嘉彦エッセイ


第44話(2008年02月掲載)


          



2008年のエッセイについて:

昨年、10周年まで毎月書き綴ってまいりましたエッセイですが、弊社創業10周年を記念して1冊のエッセイ集に纏めまして、少しお休みをいただきました。今年1月から再開しましたが、今年は新たに読者との交信コーナーとして「ブログ:佐藤の技術・主張」を作りましたのでエッセイは定期性を持たず(たまたま今月は先月に続きましたが)「思いつくまま、気のままに・・・」で書いてまいります。

「ブログ:佐藤の技術・主張」のコーナーもお楽しみに、そしてどしどし皆様のご意見をお聞かせください。建設的なご意見は匿名でご紹介させていただきます。勿論エッセイにもご意見があればどうぞ。



『格差』


 世間では格差社会などと日本の社会を問題にしている方々がいらっしゃるようですが、どうも腑に落ちないところが多いような気がします。但し、今日、この項でお話しする対象は、障害のある方々やお年寄りなどの保護を必要とする方々、地方、特に僻地にお住まいの方々を対象としたことではなく、健常者で、これから私達年寄りの後を継いで、日本を支えて欲しい人たちについてであることをあらかじめお断りしておきたい。政治家や労働組合が票集めの手段にし始めているのであえてここで意見を・・・。

私は昭和52年4月に初めてアメリカへ出国して以来、87回日本を出国して、21の国と地域を都合109回訪問した。決して多くは無いが少なくも無いのだろうと思う。残念ながらまだ中近東、東欧、南米、アフリカ大陸には足を踏み込んでいない。したがって偏った地域に集中して出国していることになる。

しかし、今回の話題の格差社会は、むしろ足を踏み込んでいない国々にはもっとあるのであろう。日本で格差といっているのは同じ仕事をして、雇用の身分が異なるのに賃金や生活、そして地域の差が現れていることを指摘している。しかし一般大衆(一部の政治家、労働組合)は、隣の家と収入が異なれば格差、生活内容が異なれば格差と騒いでいるような気がする。

正社員とパート、または正業に就くものとフリーターやニート、さらにはインターネットカフェのホームレス、これらを比較して、騒いではいないだろうか。

正業に就くには多くのリスクを背負う。まずその企業選択の大きな賭け、本当に将来延びるのか、自分の好みの仕事がもらえるのか・・・etc. そして入社の関門、入社試験や面接、その日の出来・不出来で合否も変わる、さらに学歴や家族の問題などいろいろ確認され、そして漸く雇用。正社員になればある程度安定はしてくるが、必ずしも自分が理想とした職種の仕事に配置されるとは限らない。いつかは・・と夢見て、時に家族を思って自分の我を通すことの出来ない我慢になるものである。中小企業ではその中で、仕事量や企業としての収入などで雇用されている従業員にしわ寄せが来たりする。そのリスクを背負って、頑張っている。

格差というならこの大企業と中小企業の差を言うなら分からないでもない。大企業の利益総額を見て企業はもうけ過ぎ、我々労働者はという政党もあるが、利益を出して初めて国にも貢献(税金)し競争力をつけて国際競争にも勝つ(利益→開発力、設備力)近視眼で騒ぐ人の見識を疑うところだ。

事情があってパートで働かなければならない人もいる。同情はするが、絶対皆平等となると共産主義社会になる。フリーターやニートの姿を見ると、やはりリスクを避け、自分のヤリたいことをしたい、ある程度リスクから抜け出た我慢の人と差があるから格差だとは身勝手すぎやしないかと思う。

企業でもしかり。同業でも業績が大きく差が出ている。これには色々な背景があって、仮に全く同じ商品や技術力であっても、財務体質が異なって、方や有利子負債を抱え返済に終われる企業と、無利子で現金購買の出来る企業では、当然原価(購入価格)が変わり利益も変わってきて、利益が利益を生み、一方は働けど利益にならず返済に回ってしまう会社もある。これを格差とは誰も言わない。そして後者の会社は必死に前者の会社に近づこうと努力する。この努力や世間のセオリーに合わせた企業改革をしつつ会社を変えていくことの出来る会社、出来た会社はいずれ高収益企業に変身し、努力を怠り、もしくは努力の方法を学ばない、改革に躊躇する会社は万年低迷会社になる。見方によっては格差がモチベーションの元になっているのかもしれない。

 障害をこうむったり、あまりにも不運な人たちには私は同情を惜しまない。その人たちには何らかの援助をしてあげるべきだと思うし、諸税にも差別をつけても良いと思う。しかし、出来るのにやらない、行動しない、そんな人は怠け者だと思うし、大いに格差があって良いのではないか。会社も同じだ。

でも、良く考えてみると日本の社会は本当に格差の無い国だと思う。大会社の社長の給与は、中堅従業員の10倍も貰っていないし、ほとんどの人たちが、立派な車に乗り、そこそこの家に住み、子供は塾に行き・・・苦しいとは思うがそれを頑張ればやれる社会。こんな社会、少なくも私が訪れた国々では日本だけではないか。アメリカや欧州の国々を見ると一見豊に見えるが、路地裏は大変な環境、東南アジアに行けば、中国に行けば、貧富の差の甚だしいこと。中国が社会主義国・・・いやいや日本がそうであって彼らは立派な資本主義・自由主義社会ですよ。


    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE

               佐藤嘉彦 著 エッセイ集 「千載一遇」より