嘉彦エッセイ


第58話(2009年04月掲載)


          



『お役所仕事』



 公務員の方々には癪に障る用語かもしれないが、一般的日本語になってしまったこの言葉、ゆうずの効かない、杓子定規な、挑戦的でないことを象徴する言葉になっている。Value Engineerとして、常に新しい方策、夢を追う方策を考えたくなる正直私の性格からして、この言葉が適用されることはあまり好まないものだ。

 企業の中でも良くこの言葉を見かける会社がある。事故があるとマニュアルを書き換えて、管理者の責任逃れをしよう、コンプライアンスに反すれば「コンプライアンスは法令遵守」なる張り紙をして、見かけ対策をしたことにする。なに、裏返せば法律違反ぎりぎりまでなら何しても良いことを物語っている。要は目的を考えず魂を入れない処置の仕方・・・佐藤にとっては決して面白くない手段だ。

 何かを企画しても杓子定規、目的を忘れて手続きばかり先行してしまう。よく上司がそれを許すな・・と逆に感心することしばしばである。

 話しは変わるが、最近高速道路のサービスが変わって、休日などずいぶん安く利用できるようになってきた。その影響なのか、ETCがずいぶんと普及してきた。とても便利で、漸く本当のモータリゼーション時代に日本も入ったという感じ。

 さて、そのETC、最近バーの開くタイミングが遅くなり、あわや衝突の危険を何度か経験した。なぜ遅くしたのだろうか。そもそもアメリカの料金所にバーがない。コインを入れるところでも、カードで(ETC)通過するところでも、である。

 1995年、結婚25周年記念の旅行でアメリカに行った。デトロイトから飛行機を乗り継ぎバッファローの空港につきタクシーに乗った。ご存じの方はピーンときたかもしれない。そうです、ナイアガラの滝を見に向かったのです。

タクシーの運転手はおしゃべり好きでいろいろ質問をしてきたりしながらある有料の橋を渡るとき、会話を遮り、「良く見ておけ、俺のコインの投げ込み精度を・・・」と言って、時速60マイル=100Km/h以上で走りながら料金所のコイン入れの籠に何とチャリン・・・見事に入れたではないか。あらかじめ窓をあけ、25¢コインを準備し、ゲートのさしかかる幾分手前から投げ始め、チャリン。どうやら得意技なのだろう。話は彼の腕前ではなく、その環境だ。バーもなければ無銭通過車を止めるシグナルもない。無銭通過車は中にはいるのであろうが気にしないのである。現に帰りに同じ所を通過する時にゆっくり走ってもらったら、コインが散らかっていること、仕損じる運転手は沢山いることを物語っているが、機械から見れば無銭通過車なのだが無頓着。

 日本ではこれを取り締まる?ためにたった100円の料金所に料金徴収係のおじさんをおいている所が何箇所もある。おじさんの給料の方が高いのであるにも関わらずだ。山梨の清里高原大橋では料金が250円だったが、早々に料金所を撤去して無料にしてしまった。

 ETCは何が目的だったのだろうか。私はその目的を知らないが、料金所で停止して料金を支払う行為は、車は減速し、再度発進することで排気ガスは増え、更に渋滞が始まる。これを避けようとしたのではないのだろうか。何台かの不埒な輩が無銭通過をしていることに対抗しての処置、情けない処置と思いませんか。もし善意に考えて、カード挿入忘れや不適正挿入でバーに衝突することを防ぎたいのなら、100m手前とかで「ETCカードが正常に作動しています」とシグナルが出るようにでもしたら、従来のスピードで通過できるようになったものを。

 もっと太っ腹に考えれば、アメリカのようにバーをなくせば、設備費は安くなるし、メンテの費用は要らないし、それでも公団側が無銭通過車を断じて許し難いとあらば、無銭に対する懲罰を大きくして、監視パトカーをおいて無線車通過と同時にパトカーが追いかける。捕まえる。車を没収するくらいの大枚な罰金を科せる。健全なドライバーは助かるし、国には罰金が入るし、バンバンザイではないか。

 佐藤にとってはあの料金所を時速何Kmで通過できるか楽しみにしていたのだが・・・今までの記録は大したことはなく70Km程度かな・・・。ひょっとしてこのような輩のための安全処置だったりして。すんません。


    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE