嘉彦エッセイ


第125話(2014年11月掲載)


          



『Information』


私が育ったころの情報交換は、公のものは新聞、ラジオ、そして街頭のTVに群がることだったが、
家庭用や子供用の雑誌、週刊誌が売られはじめ、TVも各家庭に浸透しだし、
随分世の中の出来事が共有できるようになっていった。


   パソコンの前身のワープロを使い始めたのが、40代半ば(1980年代後半?)だったか。
これは創作する道具で情報を共有するものではなかったが、50歳になったころからパソコンが普及を始め、
上級社員から配られ、俗にいう
“メール”で情報交換が始まった。おじさんたちには使いこなせられず、
さてば若き部下を呼んでは指南を受けるのが日常の出来事だった。こうして部下にも情報が伝わった。


   年の情報は携帯電話やパソコンによるメールやインターネットによって、
私たちの目や耳に飛び込んでくるものが中心になってきて、新聞やTVも、まだ負けじと、
情報をいろいろな形で提供してくれている。しかし新聞も、今はまだ配達されているものの、既に電子版と称されて、
携帯電話などで購読する人もすくなくなくなってきて、いずれ配達されなくなるのではないかと思う。


   電車の中では一生懸命スマホを見ている人がいるかと思えば、それは情報を取っているのではなく、
小説などの読書かゲームに熱中している姿だったりする。これらのシステムを総称して、
IT (Information Technology)と言っている。


 今日は最近の報道に見る姿とITにかかわる情報提供の話をしてみたい。

   9月27日、木曽の御嶽山は抜けるような空、そして紅葉の走りを観ようと沢山の登山者が頂上付近で昼食をと、
群がるように集まっていた。そこに突然の火山爆発がおきた。
これは一生忘れないだろう。なぜならば私の古希の誕生日だったからだ。


  犠牲者が出始め、報道が始まった。時々刻々、その被害が大きく無残な結果が見え始めた。
すべてのTV局は、御嶽山に集中し始めた。私はNHKに集中して情報を凝視していた。

その報道からいくつか感じたことを述べてみることにしよう。

  ITの使い方を誤ってはいないかと疑問を感じた点が一つ目にあった。

  気象庁のある部長が、「気象庁は、火山情報をインターネット(気象庁のホームページ=URL)で24時間チェックできるようにしており、
危険性については既に予告していた」から私たちには責任は無いと言わんばかりの説明があった。
確かにインターネットで火山情報はある程度知ることはできるようだが、日本は日本中火山がある国。
国民が毎日火山情報に首っ引きにならなければならなくなる。危ないなら警告を発するのが気象庁の役目。
天気予報は毎ニュースの後半には必ず報道される。アメリカではそれに竜巻情報が付いてくる。

ホームページは見たい人が見るもので、日本中の火山を視ているわけにもいかないし、
結果を見てのこのような発言はいかがなものかと不愉快な感じを受けた。もし爆発に至るほど危険な状態なら、
警告を発する役目は所管省庁にあるのではないか。


   とこのエッセイを書いていたら。10月24日、霧島連山の火山情報を気象庁の火山噴火予知連絡会が
臨時火山情報としてTVを通して伝えて来た。これが本来の姿だと思う。
ホームページを視てほしいなら、もっとその宣伝をすべきではないか。


  私の参加しているアマチュアスポーツの団体も、同じようにURLを更新したら会員に伝わったと錯覚している役員もいるが、
これは大きな間違いだ。私もそうだがメールを送ったらもう相手に伝わっていると錯覚する。
相手は何日か後にそのメールを開く。IT等こういうものなのです。


  私の住む相模原市は数年前、津久井郡と一緒になって政令指定都市になった。山梨県との県境までわが市になったのである。
従ってあの山間部は今までの相模原市の文化と異なり、今までなかった情報までが飛び交う。
市民に、徘徊する老人捜査の依頼や台風接近での道路情報や時に
“クマが出た”などの情報が
ひばり放送(街頭スピーカーから発信する市民放送)を通して送られてきたり、
希望者には(登録していると)
携帯メールに情報が来るようになっている。


  火山情報は気象庁だけでなく、山岳協会や、スキー連盟、用品メーカーなどが情報の存在を紹介する運動が
もっとあって良いのではないか。それを動かすのが省庁だ。


 もう一つの話は、情報とは何か、情報提供の目的は何か、情報提供は誰のために行うのか。
TV
の報道で気が付いたことがある。それは早口と音声の問題だ。
聞き取れない情報は情報とは言えないのではないか。が主題だ。


  9月27日夕刻、気象庁のK火山課長 藤井敏嗣火山噴火予知連絡会会長がまず御嶽山の噴火について説明を行ったが、
原稿を読む気象庁の課長は、早口で、我々視聴者に話していることが伝わらない。
専門用語も多かった。少なくも、広報担当として最低の話し方ぐらい勉強してきてはいかがかと思った。


(原稿を読むため)下を向くと気道が狭窄されて、音声が潰れるし小声になる。それに加えて早口では猶更理解できない。

発表する目的は何か?度々このエッセイでは目的志向の話を書いているが、目的は国民に重要な情報を伝える機能であって、
伝わらなければ、公共の電波を使った意味もない。釘づけになって聞く国民の貴重な時間を浪費してしまうことになる。
国民に重要な情報を提供するわけだから、情報は伝わらなければ、発信した意味がない。

各省庁で、広報に関する仕事をする人たちには、そのような指導を誰もしていないのだろうかと思った。

その反面、藤井会長は、話すテンポもしっかりしているし、原稿を読まず、自分で理解しておられることを、
正面を向いてお話しなさっていたのでよく理解が出来た。


  報道番組には、良くキャスターと称する職種の人が登場する。また各局の社会部の記者も…そもそも記者や
キャスター(記者と何が違うのか)の中にはやはり早口や語尾下がりで結論が不詳な人たちが多い。
如何に報道品質を上げるか、放送機関の人は広く、飾ったスタジオを見せるよりも、
しっかり放送品質を上げる研究や訓練をすべきだ、としばしば感じる。
視聴者に内容が伝わらなければ無駄な時間を費やすと思ってほしいし、私たちは聴きたいのです、知りたいのです。

 その点、国会議員の答弁は比較的明解だ。なぜだろうと、知人の代議士に尋ねてみたら、
言葉の使い方と話し方の指導をするスタッフがいるのだそうだ。
「代替案」…読者の皆様には失礼だが、何と読みますか。
ダイガイアンではありません。ダイタイアンです。
その代議士さんに尋ねたら、このような紛らわしい言葉も、インストラクターがいて恥をかかないように注意を促してくれるのだそうだ。
安倍総理くらいになると注意する人も遠慮をしているのか、彼の早口は収まらないが、彼らは彼らなりに努力をしているのは、
効率よく情報提供をしあおうとする姿勢からだと思う。


 鉄道の運行情報や道路情報も明解な情報を流しているし、とても聞きやすい。

 話は変わるがもう一つ。ITの主力を占め始めているのがインターネット。
私は最近携帯をスマホに変えて悪戦苦闘が続いているが、少し慣れてきて便利だと思っていることは、
こちらから情報を取りに行くこと。特に言葉や歴史、人についての情報はとても手短かに入手できるので便利だが、
それは聴きたい情報を聞きに行くのがインターネット。=Wantの世界。
聞かさなければいけない情報(災害発生の危険性や避難勧告等)は省庁や行政機関がいかなる手段をもってしても
国民に伝えなければならないのだ。これはMustの世界であることを確認したい。


 今回の惨事を機にもう一度「情報」について見直しをしてみませんか。

    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE