嘉彦エッセイ


第78話(2010年12月掲載)


          



『龍馬伝』

大河ドラマ、『龍馬伝』がほぼ終結し、例年の如く、新年を迎える準備の時期に入った。何か、このパターンが日本の新しい風物詩の様になってきたように思う。
新しい文化が出来たかのように。そして、今年は幕末もので日本が湧いた。

政治改革を望んでいた日本国民が、自民党から民主党を選択し、形こそ違えど、日本の新しい夜明けを望んだところは龍馬伝と相当ラップした。
龍馬は盛り上がったが、民主党政権は過去最低の支持率、その間に尖閣列島や北方四島のイニシアティブはすっかり中露に取られてしまった。

龍馬伝の龍馬に扮する福山雅治は確かにカッコ良い。歌手だそうだが演技も素晴らしく上手い。明治維新=日本の政治の乱れに付け込んだ、
時を得た物語り、政治も時を得たりのはずだが、かっこ悪く消えた鳩ポッポ(鳩山さんなんかこうしか言いようのないでたらめ政治家だった)など、
選挙で大勝したが1年持たない。菅さんもどこにもカッコよさが見えなくなった。あばたもえくぼだが、逆に不信が募るとどんどん見たくもない存在になる。
人間関係の象徴的現象だ。
国民は熱し易く冷めやすい。あの大勝(支持率)は何だったのだろうか・・・。
支持率1%になっても「俺は辞めない」という。飽きる国民、執着する地位。期待から失望で選挙をすれば民主党大敗は間違えない。



風林火山・・・これも大河ドラマに登場して、山本勘助を中心に武田一族の栄枯盛衰を物語った。毎週釘づけになって観た。

甲斐小泉に「風林火山館」と言う撮影にも登場した、躑躅が崎のお館を模した立派な建物があり、
観光名所にしようとしたが半年経たずに入場者激減で休館になってしまった。
私などはあの建物をどうするのだろうかと心配しているが・・・壊すにはもったいないし、かといって他に使い道は無い。
公民館にするにも住宅地域と離れているし、大きすぎるし・・・。

宮崎あおい・・・可愛かったね。人妻女優でありながらあの人気(通常既婚者の女優は余りスターにならないのが定説だが)、
篤姫を見事に演じたが、これもあっという間に消えた。

上杉の家老:直江兼継の話しなどは昨年なのに、もうタイトルも出てこない。そうそう直江兼継…パソコンのキーを叩いても、
直江も兼継もすぐには出てこない。パソコンまで忘れてしまっているのだ。
上越線沿線のスキー場は、直江兼継にあやかって、やれ生誕の地だ、幼少の砌にこれこれこうした地と宣伝に躍起になり、
まんじゅうは作るは、お酒も新銘柄が産まれるは・・


何と日本人は飽き易いのだろう。伝統工芸(古い町や藩を形成した組織に生まれた文化・技術)の伝承もあやしくなってきているし、
ものづくりの日本の伝統技術もすぐ伝承が経たれてしまって、その結果、世界の工業国No.1だった日本は、既に10位以下に転落してしまっている。
日本のモノづくりを変えた大野耐一さんの教え=トヨタ生産方式はどこへ行ったか。
各企業がカンバンだJITだと騒いだ(本当に素晴らしいものづくりの思想だが)あれはどこへ行ったのだろうか。

ISOも日本中の企業がなびいたが、あれは何だったのか。形骸にあれだけ金を使う・・だから体力を失ったと私は思っているが、
しっかり企業文化として根付かせれば、良かったが、更新でも形骸、沢山のコンサルが登場したが、今ISOのコンサルにはなかなかお目に掛からなくなった。

そして、不況になると瞬間的に騒ぐが、決して二度と負けない国になろうとまでは頑張らない。
その頑張れる技術が既に伝承されず廃れてしまっていることも要因だが、根性がない。
リーマンショック後相当悲惨だった経済や決算、少し良くなるともうあの苦しみを忘れて元に戻る。
決算など悲惨だったリーマンショック後に比べてどうかを言っているだけで、興隆を誇った1980年代初頭の伸び率や競争力と誰も比較をしない。
問題提起の仕方まで誤っているのだ。

そして古い人たちは「昔はこうやった」「あの時はこうだった」と過去を懐かしむ。
ならば、今やればよいではないか。やらないから、私の様な三流のコンサルが飯を食っていける。


先月(11月)に中国へ行って来た。最初の中国は11年前、当時から比べたら急速に進化をしている。もう工業国(生産量)では圧倒的に世界に君臨し始めている。
何しろ自国の消費人口が13億人いるのだから凄い。日本の10倍、その日本は技術に空き易く、不況に平和ボケしているが、
考えてみるとチャンスも随分まだまだあるようだ。何しろものづくりの文化が違う。彼らは経営者が一獲千金を狙った経営思想。
ものづくりではなく、会社づくりで、価値の高い会社になれば売ってしまうのもやぶさかでない経営思想。
これは中国だけではなく日本以外いずれも同じような感覚だ。自己中心。だから従業員の定着率も悪く、給与の高いところへどんどん移動する。
技術が定着しない。慣れた人がいなくなって品質が安定しない。

こう見るとチャンスありだ、考えてみれば希望がある。その昔を思い出して、実行をし直せば勝てるチャンスがあるからだ。
飽きずに、しっかり技術をもう一度確立して、その技術を安売りしないで、しっかり自社の競争力にしていく。

もう少し(何年か)龍馬(改革)しませんか。し続けませんか。

カレンダーが最後の1枚になりました。本年も拙いエッセイ、VPMニュースをご愛読いただきありがとうございました。

来年も皆さまにとって輝かしい年でありますことを祈念し、本年のお礼に代えさせて頂きます。

1年間ありがとうございました。

    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE