嘉彦エッセイ


第11話(2005年2月掲載)


        



  『努力に勝る天才なし』


 よく『VEは時間が掛かる』と苦情を聞く。これにはいくつかの不満が入っているのである。やらされている不満。不慣れなためにぶつかった壁を打ち破れない不満。プロセスの先が見えず自信がわかないストレス。これらのフラストレーションの塊が、「時間が掛かる」に変わって来て、周囲にも特に上位者に成功体験者がいないと、支援さえももらえずしぼんでしまう。なおのこと成功実績の乏しい上司からあおられるとフラストレーションは更に高まってしまう。

 指令を出したトップ(多くの方々はVEの本質を知らず単に原価低減=CRの代名詞と思っている。困った問題だが、まずは置いておいて)は、VEをやればコストは下がると思い込み、指示したら終わった気分でヤレヤレ!の一点張り。このギャップは大きい。多くの管理技術に共通した問題点である。うまく行くケースはトップの中に経験者や信奉者がいる場合に限る。一般的には下への押し付けとなり、時間が掛かるとか、人がいないとかが返ってくるのである。

 でも不思議なことがある。スキーやゴルフ、テニスのうまい人が多くいる。スキー、テニスは昔とった杵柄で、学生時代の経験がものを言っている人が多いが、ゴルフはまず社会人になっての結果である。それもある程度の年齢になってからの結果である。その過程には相当の金と時間が投入されていたはずであるし、これは並大抵の努力ではなかったはずである。亡中閑あり?、忙しい割りに良く打ちっぱなしにも行くし、道具の研究にも余念がない。

 仕事は飯の種と言いつつも、趣味のゴルフと同等の努力を期待する気はないが、多少は時間を割いてもおかしくはなかろう。ゴルフはまずグリップの握り方、スタンスから始まりスイングに入るには相当の時間が経過してからである。VEは素振りもしないうちにショットするがごとく、基礎知識を持たないまま本番に臨むから、空振り(失敗)したりヤル気を失ってしまうのかもしれない。VEを成功させている企業は、それなりの“訓練”へのリソース投入を怠っていないし、その中の一流プレーヤーは、ライを見ただけで攻め方を変えるゴルファーの様に、直面した局面に応じた最善の方法を選択・駆使して成功に導いている。

 初ゴルフ、忘れもしない昭和46年12月18日、それまで全くクラブを握ったことがなく、丸半年日曜日も返上して働いていたので、ブレーキ(記録を止める?)をかけるための誘いがあり、出向先の常務に桜ヶ丘CCへ無理やり連れて行かれた。最初のホールが谷越えで、18も叩いた。打てども打てどもボールは谷どころか前へ行ってくれない。でもヤル気を失うことは全くなかった。やっぱり遊びには魔力があるのかもしれない。(まっ私の場合、今日でも100を切るのは年に1・2度ですが)

 ゴルフのようにとは言わないが飯の種にももう少し時間と努力をしてみてはいかがかと思うが…佐藤に言っているようなきもするが。

(来月は『意識改革は行動改革から』です。お楽しみに)

          (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE

                          佐藤嘉彦 著 エッセイ集 「千載一遇」より