嘉彦エッセイ


第27話(2006年6月掲載)


         



『進 歩』 



 
いろいろな組織で今日まで活動して来た。小さい組織は職場の親睦会であり、大きなものでは当然ながら長い間お世話になった会社がある。組織の大小をを問わず多かれ少なかれあることは『昨年並』『前回と同様に・・・・』である。

資料なども毎年一日だけずらして、曜日が一緒(修正モレ)と言うことがしばしばあって、表紙だけが大々的に『◇◇年度事業計画書』などと書かれている。さてこれでこの組織は進歩を続けられるのだろうか。従来と同じなら後退だ。なぜなら時代は進んでいる。評価は何事も相対的なもので、よくできたと言われるのは、何かと比較されてその結果の評価が下されているのである。『Aさんと比べて君の仕事は・・・・、』『前回と比べて今回は・・・・、』必ず比較対照のものが存在する。前回と同じは時代の進歩に相対的に遅れたことになる。時代は止まることはないのだから。

 このように言うと(書くと)、『そもそも私は企画力がなくて・・・・』と相成るが、それは進歩に対する単なる言い訳である。今まで行なって来たことには必ず省みる点がある。何が問題だったか、何が楽しかったか、何が苦しかったか、「艱難辛苦」と言う言葉があるが、何を行なっても、人間社会、複数の人と接し、体を動かし、何かを出力する。人間の感情を左右するものは山ほどあったはずである。なぜそこに立ち入らないのだろうか。


要は進歩はまず一歩から始まるのである。実行した結果の中から少しでも改良し、前進するものを『進歩』と言うのである

 しかしこれで満足してはならない。これが『前より良くなったから・・・・』は確かに進歩であるが、ではどこまで進歩したらゴールか。ここもしっかり認識しなければならない。確かに進歩は進歩。でもそれが競争状態にあるか、と言うことが最終的に求められるものである。品質で考えてみよう。技術で考えてみよう。販売実績で考えてみよう。前からは進歩したからそれで良いとは言えないのである。その状態が、顧客の満足度で見たらどうか、競合する商品、競合する企業と比べたら勝っているのか、劣っているのか。この点が重要なのです。日常生活の中では一歩の進歩を称えれば良い。しかし企業や一般社会では『目指すゴールは世界一』。『負けられません勝つまでは』と流行った言葉があったが、競争社会では一番になるまで競争が続く。そこに到達するまで許してもらえないのが企業(組織)なのである。(ちょっとカッコ良すぎるかな?)世界一は遠すぎると言って何もしないのは最悪。

そこで一言、『気づいたら進歩、実行したら更に進歩、気づかないのは関心がない証拠』と言っておこう。



(来月は『無駄使い』です。お楽しみに)

(株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE

             佐藤嘉彦 著 エッセイ集 「千載一遇」より