ショパンの会:Chopin Association

第8回ショパンの会<祝・21世紀>コンクール
ピアノ演奏部門 金賞受賞者 演奏会
〜辻英恵ピアノリサイタル〜
2006年2月11日(土・祝)/6:30pm/カワイ梅田ショップ


導入のシューベルト「即興曲Op.90-3」から、幻想的な音楽空間が、溢れんばかりの聴衆に満たされた会場全体に広がった。
続いて、ベートーベン「ピアノソナタNo.31 Op.110」は、辻さん自身が、感動して何度も涙したという作品だけに、全体に常に陶酔するような幻想的な雰囲気が漂い、大変心地よい演奏であった。特に第3楽章の『嘆きの歌』の、誠実な表現が心に残った。
メシアン「鳥の小スケッチ〜ヨーロッパコマドリ」とドビュッシー「喜びの島」 では、洗練された綺麗なタッチと、安定した演奏に、辻さんの絵画的な色彩感覚を垣間見ることができた。

さて第2部は、待望のショパン「バラード第1番・第3番・第4番」である。
第1番は、悲しみと怒りが混在する第1主題と、郷愁を誘う優しい第2主題が、しだいに高揚し、不吉なコーダへと突入する。最後の両手のオクターブは、怒り・苦悩・復讐心・・・であろう。
第3番は、冒頭から男女の愛の対話を思わせる、優しく和やかな雰囲気のバラード。明るさに満ちた変イ長調のコーダは、第1番と対照的である。
第4番、第1主題は叙情的であり、それに対立することのない繊細なコラール風な第2主題が巧みに展開されて、ドラマチックな音楽へと変容していく。嵐のようなコーダで、破局的なクライマックスを形成し、この悲しみのバラードは終結する。

辻さんの演奏は、ともすれば、穏やかに過ぎるのではないかと思わせるくらい、安定したテクニックに支えられた高度なものであった。また作品を大きく捉えること(3曲にわたって)にも、成功していた。
 特に第4番は、「これまでの私の音楽人生において切り離せない曲となっている気がします。嬉しい事も悲しい事も、この曲を通しての思い出はたくさんあります・・・」と、ご自身のコメントにあるように、想い入れのある表現が印象的であった。

本日使用した、カワイ・コンサート・グランド(SHIGERU KAWAI)は、低音域から高音域まで、大変バランス良く響き、また艶やかな音色が、ショパンに適していたといえるだろう。

「ショパンの音楽には魔物が住んでいる気がします。なかなか思う様にはいきません。けれど、そこがまた魅力の1つの様な気もします」・・・ショパンを熱く語る“辻英恵さん”の今後の活躍を心から期待したい。

                                  ショパンの会代表:オサム・ショパンスキ・オガタ




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