嘉彦エッセイ


第22話(2006年1月掲載)


           



『数字は面白い』


 先月予告したタイトルに変えて、今月は表記のタイトルのお話しにします。

人間の身体は健康か、病かの二つに大別される。病も二つあって、自覚症状のある病と数字上の病とに分かれる。正直、私自身いくつか病に冒されている。61歳にもなるといろいろな所が老朽化して俗に言うガタが生じてくる。体感症状についてはお医者さんに言わせるとそれぞれ「病名」がつく「病気」なのである。自覚症状のない病では、肝臓に影響のあるγ-GTPが高い。糖尿病のバロメーターであるヘモグロビンA1Cも高く、勿論(?)血糖値も高く規定値を超えているので、これも「病気」なのである。

サラリーマンから現在の職業に転じ、自宅に宿泊しない日数が昨年は210泊に及んだ。自宅にいると家内が健康を気遣ってくれて、カロリー控えめ、バランスの取れた食事を提供してくれるが、外泊・外食が多いとこの構図が崩れる。そのため、出張先の朝は少々早く起きて約5000歩ほど歩くことにしている。自宅にいるときも、できるだけ食後の散歩をするようにして毎月30万歩を目標にしている。

 さて、私事に触れたが、前文の中に登場するボキャブラリーにはいずれも数字に換算することの出来る単語や事実数字が飛び交っている。この数字が面白いのである。

 30万歩歩くようにしていると書いたが、この目標を持つと、なるべく朝早く万歩計を身体につけるようになる。何セなかなか日1万歩をカウントするのは難儀で、ホテル→仕事場→ホテル、それも移動がタクシーであったりすると、3000歩に満たない日が出てくるので、平均値が一気に落ちるので少しでも稼ごうとセコイ考えになる。2〜3階分の移動は歩くようになるし、エスカレーターにもだんだん乗らなくなる。数値を意識し始めるとこうなる。私の持論である「意識改革は行動改革」の一旦である。こうして昨年は372万6600歩歩いた。ついに日当たり1万歩達成である。記録をとることも大事だ。

下手なゴルフも100を切った、切れなかった。パット数はどうだった。ここにも数字がある。そして関心が高まり時に練習に熱が入る。今の職業に転じて、昨年は指導日数が累積1000日を越えたとか、売り上げは前年比○○%アップ、累積売り上げいくら、なども自分を奮い立たせる材料になっている。いずれも数字だ。

 私事の数字だけでも面白い意識改革が始まるもので、これを日常の生活や仕事においてみるとなかなか面白く元気になるものである。

 スポーツの選手などの数字は顕著であって、順位か絶対値の数字が目標管理値になる。昨年は高橋尚子選手復活の年でありました。もう駄目かと多くのファンはやきもきしたがついに復活優勝、記録など気にならなくなる。厳然と1位と言う数字が残ったからである。

一流のプロ野球選手などは3割、30ホームラン、30盗塁、100打点は年俸が上がるか下がるかの境目になる。二流でも2割8分に満たないとお払い箱候補になる。

株価がバブル以来の高値(今年の終値=16111.43円)になった。株価によって保有資産額が大きく変わる。為替($=117.47円)も動いた。企業にとって為替は1円で何億もの決算数値を左右する。これらは景気を占う数値になる。

 日本人の共通した会話や管理に曖昧なものが多い。(具体的には次月のエッセイに)

まだまだ曖昧な目標や管理が行われている企業も目に付くが、しかし、今日のような厳しいビジネス環境においてはもう曖昧なことは許されない。どんなプロジェクトでも目標が明確にならないと経営的は勿論、士気にまで影響する。

昨年ある会社で体験した原価企画活動、おおむねゴールしそうなところで再びコストアップが生じた。従来なら、時期(開発期限)が来たのでこれで終了と相成ったであろうが、目標を明確にして必達の心意気で臨んだチームは、ここから奮起一発、ついに完遂。私が関与したプロジェクトで昨年は2件の事例が出来た。メンバーの満足度もさぞかし高まったであろうし、それよりも必達の粘り腰(技術)が強くなった事は大きな財産になったと思う。そう、数字は体質を変えてくれるのです。

 数字にはいろいろな単位がある。金額、時間、時刻(期日)、重量も数値化できる。試験データなどの代用特性も数値化できる。比率に置き換えて見るのも一つの数値化の方法。我々の日常生活や企業活動において、時間軸(今年はとか、○月末とか)にあわせた目標数値を持つことは自分をある緊張に追い込み、妥協しなくなってくるのでとても面白い。私の専門から言うと「原価企画活動」はまさにこの集大成の管理技術だ。

 さて今年の私の目標は、γ-GTP、ヘモグロビンA1C(絶対値は内緒)は昨年比△10%を目標に1万歩/日平均歩く。スキーは15日を滑る。ゴルフは年間平均で100を絶対切りたい。仕事は、明るく楽しく元気にやりたい。(定量的でないねエ〜)

(来月は『文化と習慣』です。お楽しみに)

          (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE

                     佐藤嘉彦 著 エッセイ集 「千載一遇」より