嘉彦エッセイ


第70話(2010年04月掲載)


          



『平行移動』相対比較?



  先日、父の7回忌を自宅で行った。親爺が死んでから丸6年を経て、いまさら大げさな法事はいかがなものかと、親爺が比較的接触の多かった方々や近親者にご足労を頂いてささやかに親爺をしのんだ。

 ご出席いただいた方々、特に父の友人や職場でお世話になった方々が何方かお越しになり、また故郷新潟の寒村のなじみの方もお越しになった。そしてお梳きの時間帯にはそれぞれ昔話に花を咲かせた。

 良く拝見すると皆さん随分お年を召したな・・が直感だった。おつむの方もさることながら、お酒が進まない。最初から烏龍茶を所望する方さえ・・・、親爺が存命中に良くお越しになって、ずいぶん飲まれたと思ってはいたが、すっかりペースが落ちている。親爺の倅である私も良く考えると65歳、少し昔でいえば相当のおじさん、長寿社会のおかげで、まだ時に若造の世界(親父の友人から見れば)も持っていることになるが、やはり相当のおじさんなのだ。こちらもそういえば飲むペースが落ちている。話す会話の中でも親爺に関する話題は昔のことで時間軸が固定されているのだが、それ以外はほとんどが、各自現況の血圧だのやれ痛風だの体調の問題・・・そうか相対的には皆さんも私も一緒に年をとってきていて、お見えの方々だけが年をとったのではないことに気付いた。同窓会などでも良く見かける姿で、自分を忘れて同級生たちを「あいつ年取ったな」と観る。同じことだ。

さて世の中はそろそろ、期末で決算のまとめの企業が多い時期だ。今年の業績はどうだったか、過去最高の売り上げであったとか、近年はリーマンショックの後を受けて、最近ではうれしい話をすることはまれにみることだ。

 その業績の評価の基準は何かと言うと、自社の経営目標はもちろんのことだが、他社との相対比較も重要な評価だ。自社は沈んだ、他社も沈んだ決算をしている。相対的にみて沈み方がどちらが激しいか・・・なかなかこう見ない。株主向けの決算報告書などでは決してこの視点の報告はない。重要な視点なのだ。


 我々の改善活動などでもしかりだ。「前より良くなった・・」ことをとうとうと述べて自分は頑張ったとアピールする。サラリーマンだから点数を稼がなければならない。しかしそこでだ、他の人はどうだ、他の課はどうだ、他の会社はどうだ、他の業界はどうだ・・・。視野を狭くして比較する(もっとも狭い視野は自分一人)と一見頑張ったように見えるが、比較する相手を変えてみるととんでもないことに気づくことがある。聞く方も、そのような視点で相対比較できる情報をどれだけ持っているかで、マネージメントの采配の深さが変わってくる。井の中の蛙にあってはならないのだ。

いすゞ時代に自分の十八番のTear Down手法で色々な製品を比較分析してきた。設計者にとっては自慢の作品、しかし競合製品に比べると、決して優れていない、顕著に差が見えて、何度も競合する製品に刺激をもらったことがある。

自分の励みや挑戦目標をどこに置くか、目標の立て方は自分の努力についてでもあるが、他の人に少なくも負けたくはない。仕事であったら尚のこと、競合相手に負ける様では仕事が無くなるかもしれないのだ。

何事も自己満足ではなく、相対比較して、まずは一つ一つ勝つことに徹したいものだ。そうするときっと元気が増すと思う。


    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE