嘉彦エッセイ


第87話(2011年09月掲載)


          



『スポーツの本質は何だ』


 本題に入る前に、先月までの2カ月連載した節電でエアコンを使わなかった話には反響が多かった。早々に多くの方からご意見を頂き、「やればできる」の言葉から、料理に挑戦した人や、毎日歩き始めた人など様々だった。

 読者諸兄には、その後の佐藤の状況に興味が残っておられるのであろう。お答えしますね。エアコン不使用は続いていますヨ。

此処まで踏ん張れば、後は何とか踏ん張れるだろう…高校時代のランナーであった踏ん張りを思い出しながら、この暑さも何とか踏ん張れるだろうと思いつつ、あの8月16日~18日の猛暑ではくじけそうになったが、19日から秋雨前線の影響で気温が下がる情報が入り頑張りました。確かに秋雨前線で22℃まで気温が下がり、今度は寒すぎる日々、以降も30℃強でしたので、どうやら今夏はエアコン不使用で済みそうです。

 ちなみに8月の検針は、前年比△26%の電力使用量でした。「やればできるのです」万歳!

さて、今月の本題に入って行こう。

私はスポーツを長くやってきた。元々運動神経が鈍く、また小学生の頃は戦後の貧しさから栄養失調と、結核菌にやられて、あわや療養所に隔離される寸前になり、運動には程遠い存在であった。当然身体を動かす運動は勿論、教室の掃除まで禁止され、それでも運動会などは一部の競技に参加が許され、5年・6年と徒競争に出たが、いずれも次の組に抜かれた。この屈辱は心の奥に今も突き刺さっている。

 中学2年で運動全面解禁になり、それからは本当によくスポーツに挑んだ。中学の軟式テニス、高校の陸上長距離は大げさに言うと自分の人生を左右するほど自分にとって影響力のあるスポーツだった。

テニスも下手で、人に勝つにはそれ以上の練習をすることだと気づき、一人で打てるようにゴムボールに紐を付けようと考えた。軟式なのでボールにゴム糊でゴムを貼り、そこにゴム紐を通して、自分で打つと、伸び切ったゴムがボールを戻してくる。家の前の道路で朝も夕方の部活の後もひたすら打った。3年生の秋、気が付いたら大野北中の代表で谷口君と組んだダブルスは、何と市のチャンピオンになっていた。「やればできるじゃん」の始まりだった。

 高校の陸上も、かけっこのできない佐藤少年が挑んだのは、それは努力だった。入学マラソンで好成績(入学が決まってからのもう訓練の結果)が煽ての材料になり、陸上部への勧誘を受け、つられて入部。しかし遅い。学校へ行く前にまず7~10Km、学校の陸上部で碓井進先生のしごきで25Km、家に帰って7~8Km、都合毎日40Kmほど走った。修学旅行でも武山キャプテンと旅行先で7・8Kmは走った。そうしたら、2年生の時に3年生を抜いて、長距離では学校のチャンピオンになっていた。ロードレースのときにはトレードマークの帽子をいつもかぶって走った。素晴らしい思い出だ。

 しかし、最近スポーツに純粋さが見えなくなっているように思いませんか。最も至近な例では、この夏の甲子園を沸かせた高校野球。優勝した日大三校は東京都と言いながら、私の街の淵野辺駅から通学している。従ってつい応援したくなるものだが、今年は違った。声援を送ったのは準優勝の青森の光星学院。それは震災のことがあり、特に青森では被害も比較的多かった地域の八戸の高校だ。優勝を期待した。勝てば復興への元気づけになるからだ。しかし、ゲームは日大三校の猛打に屈して残念ながら準優勝。でもよくここまで(こう言っては失礼ながら)頑張った。震災の青森、北の青森。胸を張って帰れと惜しみなく拍手を送った。しかし、準優勝の後わかったことは、選手は地元でなく、全国から集めた選手。そして先週は自宅に帰省して喫煙していたと言う。純粋なスポーツはどこに行ったのだろうか。勝つためにはどこからでも選手を集めれば良いのか、勝つためにはどんな選手でも集めれば良いのか。光星学院は3年くらい出場停止にすれば良い。そして高校野球は都道府県代表制をやめるか、地域に純粋に生活している選手で各都道府県予選をしないと、純粋な野球選手は育たないと思う。

 また最近の面白い?例では、早稲田のスラッガーであった山中亮平選手は神戸製鋼に進み、ラグビーのワールドカップの候補選手。口髭を伸ばしたく飲み薬を常用していたとのこと。その飲み薬の成分がドーピングに引っかかり、何と2年間の出場停止処分。この話も何かおかしくありませんか。スポーツを何だと思っているのでしょうかね。髭でラクビーするのですか。ワールドカップを逃しては本末転倒。

転倒と言えば、その昔プロ野球の清原選手が走塁する時に転んでしまったことがある。巨人からオリックスへ移った後でのゲームだった。ビデオの再生を見たら、何と自分のユニフォームのかかとを踏んで転んでしまったのである。勿論アウト!最近のユニフォームは昔のストッキングを履く習慣が無くなり、脚を長く見せるために目一杯スパイクが隠れるほど長くして履く。巨人の阿部選手やマリナーズのイチロー選手は未だストッキングだが、本来野球のスタイルは白いソックスの上にチームカラーのストッキング。それがなんとあのズルズルズボン。機能性から見たら首をかしげるものだ。

 高校野球の選手が帽子のつばをなぜあんなに折ってかぶるのだろうか・・・横を見にくくないのだろうか・・・これも不思議に感じながら今年も高校野球にくぎ付けになった。これはまだたわいのない例だ。

 恥ずかしい話しでは、私の今の専門スポーツのスキー。バンクーバーオリンピックで、ボードの国母選手は、日本代表のスーツをだらしなくズボンを下げて入村して顰蹙を買い、入場式に出場させてもらえなかった。

 馬術の背広?をきちっと着こなして鞍上の紳士を演じる騎手、クリケットやポロ…伝統を重んじる英国のスポーツにはだらしのないものは無い。剣道のきりりとした防具を付けたスタイル、弓道のはかま姿、本来ん日本の武道もしっかりしている。それぞれのスポーツには技もスタイルも伝統と言うものがある。それぞれの肉体をそれぞれの歴史的スタイルで包み、正々堂々と戦う。筋肉増強剤などが問題になったのは、それぞれの肉体を異常に強化して勝つための身体を作ったからだ。自分の努力で鍛えて競うのがスポーツのはず。薬で買ってはならないのです。なぜスポーツに似合わない所に気を使ったり、戯れたりして、スポーツを汚して行くのか。私には分からない。

 少し古いが、女子のソフトがオリンピックで金メダルを取り、一時ソフトボールブームが生まれた。少し静かになったかと思ったら、今年の7月18日には、サッカーのなでしこチームがワールドカップで優勝して勇気を与えてくれた。いずれも彼女たちのひたむきな努力の成果だ。特になでしこの経緯を聞くと涙ものの純粋な挑戦であった。プロになっても報酬の無い選手。多くの選手が生活のためにピッチを離れ、その中で食いしばって残り、代表に選ばれ、ついにPK戦で感動の優勝。日本国民が未明のテレビにくぎ付けになり、感動をもらった。

 スポーツはこうでなければならないのだと思う

    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE