嘉彦エッセイ


第52話(2008年10月掲載)


          



『サプリメント効果』


 先月9月は私の誕生月で、1年である種の緊張を感じる月でもある。この歳になって誕生日が嬉しいはずはなく、その話ではない。定期健診=人間ドックの結果に緊張するのである。

 ここ数年、いやもう10年を超えるだろう、あまり良いデータが揃わない。生活習慣病のいくつかに問題があるのである。それらについて看過しているわけではなく、注意を払っているが十分ではないことも自覚している。

お茶を多用しているが、そのお茶も一般的な市販のものではなく、良い成分が入っていると言われて、わざわざ取り寄せている。それを出張先でも煎じて飲んでいる。一時、疲れが顕著に表れていたのであろう、指導先の企業のある方から「私の母親がこれを飲みだしたらすこぶる元気になった」と紹介されたサプリメントがあって、私も・・とお勧めに乗って飲み始めた。サプリメント屋は、「実はこれを併用すると効果が・・」と言って当初のものだけでなく追加のお勧め、つい釣られてライナップに加わる。同じものでも「ゴールド」は効果が更に・・また釣られる。こうして人間ドックのデータに合わせてサプリメントが増えていく。

 サプリメントはその容器にも「これは薬ではない」と明言し「補助食品だ」と言う。食品だから飲み過ぎはあまり気にならない。ついつい余分に飲んでしまうこともある。飲んだから安心とウコンなどは飲み過ぎの原因になってしまったりする。

 話を逸らすが、これも10年は経っていないと思うが、右目の網膜にゴミがついて、それも中心部についてしまい、ちょうど焦点に当たる部分がごみで見えなくなった。(今も、であるが)病名は何と「老人性黄斑変性」なる面白くない病名で、ごみを取れば普通になるのだそうだが、手術は「網膜の中心で失明のリスクがある」と言われ、未だ二の足を踏んで見えないことを我慢している。その治療(医師の指定)薬が何とサプリメントで、サプリメントであるから保険がきかず結構高い。医者は間もなく薬として認定されると言っていたが・・さてサプリメントと薬の差は認定されると薬、されないと補助食品となるのであろうか・・・。

 話を戻してそのサプリメント、いろいろ頂いている。食前、食後、まあ大変な量(金額)である。それに馬鹿にならないお茶。

 効果は本当にあるのか、人間ドックでは決して改善されたデータにならない。サプリメントに不信を持つ。食生活やお酒なども自分なりに改善の努力をしているつもりであるが、それも効果にならない。この部分は企業でもよく言うことであって、コンサルの立場上「やり方が甘い、中途半端だ。信念をもって遣り尽くせ」などと勝手に言ってはいるが、自分の身体なのに完璧どころか手抜きも良いところ、それでもサラリーマンの習性が抜けず、ちょっとやるとたくさん頑張ったような気になる。やった、やった!と主張する。

 しからばサプリメントを止めてしまおうか・・・と時折考えさせられるが、「飲んでいるから今の数値で、飲まなかったらもっと悪いわよ。食生活の改善だってあなたは外食でままならないし、お酒はなかなか減らないのだから・・」と家内に指摘を受ける。なるほど飲まなければもっと悪いのか・・ウーン。

 体も企業も組織も同じだ。やってみて効果が目に見えるほどでないと、多くの企業や組織が中断してしまう。少し行動してすぐ逃げだす組織・企業。結構本腰を入れたつもりでも、「発展的解消」だの「それなりの効果はあった」などの自己満足や、中断を正当化していく言い訳で終わっていく。品質管理だ、ISOだ、企業品質だ、顧客満足度(CS)だ・・・ゴールが明確でないから、適当な言い訳で止めてしまう。こんなケースを多くの企業でみてきた。私の専門のVEの世界で最高の栄誉であるマイルズ賞を受賞した企業が業績悪化になったりするケースを多く見る。企業解体にまで落ち行ったところまである。内容をよく見ると受賞に精を出していた時と行動が違う。手抜きも良いところ。企業品質に挑戦してコンサルの指導を受けているときはCSだ、CSだと何でもこじつけていたくせにして、指導を絶ったらどんどん元に戻る姿を見て、サプリメントを思い出すのである。ささやかでも行動していたから、たとえレベルが高くなくともどうにかなっていったのに、中断し(と言うより良いことなのに止めてしまって)、元に戻ってしまったら、正に元の木阿弥、せっかく大枚つぎ込み、人手も掛けて、会社挙げて大騒ぎし、体質改善を目論んだのにああ勿体ない。ISOなども認証を取るまで大騒ぎして、受賞したらまるで別行動。ああ勿体ない。

私がコンサルタントだから今まで指導してきた企業に、私を雇い続けよと言う意味ではない。(ちなみに企業品質やISOの例は私のテリトリーではない)なぜ良いと思ったことを続けられないのだろう。継続は力なのである。

そもそも体質改善の私の定義は、元に戻らなくなった状態をゴールとしている。何かを(サプリメントでも、指導でも)止めたらすぐに戻ってしまうのは体質改善が終わっていない証拠だ。

 こうして私は自分の体の不安を、サプリメントを飲むことで身体をいと愛しみ、少しでも安心を得ているのだが、ずいぶん長く続けて効果はあまり・・ダメダメ、止めたらもっと悪くなるのであるぞ。体質は変わっていないのだぞ・・・一生お世話になりそうだ。





    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE