嘉彦エッセイ


第100話(2012年10月掲載)


          



『お役所仕事-Ⅱ』


 2009年4月第58話に同じタイトルで、公務員の方々には顰蹙を買いそうなエッセイを書いたことがある。

昨日(9月27日)どうしてもまたまた書きたくなる出来事に遭遇して、同じタイトルに-2を付けて今月のエッセイにすることにした。

  私は神奈川県相模原市に住み、淵野辺駅を利用している。昨日、運転免許更新で二俣川に出向く際に、
駅前のバス乗り場の土木工事をしているのを横目で見ながら改札口に向かった。
帰宅の段階では、すでに完成して周囲を保護用の策で囲ってあった。
何とそれは駅周辺の禁煙をアピールする地図付きの警告カンバンだった。


  今日行って見たら,もうその柵もなくなって、完成受け渡しが済んだのだろう。10月1日から施行される歩行禁煙の告知看板だった。

  しかし私はその看板を見て唖然としたので、相模原市にある「市長への手紙」の制度を利用しようと以下のように書いた。

「拝啓 相模原市長殿

  平素は、我々市民生活に、多くの恩恵と配慮を賜り、少しずつ街が変化・向上していることに感謝を申し上げます。

私は淵野辺駅近くに住む68歳の男性です。98歳の母がまだ細やかに健在で、毎日町内を散歩するために介助の役で、付いて歩いています。
ただ歩くのももったいなく、母の約2000歩の行程を、ごみ袋と、火ばさみを持ってごみを拾いながら歩いていますが、
そのごみの大半はたばこの吸い殻です。今回の処置は素晴らしい第1歩であります。感謝いたします。


  さて、あの警告表示板、市長さんはご覧になりましたか。企画した方はご覧になりましたでしょうか。

その方の上司はご覧になりましたでしょうか。


   淵野辺駅南口は、まさに南側を向いていて、警告表示版は駅利用者に良く分るように北側を向いています。表示板に向かって右側は矢部駅。

左が古淵駅。ところが、表示板は逆さまで、右に古淵です。矢部は左側にあります。


   もう一つ、この表示板は、誰のためでしょうか、何のためでしょうか。
初めて街を訪れた人にも、この駅周辺のこの範囲は禁煙なんだよ、と知らせるためのものでしょう。
駅前にはいくつか目につく建築物、構築物があります。バス停、タクシー乗り場、駐輪場、そして美しい鹿沼公園、
区庁舎や図書館。みんな街のシンボルであり、多くの人にアピールしたいものでもあります。
それらの施設を分り易く、大きく表示しながら禁煙区間を表示したら、それも逆立ちしながら見なくても済むように、
お造りになったらいかがだったでしょうか。


   正直、今の住所で生まれ育ち68年、それでもあの地図では禁煙区域が良く分りません。目的は何でしょうか。

余分なことを書き加えます。民間会社では、すべての仕事が競争です。品質も機能も耐久性もコストも。
競争に勝つために組織のチェック機能があります。競争に負けた企業は、その仕事から追われ、
時に事業閉鎖や人員整理などの厳しいお仕置きが待っています。
だから、私が勤務した自動車会社では、社長が20トンの大型トラックの試作車を運転して確認するくらい、
幹部が現場に密着しています。


市役所にはライバルがありませんから、競争がありません。その分チェック機能もおろそかになり、
議会で(責任を負わずに済む範囲の)答弁できる程度が業務範囲になっています。

競合会社がなくとも、もう少し仕事品質を上げてはいかがでしょうか。現場に密着してみてはいかがでしょうか。」

これが市長への手紙でした。


もう1件、運転免許の更新に二俣川に行った。5年ぶりだったが全く進化が無いのに驚いた。
特に、パスポートも同じだが、手続費用の支払いは「証紙」なる切手のようなものを貼る。
今回は3450円、証紙を販売する窓口で、3000円と400円と50円の3枚を受け取った。
パスポートは手続き事務所の隣の旅行用品屋さんなどで売っているのも奇異だが、ここは施設内。
いざ貼ろうと思ったら2枚しかない。あわてて歩いてきたコースを遡ってみたり、・・結果は1枚が別の用紙に張り付いていて3枚は無事。
申請書に貼る。


   はっきり「アホッ!」と言いたい。3450円かかるのは結構だが、支払ったところで、申請書に受領印を押すか、
申請書を3450円で購入するか、すれば証紙を印刷する工程に始まり、
流通、管理、販売、受領、貼り付けなどの全ての工程が簡略される。ITの時代だが、この提案はまだマニュアルの世界。
IT的に見たらもっと合理化は進められる。自動支払機に従来の免許証を挿入し、
現金かキャッシュカードで3450円自動支払機に入れると、今日の日付や、所定の事項が印字されてプリントされて出てくる。もう窓口も不要だ。

合理化すると人手が不要になるからやらない?…いくらでもお役所にはまだ手が欲しいところあるでしょう…
そこで活躍していただいたらもっと生き甲斐が感じられると思いますが・・・。


   お役所に意見を申しましたが、民間でも多かれ少なかれ、似たことが起きている。
企業だけでなく、スポーツ団体などもしかり。企業はもたもたしていると淘汰されるから必死だが、
町内会やスポーツ団体、ボランティアのNPOやその他ライバルのいない組織に多く見られるのがお役所仕事。
根底にはボランティアで奉仕している…と言う意識があるから、合理化や更なる発展までは考えない。
会員が増え様が増えまいが、町内会(組織)は今が維持できれば自治会長さんも御の字。(わが町内は違いまっせ)

「現状で何が悪いの?」の感覚から、「誰のために、何のために、より良く」を意識したら、どんどん進化すると思いますが・・・。

昨日と同じは、時代が進化しているので相対的には退化ですよ。



    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE