろいろ混ぜられた野鳥用のすり餌を利用しても良いから、案外簡単と言えよう。
○腱はずれ(ペローシス)
ヒナの脚が根元から横に曲がりハ行(ハの字型のガニ股状態)していれば、腱はずれと見なせる。孵化3週間目までなら矯正も可能とされるが、孵化2週間程度のヒナは正常でもガニ股状態なので、重度に開脚していなければ判別は難しいと思われる。とりあえず、3週間手前くらいに開脚の具合を確認し、根元から横向きになっているように感じたら動物病院へ行き診てもらう。原因は卵段階での栄養不足とされているので、産卵期の栄養には留意したい。
【経験談】
2003年秋に生まれたヒナの脚が、異常にハ行しているのに気づいたのは、孵化3週間以上経ってからであった。ハ行が軽度だったので発見が遅れたのだが、ガニ股で平たいところでは脚が流れてしまう以外は、元気に育ってくれた。止まり木に脚が流れないように溝を彫ってある程度で、産卵もし普通に生活しているが、加齢とともにどうなっていくか心配ではある。適宜、不便が少なくなるように考えていきたい。
その他の病気への対応
○共通感染症
文鳥と人間に共通する病気のことだが、世間一般に誤解や思い込みが極めて多い。文鳥問題20に指摘したが、科学的・論理的には、ほとんど気にする必然性が無いと言える。生き物を飼っている者として、正しい知識を身につけ愚かな噂話に踊らされないようにしたい。
【経験無し】
○未知の病気
インコには、古くは「コロ」と呼ばれ、今はPBFD、PCDと呼ばれる免疫不全症あり、全身が脱羽し、ちょっとした病気の罹患が死につながってしまう。幸い、文鳥などフィンチ系の小鳥はこの病気に感染しないとされている。しかし、トリコモナスなど本来インコに多かった病気が、文鳥にもまん延しているような現状を見ると、異種間感染の可能性が否定できそうに無く、似たような病気の一般化もあり得ないとは言えないと思っている。他種の鳥類との接触は慎重にありたいと願う。
【経験無し】
≪閑話≫ 飼い主の心理的病気への小言 衝動買い症候群 手間ひまかけたい症候群 |
≪参考≫ 鳥カゴのバリアフリー化 病気などで衰弱してしまうと、止まり木での移動が困難になります。そうした時は、いろいろと生活しやすいように環境を工夫してやらねばなりません。我が家の場合は次のようにしてバリアフリー化しています。
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外傷への対応
○出血
マキロンなどで出来る範囲で止血・消毒する(マキロンはなめると有害なので、傷口消毒のため長期使用するならヨード製剤のイソジンきず薬などの方が無難)。貧血状態でぐったりしていれば、保温の上でスポーツドリンクを数滴点滴、場合によっては動物病院へ連れて行く。
【経験談】
1998年、他の文鳥にかまれたらしく、気づいた時には、一本の指が深く傷つき出血していた。消毒したものの、その後脚が熱をおび腫れてきたので、傷口よりやや上の部分を糸できつくしばった(今ならこのような素人処置をせず動物病院に連れて行く)。指が一本剥落したものの、その後回復した。
【経験談】
2000年、どこかから家に侵入したヘビに、鳥カゴの文鳥が大腿部を噛まれる。出血はほとんどなかったが、脚が開き歩けなくなったので、骨折を疑い動物病院へ行く。幸い裂傷があるものの骨折ではなく、傷にヨードチンキを塗ってもらい、化膿止めのため抗生物質を頂く(初診料1200円、薬代2100円、検査料300円、合計3780円)。一週間程度で完治した。
【経験談】
2004年、首筋に出来ていた腫瘍が巨大化し破裂、大量の出血となった。傷口周辺の羽毛を切り、マキロンで消毒したもののあきらめていたが、傷口はふさがり持ち直した。
※大昔には兄弟げんかで脚が一本になってしまった文鳥がいた。出血を大げさに考える人も多いが、少々の出血では文鳥の生命の危機にはならないと言える。
○骨折
片翼がだらりと垂れて飛べなかったり、片脚が広がり歩けない様子で痛がっていたら、一晩は様子を見て改善しなければ、自分でそえ木をして治療する自信はないので、早急に動物病院に連れて行く。
【経験談】
2003年春、産卵期終盤にメスがいざリ歩くような姿勢でバランスが取れずにいる。一晩様子を見ても改善しないので、動物病院に連れて行ったところ、触診で脚の付け根あたりの骨折を指摘され、金具で固定の上ギプスをして頂いた(抗生物質とヨードと栄養剤が出る)。バリアフリー化した鳥カゴで約一週間生活後に再診、骨がつきギプスをとって頂き治療終了(2回目は無料で計3500円…安すぎ)。2ヵ月ほど骨折した脚をかばっていたが、その後は平常に戻る。
※文鳥で治療できる骨折は、指を含む脚部と翼の骨折であり、これは経験のある獣医であれば触診で部位の特定は容易と思われる(ヘビに噛まれた際の病院もこの骨折の際にお世話になった病院もレントゲン検査はしなかった)。最近すぐにレントゲンを撮ろうとする病院もあるようだが、その対応は文鳥に負担となるばかりで意味があるのか疑問である。
○火傷
すぐに水で冷やす。羽毛の無い部位ならごく薄く軟膏(オロナイン)を塗る。ひどければ直ちに動物病院に行く。
【経験無し】